デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション) 作:シグレサメ
ゴルギーニ・タウンはドラン・ゴルギーニ達メカ・デル・ディネロ達の元に戻ってきた。黒幕達を追いたいのは山々であったが、まずは街の機能復旧ということでゴルギーニ兄弟は文字通り走り回り、一旦ドランが動かなくて良くなるまでにクリーチャー世界で10日(人間世界なら5日)かかったのだった。
「はぁ…流石に…疲れました」
『お疲れ様ですドランさん、ゆっくり休んでください』
ドランはカードを通して世界の外にいる御白と話している。ドランと一緒に御白がバジリスクを追い払ったこと、この期間の間に御白も精力的に手伝ったことで、メカ・デル・ディネロ達からの評判は良いものとなっていた。
「大丈夫です、次は黒幕の居場所探しをしなければ…」
『…そうですよね、バジリスクさんが言っていたこと、気になります…』
ドランがこれらの仕事をこなしている間にアストマープル、ブルトゥーラのような小回りのきくクリーチャー達に黒幕探しを頼んでいたのだが、状況は遅々として進まなかった。
『やっぱり、私も手伝った方が良いのでは…』
「それも考えましたが光文明は広大すぎます。自然文明からゴルファンタジスタの仲間を数体見つけ出すのにすら14日(人間世界で7日)です、時差の軽減があるとはいえ人間の御白さんにやらせる事ではないと思います」
『…バジリスクさんは水文明のクリーチャー、別の文明にあるんじゃないですか?それでドランさんが光文明を探さなきゃいけないのを見越して時間が足りないって…』
「それをやりたいのは山々ですが…私は光文明の一部、ゴルギーニ・タウンの統率者です。何処かに徴兵されたクリーチャーが居るなら見つけなければなりませんし、何より光文明の民の安全を確保しなければなりませんから」
『そう、ですよね…』
言葉に詰まる御白に対し、ドランは励ましの言葉を預ける。
「そちらの世界では『なつやすみのおわり』に近いんですよね、文化祭が近いのではありませんか?」
『え!?いや、そんな話されても…』
「大事なことです。私は御白さんの相棒をやっていますから、御白さんが元々文化祭を楽しみにしていたことは分かっているつもりです。文化祭までにこちらも片付けますから、あなたはあなたのやるべき事をやって下さい」
『ドランさん…ありがとうございます…。自分でも楽しめるようにやってみますね』
そう言って御白との連絡は切れる。御白の楽しみにしていた文化祭に暗雲が差すのは、ドランとしても本意ではない。
「罠に飛び込みに行っているのは分かっていますが…。久しぶりに戻ったこの場所は、やはり煌びやかで重たい場所ですね…。ゴルギーニ・タウンそのものが、車体に乗っているようなものですから」
ドランは元のようにネオン煌くゴルギーニ・タウンを眺めながら、遠くどこかを見るような目をしていた。
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少し時は遡り、御白達がクリーチャー界に行っていた頃のこと。
「おーい夕哉、次これ頼む!」
文化祭の準備が進み、夕哉はクラスの文化祭の準備に参加していた。文化祭は土曜日に行われ、一般向けに開かれ、後夜祭は学内だけというスケジュール。9月の第2木曜日に組み立て作業に入るまで、夕哉達は出し物の諸々を準備し、後は組み立てのみにしなければならない。
「朝陽、このパーツ黒塗りでいいんだよね?」
「あぁ、夕哉は要領良くて助かる」
「そうかな、だといいなぁ」
「そういえば夕哉、飛水何処か知ってるか?」
「一緒に来たけど見てないな…連絡出ないし」
公輝からはゴルギーニ・タウンの状況が安定するまでクリーチャー世界の探索は小規模に行うため、もう一つのバイトである御白の勉強を見ること以外は、文化祭に時間を充てることができた。お盆前で人がまばらだが、夕哉がここに来ていた理由である。
「黒井くん思ったよりテキパキ働くよね」
「ね、色々と意外。真面目だけど終わったらすぐ帰ってるイメージあったし」
「光屋さんに何か弱み握られてるっていうのもこの感じだと嘘なのかも…」
「そこの女子2人ー!ちゃんと動けー!」
「まだお盆前でーす!」
「それマジで呪いの言葉だぞ!すぐ終わるぞ夏休み!黒井見習え!」
