デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション)   作:シグレサメ

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黒井夕哉(くろい ゆうや)をはじめとしたデュエマ部の5人の学校、皇龍高校で、ついに2日間の文化祭が始まる。一般向けの展示に向けて、夕哉はアビス達と一緒に当日までに出し物を完成させ、万全の状態で文化祭に臨むのだった。



皇龍高校文化祭・前

 

Side:夕哉

文化祭前日、皇龍病院にて

 

「夕花、入るよ」

 

普段通り、病室へと夕花の好きなオレンジジュースを片手に入る。対して夕花は、何かソワソワしており、俺が入った途端に取り繕うように落ち着いた。俺には少しだけ不自然に見えた。

「お兄ちゃん!来てくれてありがとう!」

「明日は文化祭だからそんな長くいれないんだけどさ」

「大丈夫だよ、私の分まで楽しんできて!」

「そうは言うけど、やっぱり来て欲しかったなぁって」

「そうだね、突然足に羽が生えて、飛んでいけたらいいのに」

 

「確かにね。夕花、写真とか、なんか残るタイプの物とか要る?」

「お土産ってこと?お兄ちゃんから色々聞ければいいかなぁ」

「そっか、じゃあそのために写真必要だね」

「お兄ちゃん写真好きになったの?」

「緑っていう友達が写真撮ってたの見てさ、絵でも、写真でも、記録って大事だなぁって思って」

「…なんかお兄ちゃん変わったね。前のお兄ちゃんじゃ想像つかないことばかり言ってる」

 

「そうかな…そうかも。ある時さ、夢みたいなことが起きて、それからずっと夢の中にいるみたいなんだ。友達ができて、色々な人と気持ちをぶつけ合って、色々なことを経験して。実際にやらないと分からないことをたくさんやったんだ」

「うん」

「全部予想外だった、一つも想像通りのものなんてなかったから、凄い今楽しいんだ」

(だから怪我した時夕花のそばに居れなかった、今までみたいにその罪滅ぼしじゃなくて…)

「お兄ちゃん」

 

夕花が、凄く悲しそうな顔で俺を見つめる。

「違うんだ、そうじゃなくて…」

「大丈夫だよお兄ちゃん、私も幸せそうなお兄ちゃんを見れて幸せ。だから大丈夫。行ってきて!明日早いんだから」

「…ごめん、夕花。一番辛いのは夕花だよな」

 

勘違いをしていた。お互いに。とても大きな。

 

言葉を交わすべきだった。大事な家族だから。お互いに分かっていると思っていた。それに、甘えてしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Side:夕花

 

「クノイチマントラさん」

『どうしましタ?』

 

お兄ちゃんが帰って、静まった病室にクノイチマントラを呼び出す。悪い人間達をデュエマで倒している間に、クノイチマントラさんの周りの環境は概ねわかった。

 

クノイチマントラさんはあの闇の瘴気をばら撒いた犯人を憎んでいること。それも強く。その為には様々な手段を取ってきたこと(何をしたかは教えてくれなかった)。そして何より、決めたことに向かって、まっすぐに進んでいける彼女が、私には羨ましく、輝いて見えた。

 

「明日、アビスの調査に行くんだよね」

『えぇ、皇龍高校の生徒ガ、ジャシンと契約させられてイルという情報が入りましたノデ』

「それ、私も連れて行って」

『いいのデス?一応病院ニハ身代わりを立てますガ、昼間はバレるリスクが』

「お兄ちゃんは、お兄ちゃんの人生を歩んでるの。その邪魔を消すのはせめてもの私の罪滅ぼしだと思うの」

『そうですカ…変装等、準備しておきマショウ』

 

私はベッドから身体を起こして、自分の足を見る。

「こんなものがなければ、こんな私じゃなければ。お兄ちゃんはもっと幸せだったのにな」

『クリーチャーは強力デス。契約しているモノなら尚更』

「大丈夫、色々な人と戦って練習したから」

 

私は、クノイチマントラや人間に迷惑をかけるアビスを、お兄ちゃん達を邪魔するものを、許さない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

