君のトラウマ旋空弧月   作:ミルクネコ

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はじめての戦闘訓練

サイドエフェクトの検証を終え、

私は先輩方と訓練用トリガーを決めることにした。

射手(シューター)になさいよ~追尾弾(ハウンド)とか楽しいんだから!」

「あはは…とりあえず試してみますね…」

加古先輩に決して悪気はないのだろうが、絶対に無理だと思った。

確かにA.Tフィールドを展開して身を守りながら一方的に攻撃できればすごく強い。

だけど私にはそのロマン構築はできない。

ただその理由を告げるのが恥ずかしく、私は今朝もらった診断書を出す。

それを見た先輩の顔はみるみるうちに青ざめ、

「...ごめんなさいね。」

とつぶやく。私のトリオン量は驚異の2であり、サイドエフェクトがなければ

試験で落としていたと、試験官の方に言われるほどだった。

太刀川先輩は爆笑し、村上くんはすごく難しい顔をしている。

「ハハッ、そりゃ射手(シューター)できないよな」

「C級では使わないが、ベイルアウト機能を搭載すれば実質1か…」

「だからサイドエフェクトに頼るしかなくて…」

訓練用トリガーを選ぶことにしたのだが、今後のことを考えると

射手(シューター)狙撃手(スナイパー)の選択肢はなく、私は頭を抱えた。

頭がこんがらがってきた私に太刀川先輩が、

「フィールドで攻撃受けて、解除からの弧月で勝てるだろ。」

いかにも簡単そうに助言?をしてきた。

「ハンドガン極めて弓場さんみたくなるのもありかしら…」

「和泉さんのサイドエフェクトは、射手(シューター)に対して圧倒的に強いから、

遠距離武器は無理に使わなくてもいいと思うよ」

村上くんが何を言っているのかよくわからず、聞き返そうとした。

「要するに、相手の間合いで戦う必要がないって言いたいんでしょ?」

その前に加古先輩が要約してくれ、少し道が見えた気がする。

レイガスト、スコーピオン、弧月。

それぞれ村上くん、加古先輩、太刀川先輩の使用するトリガーである。

奇跡かな?太刀川先輩はこれを予期していたのかもしれない。そうつぶやくと、

2人がそろって否定してきた。「「それはない!」」

「凛ちゃん。太刀川(こいつ)にそんな頭はないわよ」

加古先輩の言葉にこくりと頷く村上くん。

「いやぁ ばれちまったか」言われている本人はハハハと笑っている。

なんやかんやあって、スコーピオンを選ぶことにした。

太刀川先輩が訓練してくれるらしく、さっそくスコーピオンを手に取る。

体の中にしまわれた刃が場所を問わず出てくるのは...ちょっと気持ち悪い。

不思議な感じだ。慣れれば変形も容易くできるらしいが、

今の私では時間が結構かかってしまう。

継続的に訓練できるように、訓練室の設定はトリオン無限にしてもらった。

「んじゃいくぞ」そう言って先輩は激しい踏み込みとともに距離を詰める。

直後に降ってきたのは落雷のような袈裟。

(フィールドで攻撃受けて、解除からの弧月で勝てるだろ)先輩の言葉を反芻し、

私はA.Tフィールドを展開してから半歩下がって、スコーピオンを伸ばす。

作戦はまあまあ良かったはず。だけど私の技術が追い付いていなかった。

フィールドを解除するのが遅れて、スコーピオンとぶつかってしまったのだ。

そしてフィールドが消え、伸びきった腕とスコーピオンだけが残る。

「あ」

「もーらいっ!」

無防備で右手を突き出す私に先輩は容赦なく逆袈裟を浴びせる。

ものすごい無様に負けました。

「凛ちゃんって何かスポーツとかやってたの?」

「いえ、特にやってなかったです。運動苦手で…」

「にしては反応速度が速いし、何よりビビらず攻撃を返せるなんてな」

なぜだか太刀川先輩は嬉しそうだ。そのとき加古先輩の携帯が鳴る。

任務に呼び出されたみたいだ。5分ぐらいぐずった末、二宮先輩という方が

取りに来た。比喩じゃなく、文字通り取りに来たのである。

加古先輩を容赦なく肩に担ぎ、「邪魔したな」とクールに去っていった。

にしてもあの運び方…いや連れ出し方はどうなのだろうか。

 

太刀川先輩と30戦ぐらいやってから、休憩をとることにした。

先輩はあえて前の動きと同じように動くこともあって、

私がそれに対応したら別の動き、そしたら行動を変えて、対応を待つ

というようなことを意図的にやっているようだった。

その成果があって少なくとも粘れるようにはなって、

ごくまれにかすり傷を負わせる程度はできるようになった。

村上くんにも、「どんどん良くなってきているよ」と褒められ、

太刀川先輩も初戦より口角が上がってきた…気がする。

先輩が私にいちごみるくを3本買ってきてくれたので、ありがたく頂戴した。

疲れがすーっと消えていく気がする優しい味だった。

トリオン体ゆえ疲れは感じないはずなのだが、そんな気がした。

両親が余ったいちごで作ってくれたものとかなり似ており、ちょっと切ない。

「もうちょっとしてから、今度はオレと練習してみよう。」

村上くんの提案に、私は大きくうなずいた。

(あれ…?)