「あはは…」
夕哉はこの文化祭準備を思ったより楽しんでいた。もちろん高校文化祭レベルであるが、仕掛けを考え、それを形にするために話し合い、それを改善してさらに次に進める。
(思ったより、勉強やデュエマに似てるんだよなぁ)
そんな事を思いながら、夕哉は初めてのデュエマ繋がりではない友達、田崎 朝陽(たざき あさひ)との時間も楽しんでいた。
「夕哉はお盆何処か帰らないのか?」
「うん、婆ちゃんと住んでるし、母さん達は海外だしで、帰省する場所もないから」
「まぁ俺が言えたことじゃないけど文化祭に時間使ってるなぁって思ってさ」
「楽しいし、色々作るの」
「上手いよな、絵とか描くの。何処かで練習してた?」
「練習は…してないかな…。いや、昔から描いたりしたことはあったかも。外には出ないタイプの人間だったし、妹に見せたりでなんだかんだ絵を描くことは途切れてなかったかも」
「へー、でも写真とかで良かったんじゃね?」
「写真禁止のエリアとかもあるから、そこも見せたかったんだ。勿論、模写とかそういうのに引っかかるのはしてないよ!?」
「なんか、お前の人生めちゃくちゃ妹が根ざしてないか?」
「余も同意だ、コイツの小娘と会うまでの記憶を遡ると気持ち悪いまでに妹だ」
突然どこからか聞こえた強面の声に、朝陽だけでなく夕哉も飛び上がる。夕哉が飛び上がった理由は少し違うが。
「え!?誰だ今の声!?」
「さぁ…?疲れてるんじゃないかな、今日は早めに帰ろう。あとちょっとトイレ!」
夕哉はすぐに教室を飛び出して、ポケットからカードを取り出し、小声で喋り始める。
(暇すぎて遊びに出てきたねジャシン…)
(フン、余は最近何もなくて暇だ、毎日こんなもの作りおって)
(こんなものじゃないって!とっても大事なものなんだ)
(…大事なもの、か。友達というのも家族というのも、余にはよく分からん)
(わからなくても良いよ、俺が大事だって分かってればいいから)
「黒井くん、何喋ってるの?」
「うわぁ小森さん!?」
「うん、実行委員会からの差し入れ。アイスだよ!朝陽くんも頑張ってる?」
「うん、すごく頑張ってる。皆喜ぶと思うな」
「そっか。人少ないから、1人3本くらい食べれるよ?」
「流石にそこまでは…でも2本貰おうかな」
「はーいどうぞ。みんなー!差し入れだよー!」
「これが『アイス』というものか、この腹に立つ暑さを考えると、ニンゲンがこれに縋るのも納得だな」
「…素直に食べれないの?」
「フン、食ってやるわ」
「そうじゃなくて、いただきます。全く…」
夕哉はそう言いつつも、去年に比べて自分を満たす充実感に高揚していた。
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Side:飛水
「あぁミスった…!もう一回…!」
「飛水?なにしてんの?」
「あ、いや、なんでも、ない…」
火奈に見られた。ギター弾いてるところ。音楽が好きなのはお互い知っているが、そこまでやってるのは知らせてない。
「え、ギター弾けるの?後夜祭、ギターで出るの!?」
こうなるからな。
「あぁいや…なんか出るっつーか…なんつーか…ていうかなんで来たんだよ…」
「部活の休憩時間。文化祭終わったらあたし達大会だし」
「それもそうか。…いや、見られたくなかったんだよな」
「…なんで?」
「なんか…下手だって言われる気がして」
「言わないよ!飛水は大事な友達だし、音楽が大好きなのも知ってる。というかプロとは言わないけど上手いじゃん!」
火奈は俺の横に座って、目を見据えてくる。こういうところがいまだにちょっと苦手だ。
「たださ、後夜祭にも出ないのになんでここで練習してるのかなって」
「…笑わないか?」
「うん、絶対」
「…なんか自分だけ置いてかれてる気がすんだよ、他の皆は相棒がいて、光屋や緑やお前は全力でやってることがあって。夕哉も、文化祭準備で生き生きしてるところを見て、自信がなくなったつーか」
俺は言いたくなかった事を言ってしまう。
「ここでギター弾いてれば、誰かの目に止まって『一緒にバンド組んでくれ』とか言われて、そのまま劣等感とかも消えるかなって」
「…ぶっちゃけたね」
ここまで言う気がなかったのに…デュエマ部前にすると嘘つけなくなるのこれ最悪の癖だ…火奈の前だと自分も思ってもみない本音を引き出されるし…
