諸君、私は失敗した。   作:メガトンコイン

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 報告書は報告書0x番などと記載することにしました。試験的に日誌を入れてみます。


第n+1回目

「ええ、はい、はい。そちらの学園の問題はヴァルキューレ警察学校の管轄では……?」

 

 前略、仕事に悩殺されている。

 

 眼の前には新たに割り振られた仕事。今日やらなくてはならないものから、長期的なものまで、書類がうず高く積もっている。

 

「いえ、ですから、それは我々の管轄外でして……はい……いや、ですからね……」

 

 電話越しの相手がまくし立てる言葉はすでに右の耳から左の耳へと通り抜けている。曖昧な相槌を打ちながら、私の目は否応なく眼前の書類の山に引き戻される。

 

 書類、書類、そしてまた書類だ。

 

 短期的に対処すべき生徒会予算の監査、教室棟設備修繕依頼、謎の地下室発見報告、そして長期的課題である他校との合同安全対策プロジェクト……果てしなく続く案件の数々が、机上に積み重なる紙の塔となって、私をじっと見つめている。書類が意思を持っているのならば、きっと私を嘲笑っているに違いない。

 

 ため息を殺しつつ、私はなんとか通話を終えようと試みる。

 

「はい、その件については連邦生徒会に掛け合っておきますから、とりあえず書面でご提出を……ええ、お願いします。では、失礼します」

 

 受話器を置き、深いため息をついた。部屋の隅に目をやると、時計が無情にも深夜の0時を示している。デスクライトだけが煌々と書類を照らし出し、部屋はそれ以外のすべてが薄暗い影に包まれていた。

 

 私の視線が机の端に積まれた例の「報告書」に移る。あの奇妙なループと絶望の記録。数え切れないほど繰り返された失敗の痕跡が記された報告書は、まるで私のもう一つの影のように、いつも視界の隅でじっと佇んでいる。

 

 これが本当に私自身が書いたものだとすれば、私はすでに精神的限界をとっくに超えているのだろう。いや、実際、今この瞬間も限界の一歩手前に立っているような気がしてならない。

 

「考えすぎだ……仕事に集中しろ」

 

 そう小さく自分に言い聞かせて、私はふたたび書類に目を戻した。つい最近まで研究者をしていて、突然なにかの拍子に転移をしたと思ったら教鞭を取る存在と言われ。やっていることは教育ではなく書類仕事である。

 

 これではポスドク時代よりも悲惨ではないか。

 

 しかも、住人ほぼ全員が未成年や獣人、そして銃を持ち歩いていると来た。しかも銃で撃たれても”痛い”で済むという脅威の耐久。もちろん私に当たったら”遺体”で済むだろう。

 

「それにしても、私の人生はどうしてこうも皮肉に満ちているのだろうか……」

 

 独り言をつぶやきながら、私は冷め切ったコーヒーカップを手に取った。濃厚な苦味だけが舌の上に広がり、頭が覚醒するどころか、さらに憂鬱さを増しただけだった。

 

 この世界に来て以来、私が経験した現実は、皮肉にも私がこれまで理論物理学者として追求してきた「観測による現実の構築」や「多次元解釈」と似通っていた。いや、それ以上に混沌としたものであり、私自身の正気すら時折疑わざるを得ないほどだ。

 

 いや、最早正気ではないのかもしれない。報告書に夢中になっている間に来ていた七神リン、そしてその後の辞令と銃撃戦。発砲しただけでニュースになる日本と違い、こちらでは毎日が銃撃戦。自販機で手榴弾が6000円、銃弾120発が1500円で売られている。

 

 それらの常識外れな物があっても、自分の中では、そういうものなのだなという感想しか生まれなかった。

 

 或いは、最初に見た報告書というものが驚きのピークで、それ以降は右肩下がりになっているかのどちらかだ。

 

 そんなことを考えながらちらっと最早サブディスプレイと化していたタブレットに目を向ける。

 

「先生! もう休んでください! 休むことも仕事の内ですよ!」

 