前までは両親のことを思い出す度気分が暗くなっていたが、

今はそんなに落ち込んでいない気がすることに気づいた。

やるべきことができたことが作用したのだろうか。

ひょっとして忘れて「じゃ、やろうか」

「あ、うん。」

村上くんの声で我に返る。

(せっかく鍛えてもらっているんだから、他のこと考えてちゃ失礼ね。)

村上くんはレイガストと弧月を同時併用するという、

騎士みたいな、ガン○ムみたいな戦法を得意とするらしい。

でも今回は、弧月だけで訓練をするそうだ。

「レイガストは人気ないし、一般的な弧月使いとの戦闘経験を積まなきゃね。」

持久戦になれば時間も食うし、そういってはにかんで笑う村上くん。

そうして刃を交えてから10秒後...

(やべぇ。完全に見斬られてる。)

優しくして欲しいと思っていた訳では無いし、手加減なんてもってのほかだ。

とんでもなくすさまじい強さ。さっきまでの温厚な雰囲気は消え、

私の攻撃を弧月で受けたと思えば、A.Tフィールドごと両断される。

唐竹割りをどうにか受け止めたと思えば、半歩下がってからの突き。

私がスコーピオンをいくら振っても全部受け流されてしまう。

それにくらべて村上くんの刃は正確に急所を穿つようにねじ込まれ、

サイドエフェクトがなかったらもう5回は死んでるほどに見事だった。

冷静沈着に私を見やる目つきと鮮やかな太刀捌き。

その様は、太刀川先輩とはまた違った恐怖を感じた。

今行っているトリオン無限の練習なら心配いらないが、

このままでは粘られるだけで負けかねない。

欠けたスコーピオンを再生成する度にトリオンを消費

短期決戦で挑まなければならないのに、

村上くんには一向に勝てなかった。

さすがに落ち込む。見かねた太刀川先輩が、

「なんで鋼に勝てないかわかるか?」ときいてきた。

実戦経験?実力差?いろいろ思い付きはするが、先輩は首を横に振る。

ちょっとみてろ、弧月を1本手につかみ、村上くんvs太刀川先輩の戦いが始まった。

戦闘開始の合図が鳴ると同時に、先輩は勢いよく地面をける。

そしてすさまじい速さで、村上くんを間合いにとらえた。

一切減速せずに、そのまま繰り出された横なぎを、

村上くんは弧月を正眼に構えて受け止めた。2人の力が拮抗し、

そのまま力押しになる。と思いきや、

刃が止められた状態から斜めに切り上げるようにして先輩は切っ先をそらすと、

そのまま流れるようにつばめがえしを決め、

私があれだけ苦戦した村上くんに勝利した。

その美しい試合に私は感動し、私はしばらく動けなかった。

相手の意表を突くこと、私はA.Tフィールドと合わせて、作戦を立てることにした。

「太刀川先輩、1本お願いします!」1つだけ思いついた作戦。

うまく行くかなんてわからない。息を整え、開始の合図を待つ。

「戦闘開始」そのブザーとともに走り出す。数メートルもいかないうちに私はジャンプ。

足にATフィールドを2枚重ねて展開し、スコーピオンを手に持ったまま、

飛び蹴りの要領で孤月に突っ込む。

当然それは防がれ、さらには押し返されてしまっている。

(次!)私は急いで降りて、2枚のフィールドと先輩の孤月がまだ拮抗しているうちに今度は正面からフィールドを飛ばした。

それと同時に私は孤月風に変形させたスコーピオン片手に走り出す。

2枚のうち1枚が壊されたが、まだ大丈夫。

と思ったのもつかの間、爆速で壊されてしまった。

だがまだ間に合う。正面のフィールドが先輩に激突、

孤月で受けてはいるものの、バランスが崩れている。

(その体勢ならいける!)半歩遅れて私は得物を振りかざし、

それが首を切り裂く…はずだった。

私の右手が止まる。先輩は孤月を両手から右手に瞬時に持ち替え、

空いた方の手で私の手首を掴んだのだ。ギリギリで刃が止まる。

私が孤月使いなら、攻撃できないまま終わっていただろう。

でも、私が装備しているのは...「スコーピオン!」

ブレードを勢いよく変形させ、先輩の首をはねた。

 

「いやぁやられたなー最初の奴回避するべきだった。」

悔しがるそぶりも見せずに…というか明らかに口角を上げて先輩が言った。

どうやら最初の飛び蹴りを、敵を動かすための攻撃だと考えたらしい。

最初からスコーピオンをある程度伸ばしていたのが地味に効いていたみたいだ。

先輩が避けて斬り合いに持ち込まれてしまったら終わってたので、

何気に一番緊張した瞬間である。

「なんちゃってスコーピオンも良かったよ」と、村上くんが拍手しながら相好を崩す。

「村上くんのおかげだよ!ありがとう!」笑顔でそう返す私。

初勝利の喜びは想像を絶するうれしさをもたらした。

もちろん、今回の太刀川先輩は孤月を1本しか装備していない。

それに「旋空」とかいうオプショントリガーも使用していないらしい。

つまり全然本気ではないということは知っている。作戦だって相手依存のものだった。

それを加味しても、全然勝てなかった相手から1勝をもぎ取れたという事実。

すごくすごくうれしい。

そのあと調子こいて村上くんと戦ったのだが、

ATフィールドが想定より早く破られて刃を防げずにあっさり負けた。

理論上、心を通わせていくほどフィールドの強度は下がるので、すごくあっさり負けた。

 




サイドエフェクトは当時の私が本当に悩んで決めたので、
それを尊重して変更無しで行きます。お気に入り感謝(ㅅ´꒳` )
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