文化祭前半、午前は夕哉と緑、飛水の男子組のシフトが空いており、夕哉は緑と一緒に文化祭を回ることになった。

 

「すまねぇ、やっぱり練習にもう少しだけ時間を割かせてくれ。時間的に限界があるのは分かってるが、できる限り演奏のクオリティを上げるのに時間を使いたい」

「大丈夫だけど、棍を詰めすぎないでね」

「お前に言われると複雑だな…緑を頼んだ」

 

そう話す夕哉と飛水の元に緑が合流する。

「ゆうやー!ひすいー!」

「緑、結構色んな人に声かけられてたんじゃないの?」

「そうなんだけど…ゴルファンタジスタとも一緒に文化祭を回りたかったから。ゴルファンタジスタのことを知ってる2人のどっちかと回りたかったんだ」

「そっか、確かにそれなら俺たちしかないよね」

「うん、巻き込ませる感じになっちゃうけど、よろしくねゆうや」

「大丈夫、よろしくね緑!そういえばロミオ役じゃなかった?」

「言い忘れてたけどロミオとジュリエット役は2人ずついるから半分抜けても大丈夫なんだ」

 

「皇龍高校文化祭、開演いたします」

放送委員のこの言葉を待ってましたと言わんばかりに、人々がどっと動き出し始めた。

 

「緑、何しに行くとか決めてる?」

「みしろやひなのところってご飯食べるところだよね、じゃあもう少し後の方がいいかな」

「逆だな、昼時はご飯を食べる場所は混む。早めに行くのが大事だぞ」

「ゴルファンタジスタ、凄く調べてきてる?」

「いや、カレーが出る日のクラブハウスは昼は凄いことになるからな。人間界もそうなんだろうなってだけだ」

「でもゴルファンタジスタ、ご飯はちゃんと決まった時間に食べた方がいいって…」

「緑…俺はお前がまっすぐに育っていて嬉しい!けど融通を効かせることは覚えた方いいかもな」

 

御白と火奈のクラスに行くと、古風なレンガのような茶色の紙が貼り巡らされており、近代の喫茶店だと1発で分かるようなものになっていた。

「いらっしゃいませー、あ、夕哉くん!緑くん!」

「御白ちゃーーーん!待ったーーー!!」

火奈が御白を抱き抱えて、クラスの奥へと連れていく。何が起こったのか分からない夕哉と緑は、ただ前を見ることしかできず、その後入れ替わりで入ってきた店員に案内されて喫茶店の中へと入って行った。

 

「今光屋さん下の名前で男子を呼んでなかったか!?」

「あのお嬢様が!?ないない…」

 

この台詞を聞いて、ようやく2人は状況を飲み込む。赤を基調としたメイド服を着た火奈が夕哉達の接客に現れる。彼女からは健康的でいつも通り快活な印象を与えるものだった。

「ひな、綺麗だね」

「えへへ…あたしも中々似合ってるでしょ?」

「男子が執事服で、女子がメイドってこと?」

「そう、御白ちゃんにこれを着せたい人たちが、自分たちの恥ずかしさを犠牲にしてもやろうって話になったんだ」

「みしろを説得すればいいのに…いい人だよ…?」

「クラスのアイドルは大変なのよ、自覚なさそうだけど」

「喋ったら絶対イメージ壊れると思う…」

「そうだよね、あたしもそう思ったんだけどさ」

 

「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ」

御白の黄色を基調としたメイド服に長い金髪、彼女の明るい笑顔がさらに彼女の姿を際立てる。

「あ、あぁ…め、女神だ…」

「すいません、焼きそばを2つお願いします、いや、お恵みください」

「かしこまりました」

 

3人は思わず声を揃えてこう言う。

「「「なにこれ」」」

「そうだった。御白って良いところのお嬢様だった」

「営業スマイル上手…!あたしも負けてられない…!」

「なんか、幸せそうだったね。お客さん」

「火奈ー?注文とってー!」

「あ、ごめん!ご注文をどうぞ!」

「じゃあ俺も焼きそばで」

「ボクも!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「焼きそば美味しかったね」

「お腹いっぱい…」

「次どこ行く?」

「謎解きがいいな!」

「えっと…2年C組だっけかな」

 

