静寂に連れられた白兎はオラリオへ行く。   作:如月悠

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訪問(セシル・ブラックリーザ)

大抗争から2年が経った。そして、アストレア・ファミリアにはとある一通の手紙が届く。

 

「はい、ちゅーもく!!」

 

全員が集まる団欒室にそんな声が高らかに響く。そして、その場にいた団員はなんだ?と怪訝な顔をして、声の主、アリーゼの方にむく。

 

「あら?ベルは?」

 

「あいつなら【ロキ・ファミリア】の所だろ。」

 

「え!?」

 

「聞いてなかったのか?団長。」

 

「聞いてなかったわ!というか、なんで!?」

 

そういうと、全員がはぁ……とため息をついた。話も聞いていなかったのか、うちの団長はと。それは1時間前の出来事だった。

 

「ベル。」

 

「いや、なんでいんだよ【剣姫】」

 

「今日はベルとダンジョンごっこするの。」

 

「なんだよ、それ」

 

「?ダンジョンに潜る。」

 

「ガチかよ。」

 

いきなり押しかけてきたと思ったら、なんだコイツは、と頭を抱えるライラ。こりゃ、フィン達の苦労がとんでもねぇな。なんて考えていると。

 

「あ!アイズ!と、ライラさん!」

 

「!ベル。」

 

「よお、ウサギ。この【剣姫】が用があるんだとよ。」

 

「うん!今日は、リヴェリアさんのところで、てすと、するんでしょ?楽しみだね!」

 

「エ───────?」

 

「ん?だって、リヴェリアさん言ってたよ?ダンジョンごっこするんだ〜って言ったら、その日リヴェリアさんの部屋まで来てだって!」

 

「……ベル、ニゲルヨ」

 

「え?」

 

シュンッ!っていう効果音が着くほどの速度でベルの手を取って逃げる剣姫であったとさ。

 

「……後で報告だな」

 

「リヴェリア様が怒りますね〜」

 

「セルティ完全に他人事じゃない」

 

「だって、【剣姫】が悪い気がして……」

 

「「「「ワカル」」」」

 

うんうん、と頷くアストレア・ファミリア。それが約一時間前の話である。

 

「あ、あー……なるほどね!」

 

そういえばさっき爆速で追いかけっこしている【剣姫】と【九魔姫(ナインヘル)】への通報があったなぁ〜

 

「まあ、いいわ!……あ、 そういえば最近テルスキュラから来たとある姉妹の話知ってる?」

 

「あー、自分達を倒した者の派閥に入るっていう。」

 

「level 3でしょ?もしかして、二人を入れるとか?」

 

そんなことを言うリャーナは苦い顔をしていた。

 

「アマゾネスは強い弱いがハッキリしてるからなー」

 

「ねぇイスカ〜、その子達ボコしてきて〜」

 

「簡単に言わないで?」

 

「はいはい、脱線しすぎ」

 

何故かその姉妹をボコすという話になったアストライアーズをまとめるようにアリーゼは話を戻す。

 

「そういや、フィン達のとこに入ったんじゃなかったか?」

 

「そうそう!確かそう言ってたわ!」

 

「へー……いいんじゃない?」

 

【ロキ・ファミリア】は最強派閥、あの世界最速記録(レコードホルダー)たる【剣姫】や都市最強魔道士である【九魔姫(ナインヘル)】、小人族(パルゥム)の勇者たるフィンが在籍するファミリア

 

「で、本題はなんだよ」

 

「あ、そうだった。ギルドから冒険者依頼(クエスト)が届いたの。それが厄介そうでね〜……」

 

アリーゼが出した洋紙に書かれていたのは

 

『ダンジョン内にて怪しい冒険者が発見されたり、闇派閥(イヴィルス)の可能性あり、迅速に対応されよ』

 

「「「「うわぁ〜……」」」」

 

これは、闇派閥(イヴィルス)でしかない。面倒な案件である。まあ、やるしかないのであるが。

 

闇派閥(イヴィルス)……【ルドラ・ファミリア】ですか?」

 

「多分ね!」

 

「一年前もあんなことがあったばかりだろ。」

 

そう、一年前も闇派閥(イヴィルス)による大規模な罠があったのだ。27階層の悪夢。

 

「あのときねー。アストレア様のあれだったし、ベルは起きてなかったし。」

 

「で、行くのか?」

 

