鴉天狗達と撮った写真   作:ニア2124

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どうも、ニアです。

なんとか二日に一回投稿出来ました!!
疲れました。
今回からようやく本編、と言った感じですねこの小説は。

それでは今回も!!


十一月四日 気まぐれな彼女に青い海

 

 

ガタンガタン、と一定のリズムを保ち車内が小刻みに揺れる。

 車窓の外から見る景色は緑が多く、都会の様に何台もの車が走ったり高層ビルが立ち並んだりはしていなかった。

 

 どちらかと言うと俺は自然が好きだ、排気ガスを撒き散らし大量の人が道を往復し、様々な娯楽に囲まれた都会も都会でまた違った魅力がある。

 だが田舎は心を休ませてくれる。俺は都会と田舎をこう区別していた、都会は”欲を満たさせてくれる場所”そして田舎は”心を満たさせてくれる場所”ってな。

 

 しかも空気は美味しいし静かだしで至れり尽くせりではないか。都会では体験の出来ない違った場所に俺は惹かれるんだ。

 電車の車内は人が全く少なく、通勤ラッシュ時の午前八時新宿行き電車とはまるで比べ物にならない。ガランとした車内を見回すとまるで俺一人しかいない気分になってしまう。

 

 まぁそんな気分も隣でソワソワしながら慣れない顔持ちで車窓の外を眺めて、はしゃいでいる彼女にぶち壊されるんだが。

 

 

「真さん見てください!! 辺りが真っ暗ですよ真っ暗!!」

「トンネルの中だからだろ、てかはしゃぐなうるさい座ってくれ」

 

 そう言っても彼女が聞き入れてくれる筈もなく、まるで初めて電車に乗ったと言わんばかりのリアクションではしゃぐ彼女を尻目に見て溜息が零れる。

 行くんだったら一人が良かったなぁ、なんて考えるも後の祭り。とりあえず興奮する彼女を落ち着かせないと他の乗客に迷惑だ。

 

 車窓の外を眺める彼女を見て二度目の溜息が零れた。

 

 

 

     ♥     ♠     ▲     ✿

 

 

 十一月の四日、今日日も快晴なり。

 

 やはり雨の後は快晴で相場は決まっているのか今日も見事な快晴だった。

 こんないいお天気だ、二度寝を決め込まなければ太陽に申し訳ない。三色のカーテンを開けて窓近くに枕を置くとおもむろに目を瞑り暖かい日差しに包まれながら微睡む。

 

 ああ………暖かいな、今日は昼間近くまで惰眠を貪ってやる。だけどそんな事を例の如く彼女が許してくれない訳らしく。

 

 

「真さん真さん!!!」

 

 勢いよくドアを開けた彼女によって邪魔されてしまう。

 

 

「ほら真さん真さん起きてください真さん!!」

 

 何度俺の名を呼ぶのだろうか、胸ぐらを掴まれ上下に振られ続けながら惰眠を貪る事なんて当然の事ながら出来なく、起きる事を余儀なくされてしまった。

 

 上体だけ起こし欠伸をしながら右目だけを擦っていると左目から興奮した顔持ちの彼女が見える。

 紺色のホットパンツに少し透明のシースルーを上に着た彼女、男の朝に起こる生理現象なのか彼女のせいなのかはわからないが下半身を掛け布団から出せずにいた。

 

 そんな俺を不思議な目で見る彼女だがすぐにそんなものはどうでもいい、と思ったのか更に興奮した顔つきで、輝いた目でじりじりと距離を詰めていく。

 

 一体どうしたのだろうか、彼女の気迫に少し押されたのか下半身を布団で隠しながら片手に持ち、思わず後ずさりをして距離を離してしまう。それが気に入らなかったのか”ムッと”頬を膨らませ彼女はつまらなさそうにベットの中央に腰掛ける。

 

 ベットの隅っこ、という安全地帯を確保した俺は一先ず生理現象をなんとかしなければ、と思いふくらはぎを強くつまむ。その痛みに顔を歪ませるがそれも一瞬、心身共に落ち着かせぎこちない口調で彼女に問うた。

 

 

「一体何の騒ぎだよ文………いきなり俺の部屋に突入しやがって」

 

