静寂に連れられた白兎はオラリオへ行く。   作:如月悠

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前書き!

前回よりも遅くね?と思った人すみません。
あと本当にコメントとか嬉しいんでやってくれるといいな〜って、まあ、気が向いたらお願いします!

では、本編どうぞ!


正義問われる妖精

「…………」

 

月が街を照らし、雲の間から見え隠れする月夜。

そんな街の外壁の上に佇む男、全身を外套で隠しており身長は2mを超える巨体の男。

そんな男に白髪の男が一人話しかける。

 

「何をしている?」

 

「眺めている。記憶のものと大して変わっていない、この風景を。強いて言うなら……懐郷(かいきょう)か。」

 

街を眺め、男の方を振り向かず外套の男はそういう。そして逆に男に言う。

 

「お前は、誰だったか?」

 

と。

そして、その問いに声を大きくし、男は答える。

 

「……オリヴァスだ。混沌の使者にして、闇派閥(イヴィルス)の幹部!」

 

その答えに興味無さそうにしている。巨体の男

 

「そして、今は貴様の同志!」

 

そんなことを言うオリヴァスなんちゃら。

 

「だからこそ問いたい……我が同志よ、なぜ冒険者どもを殺さなかった?」

 

「……」

 

「第二級冒険者などそれこそ脅威!貴様の力を持ってすれば鏖殺など容易い筈!それをあえて見逃すなど、一体どう言う──」

 

「蟻を食ったことあるか?」

 

「は……?」

 

オリヴァスは訳が分からなかった。

熱弁していたのを遮られたと思ったら、いきなりそう聞かれた。意味がわからない。

 

「蜘蛛は? 蜂は? 蠍は?」

 

男はまだ街を見ながら小さい声で問う。

 

怪物(モンスター)を喰って生き長らえたことは?化物の灰で喉を潤したでもいいぞ。」

 

「な、なにを、言って……」

 

()()()()()()()()。理由は様々だが、同胞と呼べるもの以外は、およそ()()()()()。」

 

「!!」

 

オリヴァスは絶句した。目の前の男は同胞……つまり人間以外のもの全部を食べたといった。

 

「俺は『殺す』ことと『喰う』ことは同じだと思っている。生き延びるために殺す。生き繋ぐために食す。」

 

男はとある一点をみつけそういった。

 

「手段は異なっても、差異はあるまい。血を浴びるか、啜るか、それだけの違いだ。」

 

「な……何が言いたい!?」

 

最初の余裕はどこへやらオリヴァスは外套の男の話を聞いていた。

 

「俺は『悪食』を極めてここにいるということだ。そして『悪食』にも喰うものを選ぶ権利がある。」

 

そして、オリヴァスは息を飲んだ。そして、オリヴァスの方を見て言う。

 

「見るに、お前は『偏食』だろう。自分より小さい女子供(かじつ)を好み。己よりでかい強者(けもの)を嫌う。口にしたものは精々自分と同じ蟲止まり。」

 

そして、男は言う。

 

「『蛆』の味しか知らないのなら、お前等が『蛆』を喰らえ。俺に『蛆』を喰わせたいのなら、せめてまとめて、いっぺんにだ。」

 

吐き捨てるように、呆れるようにいう男。

 

「『蛆』は不味いぞ?吐き気がし、落胆する。こんなものが自分の血肉になると思うと、いっそ喉を掻き毟りたくなるほどに。」

 

「……………は、ははっ。はははははははははははははははははは!?」

 

何を狂ったか、笑うオリヴァス。

 

「蛆っ、蛆か!冒険者がっ、Lv.3(レベル・スリー)の実力者が貴様にとっては害虫!畜生ですらなく!!ふははははははっ!?」

 

そして、笑いを止めてオリヴァスは表情を引き締めて外套の男にいう。

 

「……いいだろう、害虫の駆除は我々が済ませる。しかし『開戦』の暁には、その力、遺憾無く発揮してもらうぞ。」

 

そう言って、オリヴァスはその場を離れる。

 

「……千の歴史が途切れた大地。俺は『失望』に耐えられるか、否か───」

 

そう、こぼす男。

 

「……後は、そうだな。俺も、あいつの成長を見届けたかったな。お前は、厄災を、黒龍を、倒すことが出来るか?」

 