「…言っちゃうと、()()()()()()。」

 

「……なぜですか?アリーゼ」

 

アリーゼの発言に恐る恐る聞くリュー。

 

「だって……これが、罠だったのなら、私達だってただじゃすまない。そうなった時、ベルはどう思うかな〜って。」

 

「……自己嫌悪ですか?」

 

「多分、そうよ。それに……本当に……助けることが出来なくなっちゃう……。」

 

「……」

 

「ま、そうだよな〜。」

 

「死ぬつもりは無い。」

 

「そうだけど、ならどうするの?」

 

「他のファミリアに丸投げ、なんて出来ないわよ?」

 

そう、他のファミリアに丸投げしてそのファミリアが罠にかけられて壊滅、なんてシャレにならない。夢見が悪いどころじゃない。

 

「そんな事しないわよ!」

 

「どうするのですか?」

 

リューがそう聞くと、アリーゼは1泊置いて。

 

 

「…………無視よ!」

 

 

「「「───は?」」」

 

満面の笑みで、バチコーン☆なんて効果音が付きそうなほどのドヤ顔で、めちゃくちゃにウザイアリーゼはそういった。

 

「──よし、そこになおれ、だ・ん・ちょ・う・サ・マ?そのふざけた顔に居合(ワザ)を刻んでやる。」

 

「たいむ!タイム!!」

 

「どういうことですか!アリーゼ」

 

「……はぁ〜……だってこれ、怪しさ満点じゃない。それに、さっき言った通り罠であった場合、ベルが悲しむもの……。後、そうね……」

 

アリーゼは立ち上がるとどこかへ歩いていき、何かをひっぱって帰ってきた。

 

「……だって!入団希望者が来たんだもの!フフーン!」

 

「「「???」」」

 

「あの、アリーゼ?その者は……」

 

アリーゼが連れてきた女の子、青い髪のサイドテールに暖色の瞳、年端もいかない少女───随分、気まずそうな顔をしながら来た。

 

「さっき訪問してきたの!自己紹介出来るかしら?」

 

「セッ!せ…………セ、セシル……セシル・ブラックリーザって、申します……」

 

「ブラックリーザ……剣製都市(ゾーリンゲン)のあの?」

 

「ひゃい!?」

 

「き、緊張しすぎだ……。深呼吸を、ひっひっふー、ひっひっふーです。ブラックリーザ。」

 

「お前も落ち着け、それは出産の時のあれだ。」

 

「ポンコツ」

 

「むっつり」

 

「ドスケベエルフ」

 

「なぁ!?わ、私はっ!ポンコツでも、むっつりでもドスケベエルフでもなぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」

 

「……入ろうとする派閥、間違えたっけ」

 

なんて、カオスを極めに極め、収拾がつかない状況へと陥っていた。ライラなんかは面倒そうな顔をして

 

「みんな、その子が困っているわ?」

 

「「「「!!」」」」

 

そこに現れるは正義の女神。清廉潔白を体現するかのごとく、白き衣を纏い、胡桃色の髪は腰まであり、美しい。その姿に宿る瞳は全てを見通すが如く。

たまにおちゃめでお転婆、優しいけど、結構厳しい。星々のように美しい見目。

 

「お帰りなさい!アストレア様!!」

 

正義の女神、アストレア。

 

「ええ、アリーゼ。ただいま。」

 

「お帰りなさいませ、アストレア様。」

 

「リューに、みんなも、ただいま。」

 

崇高たる女神。

 

「な、なぁ─────」

 

その姿に、セシルは言葉を失っていた。

 

「あら?どうしたの?」

 

「はっ!?……い、いえ……」

 

そして、アリーゼがアストレアに抱きつこうとして1悶着あり、セシルの入団面接をすることとなる。そして、場所を移し、面接をするのは、アストレアとアリーゼ、輝夜ライラであった。

 

「……じゃあ、入団面接を始めましょうか?」

 

「は、はい!」

 

「まず、最初だ。」

 

「アタシからだな。──何のために冒険者となる?」

 

最初に言ったのは、ライラだった。

 

「何の、ため……」

 

「ああ、お前は……名家の生まれ、しかも、鍛治一族の生まれだろ?」

 

「……見返したいから。私を、未熟といった兄たちを……見返したい……。」

 

「そーかよ。」

 

