静寂に連れられた白兎はオラリオへ行く。   作:如月悠

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まえがき

最近、スランプどころかネタが思いつきすぎて、投稿が早くなってる気がする。


消せぬ思い(せいじゃく)

「べェェェェェェェェェるゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」

 

「あ、オワタ」

 

修羅、これは修羅だ。まあ、眠れる黒龍、いや眠れる炎龍を起こしたか?うーん。わかんない

 

「秘技・脱兎」

 

「逃すとお思いで?」

 

「オラ、逃げんなよ」

 

「輝夜さん!?ライラさん!?離して──」

 

まあ、逃げようと試み、持ち前の速さ活かして逃げようと思ったが、ドア手前で捕まった。

 

「あ、アストレアさま!!」

 

そうだ、僕には慈悲深くて綺麗なアストレア様がいるんだ!アストレア様なら……!

 

「ごめんなさい、べル。1回怒られてちょうだい?メンタルケアはするけれど、怒っているの私も。」

 

「アストレア様ぁぁぁぁ!!」

 

「ベル?ドコニニゲルノ?」

 

「あ、アリーゼさん!話せば──」

 

「問・答・無・用!!」

 

「助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ドアの前から引きずられ、ぽつんと正座させられ、みなの視線が僕に向き、とても怖いものだ。

 

「コホン……はぁ……なんで逃げたのよ。アーディから。アーディすごい泣きそうだったわ!まるでオラリオに来たばかりのリオンのようにね!!」

 

「「ありーぜぇ!?」」

 

2人にダメージが入る。それもクリティカルだった。

 

「……怖くて…わかんなくなって……もう、なんだか、頭が混乱して…………」

 

「……その気持ちは分かるわ。だって混乱するもの、いきなり2人にさせられたと思ったら、アーディが事実をほんとに口にして泣かせるし」

 

「うぐっ……」

 

「ほんと……のこと……?」

 

今にも泣きそうになるベル。まだ生きていると、どこかでひょっこり現れると、そう思っていたべルの理想を打ち壊したのはアリーゼだった。

 

「あー……」

 

「馬鹿団長め。」

 

ペシンと頭を叩く輝夜。

 

「痛いわ!輝夜!だって仕方ないじゃない!」

 

「言いようがあるだろう馬鹿団長。」

 

「そうだぜ〜?アリーゼ、兎がなくぞ?」

 

「あら!大変ね!べル、私の胸に飛び込んでいいわ!」

 

手を開き、おいでというように、べルの方をむく。

 

「えっと……ごめん、なさい?」

 

「がーん!?しっく!」

 

見事に断られ、アリーゼは崩れ落ちる。

 

「トドメ刺してやんなよ……。」

 

「す、すみません!?」

 

「いい、これは放置でいい。」

 

「輝夜〜聞こえてるわよ?」

 

みなが呆れ顔でアリーゼを見ている中、輝夜が毒を吐き、アリーゼが苦い顔をして復活する。

 

「はぁ……べル」

 

そして、べルの方に向き直る。

 

「アンタが辛い思いをしているのも知ってる。べル、アンタは自責の念が強すぎる。」

 

「じ、じせき?」

 

「行動や判断が原因で起きた失敗や過ちに対し、自分を責める後悔や反省の気持ちを抱くことです。」

 

「な、なるほど」

 

難しいことを言うアリーゼについていけないべルだが、リューが解説してくれた。

 

「アルフィアを失ったのも、自分のせい……そう思っているでしょ。【暴食】ザルドの時も。」

 

「─────────」

 

「アンタはもう少し人を頼りなさい。」

 

「……………はぃ…。」

 

 

いつからだろう。人を、いや大人に頼らなくなったのは。いつからみんなに遠慮するようになったのは。だから、同年代と話す時は素でいられた。

 

ずっと前。お義母さんに言われたから?