小さな館を見て、そういう。

 

「期待しているぞ、俺達の末席。そして──」

 

少し見える口元を緩ませ、言う。

 

「"最後の英雄候補"よ。成し遂げろ、大いなる厄災をも跳ね除ける勢いで。」

 

外套を外し、その顔を見せる。誰もいないことを確認しての行動だ。

 

「お前は、挫折せず、挫けず、進んで行けるか?…いや、それはいらない心配だったな。あの女神なら、何とかしてくれるだろう」

 

最強の意志を次ぐ、その名に相応しい強者、その顔には傷があり、男らしい筋肉質な身体、見るからに強そうな人物。名を──

 

「英雄となれ、もう何も言わん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザルド、【ゼウス・ファミリア】の生き残り。

 

 

────────

【星屑の庭】にて

 

 

「へくちっ!」

 

「大丈夫?ベル君。」

 

ん、まりゃ、むりぃ(ん、まだ、むり)…」

 

朝ごはんを食べ、率直に言うと、ベルは熱を引いていた。その原因はアイズとの戦いのせいで、普段使わない全力を一気にだし、身体に負担を貯めた為だった。その為、非番であるマリューが見ていたのだ。

 

「熱は……まだあるね。ゆっくり寝てね?」

 

「い、いやぁ……おかあしゃん…いやぁ」

 

絶賛イヤイヤ期、なのか?まあ、熱のせいでいつもの達観している様子は見る影もなくなり年相応の感じになった。

 

「あはは……アルフィアは今ご飯を買いに行ってるよ。消化に良い奴をね。」

 

「…むぅ……。」

 

苦笑いするマリューに不貞腐れているベル。アリーゼ達は巡回のためいないのでマリューしか話し相手がいないのだ。

 

「アストレア様は……?」

 

「アストレア様は孤児院に行ったあと、ロキ様と神フレイヤに呼ばれたらしくてね。居ないんだよ。」

 

「そっか……」

 

少し残念そうにするベル。それにまた、苦笑いをするマリュー、まあ、好かれている証なのだろうというのは分かるが。

 

「あ、そういえば、アストレア様、言ってたよ?」

 

「ん……?」

 

苦笑いをやめ、マリューは伝言をベルに伝える。

 

「『無茶しすぎたら、ダメよ?熱を治したら一緒に出掛けましょう?』だって。」

 

羨ましいぞーこのやろー。とベルの頬を突っつきながらマリューはそういう。

 

「……え、へへ…」

 

嬉しさで少し笑みが出る。

 

「そうだ、それと、昨日のステイタスだよ。」

 

そう言ってベルにステイタスを渡す。

 

ベル・クラネル

Lv1

力:H109

耐久:I 84

器用:I75

敏捷:H123

魔力:I98

 

■魔法

【トゥルエノ・ユスティーツ】

□詠唱式【降臨せよ(ケラヴノス)

 

□付与魔法

 

□雷属性

 

【】

 

【】

 

■スキル

英雄誓い(ヒロイック・オース)

□早熟する。

 

□思いが続く限り効果継続

 

□思いの丈によって効果上昇

 

遥か彼方の静穏の夢(トワイライト)

逆行再現(フラッシュバック)

 

□発動時、一時的にステイタスの向上

 

□発動時、『俊敏』と『魔力』に強補正

 

□広範囲に一定確率で強制停止(リストレイト)

 

□成功確率は『魔力』のアビリティに依存する

 

□詠唱式【敵は出た】【我の道を阻む者、正義の断罪を今ここに】【有罪(ギルティ)

 

「あたらし…い、スキル?」

 

「うん、そうっぽいね。……でも」

 

マリューはベルのステイタスを見つめる。早熟があるにしてもトータル300以上は普通の冒険者にしてはありえない。そして、新しいスキル、効果欄。

 

逆行再現(フラッシュバック)

 

これが何を意味するのか、嫌な予感がする。けれど、アリーゼでは無いマリューの勘は余り当たらない。だからこそ、気のせいだと思った。マリューは視線をベルに移した。

 

「…ん?どーしたの……?マリューさん」

 

「…ん?いや、なんにもないよ?」

 