こいつはダメだ。素直なのは、まあいい。人間性も……ギリ合格。けど、罠にかけられてすぐ死ぬのがオチ。だめだな。

 

「なら、私でございますねぇ〜……。貴方様はなぜ、アストレア・ファミリア(ここ)に?」

 

「……私は……」

 

 

──言うべき?でも、こんなこと言ったら、間違いなく入れて貰えない……どうしたら。

 

 

何も言えずに、俯いていると。

 

「……ぶわぁぁぁぁかめ。適当に何か話してればいいものを、何故そこで黙るお前は。」

 

「??????」

 

「おい、輝夜、豹変ぶりに驚きすぎて雛みてぇになってんぞ。おもれ〜」

 

「こらこら、輝夜もライラも。」

 

「ちぇっ」

 

「大丈夫?」

 

アストレアがそう聞くと、セシルは頷いて面接は続ける

 

「なら、次私ね!」

 

「私のは?」

「私から聞きたい事、貴方の『正義』って、なに?」

 

そう聞いた瞬間、部屋が凍りついた。──正確には、セシルが口を閉じてしまった。

 

「『正義』……ですか……」

 

 

──適当なことをいえばいい、そうすればいい。

 

 

 

 

本当に?

 

 

 

 

──正義なんて曖昧なもの、答えなんてあるはずない

 

 

 

 

 

それは多分。

 

 

 

──なら、私は、何が正義、正解だと思う?

 

 

 

 

 

分からない

 

 

 

 

 

 

閉じていた口をゆっくりとあける。

 

「私は────」

 

正義なんて抽象的な質問。意味なんてない。アストレア・ファミリア(この場所)以外では。

 

「───私は、自分の……自分で打った武器で、槍で、剣で、誰かを生き残らせる。」

 

鍛治一族の末席。不純な動機で近づいた。ヘファイストス様には断られ、ゴブニュ様の所にはいけなかった。だからこそ、この都市で人気のファミリアたるアストレア様のところに来た。

 

でも───

 

「───それが、私の正義。私の信じたい、理想」

 

これが、セシル・ブラックリーザ(私らしさ)だから。

 

輝夜は呆れる、まためんどくさいやつが入ってきたと。

ライラは言う、ま、いいんじゃねーか?と。

アリーゼは笑う、ええ!理想!いい言葉!なんて。

 

そして、アストレアは最後の質問をする。

 

「……セシル。貴方は、どうなりたい?」

 

最後の最後に嫌な質問。

 

「私は、アストレア・ファミリアに相応しくない。」

 

でも、こうなったら。

 

「清廉潔白でも、潔癖でもない。」

 

とことん、言えばいい──

 

「だから!アストレア・ファミリアのみんなを支えられるような鍛冶師になりたい!!」

 

 

 

 

それが、セシル。

迷いを抱え、正義なんて考えたことも無かった少女。

 

この時。

 

初めて、誰かの為に、なりたいって思った。

 

 

 

「そう、"よろしくね"、セシル。」

 

「────え……?」

 

本音だったからこそ、()()()()()()()となった少女

 

「何をボケっとしている、堂々としろ。」

 

「そーだぜ?アストレア様の見る目は本物だ。お前も胸張れ。今日から、アタシ達は仲間……つっても、1から100まで信用しろとは言わないがな。」

 

「……もしかして」

 

まだ状況を呑み込めていないセシルにアストレアは前に立って、優しく頬に手を添えて。

 

「貴方の中には、ちゃんと……正義がある。相応しくない、なんて悲しい事を言わないで?」

 

「────────」

 

「セシル。【アストレア・ファミリア】へようこそ」

 

「ッ!!」

 

頬に添えられた手を強く握ってしまった。それくらい、嬉しかった。こんな私を、なんて。

 

「フフーン!私は分かってたわ!」

 

「ああ、まあそれはいいんだがよぉ……結局どうすんだよ。あの冒険者依頼(クエスト)は。」

 

「……ギルドの方に突き返す───」

 

「そのようなことをして、ギルドの豚(ギルド長)が納得するとでも?団長様?」

 

「…………これも、1つの正義の結果ヨネ!!」

 

「「やかましい」」

 

「ふふ。」

 

そんな会話をして、ふざけているアリーゼ達。

 

「(……セイレン、ケッパク…………かなぁ)」

 

なんて思うセシルであった。

 

 

 