 

 

──全て、1人でできるようになれ、家事も野営も農作も。私がいる限りは教えてやる。

 

 

それからは、野営のやり方、実践をやらされた。それは三日、少し遠い所に行き生き延びる。ということ、お義母さんがいうには「あって困らない知識」と言っていた。だから僕に覚えさせようとしたのだろう。

 

礼儀もマナーも共通語(コイネー)も一つ一つの作法を厳しく教えられて、今がある。技術も相手を出し抜くやり方も逃げ方一つ、戦い方一つ、お義母さんに仕込まれた。だから大抵の事はできる。

 

お義母さんは死ぬことを覚悟していた。だから、できる限り側にいて泣かないようにしようと思った、のに。僕が殺した。お義母さんを、おじさんを殺した。

 

「……僕は……っ」

 

拳を握りしめる。血で染まるんじゃないかってくらい痛い。怖い。泣いちゃいけない。

 

「…べルくん。」

 

「?アーディさん……?」

 

アーディが一歩前へ歩き、そのままべルに話しかける

 

「ごめんなさい!!私のせいで、こんなこんな……私が勝手にしたせいで……!」

 

「!!」

 

「アーディ……」

 

やっと君に謝れた(なんで謝るの?)()は、君に謝りたかった(貴方に謝って欲しく無かった)

 

「(どうして?)」

 

「(よかった)」

 

「僕は……」

 

謝られるためにやった訳じゃない。アーディさんが死なないように、守りたかったのに。

 

「……はい!良かったです!」

ヤメテよ。ボクノオモイ、踏みにじらないでよ

 

「……はぁ……よかった……」

 

安堵したのか、座り込むアーディ。

 

「はいはい!わかったなら、返事は熱いキスでいいわ!べルおいで!!」

 

「アリーゼ?」

 

「あ、ちょっと、待って?ホントにヤメテ、!!ジョーダン!JORDANだから!!ホントに来ないで!?ちょ、あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!」

 

「アリーゼ……」

 

「自業自得だな」

 

「アリーゼちゃんのせいね♪」

 

「アリーゼが悪い」

 

「これはバカリーゼ」

 

「秩序側のやつが、変なことしようとするから、憲兵(アーディ)!五割残しで頼む!」

 

「それ、半殺しじゃ…」

 

「アンフィス・バエナのようなものだから、多分復活するでしょ〜。多分」

 

リューが、ネーゼが、マリューが、アスタが、ノインが、ライラが、セルティが、リャーナが、全員がアリーゼを見捨てた。自業自得ではあるが。

 

「ぎぁぃぃぃぃぃぃ!!逆エビヤメテ!?」

 

「あ、そういえば輝夜〜。みんなランクアップしたんだっけ?」

 

「ああ、べルを除いてな。」

 

「おめでとう〜!ずっと言えてなかったから!」

 

「そういえば、アーディだったか?」

 

「うん!そうなんだよね〜!」

 

じゃじゃーん!ってしそうな勢いで、ニコニコ。その下ではまだ逆エビをさせられてるアリーゼ。

 

「あの、アーディさん…そろそろ」

 

「あ、ごめん!?アリーゼ!」

 

「ぁぁぁぁぁぁ……」

 

死にかけのアリーゼ、それを見て笑うみんな。

 

「それで、アーディ、いつまでいれるの?」

 

「あー、そろそろお暇しますよ。まだ仕事が残っているので、それに、お姉ちゃんに色々言われるので」

 

「そうですか」

 

「また来るね、みんな!」

 

「無理すんなよ」

 

「頑張ってください!」

 

「うん!」

 

そう言ってアーディさんは帰っていった。

 

「でもさ〜、巡回がないって……暇だよね」

 

「そうそう、ダンジョンでも行く?」

 

「それ以外ない気が……」

 

「おいおい……いつからうちは戦闘狂(バトルジャンキー)だらけになったんだよ……」

 

まあ、仕方ないことであるが。アストレア・ファミリアは普段ガネーシャ・ファミリアと共に秩序維持に貢献し、正直大半が十代であるにもかかわらず、闇派閥(イヴィルス)と戦い続け、いい出会いなどありはしないのだ。

 

「なら、今日はみんなで外食なんでどうかしら?」

 

「「「「本気(マジ)ですか!?」」」」

 

「ええ、お店は予約しておくわ。」

 

「いや、それは流石に……!?」

 

「なんて恐れ多い、私達がやります!!」

 

「アストレア様にこんなことさせたら罰当たりそう」

 

「「「「分かる」」」」

 

「ふふ、そうかしら?」

 

その後、結局外食の予約はネーゼによって行われ、それまでの間は暇となった。なので各々、好きなことをしに、団欒室を後にするのであった。

 

「む〜……」

 

「あら?拗ねているの?」

 

「見捨てられたので」

 

アストレア様はふふ、と笑い頭を撫でてきた。

 

「そんな泣きそうな兎の顔しないで?……ごめんなさい。私もとても心配だった。」

 

だって、とアストレアは言い淀む。

 

「べルがザルドと対峙したって聞いたもの。」

 