そういってベルの頭を撫でる。マリューのナデナデに嬉しそうにするベル。でも、少し目を細めて

 

「おかあさん……早く帰ってきてくれない…かな」

 

ベルはそういう、Lv.2であるマリューにはどれだけ小さく言われても聞こえてしまった。

 

「……そうね。じゃあ……」

 

そして、またベルの頭に手を置いていう。

 

 

「お姉ちゃんと、一緒にいよーね?」

 

 

それはまるで聖母のように。

 

「ん、まりゅーおねーちゃん…」

 

「──────」

 

初めて言われた、ベルからの呼び方にマリューが固まる。アリーゼ達に言ったら絶対に羨ましがるだろう呼び方。

 

「ねねっ!!もっかい!もっかい言って!?」

 

「どわぁっ!?」

 

マリューの意識が戻ったと同時にベルに飛びついてく、そして押しつぶされるベル。

 

「あ、ごめんね……?」

 

苦しそうにしているのがわかったマリューはベルからどいてベルに心配の言葉をかける。

 

「ぅぅ……」

 

 

─────────

アストレア視点

 

 

一つの喫茶店に、集まる3人の女神。超越存在(デウスデア)故に、全員の顔が整っている。

そして、1人の女神が口を開く。

 

「ごめんなさい、遅れてしまって。」

 

「ホンマ遅刻やー。うちらを待たすなんて、随分偉うなったなぁ、アストレアぁ?」

 

アストレア、と呼ばれた女神。胡桃色の髪に、その悩ましいお胸、白を基調とした清廉とした衣装を纏い、その姿は、女神だった。

 

「率先して三下に成り下がろうとするの、流行りなの、ロキ?……アストレアは、また子供の面倒?」

 

はぁ、ため息を着きそうな顔をするのは、都市最大派閥と名高い、【フレイヤ・ファミリア】の主神、美の女神フレイヤ。鈍色の髪をした絶世の美女。

 

そして、ロキと呼ばれた女神。赤髪を後ろで一つにまとめて、瞳を薄く開けているのが特徴的で、アストレアとは対称的なその胸、それは、いろんな神に無乳と呼ばれたロキ無乳とか、不名誉にもそう呼ばれている。そして、本人はトリックスターと呼ばれていて、その名の通り曲者で、何考えているか読めん 神である。

 

「ええ。孤児院で少し。後は商店街の手伝いを。孤児(子供)達の力を借りて、スープを作って回ったの。」

 

「かーっ、出たわー。『正義』なんか知らんけど自己満足の偽善〜。うちらも大概やけど、少しは女神としての自覚を持てや。」

 

アストレアの答えにまたもや噛み付くロキ。そして、それを苦笑いで返す。

 

「貴方が大好きなお酒で管を巻くのと、似たようなものよ、ロキ。これは私の趣味のようなもの。」

 

そういうアストレア。

 

「それに、眷族(アリーゼ)達が都市のために戦い続けている。それなら主神(わたし)も、何か行動を起こさないと示しがつかないわ。」

 

真っ直ぐな瞳でそういうアストレア。

 

「……その純粋面(ピュアづら)が気に食わんって言うとるんや。同じ鼻につく神でも、即実力行使の純潔神(アルテミス)の方がマシや。」

 

悪態をつくように吐き捨てるロキ。

 

全知零能(いま)のうちらで、下界全部に公平に接することなんてできひん。エゴとわかった『正義』の実践……うちは自分のこと、好かん。」

 

「別にいいじゃない。私は好きよ。下界でしかできない無駄なこと。私も今度、アストレアの真似事をしてみようかしら?」

 

ロキの話にアストレアを擁護するのは美の神たるフレイヤだ。そうするとロキがため息をついた。

 

「ったく、どいつもこいつも……こんな偽善者と色ボケが子供達の間で人気なんやから、下界()も末やな〜」

 

「ふふっ、貴方の言う通りね、ロキ。……それよりも、私がこの『お茶会』にお邪魔してよかったの?」

 

微笑みながらロキとフレイヤにそう聞くアストレア。

 

「私の【ファミリア】は、貴方達より勢力がずっと下だけど。」

 