 ただ俺は疑問を口にしただけだったが彼女はそれが嬉しいらしく表情を明るくさせると小さな声で答える。

 

 

「ちょっとお願いがあるのですが………」

「お願い?」

 

 彼女の言葉を聞いて俺は苦虫を噛み締めた様な表情を浮かべた。彼女のお願いに今までいい思いをした覚えが無い、ある時は大量の洋服を買わされ、またある時はデパートの電化製品売り場で見世物にされた。

 

 言いづらそうに顔を俺から逸らし頬を薄赤く染める。まるで紅化粧の様な、初対面の男が見たら心を動かされる程の表情。だが俺は生憎初対面では無く同棲までしている、その彼女と親しい俺から言わせてもらおう。俺にとっては心を動かされるどころか恐怖すら覚えるとな。

 

 嫌な予感しかしない、耳を塞ぎ………いや耳を削ぎ落としてまで彼女の次の言葉を聞きたくない。だが聞かざるを得ない。なんとも理不尽な関係に小さく舌を打つ。

 少しでも嫌がらせを、と思い彼女へと布団を蹴飛ばす。花柄の美しい掛け布団が彼女に当たると同時に文は”わぶ”などと可愛らしい反応をする。大きな布団に覆われた彼女はベットの外へと投げ捨てると舞い散った埃に咳を零す。

 

 三度咳をした後苦しそうに口を開く。

 

 

「ちょっと何するんですか」

 

 負の感情の篭った目線、所謂ジト目を送る彼女に俺は沈黙を返す。ここで「嫌がらせ」だとか「何となく」だとか下手に言葉を零して言い争いになるのは真っ平御免だ。返ってこない言葉に溜息を零し「まぁいいですが」とその場を濁す様に咳払いを一つする。

 

 

「その代わりにお願いを聞いてもらいますからね」

 

 やはりふりだしに戻るか。言葉を続けようとする彼女を止める為に手元にあった枕を顔面に向かって投げ込むも前方から吹いた強い風に勢いを失い呆気なくも撃墜されてしまう。

 手を伸ばし彼女の一歩手前に落ちた枕を文は抱き抱えると可愛らしくちょこんと顎を乗っけながら言った。

 

 

「海と言う場所に行きましょう真さん」

 

 そんな綺麗な笑顔を浮かべる彼女に対して俺は頬を引きつらせた苦笑いを浮かべた。

 

 

 

     ♥     ✿     ♠     ▲

 

 

「そして今に至る、という訳か」

「………?何が今に至るんです真さん?」

 

 可愛げに顔を少し傾けてわからない、と言った表情をする。小さく小刻みに揺れる車内と同時にその艶やかな絹糸にも似た綺麗な黒髪が靡く。

 「なんでもない」と在り来りな返し言葉を言葉にし、目線を車窓へと戻す。相も変わらず、と言ったところか先程と変わらない眺めが続いていた。

 

 普通の電車の様な横に長い座席では無く新幹線の様な対する形に作られた座席。二人して外を眺めるが残念な事にトンネルの中、暗闇が続く長い長い道を彼女は期待の篭った目で窓に手を掛けながら見ていた。

 

 きっと彼女はこのトンネルが終わった先に何が見えるのか、それが楽しみで楽しみで堪らないのだろう。証拠に手元にはがっちり握られた古ぼけた写真機がある、あからさまな様子に思わず柔らかい笑みが零れてしまう。

 

 

「まもなく~幻駅(まぼろえき)、幻駅でございます~ご降車の方々は忘れ物の無い様に~」

 

 車内に響くアナウンス。俺達の降りる場所でもあり、今回の目的地でもある。

 俺の住んでいる街、荘橋町から五駅進んだ後乗り換えを一回。そしてそこから更に六駅進んだ先にある自然が多く、言ってしまえば田舎だ。

 

 やはり道には絶対終わりがあるのか、無限に続く暗いトンネルもアナウンスが終わると共にようやく終わりが見えてくる。唇を嬉しそうに噛み締める彼女を一目見たあと車窓を眺める。

 外は未だトンネルの中。それも終わりを告げた。

 

 