「ああ、分かっているさ。一段落したら休憩を入れる」

 

「休憩じゃなくて、寝てください! 先生、眠りが浅すぎます!」

 

「分かった分かった……」

 

 個人的に報告書の次に驚いたのはこのタブレットである。シッテムの箱と呼ばれたそれは今まさに失踪している連邦生徒会長の残したもので、私しか使えないらしい。見た目はipadに酷似しているが、OSが明らかに異なる。そして最も大きな差異は今目の前で休めとギャーギャー騒いでいるこのアドバイザーだ。

 

 連邦生徒会の権限を手玉に取るほどの、本人曰く”スーパー高性能”とのことだったので書類仕事のアシストくらいはできるかと思っていたが、結果は予想を超えていた。書類をデータで流してみると、見た目だけであろうが、なんとタブレット内で手書きし始めたのだ。書類整理は元の世界のAIでも未だ完璧にはこなせない領域であったため、あまり落胆の気持ちはなかった。しかし、絵面が少々趣味が悪い。児童労働させているようでむず痒くなる気持ちがあり、今ではスクリーンセーバーくらいの扱いに収まっている。

 

 思えばシッテムの箱のパスワードを知っていたのも変だ。何だあのパスワードは。まるで私が災いを望んでいるような言い分ではないか。よく成長には痛みが生じるとは言うが、それが身を滅ぼしてはならない。

 


 

 不条理で引っかかる部分もあるが、今先に片付けなければいけないのはこの書類の山である。研究など、自分が興味がある分野に関しては梃子でも動かないほどに集中していたが、書類仕事となると気乗りしない。そのおかげで適度に気が散るので風呂や食事はシャーレ部室の下にあるエンジェル24を利用することでかろうじて出来ている。もしメンバーカードがあればゴールドを超えてプラチナ会員であろう。

 

 ヒュウと息を吐き、送られてきたメールを確認しながらディスプレイに反射した自分の顔を見る。

 

 ボサボサの黒髪に疲れが年輪のように刻まれた隈のある目。それに取ってつけたような伊達の丸メガネ。助手がいた時のフサフサはまったくなく、これではまるでトイレのモップだ。伊達メガネに至っては、何故かけるようになったのかも忘れてしまった。

 

 変わり果てた自分の姿を自重しつつ、今日終わらせなければいけない書類の最終チェックを終わらせ、仕事を取り敢えず終わらせる。

 

 Enterキーを押したその瞬間、静寂が一瞬だけ部屋を包んだ。電源ランプの淡い輝きとともに、書類の山は物理的には片付けられたものの、心の中に積もる重荷は依然として消えずにあった。

 

 報告書によると、私の双肩に世界の命運がかかっているという。ふざけた妄想と一蹴することはできるが、どうにもあれが夢想の産物とは思えないのだ。

 

「先生、お仕事は終了しましたよ? もう寝ませんか?」

 

「すまない、まだ気になることがある。先にスリープモードに入ってくれたまえ」

 

 ピーピー何かを言っているのを無視し、電源ボタンを押下することで強制的に一人になる。そうして机の端からあのレポート束を掴み取ると、ペラペラと捲り始めた。

 

「書式、句読点、皮肉めいた文言……文書としては失格だが、この文章は私のものと似通っている」

 

 何度見ても自分が書いたもののように思える。指先が報告書の端をかすめると、昔の記憶が不意に蘇る。かつて、理論物理学に没頭していた頃、未知なる現象の謎に挑んでいた自分──その情熱と絶望が、この書類の隅々に刻まれているように感じられる。

 

「これが……本当に私の書いたものなのだろうか」

 

 疑念が胸を締め付ける。失敗の記録か、あるいは虚構の歴史か。どちらにしても、報告書はただの事務処理の産物ではなく、私の存在そのものを映し出す鏡のようであった。重ね書かれた言葉の一つ一つが、かつての自分の苦悩や希望、そして未来への不安を物語っているように感じられた。

 