「ただ駄弁って情報を共有するだけや。不真面目な神々(れんちゅう)より、糞真面目に警邏しとる自分んところの方が情報も見解も豊富やろ。」

 

「それに、私は貴方個人のことを気に入っているわ。眷属も粒揃い。アストレアの子じゃなかったら、奪っていたもの。」

 

フレイヤは2人に対してそういう。

 

「やめろや、その悪癖!ホンマいつかイシュタル辺りと全面戦争しそうやな、クソ収集家(コレクター)……」

 

「褒め言葉として受け取っておくわ、フレイヤ。……でも、その理屈ならガネーシャは?」

 

アストレアは疑問を口にする。

 

「子供達が憲兵として活動する彼の意見こそ、必要じゃない?」

 

当たり前だ。【アストレア・ファミリア】が正義の派閥として活動していても憲兵として街を警邏し、ギルドの信頼を得ている【ガネーシャ・ファミリア】の方が見識も、情報も豊富なはずだ。だから、アストレアには分からなかった。

 

「「うるさいから呼ばなかった。」」

 

「あぁ……」

 

納得しかない。(By作者

 

『俺がガネーシャだぁあああああああああ!』

 

とどこかでガネーシャの咆哮が聞こえたとか。

 

『……一発芸やります! 俺がガネーシャだ!!』

 

『うわ、うるせえ!でもなんか元気出た!ありがとうございます、ガネーシャ様!』

 

『女性人気も抜群!それがガネーシャだ!』

 

『もぅうるさい!!でも悩んでるのがバカバカしくなったわ!感謝します、ガネーシャ様!』

 

『俺がっっっ、ガネーーーシャだぁ!』

 

『『『マジで本当にうるさい!!!』』』

 

『でも力が漲ってきた!!!』

 

『いつもありがとうございます、ガネーシャ様!!!』

 

そういうやり取りを見ている2人の憲兵が呆れていたのだが、知る由もない。

 

『お姉ちゃーん。私達の神様、止めなくていいのー?』

 

『私は知らん。もう、何も知らん……』

 

可哀想なシャクティさんや。

 

「それじゃあ、『お茶会』の方を始めましょうか。ロキ、貴方、ヘルメスのところに依頼を出したのでしょう?」

 

「ああ。ま、うちやなくてフィン達やけどな。ここに来る前、【万能者(ペルセウス)】が一人、館に尋ねてきたわ。」

 

そして、『お茶会』は進んでいく。

 

 

───────

夕焼けに染まるオラリオの街並み。

そんな時、1人の妖精に話しかける男神の姿。

 

 

「──リオンちゃん。」

 

曲者揃いの神の中で地味神(目立たない)部類の神である目の前の男神、名を

 

「貴方は……神エレン?」

 

「奇遇だね。また街の巡回かい?さすが、正義の眷属だ。」

 

いつぞやの胡散臭い神こと神エレンである。

 

「あらあら、どちら様ですか、この男神様は?神なのにイマイチぱっとしないので、感想に困ってしまいます。」

 

極東美人(毒舌のかぐや)がそう言った。

 

「アリーゼが言ってた、例の胡散臭い神ってやつだろう?あの大した金もねえ貧乏神の。」

 

ピンク髪の小人(捻くれ者のライラ)が吐き捨てた。

 

「ひゅー!初対面なのに辛辣ゥ!一応神だからもうちょっと敬意をもってくれるとお兄さん嬉しいんだけどなー!」

 

軽薄で何を考えている分からない神というのが今【アストレア・ファミリア】での評価だ。

 

「神々の中でも純潔神(アルテミス)に並ぶ善良派+彼女より遥かに穏やかなアストレアの眷属でしょ、君達!?もっと淑女しようよ!」

 

「あら、アストレア様のことをご存知なので?」

 

「勿論!アストレアと言えば優しいお姉さん代表!癖のある女神の中でも彼女だけは一点の穢れなき清廉の象徴ッ!」

 

でも!アストレア様は眷族をからかっている時がいちばんかわいいです!いえっさー!

