本当にすみません!
悪が胎動する真っ只中。
傷つけられる人は数しれず───
天に帰る魂は既に百を超え───
そんな巨悪の台頭。
そして、それは彼らと対する『正義』にも向けられたのだった。
「─────!!」
「アリーゼ!どうした!?」
団体となって走っていたアストレア・ファミリアは団長アリーゼが止まり、全員が止まる
「……アストレア様が危ない。」
「なにっ?」
正義の女神、アストレア。彼女らの主神。そして彼女らが敬愛する女神。そんな彼女の安否に関わる問題が
「理由、わかんない。でも、
誰よりもアストレアを敬愛し、逆にそのせいで失礼な行為も数々行っているアリーゼ。
「ま、待ってくれよアリーゼ!探すたって、ここを離れる余裕なんて……!」
ふざけ散らかし、締めるところを締めないいい加減ぷりを発揮するアリーゼ、けれどそれでも彼女は────
「……いや、いい。ネーゼ、イスカ、マリュー。アリーゼと一緒にいけ。」
「ライラ!?」
それでも
「うちの
「もし本当にアストレア様に何かあれば、アタシ達はそこで終わる。こっちはガネーシャの連中と合流して、何とかやってやる。」
そういう
「ごめんなさい、ライラ!任せたわ!」
「もしくたばっちまったら、天界から唾吐きまくってやるからな。」
そう悪態をつく。
「ダメよ!死んじゃダメ!ボロボロになったって、私が許さない!」
けれどそれすらも無茶を言ってくる。
「団長命令!耐えて!そんで、生きて!!」
「……早く行っちまえ、ばーか。」
そうして、アストレア・ファミリアは二つに分かれた。市民誘導班、アストレア捜索班。
けれど───
誰も気づいていなかった。誰も知らなかった。誰も彼もが気づく余裕すらなかった。
「……よし、早く行こうぜ──」
「───っライラ!!」
「んだよ、リオン!何あった!?」
そう、この瞬間まで、予想だにしなかった。
けれどリューだけが気づき、慌てた。
「………………ません。」
「あ!?」
「ベルがいません!!」
先程まで母を失い泣いていた少年。白き輝きは見渡せど、どこにもなかった。
「……っ…くそぉっ!!」
それに誰も気づけなかったことにどうしようもなく不甲斐なさが襲いかかってくる。
□□□□□□□□□
「───止まれ、アストレア。」
「!!」
「何かが、来る。」
ヘルメスはアストレアにそう言った。
そして都市が煙火に燃え盛りしも、聞こえるは邪悪の足音、人?いや、神?さあ?誰かなんてわからない。だってこの
──悪が、蠢いた。
都市を焼き、悲鳴を呼び起こす業火でなお、照らし出すことの出来ない暗黒の奥で、何かが蠢動した。
うねり、歪み、ねじ曲がり、ギチギチと、ゲラゲラと、縛るように、嗤うように、音を立てて、その漆黒の眼差しで私たちの身を貫く。
まるで肉を裂く
「アストレア様!!!」
「───!アリーゼ……?」
その時、自身の眷属であるアリーゼが来た。
「ご無事ですか!なんだかすごく寒くなって、
けれど、安心は出来ない。なぜなら
「我が身を顧みず、挺身し続けた正義の女神。故に見つけるのに時間がかかってしまった。」
悪が動いたから。
「正義を司る君だけは真っ先に葬り、この地を
誰もが動けない。業火に照らされ、その漆黒の目は赤き火炎のように染まるその瞳。
「
悪は嗤い、正義を殺す。
「そして、
赤眼かのように赤く光る瞳はまるで冷徹。
その
「貴方は────」
「お前は、まさか……!」
「い、今のは……」
誰もがいや、正確には神々は誰かわかってしまったのだ。
「……………………………………神?」
けれど、アリーゼにはわかった、わかってしまったんだ。その神物を。
「……ヘルメス、追うわ。追って、確かめなくては!」
「駄目だ、アストレア!」
追おうとするアストレアをヘルメスが制す。
「今はよせ、今は行くな!」
ヘルメスには分かる、先程の神物も、これから起こりうる嫌な予感も。
「『途轍もない何か』が、この場所で起きようとしている!今すぐここを離れて──」
だが、理解するには遅すぎた。
「………………………………え?」
「あれは────」
誰かが泣いた。
「嘘やろ……」
誰かが絶望した。