心配の一つもするわ。と言いながらデコピンをしてきた、やはりアストレア様は可愛い。

 

「でも……」

 

「分かっているの。だからこそ、覚えておいて?格上ともし、対峙することがあったなら、逃げていい。逃げることは恥じゃない。」

 

「アストレア様……」

 

「もし、もしもよ?……私は貴方を失ったら、何年でも、この世界でこの土地で、待っていてあげる」

 

「!」

 

「だから、私を置いていかないで?」

 

アストレアは、そう言うと、髪をわけ、おでこにそっとキスをする。それを残っていたメンバーは見てしまい。石化したように団欒室には静寂が訪れる。

 

「な、なぁ───!?」

 

「ふふ、べル。愛しているわ。」

 

「────きゅう」

 

そして、べルはトドメの一撃を貰い、キャパオーバーのせいでぶっ倒れる。

 

「あーーー!!!べルが死んだァ!?」

 

「まだ傷は浅いかもだぞぉ!!」

 

「べルくん!?ひ、ヒーラーを!誰かぁ!?」

 

「マリューボケてるボケてるぅ!?」

 

「「「「───てか羨ましい!!!」」」」

 

「あらあら……ふふふ。」

 

これ脳震盪起こしてない?とか、ぶっ倒れたべルを介抱する数人の焦り散らかす声が外まで聞こえたとかなんとか。そして、後にアリーゼがその話を聞いて、べルもアストレア様も羨ましい!なんていいだし、二人に抱きつこうとしたが、全員に止められたため何とかなったのである。

 

 

 


 

そして、とある酒場にて。

 

「ご予約の団体様ご案内ニャー!!!」

 

そんな声が響く。声の主はその酒場のウェイトレスである猫人(キャット・ピープル)の少女であった。そして、扉から入ってきたのはとあるファミリアの団体だった。

 

「あれ見ろよ。」

 

「うぉ、すげぇ上玉。」

 

「アストレア・ファミリアか」

 

「珍しいな。」

 

そのファミリアは先頭を歩く女神を筆頭にほとんどが女性のファミリアでした。そして、最後尾を歩く一人の少年。周りの客は珍しい客だと思いました。

 

「こちらの席へどうぞ」

 

「あら、ありがとう」

 

そして、全員が席に着く。

 

「では、みんなグラスは持ったかしら?」

 

皆がこくりと頷く、大体が酒を、エルフであるリューとセルティはアールヴ聖水を、べルは果実酒(ジュース)を手に持つ。アストレアは酒ではなく、べルと同じものを持ち。乾杯音頭をする。

 

「では、みんなお疲れ様!乾杯!」

 

「「「「カンパーイ!!」」」」

 

ガシャンという音がして、アストレア・ファミリアの面々はお酒を飲んだり料理を食べたり自由にする。アストレアも飲み物を飲んだり、野菜やお肉を食べたりする。

 

「あ!ライラ!それ最後の一個!」

 

「早いもん勝ちだ。」

 

「クッソー!返して!?」

 

「頼めばいいだろう!」

 

「せるてぃ……のよんでるきゃあ?」

 

「わっ!?ネーゼさんお酒臭いです!?」

 

「なんらとー!?なら、お前も飲めー!」

 

「やめてください!?」

 

「あ、セルティいらないならこれも貰うわね〜」

 

「私のぉ!?」

 

「おら飲めぇ!!」

 

「やめてくださーい!!」

 

「これ美味しい〜。」

 

「アスタ〜、一個ちょうだーい!!」

 

「いいよ。はい」

 

「ん!おいしー!」

 

「みな、騒ぎすぎだ。」

 

「お前も飲めよ!ポンコツエルフ〜」

 

「ライラ!私に酒を押し付けるな!?」

 

「(なんで、エルフにお酒飲ませたがるんだろ)グビグビ……あ、美味しい」

 

「べル、こっちも美味しいわよ?あ〜ん」

 

「あ、ーん……もぐもぐ……美味しいです!」

 

「良かったわ。」

 

そんな会話をして、少し時間が経つと、酒を飲んでいるものは大体が酔ってきた。リューなんて、ライラとか輝夜に飲まされて酔いつぶれている。

 

「べりゅう〜!」

 

「わわっ!?アリーゼさん……飲み過ぎです」

 

「こまきゃいことなんてねー、どうでもいいのよ!ひっく!のまなきゃそんよそん!」

 

「はぁ……飲み過ぎは体に良くないですよ?」

 

「べふ〜さけをのめぇ!」

 

