静寂に連れられた白兎はオラリオへ行く。   作:如月悠

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本編開始時点
知らぬ子


 太陽が照らし出す昼下がりのメインストリートでは人と声が渦巻く渦巻く。けれど、そんな中でも悪意は牙を剥く。

 

「返せよ、それ……! お母さんのお金なんだ……!」

 

 少年の情けない叫びなんて、誰も振り向かない。

 財布をかっさらったスリだけが、人混みを楽しそうにすり抜けていく。

 

 ──その瞬間だった。

 

 路地の影から、ひゅ、と腕が伸びた。

 

「は?」

 

 スリの首根っこを掴んだ白い手。

 次の瞬間、派手な音が響く。

 

 べしゃっ。

 

「いっっっっっってぇぇぇぇえ!!?」

 

 スリが見事に石畳に張り倒されていた。

 何が起きたか分からず、周囲が一瞬だけ静まる。

 

 影から出てきたのは、白髪の少年だった。

 

「スリは、よくないよ」

 

 声は妙に落ち着いているのに、やってることは完全に暴力沙汰だ。

 スリの腕をひねり上げ、財布をひょいと取り返す。

 

「これ、君のだよね」

 

 ベル・クラネル、十四歳。

 もう“だいぶ慣れた手つき”でスリを制圧していた。

 

 ──その様子を、通りの向こうからじっと見ている影があることにベルは気づく。

 

「何やってるんですか……アーディさん」

 

 呆れつつそう声を零すと、バレたことに気づいたのかベルの前に姿を表す、アーディと呼ばれた少女。

 

「ありゃ、バレちゃったか〜」

 

 アーディはぺろっと舌を出して笑う。

 ベルはスリを放し、軽く埃を払って立ち上がった。

 

「……で、なんで見てたんですか」

 

「見てたんじゃなくて〜、通りかかっただけだよ?

 そしたらベルくんが影から飛び出していくから、つい」

 

「つい、じゃないですよ……」

 

「いやぁ、でも良かったじゃん。

 あの子、めっちゃ感謝してたよ?」

 

「……まあ、それは……よかったですけど」

 

 ベルは頬をかきながら、なんとも言えない顔をする。

 アーディはその反応が面白いのか、にやにや笑っていた。

 

「にしてもベルくん、動きが完全に“慣れてる人”だったね〜」

 

「慣れてませんよ……!」

 

「いやいや、あれは慣れてるよ〜。 べしゃっ、って綺麗に倒してたし」

 

「やめてくださいよ……恥ずかしい……」

 

 アーディは肩をすくめて笑い、

 ベルはため息をひとつ落とした。

 

「……とりあえず、行きましょうか。

 昼の街、混んでますし」

 

「はーい。ベルくんの護衛、がんばりまーす」

 

「護衛じゃないです!」

 

 そんな軽口を交わしながら、二人は人混みへと歩き出した。

 

 

 ■■■■■■■

 

 

 六年前、起きたあの日から、ベルはステイタス更新を拒むようになった。英雄になるため、と言ってアリーゼ達と鍛錬をこなしているのにも関わらず、更新しない。

 

 その根底には、大きな禍根があると知って。

 

 アストレアは大きな溜息をつき、ベルのステイタス用紙をみる。悪いと思いながらも、時々寝ている間にステイタスを更新するのだ。

 ランクアップを果たせばバレてしまうなんて、思いながらも一年に一回程度の更新を済ませている。

 ただ、ダンジョンにも潜っておらず、パトロールを何となくで続けているベルのステイタスにあまり変動はない。

 

「……はぁ……」

 

 ベル・クラネル

 Lv1

 力:SS 1119

 耐久:SSS 1359

 器用:SSS 1296

 敏捷:SSS 1409

 魔力:SSS 1450

 

 ■魔法

【トゥルエノ・ユスティーツ】

 □詠唱式【降臨せよ(ケラヴノス)

 

 □付与魔法

 

 □雷属性

 

【デス・イズ・プロヒビテッド】

 □詠唱【失われし禁術(チカラ)の復元、朽ちた(つるぎ)、砕けた意思(こころ)、無くしし栄光をここに】

【割れた仮面は破邪を殺す(やいば)となる。故に救う。癒せ、救え、成せ、浄化せよ】

【既に選定は果たされた。かつての最強、すなわち先達。かつての最恐、すなわち約定。救えぬ罪をここに、癒せぬ無力を糧に眼前のモノを救済せよ】

【我が力により、癒せ】

 

 □広範囲回復魔法

 

 □傷の治療、体力回復、状態異常及び呪詛の解除、全ての病の治癒

 

 □精神力(マインド)が続く限り効果永続

 

 □自動治癒(オート・ヒール)

 

【】

 

 ■スキル

英雄誓い(ヒロイック・オース)

 □早熟する。

 

 □思いが続く限り効果継続

 

 □思いの丈によって効果上昇

 

遥か彼方の静穏の夢(トワイライト)

 □逆行再現(フラッシュバック)

 

 □発動時、一時的にステイタスの向上

 

 □発動時、『俊敏』と『魔力』に強補正

 

 □広範囲に一定確率で強制停止(リストレイト)

 

 □成功確率は『魔力』のアビリティに依存する

 

 □詠唱式【敵は出た】【我の道を阻む者、正義の断罪を今ここに】【有罪(ギルティ)

 

 

 だが、かと言って弱いはずもなく、日々彼女たちに鍛えられているベルは、level 1最上位にいると言っても過言ではなく、level 2になりたて、ならばいい勝負ができるのではないのかと、思うほどの強さを有している。

 

「……? アストレア様?」

「あら、セシル。ヴェルフの所に行ってきたんじゃないの?」

「はい……あ、今日は早めに終わったんです」

 

 その時、背後から言葉がかけられる。

 ドアに手をかけ、こちらをじっと見ているのは自身の眷属、セシル・ブラックリーザ。ファミリア唯一の鍛冶師であり、level 2の末っ子である。

 

「何を見てるんですか?」

「ベルのステイタスよ。一緒に見ましょ?」

 

 そう投げかけるとぱっと目を開き、満面の笑みでこちらにてくてくと近づいてくる。

 

「はい! 見ます!」

 

 セシルは随分ファミリアに馴染んだようで、その性格からか、よく輝夜やライラを筆頭に皆からいじられている。どこか、頑固なエルフ味を感じるセシルは皆からしたら守りたい末っ子、ついでにいじり倒したい。

 なので、可愛がられている。

 

「……ベルは相変わらずですね」

 

そんな末っ子より末っ子をしているのが、セシルより前に入ったベルだ。呆れ顔をしているも、その強さに嫉妬して、鍛錬では輝夜に焼きを入れられている。

 

「そうね」

 

愛しい眷属達のハチャメチャは、アストレアにとって見ていて楽しい。嬉しいものだ。今はアリーゼ達が遠征に行っているから、見れるわけではないが、その心はいつだって変わらない。

 

「ただいま戻りました〜!」

 

その声に、二人の笑みは深くなるのを感じた。




あとがき!!!!!

今回短くてごめんなさい!
スランプスランプスランプって感じで、前の投稿から1ヶ月もすぎてんの!?ってなって、急いでやりました。
まぁ、文章的な成長をしている……と、思いたいって感じなので許して欲しいですかね。

あと、pixivの方にお題箱を作ったので良ければみんな入れてもられたら嬉しいでーす

それでは、またね〜

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