「厳しいこと言うけどさ、受け身って良くないよ」
「………」
「あたしは陸上やりたいなって思った時、ちゃんとお母さんにも言ったし、先輩にも厳しい練習に着いていく!って言った。デュエマを始めた時もそう。御白ちゃんを助けたいのもあったけど、あたしが受け身だったらカイザーに認められてなかったと思うし」
俺は黙って火奈の言葉を受け止める。
「自分が頑張ってるって胸張って言えるから、成功した時、認められた時に嬉しいと思えるんだとあたしは思う。あくまであたしはね?だからさ、飛水も待つだけじゃなくて一歩踏み出してみない?」
「叔父さんのために一歩を踏み出したのと同じだよ。あの時の飛水カッコよかったんだから」
「…すまねぇ、迷いすぎてた。知らない人に見られることばかり考えてたから、ビビってたんだと思う」
「確かに、神谷さんとかの話聞いてると怖い人っているし、言葉って怖いなぁって思うよ。あたしも後から千弥佳さんに聞いた時そう思ったし」
祈雨を取り巻いていた環境をデュエマ部Prayers合同グループで聞いた時、俺はその途方もない悪意を怖がりすぎたのかもしれない。
火奈は俺の横から立ち上がり、こちらに振り向き笑顔を向ける。
「でも同じくらい、人の言葉って元気を与えられる素敵なものだと思うよ!勿論、音楽もね」
(あー…敵わねぇなぁ…)
「…本格的に、始めてみるわ」
俺はポケットのくしゃくしゃのエントリー用紙に視線を落とす。エントリー用紙の名前欄が、まだ間に合うと俺に促しているように思えた。
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「つーわけで夕哉!暫くそっち参加できねぇ!」
夕哉、飛水、朝陽、柚子の4人は、並んで帰路に着いていた。
「えっと、大丈夫かなこっち、遅れ気味だけど…」
「うーん、微妙だよな、なんとかしたいけど時間に限界あるしな。俺は柚子が実行委員だから参加してるけど、全員がこの熱意ってわけじゃないし」
「かと言ってクオリティ低かったら皆ガッカリするよね…どうしようか」
夕哉はその時ハッとしたような顔をして、3人の方に向き直る。
「確か持ち帰りの仕事あるよね!もう少しもらえる?ちょっと知り合いに頼んでやってみようかなって思うんだけど!」
飛水が意図に気付いたのか、夕哉の方に詰め寄る。
(夕哉…、それクリーチャー世界の時差利用して事実上2倍の仕事効率にするってやつだろ!公輝さんが許すか分からんし、お前1人の負担が増えるだけだろ!)
(あ、そっか時差あるのか…じゃあ2倍か)
(待て夕哉お前何するつもりだ!?)
(アビスの皆に頼んで一緒に作業しようかなって、場所だけ気がかりだったんだけど自然文明の場所があるのか!)
(アビス…!?アイツらちゃんとやってくれるのか!?)
(分かんないけど、ジャブラッドと初めて会った時も皆優しくしてくれたし大丈夫だと思う)
飛水は呆れて何も言えなくなる。2人はその後公輝さんに連絡を入れたところ、
『じゃあ時差を食らわないように時間を制限するよ。こちらで元の準備時間の1/4の時間で戻るようにね。何より、それだいぶズルに両足突っ込んでいるからね、場所と人手だけの方がいいと思うよ』
夕哉は言われてようやく気づいたが、クリーチャー世界での準備自体は許してもらえた。
『何より、やりすぎて怪しまれないようにね?』
夕哉の一度決めたら突っ走る性質は、他全員に見抜かれて、予め対策されている。
夕哉と!御白の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「ドラン・ゴルギーニ!」」
「登場時に相手2体をタップして次のターンアンタップさせず、光のクリーチャーが4体いればタマシードからクリーチャーになります!」
「さらにクリーチャーとして攻撃する時、コスト5以下のクリーチャーを呼び出して、さらにこちらの方がクリーチャーが多ければ全体に破壊耐性が付与される!」
「すごい強いカードですし、種族メカなので各種カードとも相性抜群です!私を支える相棒ですよ!」
「というわけで次回、『ただいま文化祭準備中!・後』」
「「お楽しみに!」」
「なんだかんだ最近会えていませんね」
「勉強教えてるからそういう気がしないや」
「…私にとっては勉強を教える夕哉くんは夕哉くんじゃなくてデモニオに見えるんですよ…」