デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション)   作:シグレサメ

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ついに始まった皇龍高の文化祭。守木緑(もりき みどり)と一緒に文化祭を堪能する黒井夕哉(くろい ゆうや)、後夜祭に向けて最後の準備に入る青海飛水(おうみ ひすい)、2人でコスプレ喫茶を頑張る光屋御白(ひかるや みしろ)と赤坂火奈(あかさか ひな)。それぞれの文化祭が進む中、闇のクリーチャーの出現を受けて夕哉の妹夕花(ゆうか)も、文化祭に変装し乗り込むのであった。


皇龍高校文化祭・後

 

Side:夕哉

 

「黒井くんおかえり!午後はよろしくね!」

「小森さん!午前中、お化け屋敷盛り上がってた?」

「盛り上がってたよ、それもかなり!」

 

文化祭の引き継ぎ班を見ると、かなりB組の士気は高いようだった。

「夕哉、色々やってもらってありがとな。まさかあの量を全部終わらせてくるとは思わなかったが…」

「手伝ってくれた人がすごい器用だったからね」

「あとは…装飾が凄いって話が出てたね」

「あぁ…午前やってたんだが、なんか訳わからん形の血の跡がすげぇウケ良かったんだよな」

「分からないものって怖いからねぇ。黒井くん、あれは何から発想を受けたの?」

 

俺は少ししどろもどろになりながら答える。

「…友達に妖怪とかそういうのの図鑑を見せてもらったんだ。それを組み合わせたりして」

(本当はガ:ナテハやド:ノラテップ達ノワールアビスが身体に絵の具を塗って遊んでた名残なんだけど…)

 

俺が壁の方を見ると、ガ:ナテハの形をした赤いシルエットが、ビタンと壁に張り付いていた。

「俺も怖いかも、これだけ急に見たら」

「だよな。よし、午後も頼んだ。あとは…午前組から言いたいことあるってよ」

 

「黒井すまない!俺部活忙しくて出れなくて…黒井いなかったからヤバかった、だからせめてお化け役で頑張ろうと思えたんだ!」

「私も、黒井くんのこと勘違いしてた。もっと静かでそういうことしないタイプだと思ってた。ありがとう!」

「正直当日までサボる予定だったんだけど、黒井のそれ見て自分が馬鹿らしく見えたんだ。多少は頑張らないでどうするって」

「だってさ。お前の作ったものが皆を動かしたんだ」

「皆…ありがとう!」

「…俺たちの名前わかる?」

「……… ごめんなさい」

 

来ていた人混みが全員ずっこけ、後ろから飛水が現れて頭をぐりぐりしてくる。

「裏表なさすぎんだよお前ー!もう少し取り繕えー!」

「大丈夫だよ、後でいくらでも話せて、仲良くなれるんだから!黒井くん、私からもありがとうね!」

「まあ他に適任いねぇから。夕哉、音頭頼んだ」

「ありがとう小森さん、朝陽。午後も、頑張るぞ!」

「「「「「おー!!」」」」」

 

その時夕哉のデッキケースが一度だけ黒紫に光る。

(夕哉の、なんだ?何かが深淵に辿り着こうとしている。まるでジャブラッドの時のような…)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Side:夕花

 

色んな出し物を回ったけれど、クリーチャーらしい影はどこにもいなかった。私たちは一度学校の隅の石段に座って休憩していた。マントラさんに至っては、焦りが顔を出していた。

「何故でショウ?こんなにも隠れるのが上手いのでショウカ?」

「落ち着いてマントラさん。一旦お昼食べよう?」

「落ち着いていられマセン!早く見つけて、シノビの里をあのヨウニした元凶を叩かなケレバ…」

「マントラさん…」

 

「マントラさん、静かに」

マントラさんが話している時に、私はどこからか近づいてくる足音に気がつく。その足音の主は、綺麗に手入れされた金髪に整った容姿、上品なメイド服姿を纏った御白お姉さんだった。

(やっぱり、綺麗だな…)

「あれ、先ほどお店に来てくださった人ですよね?どうしてこんなところに?」

「えっと…午後から友達と合流する予定で日陰で待っていたんですけど、その友達が急に来れなくなっちゃって」

「それは大変でしたね…それじゃあ1人ってことですか?」

「大丈夫ですよ、迷子になったりしないので」

「そうじゃなくて…さっきお店にいた時誰かと小声で喋ってませんでしたか?」

「!!? そんなことは、ないですよ?」

「…やっぱり心配です。午後私は暇なので一緒に文化祭を回りませんか?ご帰宅するのであれば、私の使用人に任せてお家に送ってあげますよ」

「それは…」

(選択権ないじゃん!ついてくしかないじゃん!)