「あれは……」
もしくは、理解した。
「光の柱……」
「『神の送還』────!」
さあ、開幕だ。
ひとーつ。
「なんだと……連続、
「馬鹿な……!?」
「っ……!?」
ふたーつ。
「うそ……」
「……おい、まさか……」
みーっつ。
「主神のクソ野郎が…やられちまった……?」
「お、『恩恵』がないと……俺たちはっ!!」
「──助けてくれぇえええええええええ!!」
よーっつ。
「ハハハハハハハハッ!ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
悪は嗤う
「本当に、ゴミみたいに冒険者が殺せるじゃねぇーか!!」
だって、それが策略なのだから。
「最っ高だぜぇ、神様ぁ!!てめぇがやっぱり、最凶だぁ!!」
それが『邪悪』の本質なのだから。
「
五つ。
「【ベレヌス・ファミリア】主神、送還!」
「【ゼーロス・ファミリア】全滅!!」
「送還……全滅……?『神の恩恵』を失った冒険者が、
それは、
「止まりません……止まらない!!【ファミリア】の虐殺が!?」
「ば、馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁあ……!?」
むーっつ。
「がっっ、はぁ……!?」
「……破壊!蹂躙!虐殺!!いいですねぇ、実にいい!!」
狂った狂人、邪悪の神の眷属。
「なんて鮮やかな血の宴!まるで童心に帰ったかのように!!」
「降伏するっ!降伏するから!!だからやめてっ、やめてくれええええええええ!!!」
「止まりませんよ、止まりませんとも!だって、ここに『英雄』はいない!『
なぜならば。
「偉大なる『英雄』は、既に堕ちたのだから!」
「……壮観だな。……これで壊滅寸前。脆い、弱い、あの神でなくともこうなったのでないかとも思えてしまうな。」
【
「嘆かわしい。……そして、なんとも言い難い」
最強は失望し、最恐は見捨てた。
「嗚呼、アルフィア……ベル。こうなるなんてな。……悪く思わないでくれよ。」
最強と最恐は白き少年を愛していた。
「ひひ、ひひひひひひひひひひひひッ…!!」
悪は高らかに勝利を確信する。
「始まるぞ、オラリオの崩壊がぁ……!くふふ、フハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
七つ、八つ、九つ……
『生贄』は終わった。さぁ、行こう──
「……終わりだ。」
そういったのはネーゼだった。
「終わりだよ……もう、オラリオは……」
「ネーゼ!」
「神の『一斉送還』……」
「今日までの
無差別だと思われていた攻撃は計画の一部
「無差別と見せかけ、都市全域で事件を起こし、神送還の
全てが計画、全てが
「こんなことが、できるのは───!」
──聞け、オラリオ。
──聞け、
──《約定》は待たず、《誓い》は果たされず。この大地が結びし
──全ては神さえ見通せぬ最高の『未知』、純然たる混沌を導くがため。
──傲慢? 結構。
──暴悪? 結構。
──諸君らの憎悪と怨嗟、大いに結構。それこそ邪悪にとっての至福。大いに怒り、大いに泣き、大いに我が惨禍を受け入れろ
その瞬間、視界が点滅した。その瞬間、とあるエルフが木刀を落とした。自分の目に映る全てを拒み。
理解を恐れ、理解ができず、ただ呆然と二人は見ているしか無かった。
──我が名はエレボス
そして、『覇者』は邪神と共に姿を現した。
──原初の幽冥にして、地下世界の神なり!
「……神、エレン……
──冒険者は蹂躙された!他ならない、より巨大な力によって!!
──多くが還った!耳障りな雑音となって!
そして、その言い回しに、言葉選びに、正義を司る女神と使徒達は強烈な怒りを覚えた。
醜悪なる神の宴、邪神の
──貴様らが【巨正】をもって混沌を退けようと言うなら!我らもまた【巨悪】をもって秩序を壊す!
告げられる猛烈な皮肉。
それは、いつか聞いた言い回しであった。
──故に、告げよう。今の貴様らにピッタリな言葉を
吊り上がるは唇。高らかに静かに手を上げ突きつける。
────脆き者よ
───汝の名は
【正義】なり