 トンネルを抜けた先、車窓の外には綺麗な緑と広々とした海が見える。

 

 輝く太陽が海と緑を照らし出し、道端には追いかけっこを始める子供達に低い背をした一軒家が立ち並ぶ。そんな光景を俺と彼女は眺めていた。

 写真を撮る余裕も無いのか、写真機を胸元に構え目を見開いた彼女が尻目に見えた。前、と言っても数時間程前だが幻想郷と言う場所には海が無いと聞いた。あるのは底の浅い川と、湖と、雲に届く様に大きな山だと。

 

 そんな彼女が海を見たのは初めてなのか、太陽の光が反射し散り眩い光を返す海の存在に目を奪われていた。

 

 電車が段々と減速していく事に気づき黒色に白の英語の柄が書かれた肩掛けバックを手に持つ。未だ海に目を奪われている彼女を我に返す為、バックを右肩に掛け立ち上がった後彼女の脳天を右手で軽く叩く。

 

 

「ほら、もうすぐ付くぞ文」

 

 頭を叩くと肩をビクリと震わせ俺の方へと顔を動かす。そんな彼女に右手をヒラヒラと小さく振って見せ、電車が駅に付いたのか停車する。

 まだ俺の方に顔を向けポカンとする彼女を見飽き、腕を掴んで無理矢理立たせる。やっと我に帰ったのか「ちょ、ちょっと待って」などと口にするが華麗に無視し駅員に切符を渡し降車ボタンを押すとドアが開いた。

 

 駅のホームに足を付けると硬いコンクリートの地面と少し寂れた”幻駅”、という看板が俺達二人をお出迎えする。日差しを凌げる屋根も無いホームに残った二人を残して出発する電車、そこで文の腕から手を離す。

 

 

「それじゃあ海、行くんだろ? さっさと行こうぜ」

 

 そう言い先に進む俺の後を彼女は無言で追いかけた。

 

 

 顔を赤く染め掴まれた腕に小さく口づけをしながら。

 

 

 

     ☛     ☚     ☟     ☝

 

 

 塗装されたコンクリート、その中央には長く書かれた白線、辺りには何も無く定食屋やコンビニと言った便利な建物は一つも立っていなかった。

 道の外れには田んぼや屋根の低い一軒家。車などは全く通らず地平線の向こう側まで続く様に長い一本道の中央を人間こと天田 真、鴉天狗こと射命丸 文は同じ歩調で離れる事なく歩いていた。

 

 やはり昼時で尚且つ綺麗に輝く太陽が出ているにも関わらず、吹かれる風は妙に肌寒かった。

 彼が手に持つパーカーを着るほどの寒さでは無いが、半袖では流石に寒いのか風が吹く度体を小さく震わせる。

 

 肩を竦めながら彼女の短い丈をしたホットパンツと同じ色をしたジーパンのポケットに両手を突っ込むが底が浅く、手首までは入らなく防寒の意味はあまり無かった。

 

 吹いた風に一度小さく体を震わせ、手に持つパーカーを着ようか着まいか悩み、何とはなしに彼女を見ると風に全く吹かれていない姿が見える、少し透けたシースルーの上に可愛らしい青色のパーカーが羽織られた彼女が。

 

 ”ドキリ”と彼の鼓動が少し早まる。だがそれもほんの一瞬で、顔を長く続く地平線の向こうへ向けると会話を試みる。

 

 

「またその能力使ってるのかよ」

 

 半ば呆れ、半ば羨ましいと言った表情でそう言うと彼女は得意げな顔で。

 

 

「ええ、まぁこのくらいの風だったら別に寒くもなんでもないですけど」

 

 指をパチン、と鳴らすと彼女のセミロングヘアーが風に靡かれる。だが冷風を平気な顔で受け止めている彼女を見て彼から感嘆にも似た深い息が零れた。

 その様子を悪戯な笑みで、小さな子供がその友達に側転を見せ得意げに笑う様な笑みを口元に浮かべる。

 

 このまま黙っていればその純粋な感情で彼の心境は変わる事は無かったと言うのに、諺には”天狗になる”と言う諺がある。それを実践するかの様に彼女の口から自慢話が始まった。

 

 