 

「もう少し文化祭回りたいです。まだ見てないところありますから」

「…そうですか!じゃあお願いしますね、あ、お名前は…?」

「ヨウコです」

「ヨウコさん!私は光屋御白と申します。敬語じゃなくても良いですよ。私の方は習慣なので…」

「分かった、光屋お姉さん!」

(あれ、この感じどこかで…?)

「それじゃあ行きましょう!まずは演劇です!」

 

私達は体育館に集まり、1年のロミオとジュリエットを観ることになった。

「光屋お姉さんは、どうして同級生と行かなかったの?」

「沢山誘われたんですけど、話したことない方が殆どで。火奈、えっと。私の友達も何人か声をかけたのですけど、部活の友達と回ったりするからという理由で断られてしまって」

(お兄ちゃん、何してるの!?)

「そっか…断られて寂しくないの?なんか嫌われるようなことした、とか…」

「大丈夫ですよ、お互い必要なこと、自分に大事なことをやってるんですから、それで嫌われたとかはそんなに思わないですよ。もし思ったのならすぐ喋る約束もしましたし」

 

そんな会話をしていると、「ジーッ」と音が鳴り、オレンジ色に淡く光っていた照明が落ち、カーテンが締め切られる。

「1年D組午後の部、《ロミオとジュリエット》」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『中世イタリアの都市ヴェローナ。そこではモンタギュー家とキャピュレット家が抗争を繰り広げていた。ある日仮面舞踏会に誘われたモンタギュー家のロミオは、そこで運命の出会いをすることになる…』

 

舞台が明るくなると、幾つもの人間が舞踏会で踊りを踊る場面であった。舞台袖から、緑の髪の短髪の男の子が出てくる。彼、彼女?は端正な顔立ちをしており、もし本当に王子様がいるならこんな感じだろうなと、私は思った。

「あ、緑くんです!私の友達、主役やってるんですよ!」

(そうなんだ…あれが、お兄ちゃんの友達の1人…)

『舞踏会、友人に誘われて来たは良いものの、家のルール、人のしがらみ。僕が本当の意味で踊れることなどこれから先ないのだろうか』

 

スポットライトがロミオと、もう1人舞台袖から出て来たジュリエットに当たる。ロミオはジュリエットに一目惚れし、駆け寄り、愛の言葉を投げかける。

『君は…なんて美しい女性だ。瞳に、所作に、嘘がない。もし君が良ければ、一緒に踊らないか?』

『私なんかで…いいのですか?』

『私なんかと言わないでくれ。君じゃなければ、いけないんだ』

 

美しい2人は踊り、周りの視線を釘付けにする。そのまま舞台は暗転して、彼らは城の外の暗がりで、月明かりをスポットライトにロミオは仮面を脱ぐ。

『僕の名前はロミオ・モンタギュー。君のことを心の底から愛している。僕と結婚してくれないか』

『勿論…でも、私の本当の顔と名前。ロミオには教えなければならないの』

『何かあるのかい?何があっても、僕は君のことを』

 

ジュリエットは仮面を脱ぎ、泣きながらロミオに訴えかける。

『私の名前はジュリエット・キャピュレット。貴方の家族と私の家族は、お互いに憎しみあう運命なのよ』

『そんな、貴方が…』

 

ロミオは静かに下を向いた後、決心したようにジュリエットを見据え、抱き寄せこう言った。

『…君が誰だからとかじゃない。僕は君が必要なんだ。君がキャピュレットの人間だろうと、それは変わらない』

『ロミオ…私も同じ。家のことなんて全部なくして、私達だけで暮らしましょう』

 

2人の演技はすごくレベルが高く、特に緑さん、ロミオはまるで本当に起きたことを悲しみ、決意するかのような演技に、私は引き込まれる。

 

場面は移り変わり、深夜のロミオの屋敷にジュリエットが現れる。

「なんか聞いたことない場面…」

「結構アレンジが効いているという話を緑くんから聞きましたよ」

 

『ジュリエットに婚約者!?』

『そうなの、私達のことがバレたみたいで…遠くの金持ちと結婚させてでも引き離そうとしてきたの!』

『そんな…どうすれば…』

『私達にはどうしようもないのかしら…』

『結婚を諦めさせる方法…ジュリエットが屋敷から消えることができたら良いのに…』

『そんなこと…私が死ねばできるのじゃないかしら!』

『死ぬなんて、そんなことダメだ!君がいない世界なんて!』

『本当に死ぬわけじゃないわ、死んだふりをして、婚約者を欺くの』

『そんな危険、君に侵させるわけには…』

『大丈夫、私を信じて』

 