「え嫌ですよ」

 

「わたしのさけがのめないっていうのかぁ!」

 

「ちょ!?なかしぃこまないでぇ!?」

 

そして一分後

 

「らいだい……みんなぁ……飲み過ぎなんでしゅよ……あしゅとれあしゃまみならってぇ……よ。」

 

「べ、ベル!?」

 

「あ、あしゅとれあひゃま〜。」

 

「うっ……酒臭い……原因は」

 

「ひっく、ふぁ……」

 

さっきまで居なかった、べルの隣で酔いつぶれているアリーゼだろうと思う。というか確信してる。

 

「はぁ……。」

 

頭が痛い……。そして、するとべルはなにかハッと気づいたように顔を上げ、見たことない笑顔になった。

 

「まぇ〜……おがみしゃまがいってらんでしゅよー……」

 

「……なんて?」

 

「『たくあくに電気流せば、光る』ってぇ……」

 

ホントなのかなぁ……。アストレアはそれをおしえた神は誰か知らないが、ロクでもない神であるには間違いはないと判断した。ちなみに、べルにそれを教えたのは、群衆の主(ガネーシャ)であった。もし、アストレアが教えた人物を知っていたのなら、どうでもいいこと教えないで!?と言っていたところであっただろう。

 

「けらヴぅのしゅ〜。けらヴのしゅ」

 

「ん?何をしているの?」

 

「魔法でなりゃないかなーってぇ……」

 

「「「「……???」」」」

 

その話を聞いていた団員たちの頭にはハテナが浮かんでいたのである。そして

 

「さいだいしつりょく・【降臨(ケラ)───」

 

「止めろォォォォォォォォォォ!!!」

 

「それたくあんどころじゃない!!?」

 

「丸焦げにする気かぁ!?」

 

「まじでヤメテ!?」

 

「ベルを止めろォ!?」

 

「たくあんをそんな風に扱ってはいけない!」

 

「そこじゃねぇ!ポンコツ!!」

 

「──仕留めるか?」

 

「物騒!!マジで!」

 

「ヤメロ、まじでヤメロ!!」

 

「あーん!!やだぁ……!!ひかりゅのぉ!!」

 

「マジでダメ!!」

 

そして、なんとかたくあんを取り上げて羽交い締めにして、口を閉じせて、落ち着くまでそうしていたら、やっと寝てくれ、拘束を解く。ちなみに、べルの奇行のせいで全員の酔いが既に覚めていた。

 

「……どっと疲れた……」

 

「うぅ……酒臭い……」

 

「もうお風呂入りたい……」

 

楽しみに外食に来たはずなのに、こんなに疲れるなんて聞いてないという抗議の目を原因(アリーゼ)に向けるアストレア・ファミリアの面々。

 

「団長様?」

 

「な、なにかしら?」

 

「べルに酒を飲ませるな!金輪際!!」

 

「さ、サーイエッサー!!」

 

そして、ドタバタの宴会は終わり、アストレア・ファミリアは帰っていった。

 

 

□□□□□□

 

 

 

 

「…………」

 

「あら……風邪引くわよ?」

 

「……!アストレア様……」

 

「……眠れないの?」

 

「……はい。」

 

二人の間には静寂が流れる。

 

「叔父さんは……僕と戦わなかったら、死ななかった。叔父さんもお義母さんと同じで……level 8だし……あんな雑魚に負けなかったんだ!!」

 

「ざ、雑魚……」

 

悲報、フレイヤ・ファミリア団長【猛者(おうじゃ)】オッタル、現オラリオ最強、八歳の子供に雑魚呼ばわり。

 

「……どうしてそう思うのかしら?」

 

「少し、見ただけなんですけど、動きが鈍かった。叔父さん……あんな遅くなかった。」

 

「それと、何の関係が?」

 

「僕の魔法……【トゥエルノ】で脳回路のバク、最初は失敗だと思ってたんです……けど」

 

けれど、それは失敗ではなかった。ザルドでさえも、失敗だと思っていた。けれど

 

「……遅効性(ちこうせい)……前お義母さんに習いました。毒には即効性と遅効性があるって。」

 

「それが、怒ったって?」

 

「はい……僕は無意識に想像してたんです……この戦いが長く続けばいいのにって……」

 

楽しかった、べルはそう感じていた。ザルドとの戦いが、べルの本能を刺激した。戦いたくないのに、楽しいと感じていた。今までの集大成のようなもの。

 

「それが、ザルドに流した魔法にそれが?」

 