「まぁこれくらい余裕ですがね~やっぱり鴉天狗は貧弱な人間とは違うんですよ、このくらいの風、椛でも平気ですよ~」

 

 人格が変わったかと錯覚する程のお喋り具合に彼の額に一本の青色の血管が浮かび上がる。そんなものはお構いなしに、と言った所か減らず口を叩き続ける彼女。

 彼は肩掛けバックのホックを外すと彼女の自慢話をBGMにバックを漁り、中から薄状の”meiji”と書かれた板チョコを出す。

 

 それを彼女の顔の前に上下に振り、誘う様に食欲を刺激させる。目前のチョコレートの存在に気付いたのか彼が上にチョコを上げたら彼女の目線までも上に上がり、下に下げたら同じく目線も下に下がる。

 

 気付けば彼女の自慢話も終わり。四、五回上下に振った後彼は満足したのか一度頷き、まるで野球ボールを投げるピッチャーの様にチョコを手に掴み大きく振りかぶる。

 

 

「ほら投げるぞ…………取ってこい!!」

 

 空に響いた声と共に空高く放り投げられたチョコレートを全速力で取りに行った鴉天狗が一匹、その場では見られたと言う。

 

 

 

 

 なんて事をして時間は刻々と刻まれていく。

 

 段々と聞こえてくる波のさざめき。聞きなれないその音に彼女は期待が篭った目線を真に送っていた。

 その目線を手で防御していると鼻についたのは磯と潮風の匂い、もう我慢出来ないと言わんばかりに彼女は足を踏み出し大きく飛んだ。

 

 助走も無しに何メートルも先に、何メートルも上に飛んだ。幸いに辺りに人はいなく、太陽の光に当たった鴉天狗が見える。

 ”やれやれ”と言った溜息を吐き彼女の後を彼もが走って追いかける。実際に彼も久しぶりに嗅いだこの匂いに期待を隠せず、一刻も早く見たいという気持ちに駆られてしまう。

 

 久々に走ったせいか、太ももが少し痛むがそれを無視し大きな歩幅で彼女の後を追う。走る反動で肩掛けバックが大きく揺れ、ずり落ちそうになったら走りながら肩に戻す。

 足を進める事をやめない。十字路を右に曲がった先にそれはあった。

 

 

 広々と広がる太陽に照らされた大きな水たまり、”海”が見つかる。

 

 遠目に見ると木で出来たボロボロの階段に彼女は立っていた。大きく手を横に振りながら。

 それを見て無意識なのか、それとも故意となのかわからないが彼の顔が綻ぶ。全速力でその場まで走る、汗が頬を伝うが関係なしに地を思いっきり蹴り続ける。

 

 階段まで凡そ数十メートルまで迫った辺りに彼女は階段から笑いながら階段を駆け下りる。風鈴の様な涼しい笑い声に彼の火照った体が涼しんだ。

 砂浜をはしゃぐ様に駆け回る彼女を見て彼の表情が更に嬉しそうに綻ぶ。

 

 階段を駆け下りた彼女に対し、彼は階段を使わずそのまま飛んだ。

 

 空に、海に響き渡る程の大きな声を上げ飛んだ。足場を失った彼はそのまま重力に従い地面へと落下していく。

 柔らかい砂浜に足を付け、衝撃を受け流す様に一回転する。

 

 息の切れたそんな彼を覗き込む彼女、熱い砂浜に身を転ばせた彼を笑い、風に靡く髪を片手で押さえながら彼女は手を伸ばした。

 

 

「無茶しすぎですよ、人間の癖に」

 

 嬉しそうな彼女のその言葉に声を上げ笑いながら彼は答えた。

 

 

「人間を馬鹿にするなよ…………天狗の癖に」

 

 彼女の伸ばされた手を力強く掴みながら。

 

 

 

 

 

 




主人公羨ましい………。

ま、まぁ別にいいし一人でする旅も楽しいし、女いなくても楽しいし、男だけでも楽しいし!!

はぁ………。
私だって可愛い女の子とこんな事したいですよ。
だけど機会が……ねぇ?

それでは次回まで涙ドゥワッチ

(えっとえっと………縄どこやったっけな、人がぶら下がってもちぎれない奴)
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