けれど、彼女たちはまだ知らない。今オラリオで超追いかけっこをしている白兎とセシルが超超揉めることとなるなんて。知る由もなかった。

 

 

 


 

そして、少し前。

オラリオでは、とある珍事件(追いかけっこ)が起きていた。

 

「まて!アイズ!!」

 

「やだ」

 

「キュウ─────」

 

なんて、カオス。【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン11歳、【九魔姫(ナインヘル)】リヴェリア・リヨス・アールヴ約100──ドゴォ!?……永遠の20歳。とある正義の白兎を巻き込んで追いかけっこ中である。

 

「どうして逃げる!!」

 

「嫌なの……もう、嫌なの!」

 

「あいずぅぅぅぅ……」

 

「どうして、『ダンジョンごっこ』……ダメなの?」

 

「危ないだろう!?」

 

そんな追いかけっこをみながら会話を聞いている他派閥や一般市民は「ヤベーよ【ロキ・ファミリア】」や「ヤベーな【剣姫】」、もしくは「【アストレア・ファミリア】の兎連れてることが一番やばい気がするの、オレだけ?」なんて言っている。

 

「ぜったい……【目覚めよ(テンペスト)】」

 

「なっ!?」

 

ジリジリと距離を詰めていることをまずいと思ったのか、アイズはまさかまさか、魔法を使ってリヴェリアから逃げ切ろうとしたのだ。とんでもねぇ、剣姫。

 

「あ、吐きそう……」

 

なんて、こぼす白兎。しかし、時すでに遅し。

 

「びぃぃあ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!?」

 

「ふん!!」

 

全速力での追いかけっこ、開幕である。

 

「待て!!」

 

なんて、声を出すが、アイズにはもう聞こえてなかった。こうなってしまえばアイズに軍配が上がる。そして、何を考えたのかこの大馬鹿者はこのままの勢いでダンジョンへと入っていったのである。

 

「退いて!」

 

前に出てくるモンスターはバッタバッタとなぎ倒し、ベルへ被害が及ばないように倒して、切って、ちぎって、切り捨てて、モンスターを狩っていく。

 

「っ!アイズ!!」

 

けれど、勢いに任せたのが運の尽きだったのか、体制が崩れたとき、ホブゴブリンが襲ってきた。

 

「ッ!【蹂躙せよ(ケラヴノス)】」

 

「グォォォォオオオオオオ!?」

 

まず一体目。

 

「間に合わない!?……【尽力せよ(トゥエルノ)】」

 

だから、アイズを助けようとした。風と雷、纏えばこの階層のモンスターなら、確実に彼女の敵ではないだろう。

 

そして、魔法を使い、助けようとした。けれど──

 

「───あれ?なんで、なんで!?どうして!?」

 

焦燥感がベルの中を駆け巡る。なぜなら

 

「魔法が、出ない!?」

 

これには理由があるのだが、まあそれはいい。雷が出ない。それだけで焦ってしまった。

 

「っ!アイズゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

「っ!?」

 

間に合わない。万事休す、そう思った。その時。

 

「退いてぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

体をひねらせて、剣を高速で回転させることにより、スピードとパワーが出るのだ。アイズはそれをして、自分に襲いかかっていたホブゴブリンを2体切り刻む。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!」

 

そして、そこからはアイズの蹂躙。先程のスピードはでない。けれど、level 4の脚力をもって、盤面を制す。

 

「っ!!!はぁ!!」

 

切って、割いて、潰して、蹴って。切り刻んで、切り捨てて、切り裂いて、切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って。たくさんの血を浴びて、死屍累々の上に立っていたのは、アイズであった。

 

「……終わり。」

 

「……おおー。」

 

そんな姿。血に染まり、人形姫、戦姫なんて呼ばれたアイズにそんな声を漏らすのはベルだ。

 

「すごい!アイズ、やっぱりすごいね!!」

 

純粋な称賛。ベルの裏表の無い言葉はアイズに安心と同時に驚きを与えた。

 

「……嫌わないの?びっくり、しないの?」

 

「?なんで?」

 

なんで?と言わんばかりの腑抜けた声にアイズは目を白黒させる。とある一般団員、たしか、ラウル?なんかはチビってそうな顔してたのに。

 

「……アイズ。」

 

「なに、ベル……?」

 

「ここ、どこ?」

 

「え……?」

 

