鴉天狗達と撮った写真   作:ニア2124

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お久しぶりです、と言っても三日しか経っていませんが笑。

やっぱり二日に一階投稿も難しいです………出来て三日に一回って感じになっちゃいそうですすいません><
それでは今回も!!


十月三十一日 鴉天狗だけど吸血鬼

 

 

ハロウィーン、それは十月三十一日に行われる伝統行事。もともとは秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事であったが現代では特にアメリカで民間行事として定着し、祝祭本来の宗教的な意味合いはほとんどなくなっている。

 カボチャの中身をくりぬいて「ジャック・オー・ランタン」を作って飾ったり、子どもたちが魔女やお化けに仮装して近くの家々を訪れてお菓子をもらったりする風習。

 

 今日は十月三十一日、いわばそのハロウィンの日なのだ。

 当然こんな年だし近所を歩き回って「トリックオアトリート!!」だなんて元気いっぱいに言えるお年頃でもない、そもそも周る友人がいない。

 

 さて、何故このようなハロウィンの伝統行事について語っているかと言うと……………。

 

 

「真さん!! トリックオアトリートですよ!!」

 

 トイレットペーパーを体中に巻きつけた鴉天狗に頭を悩ませているからである。

 

 

 

     ♥     ▲     ♠     ✿

 

 

 真っ黒色のカットソーを上に着て、下に濃い青のミニスカート、脚に黒ニーソを付けた彼女が現れる。

 だがその女性らしさ満載のファッションの上に白のトイレットペーパーを体中に巻きつけているのだから台無しだ、それはもう大いに。

 

 恐らくその仮装はミイラ男のつもりだろうが彼女が「これはなんの仮装だ?」と聞いてくれと言わんばかりの表情を浮かべているのだから困ったものだ。

 折角リビングにある茶色の弾力性満載のソファでうたた寝していたというのに…………全く面倒臭い。

 溜息を一つ零しながら疑問の言葉を待ち続けている彼女に向かって口を開いてみる。

 

 

「………………なんの仮装だよそれ」

 

 すると彼女は見下す様に鼻笑いをしながら「やっぱり真さんじゃわかりませんよね~」とニタニタ笑ってみせた。

 勿体付ける様に少しの間を空けた後自信有りげに彼女が答えた。

 

 

「雪男です!!」

 

 その斜め上どころか外郭カーブ四十五度の野球ボールに思わず絶句する。言葉が出ない、どんな反応をすればいいのかわからない。

 何時まで経っても言葉を返さない俺を不思議に思ったのか彼女が何度も俺の名を呼ぶが反応出来ずにいた。五回目の少し強めに、不機嫌そうな彼女の声で我に返る。

 

 これは突っ込んでいいのだろうか、ここでスルーし受け流すのが大人のやり方。だが俺はお生憎様にそんな良い奴じゃない、目の前で浮かれている鴉天狗を馬鹿にしてやりたい気持ちに駆られてしまう。

 そんな気持ちと葛藤する中どんどん不機嫌そうな声色に変えていく彼女が我慢の限界と言ったところか赤い顔で声を荒げた。

 

 

「もういいです!! 真さんは変わってしまったんですね!? もういいですよ!!」

「あ、ちょっと待て文!!」

 

 呼び止めようと声をかけるも彼女は目の前から消え、その場には白いトイレットペーパーが大量に積もっていた。

 また面倒臭い事になってしまった…………と頭を悩ませる。何故こうも彼女は面倒臭いのか、些細な出来事ですぐに拗ねてしまう。いちいち言葉を選ばなきゃいけないのだから更に面倒事が増える、そう、例えるならちょっとした衝撃で爆発する不発弾だろう。

 

 かと言ってこのままほっといても彼女が更に拗ねるだけ、この四日間で痛い程わかった。

 ソファに座る重たい腰を上げトイレットペーパーを回収した後二階にある彼女の部屋のドアをノックする、それは誰にも変えられない俺の未来だった。

 