 ペラペラと捲られるレポートのページに、いつの間にか手書きの修正メモや、挿絵のような落書きが紛れ込んでいるのを見つけた。無数の赤インクの跡は、かつての熱意か、あるいは絶望の叫びか──どちらともつかぬ感情を、私に突きつけるようだった。

 

「これが……本当に私の記録だというのなら、私はいったい何を見失ってしまったんだ」

 

 そう呟きながら、指先で紙をなぞる。それらは、一見無機質な事務処理の結果に過ぎないはずなのに、どこかで生命の鼓動を感じさせる。まるで、過ぎ去った日々の記憶と、まだ見ぬ未来の兆しが、紙面を通して語りかけてくるかのようだ。

 

「……私も行動を起こさねばな」

 

 そう呟いた瞬間、机上の書類の山がただの紙の束ではなく、己の過去と未来の象徴であるかのように思えた。夜の静寂の中、デスクライトが投げる淡い光が、書類の隅々にまで影を落とす。かつて情熱に燃えた理論物理学者としての日々と、今はただ機械的な作業に縛られる教師としての現実。どちらも捨て去ることはできず、両者が奇妙な形で交差している。

 

「まずは今対処しなくて良いものは無視するか連邦生徒会に投げる。あのスナックを消費しているだけのちんちくりんでもこの程度の書類はできるだろう」

 

 まずはタスクの分類からだ。長期的なプロジェクトは成果を小出しにすることでやってる風に見せる。犬の散歩などの雑用はルーチンワークの中に組み込む。そして……

 

「救援要請は最優先……」

 

 その言葉を吐き出した瞬間、視界の端に救援要請の手紙が目に入った。アビドス高等学校からの依頼。学校が地域の暴力集団に追い詰められているという。

 

 本来ならヴァルキューレ警察学校の管轄だが、なぜ私のところに……?

 

 手紙を再度手に取り、奥空アヤネという生徒の切実な願いを読み返す。この世界の常識では、生徒が銃を持ち歩き、手榴弾が自販機で売られている。それでもなお「追い詰められている」という状況は、並大抵のものではないだろう。

 

「まあ、理由はどうあれ、対応せねばなるまい」

 

 私は立ち上がり、窓の外を見やる。キャンパスの夜景が広がっている。星明かりの下、この世界の非合理性と自分の置かれた状況を改めて実感する。

 

 かつて理論物理学者だった自分が、なぜ異世界とも思える場所で教師をしているのか。しかも教鞭を執るどころか、書類仕事に追われる日々。それでいて、私の双肩には世界の命運がかかっているらしい。

 

「アビドス高等学校か……」

 

 地図を広げ、位置を確認する。そこはブラックマーケットの一角から近い、かつては栄えていたが今は廃墟と化した銀行が点在するエリアにあった。

 

「救援要請の内容を見る限り、単なる暴力団絡みのトラブルとは思えないな」

 

 シッテムの箱のパワーを借りれば、情報収集はより捗るだろう。電源を入れると、すぐさま不満げな声が響く。

 

「もう! 先生! さっきスリープにしておいて、今度は仕事再開ですか? 体が持ちませんよ!」

 

「すまんな。今回は重要な案件だ。アビドス高等学校について何か情報はあるか?」

 

「アビドス? ああ、あの廃校寸前の……」

 

 シッテムの箱が情報を表示し始める。アビドス高等学校は創立百年以上の歴史を持つ名門校だったが、ある事件をきっかけに徐々に凋落。現在は生徒数も激減し、校舎の一部は使用されておらず、財政も危機的状況にあるという。

 

「なるほど……そんな状況下で暴力集団に狙われているとすれば……」

 

 報告書の一節が頭をよぎる。この世界での出来事は、単なる偶然ではないのかもしれない。すべてが何かの試練であり、私がどう対応するかが試されているのかもしれない。

 

「先生、どうしますか? ヴァルキューレに転送するべきケースでは?」

 

「いや、直接会ってみよう。明後日、アビドス高等学校を訪問する。物資などは状況を見てから判断する」

 