ただ、一つ誤算があったとするならば、それは感覚に身を任せ不用意に深い階層へと行っていたこと。

 

「……確か……セーフティポイント?だっけ、フィンが言ってた。そこは……超えてる、ハズ……」

 

「アイズぅ!?」

 

そして、言うならこのアイズとベルがいる階層は20階層、森林のところだ。

 

「……ベル。私から離れないで。……上に上がればいい、ハズ」

 

「ちょっと!?」

 

アイズ・ヴァレンシュタイン、11歳。勉強から逃げ出した挙句、やりすぎてlevel 1を連れてきて、迷子となった大馬鹿者である。それに着いてきたベルもベルだな。

 

「……っ?ベル?」

 

少し進んでいると、アイズは違和感に気づいた。

 

「ぁ……いず───」

 

バタンと音を立てて倒れてしまった。死んでは無い。多分疲労。でも、アミッドに見せた方がいいかな。

 

「ベル……。」

 

今日一日、連れ回して、ベルにとって初めてダンジョンに潜ったら、到達階層20階層。

 

「あ……リヴェリアに怒られる……!」

 

コイツ、自己保身しか考えてねぇ。

 

「……魔法(エアリエル)……使おう……」

 

この娘は、天然であった。なぜ、こうなったのかを覚えていなかったのである。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!」

 

ベルを抱え、アイズは走り出す。とりあえず、上層まで。なんて思いつつ。

 

「……(リヴェリア、怒られる……かな)」

 

少年が起きていたのなら、ひぎぃぃぃぃなんていうような叫び声を上げていたに違いない程の速度で走り抜けるアイズ。リヴェリア(ママ)大激怒間違いなし。

 

「はぁ…………ここ、どこ……」

 

「【剣姫】、どうかしたの?」

 

何階層なのかな。なんて考えていると、後ろから優しい声が聞こえてきた。

 

「……えっと……?」

 

「あ、ごめんね。私【ガネーシャ・ファミリア】アーディ・ヴァルマだよ!じゃじゃーん!」

 

「……?」

 

「その反応は酷くない!?だって、恥ずかしいから、じゃじゃーんくらいなら恥ずかしくないかな〜って思っただけなんだよ!?てか、なんでベルくん気絶してるの!?【剣姫】!?」

 

「……山あり谷あり……ってやつ。」

 

どういうこと!?なんて叫び、数分後。落ち着いたアーディによる尋問により全てを吐かされ、その間にベルの治療をし、アーディと共に上まで上がることとなる。

 

「……つまり、ベルくんを連れ出して、到達階層がに、20階層ぉぉぉぉ〜!?」

 

「……プイッ」

 

「可愛くしてもダメだからね!?これは、私だけの判断じゃ……どうにも……。」

 

九魔姫(ナインヘル)】に相談して……アリーゼ達にも言うべき?そうした方が、いい……よね。

 

「んー……と、とりあえず。」

 

「?」

 

「べ、ベルくん。私が背負うよ……?」

 

「やだ」

 

「え……!?なんで!?私の方が、いいよ!?」

 

何がいいのかはよく分からないけれど。

 

「やだ。」

 

「うぐぅ……でもぉ……」

 

幼女から流石に奪い取れなかった群衆の主の眷属、アーディ・ヴァルマさんでした。

 

「……あ、【九魔姫(ナインヘル)】」

 

「!!り、リヴェリア!?」

 

アーディがあさっての方向をさし、驚いたアイズが担いでいたベルを落としてしまう。そして、それをサッとキャッチするアーディさん。ちなみにリヴェリアさんはいませんよ。

 

「うそだよ〜!」

 

「!……ずるい。……ずるいっ!」

 

ボカボカという音を出してアーディさんに大ダメージを与えるアイズの殴り。

 

「痛い!痛いって!【剣姫】ぃぃぃーーーー!!」

 

これを死ぬほど後悔したアーディさんでした。

 

 

 

□□□□□□

 

とある女神は見つけた。

白く輝く、美しい魂を、だから、決めた。

 

その魂の持ち主───とある少年が自身が望む強き者になり、魂が変わらなかったのなら伴侶(オーズ)にしようと。そう誓った。

 

「いいわぁ……()()

 

見つかってしまった、の方が正しいだろう。

女神はこれまで多忙、故に何かしらあった。ほかの女神との会談、お茶会(情報交換会)等。だからこそ、白き兎を見つけられなかった。

 