 

 

 階段を上る度に”ギシリ”床が鈍い音を立て軋む。一段、二段と彼女に階段を上っている俺を悟られない様にゆっくりと。もしこれでバレてでもしてみろ、数秒後に彼女の怒号が聞こえるぞ。「来ないで下さい!!」って。

 一直線に続く階段が果てしなく遠く感じてしまう。全部で十三階段の筈、なのに俺は一段を一分かけて上っているのだから余計遠く感じる。

 

 そろりそろりと泥棒の様な忍び足でようやく二階についた。達成感やらに浸りたいがまだここは戦場、だがステルスゲームで鍛えられた俺の腕や技術はなめられた物ではない。このまま任務を続行する。

 

 少しずつだが変わっていく景色。文の部屋の前に立ってみるも物凄い威圧感に押されてしまう、この扉の向こう側に機嫌を損ねた鴉天狗が居るのかもしれないのだから。

 早くなっていく鼓動を深呼吸をして落ち着かせてみるが一向にも収まる気配は無い。人という字を手の平に書き飲み込んでみるも緊張は解けず扉の前に立ち尽くすしかなかった。

 

 最早時が解決する術しかなく更に何分も呼吸を整え胸を押さえている、その様子はまるで恋を告げようと緊張する初心な少年そのものだった。だがそれは違う、現実では命を賭けて人食い妖怪が住み着く部屋に突撃しようとする命知らずな少年だ。

 

 意を決し扉をノックする、一回目…………反応無し。二回目…………またも反応無し。三回目、四回目と少し強めにノックするも反応は無い。何故だろうか? 

 

 

「おーい、文いるか? さっきは俺が悪かった。だから出てこいって」

 

 五回目のノックと共に声をかけてみるも相手側は静寂を保つのみ。物音一つしない、まるで部屋の中には誰もいないような。

 そんな考えを頭を横に振って追い払う。まさか…………文に限ってそんな事ある訳がない。そんな”家を出ていった”事なんてあるはずがない。

 

 そうだよある訳がない。彼女はこの家でしかいれないんだから、この家から出ていったら元の野宿生活に戻ってしまうのだから。だが頭の中に思い浮かぶのはあるはずのないifのお話。

 恐る恐ると言った感じに扉を開けてみる、きっと不貞寝してるだけだろう。

 

 

 部屋の中は光を失った丸型蛍光灯に光の少し差し込んだ窓、あまり散らかった様子も無い良く言えば綺麗な、悪く言えば個性の無い小ざっぱりとした部屋。

 隣にある俺の部屋と然程変わらない構造をした部屋室には本当に何も無い、”彼女が俺と会う前と同じ必要最低限の物しか置いてない”八畳半程の部屋。膨らんでもないベットに誰も座っていないワークチェア、広々とした誰もいない部屋が見えた。

 

 頭が真っ白になる。だけど体は勝手に動いて自分の部屋に足を走らせる、数秒後にはクローゼットの中に入った愛用のパーカーを手に取り外を駆け回りながら彼女を血眼になって探す俺がいるのだろう。

 

 だがやっぱり俺の未来予言は彼女の事になると尽く外れてしまうらしくーーーーーーーーーーーーーー俺の部屋の白いベットシーツの上で花柄の付いた青色模様の掛け布団に埋もれながら幸せそうに眠る彼女が居た。

 もう彼女が居た安堵や嬉しさよりも怒りと憎しみが込み上げてしまう。俺がこうも心配してやったのに見事に空振りと来る、スタスタと早足で安らかそうに眠る彼女に近づくと一定のリズムを保った寝息が聞こえてくる。

 

 我慢の限界だ、俺は大きく口から息を吸い込むと肺に溜め込みそっと耳元に顔を近づけると腹に力を入れ大声で怒鳴った。「ああああああああ!!!!!!」と溜め込んだ怒りを全て彼女に吐き出す勢いで。