 タブレットの抗議の声を背に、私は机の引き出しから取り出した小さな拳銃(ベレッタM9A1)を確認した。この世界では、こんな道具も必要になるのだろう。

 

「二年前にとれなかった研究費の申請書よりは、少しはましな仕事かもしれんな」

 

 自嘲気味に笑いながら、私は明日の訪問に備えて必要な資料をまとめ始めた。窓の外では、夜明け前の暗い空に、かすかに朝の気配が混ざり始めていた。

 

 この世界で私が果たすべき役割は何なのか。報告書の謎は何を意味するのか。アビドス高等学校の危機と、それはどう関連しているのか。

 

 答えは、おそらく目の前の書類の山の中ではなく、現場にこそあるだろう。

 

「さて、準備だ」

 

 私はついに腰を上げ、明日への備えを始めた。この世界の不条理と向き合いながらも、物理学者としての論理的思考は失っていない。それが、この狂った世界で私が持つ唯一の武器かもしれなかった。

 


先生開闢日誌-01

 

 今まで自分の行動を逐一記録した試しがなかったため、このような日誌を作成した。自分で書いていて思うが、自分に無頓着すぎた。

 

 これはシッテムの箱に記録させている電子データなので、不要だとアロナが判断すればそのテキストは消去される。このように。

 

 これが次の者へのチャートになればいいが。

 

──記録開始

 4月1日。気温24度、湿度45%。晴れ。

 

 7時25分:起床。睡眠時間、4時間20分。

 

 7時40分:朝食を作り始める。メニューはほうれん草ともやしのナムル、白飯200g、味噌汁。

 注釈[1]:要るのか?

 注釈[2]:要ります!

 

 8時00分:化粧をして髪型のセットをする。隈を消すことを忘れずに。

 注釈[3]:SNSがある以上ブランディングは重要だ。清潔感を忘れず、好印象を持たれるように。見た目は説得力に直結する。JKは敏感なのだ。

 

 9時10分、キヴォトス広域都市鉄道Tラインに乗りアビドス中央線の最寄りまで向かう。

 

 11時30分:アビドス中央線でアビドスアクアリウムまで向かう。

 

 14時30分:連邦生徒会に掴まされた地図データが10年前であることが判明。これではただの砂漠のフィールドワークではないか。

 

 16時20分:せっかくなので、砂漠のサンプルを採取してバッグに放り込む。肉眼では主成分は石英に見える。これでなにかできるかもしれない。奇妙なところは、表面の組成は完全に砂砂漠であるが、少しスコップで掘ってみると土砂漠の特性を示している。砂漠化とはこのように進行しただろうか?

 

 18時40分:校舎に着いてから食べようと思っていたチキンを今食べることになるとは。無事にシャーレに帰れたら情報講習を行うしかないだろう。

 

 18時50分:チキンのアルミ箔で簡易的なアンテナを構築したが効果なし、以前圏外。シッテムの箱は何故か充電いらずなのでライト代わりにしている。気温が下がってきた。まずい。

 

 19時15分:気温急降下。砂漠の日暮れは想像以上に厳しい。体温維持のため砂に浅い穴を掘り、風よけとする。

 

 19時40分:シッテムの箱からアロナが「先生! 夜の砂漠は危険ですよ!」と警告。同時に電波が一瞬だけ回復し、GPSの断片的な情報を取得。どうやら本校舎まであと3.4kmだとのことだ。

 注釈[4]:この世界の地図データは驚くほど不正確だ。しかし考えてみれば、学生たちが銃を持ち歩く世界で正確な測量が行われるとは考えにくい。

 

 20時05分:移動開始。星を頼りに北東へ向かう。理論物理学者になる前に天文学に傾倒していたことが役立った。助手には「役立たない知識ばかり」と言われていたが。

 

 21時20分:予想外の砂丘地帯に遭遇。GPSデータがほぼ役に立たず。過去のアビドス校舎の位置と現在の砂の堆積を照合すると、かなりの地形変化が起きている。

 注釈[5]:砂漠化の進行速度が異常だ。理論上ありえない速さだが、この世界では普通なのかもしれない。

 