「はい……長くは遅くとも言えます。続くはジワジワととも言えます。だからこそ、僕のせいなんです」

 

「そんな───」

 

「気休めはいりません。これは、僕の罪だから」

 

 

───お義母さんを叔父さんを殺した僕の罪。

 

 

背負うのは僕、気休めは貰えない、誰かの優しさに触れたら僕はもう、みんなの顔、見れないから

 

「そろそろ、寝ますね。おやすみなさい。アストレア様。直ぐに中入ってくださいね」

 

「え、ええ……分かったわ……」

 

すみません。そう、べルは言えなかった。そして

 

「……渡せなかった……」

 

アストレアはべルへの贈り物である魔導具(マジックアイテム)を渡せなかった。べルに言えなかった。

 

「ごめんなさい、アルフィア……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「───珍しい客が来たな。」

 

色褪せない白き廃教会、一人の神と二人の眷属。まあ、神の眷属ではないのだが。

 

「なら、もてなすのが礼儀であろう。」

 

「おいおい、無茶を言ってくれるなよ。俺は絶対悪だぜ?そして、明後日。これまで以上の大きな抗争、大抗争が起きる。分かってるだろ?」

 

「ああ、当たり前だ。」

 

「アストレア・ファミリアだったか?」

 

「正義の眷属が絶対悪(オレ)のところに訪れるなんて、勘違いされたらどうするんだ?」

 

神──いいや、邪神エレボス。そして、一応のアストレアの眷属であるアルフィア、その隣にいるのはかつての最強ゼウスの眷属であるザルドであった。

 

「勘違いなど、あるものか。」

 

「もしの話だ。」

 

「そうだな……もし、そんなことがあったのなら、もし、それで雑音を撒き散らすのだとしたら。べル以外、全てを滅ぼすであろうな。」

 

「魔王なのか?」

 

「『まおう』は分からないが、暴君だな。」

 

「【(ゴス)───」

 

「「マジで勘弁してください。」」

 

触らる神に祟りなしと同じで、触らぬヘラに暴力なしである。それをザルドとエレボスは今一度再確認することが出来た。特に、アルフィアのような短気──

 

「はぁ……」

 

「で、なんで来たんだ?」

 

「べルはどうしたんだ?」

 

そう、ザルドとエレボスはアルフィアに聞く。

 

「ここに来たのはただの感傷、べルは本拠(ホーム)にいる。アストレアに任せているから、泣き出すこともないだろう。」

 

「感傷?お前が?」

 

「あぁ……私は、この戦いで死ぬだろう。あの小娘たちについて来いと言われた。この身は二つの罪を抱えている。」

 

「罪?」

 

「べルは生まれつき私と同じ病を持っていた」

 

「ああ」

 

「だからこそ、それを治す必要があった」

 

アルフィアは語る。

 

「そのためにオラリオへ来たんだ。あの旅神を頼るために、べルと共に……の癖に、アイツらは私を大抗争に参加させる気満々だぞ。」

 

「ほう?あの正義の眷属達がか?」

 

「正確には、小賢しい勇者(パルゥム)の仕業だがな」

 

忌々しそうに、アルフィアは吐き捨てる。それを見たエレボスとザルドはあぁ……という顔をした。

 

「【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナ、だったな。そうか、そう仕向けてくるのか。」

 

「何が来ようと……アルフィア以外には負ける気がしない。というか、アルフィアには勝てる気がせん。」

 

「お前らの特性には、私も辟易しているよ。」

 

「特性?」

 

「あの狒々爺の好々爺の眷属はみな、面倒くさい」

 

「おい!!」

 

とばっちりにも程がある、なんて文句を言うザルド

 

「だって、事実だろ?」

 

「そうだが、俺は違うからな!?」

 

「五月蝿いぞ、ザルド。」

 

そんな、普通の景色が、会話が……普通とはいえはしないが。エレボスはフッと笑う。

 

「…………後悔してないか?」

 

エレボスは、そう呟いた。

 

「ザルド、お前はアルフィアとその子供と一緒に生きることが、選択できた。だが、しなかった」

 

「そうだな」

 

「アルフィア、お前は最初はこの作戦に、参加しようと思っていた。子を捨て、悪になれた。けれど、止められた。結局参加しなかった。」

 

「あぁ」

 

二人の眷属の間にある、決定的な違い。

 

「お前達は後悔してないか?参加しなければ、もしくは参加していれば、また未来は違ったものであったはずだ。オラリオの成長か、子への愛情か。」

 