 言わずもがな、飛び起きた涙目の彼女にグーパンチを貰い扉近くにまで吹っ飛んだのは、別のお話。

 

 

 

     ♠     ▲     ♥     ✿

 

 

「はぁ~お陰さまでまだ耳が痛いですよ………」

「俺は頬が痛いです」

 

 赤く腫れ鈍い痛みがやってくる頬を氷の詰まった袋で冷やし続け痛みを緩和するもやはり痛いものは痛い、そんな俺を睨むような目付きで悪びれた様子も無い目の前の彼女に怒りが溜まる。ストレス性胃腸炎にでもなったらこいつのせいだ。

 

 溜息で怒りを逃がしてやると未だ不貞腐れた彼女が見える。まだ昼の出来事を根に持っているのか、どこか悲しそうな顔をしたような彼女が。

 何故この表情を見ると心が痛むのだろうか、さっきの出来事だってそうだ。彼女がいなくなったらもう俺は命を脅かされる生活なんてしなくていい訳で、俺にとって彼女が家から出ていく事はメリットしかないのに。

 

 彼女と過ごしてから段々と増えていく悩み事、解決する事も出来ずただ降り積もっていくばかりで箒で掃く事も出来ない。唯一わかるのはこの悩みの種が隣に座っている鴉天狗だという事だけ。

 白色のベットに腰掛けこの場が静寂の色に染まっていくそんな中彼女が突然に透き通った綺麗な声色で口を開く。

 

 

「ハロウィン……………やりたかったなぁ」

 

 その言葉は虚空へと消え去る事なく俺の耳へとしっかり入っていった。すくりと音も無く静かに立ち上がり氷の詰まった袋を床に放り投げるとクローゼットの中を漁り始める、そんな俺を見た彼女が疑問半分訝しげ半分が入った声で俺の名を呼ぶが意にも介さずクローゼットを漁り続ける。

 

 左右に何度ハンガーに掛けてある洋服を往復させた事か、左のハンガーから数えて六番目、探していた物は見つかった。

 白のシャツに黒のウェストコート、そしてその上を羽織る様な形をした黒のジャケットの後ろに付いた外側黒の内側赤色の洋服、所謂ドラキュアが着るような衣装だった。

 

 彼女はそれを見るなり輝いた表情に期待を孕ませた声色で言った。「これはなんですか!?」と。それに対し俺は得意げな表情を浮かべながら答える、「ハロウィン衣装だ」って。

 それを聞いた彼女は飛びつく勢いで俺から衣装を奪い取った後部屋から恐るべき速さで出ていった。そんな彼女を見てつくづく思う、”ほんっと単純だなーーーーって”

 

 俺一人になった部屋のベットに寝転ぶと無意識に頬が緩んでしまう。彼女のあの笑顔を見ると嬉しくなってしまう、またも降り積もった悩みに困惑しながらも頬を緩ませ続ける。彼女の匂いが少しだけ付いたベットの上で。

 

 そういえば何で彼女は………………俺の部屋で寝ていたのだろうか?

 

 

 

     ♥     ♠     ▲     ✿

 

 

「真さん!! トリックオアトリートですよ!!」

 

 その言葉に既視感を覚える、だが目の前に立つのは昼と違いトイレットペーパーを体中に包んだ雪男などではなく立派な衣装を着た吸血鬼。今の彼女にいちゃもんを付ける要素なんて無く、素直にその言葉を聞き入れる事にした。

 

 

「それじゃあお菓子あげるから悪戯はしないでくれ」

 

 リビングに戻り予め用意していた板チョコレートを渡そうとする前に俺の手の上からチョコレートは消え去り吸血鬼の手に奪い取られる。

 どうやら彼女はこの世界の甘い食べ物は全般好きらしく、お菓子をタダで貰えるハロウィーンは彼女にとって嬉しい物だと思う。満足そうな顔ですぐにチョコレートを頬張り終わると口の隅にチョコの破片を残しながら口を開く。