『結婚式の前日、ジュリエットは毒薬を飲み、仮死状態として倒れ、キャピュレット家は悲しみにくれた。葬儀のために人が集まる日、顔を隠した葬儀屋が、葬儀のために彼女の棺桶を預かりに来た』

『責任を持って、預からせていただきます』

『よろしくお願いします』

『待て、モンタギュー家のロミオがいなくなったという噂を聞いた!やつは生前のジュリエットと恋仲だった!近くにロミオがいるはずだ!』

『待て!葬儀屋!止まれ!』

『待ってたまるものか!ジュリエットのことを、心を!一度も見たことがない人間達に!」

 

場面は暗転して、沢山の足音がステージに鳴り響く。

『ロミオは棺桶を、仮死のジュリエットを背負って走り、街の外れまで到着するのに、追いかける人々を振り切るのにかなりの時間をかけてしまった』

 

場面が明転し、棺桶の前に跪くロミオがスポットに当たる。

『ジュリエット、早く目覚めてくれ。目覚める薬は渡した。家のことなんて関係ない、遠く離れた街まで僕たちはやってきた。僕たちはできることをやったんだ。目覚めてくれ、ジュリエット…君がいない世界なんて…』

ロミオは短剣を取り出して、自分の首に押し付けようとする。

『僕は…何故…生きることを、諦められないんだ。ジュリエット…』

 

『ロミオは3日3晩、目覚めないジュリエットの世話をし続けた。自分が彼女と自分がまた幸せに過ごせる日を諦めなかったからでした。そして…』

『ロミ…オ…?』

『ジュリエット、ジュリエット!』

 

『彼の介抱もあってジュリエットは目覚めることができた。彼ら2人は遠くの街で、家族の対立から解放されて自由に暮らすだろう。めでたし、めでたし』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

幕が下がり、皆の拍手が合唱となって、ステージへと飛んでいく。久しぶりに見たこの一体感に、私はテンションが大きく上がっていた。

「良かったです…原作だと2人とも死んじゃうので…」

「死んじゃうの?」

「はい、お互いに些細な勘違いから…この2人は助かって良かったです…」

「些細な勘違いから…両方…」

 

「おーい!みしろー!」

緑、お兄さんがロミオの格好のまま、手を振ってこちらにやってくる。まさに興奮冷めやまないという感じで、彼は息があがりながらも御白お姉さんのもとにやってきた。

「見てくれた?D組の演技!?」

「凄いですね緑くん!演技も良かったですし、脚本もかなり大胆にアレンジが加わってましたけど…」

「それ、ここだけの話なんだけど。ゴル…友達が悲劇は嫌だ!って言って、2人で土台を作って、ジュリエット役の人や皆と話し合って作った台本なんだ。ハッピーエンド万歳!だってね」

「そうなんですね、私は素敵だと思いました。お互いに思い合う人が報われる方が、やっぱり嬉しいです」

「…そうだよね。ボクもそう思う。あ、皆に呼ばれてる!また後夜祭でね!みしろ!」

「はい!また!」

 

「さてヨウコさん、行くところがまだあるんですよー」

「???」

 

私達は、一緒におどろおどろしい装飾のされた教室の前に並ぶ。

「私の友達、黒井くんと青海くんのクラスなんですよー」

「黒井…」

「…あれ、光屋さんじゃない?」

 

前の3人組が振り返り、こちらに話しかけてくる。

「あれ、祈雨さん、千弥佳さん、天見さん!」

「緑くんの劇を観た後に来たから丁度タイミングが被ったのかな」

「その子は?デュエマ部じゃないよね?」

「ヨウコさんです、訳あって一緒に回ってもらっています」

 

「神谷さん、回田先輩、本当にここ入るんですか…?」

「怖いの、颯星?」

「そんなことは…ないんですけど!」

「ごめんね御白ちゃん、皆普段こんな感じだから…」

「大丈夫です、Prayersの皆さんに会えて嬉しいです!」

 

「ポルターガイスト屋敷だろうと…黒井がここにいるなら…僕は引き下がらない…」

「天見くん、そんなラスボス前の部屋での決心みたいな…」

「高校の文化祭だからそんなにレベルの高いものはないでしょ…」

 

3人はそんなことを言いながらお化け屋敷に入って行った。少しだけ時間が経ったあと、

「「キャー!!」」「わー!!!」

と叫び声が聞こえてきた。

「…行きましょう!」

「えぇ…光屋お姉さんの後ろでいい?」

 

お化け屋敷の中は薄暗く、黒いカーテンが敷かれ、視界は殆どない。私達は左に曲がり、ライトが照らされたところを見ると、丸くて赤い血痕がついた壁に辿り着く。

「ヒュッ…!なんだ、絵の具ですか、驚かさないでくださいよ…!」

(あれ、これクノイチマントラさんが言ってたクリーチャーの特徴に…?)