だから。

 

だからこそ───

 

 

 

絶対に、()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

【星屑の庭】にて

 

 

 

「セシル!冒険者登録も終わった、恩恵(ファルナ)も刻んだ!OK?」

 

「は、はい!」

 

「なら、街を案内してあげる……って言いたいところなんだけど、今はもう遅いから明日案内してあげるわ。」

 

「ありがとうございます!!」

 

そう会話しているのは【アストレア・ファミリア】団長アリーゼ・ローヴェルと新団員セシル・ブラックリーザであった。

 

「あ、そうだ。まだ他には挨拶してないでしょ?」

 

「そうです……ね?」

 

「なんで疑問形??」

 

今はアリーゼがセシルの面倒を見ていたのである。

 

「……アリーゼ」

 

「あら、リオン!ちょうどいい所に!」

 

「?何かあったのですか?」

 

「挨拶がてら、みんなのところに行こうと思ってね!」

 

「そうなのですか」

 

そういうと、リューはセシルを一瞥した。

 

「そういうことなら、よろしくお願いします。セシル。私は……リオン。」

 

「よろしくお願いします!り、リオン先輩」

 

「ええ、よろしくお願いします。」

 

「リオンが先輩……なんか感慨深いわね!」

 

「何がですか……」

 

ドヤ顔でそういうアリーゼに呆れた調子でリューはアリーゼの方をむく。

 

「アリーゼ……」

 

「どうしたのよ、リオン?」

 

「……なぜ、なぜ行かないのですか……!?今日きた冒険者依頼(クエスト)を受ければ、闇派閥(イヴィルス)への大打撃になるかもしれない!今現在のオラリオにとって、闇派閥(イヴィルス)の打倒は急務!なのに!何故っ!?」

 

今、アストレア・ファミリアは逸っている、というよりリュー・リオンは焦っている。敬愛すべき女神が何を言ったとしても、彼女だけは、いつまでも焦り続けるだろう。

なぜなら、1年前、27階層の悪夢、そして闇派閥(イヴィルス)の首魁、邪神エレボスの逃亡。

今、オラリオはずっと後手に回っている。少なくとも、フィンなどはそう考えているだろう。

 

「せん、ぱい……?」

 

「リオン、新人(セシル)の前で言うことじゃないでしょ?リオンは焦りすぎよ!バチコン!!」

 

「ふざけている場合ではないっ!!」

 

「「!!」」

 

リューもまた、同じように考えていた。そして、なによりも。アルフィアの仇を、積年の恨みを、因縁に決着を、兎にも角にも、リュー・リオンというエルフは、ずっと、ずっと、義憤に駆られている。

そして、それがより明確になったのは、二年前。大抗争の時、なによりも、ファミリアの仲間であったアルフィアの死、それが、リューをより激情に駆らせていた原因でもある。

 

「アリーゼ……私は……」

 

「リオン……」

 

「アルフィアを、守れなかった。アストレア様から、聞きました。彼女の、()()について。」

 

「……」

 

「……なぜ、アルフィアは、教えてくれなかったのでしょう……私達は仲間、では、ないのですか?……アリーゼ、答えて、ください。」

 

怖かった。誰よりも強かった彼女を、守れる立場なんて言えない。言うつもりもない。だって、病気を患っていたとしても、アルフィアは最強であったのだから。だから、だからこそ、頼りにしていた節はある。

それが、悪いことなんて、誰も言えない。まして、リュー一人を責めれるわけもない。だって、誰も気づけなかったのだから、アルフィアの秘密を。

 

「……アルフィアが残したものはある。」

 

「!……アリーゼ……?」

 

「アルフィアは、いつもなんて言ってた?そんな、弱きでいて、アルフィアの暴力が働かないと思ってるの?リオンは、アルフィアの何を見てたの?」

 

「っ!……それは………」

 

「惰弱は許されない、脆弱はありえない、だから。だから、リオン……アンタはひとりじゃない、逸っていないで、ね?」

 

アリーゼはリューの肩を持って諭すように囁く。

 

「(……ここにいていいんだろうか?)」

 

蚊帳の外であるセシルは思った。ジーっと自分の先輩たちを見て、そそくさと部屋から出る。

 

「ふーっ。」

 

やっと、一息を着く。だってあんな空気で喋り始めるんだもん。何も出来ないわ。

 