 22時45分:水分が残り500mlになる。消費ペースを抑える必要がある。夜間の移動は危険だが、日中の灼熱よりはマシだ。

 

 23時30分:シッテムの箱が突然警告。「先生! 前方200mに生体反応あり! 人間ではないです!」砂に潜む何かを回避するため迂回。

 注釈[6]:この世界の砂漠生物について事前調査が不十分だった。研究者失格だな。

 

 0時00分:就寝前の記録。今日一日の収穫は乏しいが、明日はアビドス高校への接触方法を見つけなければならない。シッテムの箱のバッテリーは依然として100%を維持。この不思議な機械の仕組みがわかれば物理学会は湧くだろうに。

 

 4月2日。気温6度、湿度20%。快晴。

 

 5時45分:日の出とともに起床。残り水分300ml。朝食はエネルギーバー1本。

 

 6時20分:シッテムの箱で現在位置確認。本校舎予定地点まで約700m。

 

 7時40分:予定地点到着。しかし目の前にあるのは砂に半分埋もれた建物の残骸のみ。アビドス高校本校舎は完全に砂に飲み込まれている。

 注釈[7]:これほどまでに状況が悪化しているとは。奥空アヤネの救援要請は一体どこから送られたのか?

 

 8時15分:シッテムの箱から突然アロナの声。「先生! 緊急通信です! アビドス自治区内の別館からの信号を検出! 距離約5km西方向です!」

 

 8時30分:目的地変更。西へ向かう。日差しが強まり始め、体力消耗が激しい。

 

 9時45分:残り水分100ml。喉の渇きが限界に近づく。ポスドク時代の徹夜研究よりもきついな。

 

 10時50分:水分切れ。体力急速に低下。

 

 12時15分:シッテムの箱の表示によると別館まであと2km。しかし歩行速度が大幅に低下。

 注釈[8]:連邦生徒会のブリーフィングには明確な欠陥があった。帰ったら七神に報告書の書き方を教えてやる。

 

 14時30分:日陰を求めて小さな岩陰で休憩。体温調節が困難になってきた。脱水症状の兆候あり。

 

 15時45分:再び移動開始。視界がぼやけ始める。

 

 17時20分:足がもつれ、転倒。立ち上がることが困難に。シッテムの箱によれば別館まであと800m。

 

 18時40分:這うようにして前進。日が沈み始め、気温が急降下。

 注釈[8]:連邦生徒会の地図が古いだけでなく、砂漠化が予想以上に進行している。七神に説教したい。

 

 19時30分:小さな砂丘の陰で風を避けながら仮眠を取ることに決定。体温維持のため、持参した上着全てを重ね着。研究費申請書を持ってくれば焚き火の足しになったのに。

 

 21時45分:意識が朦朧とし始める。シッテムの箱からアロナの必死の呼びかけが聞こえるが、返事する力もない。

 

 23時10分:シッテムの箱が何らかの緊急信号を発信している様子。──”先生!救援要請を送信しています!どうか持ちこたえてください!”

 

 注釈[9]:この状況で救援が来るとは思えないが、希望は捨てない。研究者として最後まで観察眼を失うまい。

 

 4月3日。気温不明、砂漠の夜。

 

 2時30分:遠くに光を確認。幻覚か現実か判断できない。

 

 3時45分:近づいてくる足音。シッテムの箱が鳴動。──”先生!アビドスの生徒たちです!救援です!”

 

 4時20分:意識が途切れ途切れになる。誰かに抱えられている感覚。

 

 5時15分:完全に意識が遠のく。理論物理学者として現実性の観測による謎を解明しようとしていた自分が、異世界の砂漠で力尽きるとは。皮肉な結末だ。

 最後に見た夜明け前の空は、不思議なほど美しかった。

助手よ、私が残した未完の研究を引き継いでくれ。そして、もう少し実用的な方向へ修正してくれたまえ。

 

 5時30分:意識喪失。

──記録終了




 科学者たるもの、フィールドワークは必須。

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