 

 

「それでは………トリックオアトリートです!!」

 

 またも覚える既視感、それもついさっきに。試しにもう一度チョコレートを手渡すと光のような速さで食べ終わり一息ついた後壊れたラジカセの如くまた口を開く。

 

 

「じゃあ………トリックオアトリートですよ!!!」

「いい加減にしろよ」

 

 彼女はこの家のチョコレートを食い尽くす気だろうか、それとも天然なのかわからないがこれ以上あげる訳にもいかなかった。金銭的な面でも、夕飯的な面でも。

 そんな俺の気持ちを読み取ったのか目付きを鋭くさせ口元をニヤリと歪ませる彼女。こういう表情を浮かべた彼女は大抵俺への嫌がらせなのだが。

 

 

「ほうほう、お菓子を献上しないと言うことは悪戯を希望するという事ですね、いい覚悟です」

 

 威嚇する様に歯を見せ笑ってみせる彼女。目が赤いのだからこれで八重歯が突き出ていたら本物の吸血鬼と間違えてしまうかもしれない、だけどここで俺が折れてしまったら今日の晩御飯を彼女は作ってはくれないだろう。それは俺にとっても色々と辛い。

 

 彼女と勝負する事に決めた俺は沈黙を突き通す。勝負場所は一階リビングの間、対戦相手は鴉天狗兼吸血鬼。辺りが闘争の雰囲気に染まりきった頃……………ラウンド開始のコングは鳴らされた。

 身を屈め今にも驚くべき速さで俺の手から紙製包装容器に包まれたチョコレートを盗み取ろうとする彼女を見据え俺はチョコレートを見せる様に少し強めに握り締めながら不敵な笑みを浮かべ口を開く。

 

 

「もしこれ以上近づいてみろ………お前の愛しのブラックチョコレート様は粉々に砕け散るぞ」

 

 走り出そうと身を屈めていた体をピタリと止める。それはそうだ、チョコレートを人質に取られたのだから。歯を軋めながら俺を睨みつける彼女、それに俺は臆さず不敵な笑みを保ったまま更に言葉を続ける。

 

 

「そうだ、いい子だ………それじゃあそのまま地面に伏せをしろ、ちょっとでも変な真似してみろこいつがカラーチョコよりも小さなサイズになってゴミになるぞ!!」

「くっ………この卑怯者め!!」

 

 何とでも言え、俺は今までお前のせいでストレスを溜めてきたんだ。この場でストレス解消させて貰うぞ………。

 チョコレートを手にしっかりと掴みながら彼女の元へと一歩一歩近づいていく。さてどんな事をしてもらおうか、鼻からワサビの入ったチューブでも食べてもらおうか?

 

 だがどんな場でも慢心は隙になるのか、状況の有利さに俺は思わずチョコレートを床に落としてしまう。すかさず拾おうとするが彼女がそんな隙を見逃す訳も無く突如前方から吹いた強い風に体制をよろめてしまう。

 

 強く尻餅をつき涙目で顔を上げるがもう床に伏せていた彼女の姿は無く、チョコレートを手にとった彼女が俺を見下ろしながらにどこか怒気の篭った口調で言った。

 

 

「形勢逆転ですね~それじゃあ、悪戯の時間といきましょうか」

 

 冷ややかな目線に思わず体までもが凍りついてしまう。やはりただの人間が人外なんかに喧嘩を売る物ではないな、と十八年間生きてきてようやくわかりましたーーーーーーー。

 

 

 

 




う~ん、やっぱり久々に書いたせいかおかしいですね

それに文字数も少ないし………。
申し訳ございません涙
それでは次回まで!!ドゥワッチ


おまけ

文「がおー食べちゃうぞー」

ってのを書きたかったですが書けませんでした涙

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