2年C組の前に来た2人の前に、意外な人影があった。

「こうきさん!?すたにさん!?」

「おお守木くん黒井くん!おはよう!」

「おはようございます」

「お二人とも、どうしてここに…」

「仕事も大事だけど、折角皆が頑張っているんだから見に来ようと思ってね」

「正路さんが喫茶店行くと知っていたのにご飯を食べてきたので、消極的な理由で謎解きゲームに参加しているのです」

「須谷くん、言わなくて良いんじゃないかな…」

 

「じゃあさ、2チームに分かれてどっちが早く謎解きが終わるか勝負しようよ!」

「良いね、子供2人大人2人だし、チームを組み直して…」

「大丈夫ですこうきさん!こっちには彼がいますから」

「あぁ、3対2になるわけですね」

「よーし、行くよ!夕哉、ゴルファンタジスタ!」

(言えねぇ…俺様頭脳労働は専門外って…)

 

「謎解きゲーム、スタート!」

「最初は、クロスワードだね」

「くろすわーど?」

「ひらがなを埋めて、縦から読んでも横から読んでも読めるように作るんだ。縦のここなら木で骨組みが作られ、紙などが張り巡らされた扉が「ふすま」で横のやつは1文字目がふすまと交差してるから1文字目が「す」。飲み物などを入れて外で持ち運ぶためのもの、だから」

「すいとう!」

「そう言う感じ!この後もできそう?」

「うん、やってみる!」

 

「黒井さん、上手いですね」

「流石に家庭教師やってるだけはあるよね。問題も1日目で色んな人が来るから比較的簡単にされてるみたいだ。さあオレたちもやろうか」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Side:夕花

 

「ココが文化祭、ですカ」

「うん、まさか私も来ることになるなんてね」

「クリーチャーの気配がスル場所を優先的に回りますガよろしいですカ?」

「大丈夫、遊びにきたわけじゃないから。お兄ちゃんに会ってもリスクになるからね」

 

私はポケットにクノイチマントラを入れて文化祭を歩く。病院には身代わりのクリーチャーがいるし、私自身は顔を変えている。身長は、下手に変えるとここでは目立つだろうということで変えていない。

 

「ココにクリーチャーの気配がしマス」

「喫茶店?なんで?」

そうはいいつつも喫茶店に大人しく並ぶ。クノイチマントラがそう言って外したことはないから。

「いらっしゃいませー!」

「み!(しろお姉さん!?)」

「み?どうかしました?」

「み…ミルクが飲みたいなあって、喉が渇いて…」

「そうですか、それではこちらにどうぞ」

(やはり隠密作戦でスカラ置いてきた方が良かったのデショウか…?)

 

ミルクを飲みながら御白お姉さんの接客を聞いている。彼女の立ち振る舞いは上品で、所作が完璧で、本物のメイドさんみたいだった。

「焼きそば1つでよろしいですね?」

「はい、お願いします!」

(喫茶店トハ…?)

 

(御白お姉さん、カッコいいなぁ。お兄ちゃん、凄く仲がいいし将来あの人と結婚するのかなぁ)

(玉の輿、ですネ)

(そういうのじゃないよ、お兄ちゃんはそういうの考えられるタイプじゃないから)

(お兄さんのコトを尊敬しているノカ、そうでないノカ)

(…尊敬しているよ、だからここに来たんだから)

 

「焼きそばになります」

「ありがとうございます!」(マントラも一緒に食べよう!)