「……ん?」

 

「あれ?」

 

そして、別のところに行こうと思ったらとある人が目に入る。処女雪の様な白い髪、宝石(ルベライト)の如く赤い瞳。あどけない顔、自身より年下であろう小柄な体躯。

 

「(あ、可愛い……)」

 

顔が赤くなるのがわかる。目の前の男の子はキョトンとしている。白い髪、もふもふそう。

 

「誰ですか?」

 

「え!あ、う……え?」

 

「?大丈夫ですか?」

 

「!……不法侵入……」

 

「へ?」

 

「アンタ!不法侵入でしょ!?何してんの!?」

 

「違いますよ!?」

 

「えー、ベル不法侵入だったんだー」

 

「うわー、逮捕逮捕〜。」

 

「憲兵〜〜」

 

「みなさん適当過ぎません!?」

 

セシルに不法侵入(犯罪者)にされ、ベルは焦りに焦る。というか、こっちのセリフなんですけど!?というか、何便乗してるんですか?ノインさんリャーナさんマリューさん!?ヤメテ!!?

 

「だって〜」

 

「不法侵入、かなーって」

 

「セルティさん!?」

 

「いや、だって……なんか、あれじゃないですか?」

 

「なにが!?」

 

「ベルって、怪しいよね〜」

 

「仲間にかける言葉じゃねぇ!!」

 

「まー、そうかっかしないでー?」

 

「させてるのは誰だよ!!」

 

仲間からも容赦ない追い討ち、ひでぇ。

 

「え……だれ、なんですか?」

 

「あ、ごめんごめん。この子はベル、ベル・クラネル。アストレア・ファミリアの団員だよ」

 

「はぁ、まったく……。貴方は?」

 

「え──ぁ…ご、ごめん。私、セシル、セシル・ブラックリーザ。今日から入ります……?」

 

「よろしくお願いします、セシルさん。」

 

そういうと、手を突き出してくるベル。うわー、ちっちゃい……てか可愛い。礼儀正しいし。

 

「?どうしたんですか?」

 

「─────え?」

 

そして、ようやくベルが手を突き出していた事に気づくセシルは慌てて手を取る。

 

「ごめんなさい!?」

 

「いや、そこまで謝らなくても……」

 

今まで歳も、入団時期も一番下だったベルに初めての後輩ができた。でも、この人、大丈夫なのかな〜なんて思う、ベルであった。

 

「……?なにか落ちましたよ」

 

「あれ?何か持ったっけ」

 

セシルが落としたそれ、それはステイタス洋紙である。

 

セシル・ブラックリーザ

Lv1

 

力 I0

耐久 I0

器用 I0

敏捷 I0

魔力 I0

 

■魔法

【】

 

【】

 

【】

 

■スキル

至高の鍛治(シュープリーム)

□打った武器に魔法への高耐性付与

 

□打った武器への強度増加

 

□一時的に鍛治の発展アビリティの発現

 

□武器を打つ時のみ効果は発動する

 

□武器に込める思いが強いほど効果上昇

 

 

「つっっっっよ。」

 

「あ、ステイタス……」

 

アストレア様から燃やすかぐしゃぐしゃにして捨てるかしろって言われていたのを忘れていた。

 

「すごいわね〜セシルちゃん」

 

「まあね!」

 

「アリーゼちゃんには言ってないわよ?」

 

「てかいつから居たんですか!?」

 

「ナイス反応!セシル〜!」

 

アリーゼがにゅにゅっと現れ、驚くセシル。笑うアリーゼ。呆れているみんな。

 

「セシル!言い忘れてたわ!」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

───アストレア・ファミリアへようこそ!!

 

 

 

 

 

 

「っ!はいっ!!」

 

セシル・ブラックリーザ、アストレア・ファミリアの新団員の鍛冶師は、認められた。




あとがき

なんか変かも。あとですね、フレイヤ様に関しては大抗争の時は忙しかったし、早々にベルがザルドと戦って脱落したんでそれで見つけられなくて、寝ている間は弱っていたから的な感じです。見つかりました。

えっと、今回、アイズやアーディが出たのは、全く意味がありません、チョイ役もチョイ役ですし。

まあ、それはソレとして。別シリーズ【ベル・クラネル人生上映会】の方も見て高評価、コメントおねがいします!

では、バーイ
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