 

「柔和かつ慈愛の塊、女神の中の女神!膝枕されながらヨシヨシされたいランキング堂々の第一位!」

 

あれ?そのランキング何処かの話で聞いたぞ?具体的には一話目くらいってなる人出てくるからパクるなぁ!(ぱくったのは主である)

 

「アストレアは男神共(俺たち)の母になってくれるかもしれない女神なんだ!!!」

 

「「きもっ」」

 

「やっぱり辛辣ゥーー!!」

 

「何をどう指摘すればいいのか私には分かりませんが……神エレン、なんの御用でしょうか?」

 

話の腰をおり、本題へと戻すリュー。

 

「いや?フラフラしてたら君を見かけたから。暇つぶしに話しかけただけ。」

 

「神の暇つぶしほど面倒なものはのぅございませんね。」

 

「あとは……そうだな。ベル君はいないのかい?ちっこい白い男の子。」

 

神エレンのその言葉に全員の顔が強ばる。

 

「なぜ、ベルを?」

 

「簡単さ、前に聞きたいことがあったんだけどね聞き忘れてしまってね。」

 

「なぜ兎様なんでしょう?」

 

「ん?……まあ、あの子に助言しとこうかなってね?俺一応神様だしー?」

 

「その、助言つうのは?」

 

三者三葉、己の気になったことを聞く。そして最後のライラの問いに薄笑いを浮かべ言う。

 

「『優しすぎるのは時として毒だ。』かな?」

 

「「「!?」」」

 

神エレンの言葉に3人は何を浮かべたのだろう。

 

「どうしてそれを?」

 

「あれは優しすぎるだろう?君たちがいつまでも街を巡回しているのと同じ、()()()なんだ。」

 

「不健全とは?」

 

答えを求める子供のように尋ねるリュー。

 

「まあ、じゃあ聞くけど、巡回ってさあ、いつまでやるの?」

 

「……?どういう意味ですか?」

 

「言葉通りさ。毎日、君達はこの都市の為に無償の奉仕をしている。じゃあ、君達が奉仕しなくなる日って、いつ?」

 

「……無論、『悪』が消え去るまで。都市に真の平和が訪れた時、私達の警邏も必要無くなるでしょう。」

 

当然だ、と言わんばかりにリューは神エレンの問いに答える。そして、神エレンは片方の目を少し開け

 

「君達の『正義感』が枯れるまで、じゃないんだ?」

 

「……何が言いたいのですか?」

 

神エレンに募るのは、嫌悪感。

 

「見返りを求めない奉仕ってさぁ、きついんだよ。すごく。俺から言わせればすごく不健全で、(いびつ)。だから心配になっちゃって。」

 

そういう神エレン。

 

「優しさだって、人に振りまけば疲れちゃうんだよ?だって、自分を蔑ろにするから。」

 

それは!なんて言えない。当たっているから。

 

「君達が元気な今のうちは、いいかもしれない。でも、もし疲れ果ててしまった時、本当に今と同じことが言える?」

 

「……男神様?わたしく達にいちゃもんとやらをつけたいので?」

 

少し怒りを含んだ声色で神エレンに言う輝夜。

 

「まさか。俺は君達のことをすごいなぁと思ってるよ。いや本当に。俺には絶対できっこないことを、誇りさえもって臨んでいるんだから。」

 

嫌悪しか湧かないこの男神に、癪に障る。

 

「君達が儚く崩れ落ちた光景を目にした時……とても悲しくて、そして禁断めいた興奮を抱くんだろうなぁ、って……そう思う。」

 

「「っ……!」」

 

「いい加減、不愉快になってきたぜ、神様。うちの武闘派はどっちも沸点が低い猛犬なんだ。」

 

神エレンの言葉にそろそろでキレそうな2人の代わりに、ライラがそういう。

 

「噛みつかれる前にちょっかいかけんの、止めてくんね?」

 

「へぇ〜……いいね、蛇の道も知ってそうな、その冷たい瞳。君みたいな子がいるから、正義の派閥も破綻せず回るんだろうな。」

 

その言い回しが癪に障ったのかライラは目つきを変えずにリューと輝夜に言う。

 

「いくぜ、リオン、輝夜。構うだけ手の平の上で転がされるだけだ。神の娯楽に付き合う義理はねえ。」

 

そう言ってさろうとする。

 

「ごめんごめん。じゃあこれで最後にするよ。質問に答えてくれたらちょっと意地悪なお兄さんはここから消える。約束しよう。」

 