 

そのタイミングで手が私の肩を軽く叩く。御白お姉さんもそうだったみたいで、顔を真っ青にしながら後ろを振り向くと…

 

沢山のフォークやスプーン、カトラリーが突き刺さった壁が、少しずつ近づいてきて…!

「イヤー!!ポルターガイストですー!」

「御白お姉さん!左に行かなきゃ!」

 

壁はゆっくりと止まり、私達は次のエリアへと案内される形になる。そこは床の色が変わり、寝室のような場所に辿り着いたのだった。

「え、今度は…なんですか?」

『貴方は屋敷の奥深く、主の元に来てしまったのです…』

「じゃあ、私達は主の怒りを…」

「やめてくださいヨウコさん、私達は迷い込んだだけで…」

 

次の瞬間、ベッドから大きな人影が起き上がる。白の布に沢山の赤が塗られているその人影は、私の方にやってきた。

「イヤァ!!逃げましょうヨウコさん!」

「御白お姉さん!落ち着いて!」

 

つい普段の呼び方が出てしまったが、どうにか私達はベッドから逃げ出す。しかしついた場所はいろんなカトラリーがカタカタと動き、より一層不気味な場所だった。

「なんで、ドンドン怖くなるんですか…?」

「私も、流石に怖くなってきた…」

『お前はここの主人の恨みを買った…恨みを買った人間は、彼に魂を捧げる定め…』

 

次の瞬間ライトが点き、私達の目の前には大きな骨のドラゴンが現れた。

「キャアァァァァァアアアアア!!」

「イヤァァァアアア!」

 

私達は急いで外に出ようとする。しかし扉が開かず、私達は涙ぐんで座り込んでしまう。

「もう、だめですー…」

「お、お兄ちゃん…」

 

「大丈夫ですか、扉が不調で…御白!?」

「ゆうやくーん…!」

「おに…」

「やっぱり最後急いで扉から出るやつ多いもんな。それで扉にガタが来てたのか」

「ひすいくんまでー…!」

 

私達は近くのお店からお水を取ってきてもらい、ようやく落ち着いた。しかも横にはPrayersの人達までいた。

「ごめん、怖すぎたかも…」

「私も扉開かずにパニックになって…ごめんなさい」

「祈雨ちゃん、すごく乱暴に開けたよね?それで扉に…」

「ごめんなさい…」

「こっちの学校も別に特段新しい訳じゃないし、しゃあねぇよ」

 

「でも、凄い臨場感だった。黒井、やっぱりモチーフって…」

「正解だよ天見くん。そうなんだけど、ね」

「あ…黒井、ごめん」

お兄ちゃんが私の方に目配せをしてくる。何かを察した天見お兄さんは、そのまま何も言わなくなった。

「御白の友達だよね、迷惑かけてごめん」

「大丈夫、楽しかったから」

「…何処かで、会った?」

「…そんな訳、ないです!」

「だよね、変なこと聞いてごめん」

 

「間も無く、閉会式が始まります。皆様ご来場、誠にありがとうございました」

「私がヨウコさんを送り届けてきます。黒井くんはPrayersの皆さんを」

 

その頃回田お姉さんが青海お兄さんに話を聞いていた。

「飛水、なにかやるの?」

「や、音楽を2曲だけ」

「私も聞きたかったなぁ、その曲」

「まぁどっかでな」

「弾いてくれるの!?やった!」

(こういう推しが強い女子、どうしても苦手だ…)

 

お兄ちゃんと少しだけ話したかったけど、今は仕方ない。私は幸せそうなお兄ちゃんを見て、とりあえず帰路に着こうとしたのだけど…。

 

マントラさんにこの後呼び止められて、後夜祭でクリーチャーを探すことになった。それで、あのことが起きたんだ。

 




夕哉と!飛水の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「スパトー:ド:スパトゥー!」」
「アビスラッシュ持ちの5コストで、離れたらアビスメクレイド8が行えるんだ」
「呪文側もアビスメクレイド8のリセットマラソンができるから、高確率で欲しいカードにたどり着けるな」
「というわけで次回、『逃げるな、進め・前』」
「「お楽しみに!」」
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