(ワタシもですか。分かりマシタ、そうさせていただきマス)

「あとはごゆっくりどうぞ」

「うん…!美味しいよ!ほら、マントラも!」

「勝手に食べさせないでください…ムグムグ…。少し味が濃いですガ、悪くないでスネ」

「確かに病院のやつに比べたら凄く濃く感じるけど…ちょっと懐かしい味付けかも」

「早く、家に帰りたいなぁ」

(………彼女は、類い稀なるクリーチャーを従える才能を持ちますが…普通のニンゲンなのですね)

 

「結局クリーチャーいなかったね」

「何処かに隠レテいるのでショウ、上手く隠れられてイマス」

「他のクリーチャーがどう過ごしてるかとかわかる?それがあると話が変わると思うんだけど」

「残念ながラ…」

「そっか、でも一つ一つ見ていこうよ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「難しかったぁ…最後3択じゃなかったら絶対解けなかったよ!」

「ゴルファンタジスタを信じて良かったね」

「おうよ!俺様は緑にまだまだ負けるわけにはいかないからな!」

 

「それじゃあオレ達は喫茶店の方に行くよ、それじゃあまた!」

「黒井さん、守木さん、また何処かで」

 

夕哉と緑はしばらくストラックアウトやモザイクアート作品などを見物していった。

 

「まだ回りたいところとかある?」

「たくさん回ったからなぁ。ゆうやが行きたいところは?」

「うーん、緑と行ったところとだいたい同じだから…。あ、ちょっと難しく感じるかもだけどこの場所行って良い?」

「いいよ!行こう!」

 

夕哉と緑は写真部の部室へと向かう。

「皇龍写真館へようこそー」

「はーい、失礼しまーす!」

「お客さん!!?」

「そんなに驚くんですか…」

「誰も興味を示さないから、写真部の皆さんを自由行動にさせたところだったので…」

 

「僕は絵沢 真(えざわ まこと)と言います、皇龍高の2年で、今は写真部の部長をやっていますね。この出し物では写真以外にも各種記録等を集めて皇龍市について纏めています、気になるのがあったら言ってください」

「うわぁ今のこうりゅうしだ!写真綺麗!」

「僕が撮ったんですよ。よく撮れてるでしょう?」

「凄いなぁ、駅も病院も、学校も全部見える。何処から撮ったんですか?」

「町外れの丘、辰(たつ)登りの丘からですね。駅や高校まで撮れる画角を作るのに苦労しました」

 

「ねぇえざわ先輩。この絵はなに?」

「この絵は…皇龍市の成り立ちとかですかね、400年ほど前、江戸時代ごろに商業の街として開拓が進み、人々が住み着いたのです」

「そうなんですね…これが記録として残ってるんだ。凄いね緑」

「だねぇ、その横の絵は?」

 

緑が指差した絵は何かの上に黒く塗りつぶされた絵だった。その黒は乱雑に絵を取り込んでおり、まるで渦を巻くかのように、ブラックホールに吸い込まれるような印象を受けるものだった。

「市役所の方からこの間譲ってもらっているんですよ。皇龍市は先程言った江戸時代以前の記録がほとんど残っておらず、この絵から推測するしかないんですね」

 

「真っ黒…ちょっと、怖いな」

(あぁ、なんか、不安を煽られるな…)

(ジャシン、長生きなんでしょ?知ってる?)

(知らん、クリーチャー世界が生まれたのは10年前だ。それよりもずっと前から深淵は存在したが、それに関して知っていることはない)

「なんだろうな…これ…」

 

「また来てくださると嬉しいです」

「なんか、不思議な展示だったね。でも楽しかったよ!」

「ね、とっても不思議だった。もうすぐお昼だし、交代の時間かな。そろそろ教室戻らないと!」

「だね、頑張るよ!ゴルファンタジスタ!」

 

夕哉と緑は様々な体験をしながら、午後の準備へと足を進める。文化祭は、まだまだ始まったばかり。

 




緑と!飛水の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「Drache Der'Zen!」」
「4コストのクリーチャータマシード!出た時に3枚引いて2枚捨てることができるから、出た次のターンに、水のクリーチャータマシードを4つ並べてクリーチャー化させる準備はバッチリ!」
「クリーチャー化すれば攻撃時にコスト5以下の呪文を墓地から唱えられる。展開だけじゃなく、除去など様々なものを使い分ける俺の切り札だ」
「というわけで次回、『皇龍高校文化祭・後』」
「「お楽しみに!」」
「ひすい、ライブの準備は進んでる?」
「まぁ、それなりにだ。でも見て後悔はさせない」
「ひすい!応援してるよ!」
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