「……その質問とは?」

 

リューは律儀にも答えるため神エレンに聞く、そしてその質問はリューを困惑させるものだった。

 

「『正義』って、なに?」

 

「……なんですって?」

 

『正義』、多くの人がどういうのを想像するだろうか?今この下界に強者以外に必要なもの。

 

「俺はさ、今とても考えさせられるんだ。下界が是とする『正義』って何なんだろうって。全知零能の神の癖に、」

 

片目を少し開き、その不気味さを増加させる。

 

「未だ下界に提示できる絶対の『正義』ってやつに確信が持てない。ま、それは俺がしょーもない事物(もの)を司ってるせいかもしれないけど。」

 

自虐にも取れないことを言いながらリューじっと見つめる神エレン。

 

「でも、だからこそ君達に聞いてみたいんだ。正義を司る女神、その眷族たる君達に。」

 

「相手にすんな、リオン。」

 

「言えないの?やっぱりわかってないのかな?自分たちが掲げてるモノでさえ。」

 

こんなこと言われたらリューは黙ってない。それがわかっているからこそライラが止める。

 

「……ッ!いいでしょう、その戯言に付き合います。答えなど、決まりきっているのだから。」

 

けれど、リューはまんまと神エレンの挑発に乗ってしまった。

 

「ならば、『正義』とは?」

 

「無償に基づく善行。いついかなる時も、揺るがない唯一無二の価値。」

 

これが一番だ、と言わんばかりにリューは神エレンに答えを告げる。

 

「そして悪を切り、悪を打つ。──それが、私の正義だ。」

 

「ふぅむ……なるほど。つまり善性こそが下界の住民の本質であり、『巨悪』ならぬ『巨正』をもって世を正そうというわけだ。」

 

そして、神エレンは煽るように、侮るようにリューをみて言う。

 

「善意の押し売り、暴力をもって制す──力ずくの『正義』だ。」

 

「ッ……!そんなことは言っていない!巨悪に立ち向かうには相応の力が求められる!でなければ何も守れないし、救えない!」

 

リューは神エレンの言ったことに怒り、今にも掴みかからん勢いでそういう。

 

「おっとごめんよ、バカにしてる訳じゃないんだ。君が言ってることはきっと間違ってはいないし、」

 

それに、と付け加える。

 

「それくらい単純な方がちょうどいいと俺も思う。哲学や倫理で小難しく丸め込んでも、万民(せかい)には届かない。」

 

言っていることは正しいのだろう。神エレンもリューも、リューの言うように力がなければ何も救えない、成せない。だからこそ神エレンが興味を抱くのだろう。リューに、そしてベルに。

 

「ただ……『悪』が同じ理論を展開した時、どうなるのか。興味が湧いたよ。」

 

「わたくしは先程から、不快な感情が湧いて仕方ありませんが?」

 

神エレンの話を止めるように輝夜がそう言う。

 

「悪かったよ、身も心も美しい眷族達。時間を使わせてしまって、すまなかった。でも参考になったよ、ありがとう。」

 

「アタシはもうアンタの玩具にされるのは御免だな。もうその胡散臭ぇ笑みでアタシ達の前に現れないでくれ。」

 

そう言って輝夜とライラは神エレンを置いてその場を去っていく。

 

「リオン。」

 

リューも行こうとしたところ、神エレンがリューの名を呼び、とめた。

 

「やっぱり君は高潔だ。君達に出会えてよかったよ、本当に。リオンも、ベルも。」

 

そう言って去っていく。

 

「……敵意も悪意もない、どころか好意すら持って接してくる。しかし……。」

 

誰もいなくなったストリートで言うリュー。

 

「何なのですか、あの神は。」

 

そうして、輝夜とライラの方へ行く。

 

 

大抗争まで、あと7日───

 

 

 




後書き!

そういえば、本来だったらエルフの森の大聖樹が取られるという事案が発生するんですが、今回はアルフィアが闇派閥側に行ってないので起こってません!

だからアーディ達の出番が着々と減っている……。

まあ、今後もしかしたら、百万分の一の確率でメインヒロインになるかも?しれないので。

乞うご期待ということで、また見てください!
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