確かに、参加していればいい未来はあったかもしれない。参加しなければ違う未来があっただろう。

 

「お前たちに今問おう。今ならば、どちらを選ぶ」

 

ずるい、聞き方だと思う。けれど。

 

「答えなど、既に決まっている。」

 

「ああ」

 

「ほう?」

 

二人の選択は、二つじゃない。オラリオの為に悪になったわけじゃないし、オラリオを捨てたからアルフィアは子供といる訳ではない。

 

「「子の為、数多の英雄が立ちはだからんことを。あわよくば、英雄なんてものに手を伸ばさんことを。」」

 

子の為に、オラリオへ試練壁となり、悪へ堕ちたザルド。子の為に、最後まで寄り添おうと、べルを選んだアルフィア。行動は真逆。なのに、理想は同じ

 

「ククククククク……ハッハッハッハッ!そうか!そうか!理想、思いは変わらないか。」

 

「あの小娘たちならば、いいや、あの女神ならばべルを正しき道へ導けるだろう。」

 

「ああ、アストレアはいい女だからな」

 

「お前の趣味など知らん。」

 

辛口なアルフィア。

 

「だが、そうか……アルフィア、ザルド。ゼウスとヘラ(お前たち)の運命を分かつことを許してくれ」

 

「元々、こんな筋肉ダルマと同じ運命などありえない。ならば、この身が悪に堕ちた方がマシだ。」

 

「全くもってその通りだ。」

 

「そうか?お前ら意外とお似合いだと思うが?」

 

「有り得ん/あってたまるか!」

 

「ハハハハハ!!」

 

息ピッタリな二人にまたしても笑うエレボス。

 

「……お前たちの子の正義を問おうみたいな」

 

「また悪趣味なことを」

 

「余計なことをすれば、四肢をもいで天界送りにするぞ?エレボス。」

 

「……冗談じゃなく聞こえるのが怖いな。」

 

 

 

 

 

 

 

そんな、たった一時間もない話。

 

 

 

オラリオ、と聞くと何を考えるだろうか?

 

『ゼウスとヘラ』?怪物の巣窟?それともバベル迷宮の方だろうか?まあ、そんなことは今となって()()()()()()

 

オラリオは迷宮都市で、英雄の都だ。

 

それは虚飾でも、虚勢でもない。ただの事実だったんだ。けれど、ゼウスとヘラを失い。

 

オラリオ勢力低下の事実は避けられなかった。

 

だからこそ、『最強』は失望し、『最恐』は呆れたのだろう。そんな迷宮都市(オラリオ)は最強でなくてはならない。

でなければ、世界から反感を持たれ、迷宮都市は崩壊する。ならば一番でなくてはならない。

 

 

────何が言いたいのかだって?

 

 

単なる独り言だ。

邪神の、ただの独り言だ。そう、これはかつての破邪と成す、悪事であり、『正義』の征戦。

ありどころを求める『正義』を貫き通す為の【偉大な冒険譚】と言ったところか。

 

これは、意地と意地の戦い。黒い泥にまみれた邪神の気まぐれ、醜い醜悪な『絶対悪』だ。

それを撃つのは『絶対の正義』なんだ。これは、古代から変わることの無い事実だ。

 

ならば、俺は手を抜く訳には行かない。

 

そうだろう?()()()()

 

 

私たちの(俺たちの)忘れ形見(置き土産)の為に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少年には、同情するな。」

 

ぼそっと呟いた。

 

「こんな、一方的な愛を二人から貰うんだ。……褒美くらいあった方がいいのかもしれんな」

 

一つのペンダント。赤く輝く魔導具(マジックアイテム)

 

「これは、選別だ。」

 

優しき少年よ。俺はお前に何もしてあげれない。ならば、無駄に足掻いて生きて、驚かせるびっくりショーでもするか?……いいや、見届けたい。

 

「お前たちの残した、一つの宝を。」

 

真実が知りたくなったのなら、開けるといい。

 

 

 

 

すまない、ベル・クラネル。

 

 

 

 

 




あとがき

ふざけたかった。ふざけたかっただけで!?ま、とりあえず一段落しました〜!長かった。

四月くらいから投稿初めて、今八月……それでまだ12話だと!?とんでもねぇ


あと、ガチでたくあん光るらしい。

たくあんの水分には塩分が含まれるため、電気が流れます。
らしいです。

まーまー、良ければ高評価、コメントおねがいしまーす!

では、バイ☆
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