デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション) 作:シグレサメ
夕哉と夕花がついにお互いの素性を知り、お互いの全力と相棒を賭けたデュエマを始める。一進一退の攻防が続く中、最後に勝つのはどちらになるのだろうか…。
夕花との思い出はいっぱいだけど、やっぱり夕花は心が強い人間だと思う。
父さんと母さんが俺たちが退屈しないようにと、当時の最新ゲーム機と一緒に画面外にキャラを3回飛ばすゲームを買ってもらった時があった。結構楽しくやっていたんだけど、夕花がそれに興味を持って、一緒に対戦したことがあった。
やった時間の差とかもあって俺が最初は圧勝してたんだけど、夕花は全く諦めずに再戦を挑んできた。それどころかドンドン闘志を燃やして、俺のキャラの残機は1,2と削られ始め、ついには負けてしまった。
「やっったぁあ!お兄ちゃんに勝ったぁ!」
「夕花、3時間粘るのは、流石に…」
「良いじゃん勝ったんだから!えへへ、ピンクちゃん、漸く1位取れたね!」
「それにしても、どうしてそこまでして…」
「うーん…やっぱり勝てないと嫌な気持ちになるじゃん?あとは…負けたくない!って気持ちかなぁ、絶対譲れない!みたいな」
「ゲームで譲れないって…」
「良いじゃん別に!」
夕花のその時の綺麗な笑顔は、今でも心に残り続けている。
でも、今なら分かる気がする。あくまであれはゲームだったけど、誰にだって他の人に譲りたくない気持ちはあるし、それがぶつかり合うことだってある。それをどっちが手にするかは…最後に意志が強い方だと思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕哉 シールド0 マナ5
《アビスベル=ジャシン帝》、《ドアノッカ=ノアドッカ》、《ブルーム=プルーフ》、《ハンマ=ダンマ》×2
夕花 シールド4 マナ4
《星姫機 シリエス》
夕哉のターンの初めのころ、御白と遥風のドローン漸く大聖堂に到着した。
「ハァ、ハァ。着きました…。夕哉くんと夕花ちゃんが、デュエル、してます…?止めなくちゃ…」
そのタイミングで後ろを振り向き気づいた夕哉が一言投げかける。
「ごめん御白、この勝負、絶対途中で終わらせたくないんだ!お願い!」
「私からもお願いします!大事な兄妹喧嘩なんです!」
「大事な…兄妹喧嘩…?」
そうは言いつつも2人は、この勝負の行く末を見守ることにした。
「俺のターン!アビスラッシュ発動!ジャシン帝の効果で墓地のアビスにアビスラッシュを与えて、召喚コストを2コスト減らす!」
(俺の推測が正しければ夕花は…)
夕花の顔を見た夕哉は予感の的中に緊張と一種の安堵が走る。
「ほら、来なよお兄ちゃん、アビスを使った最後の戦い、楽しもう!」
「生憎そのつもりはないよ!ジャシン、全力で行くよ。こういう時の夕花は、めちゃくちゃに勝負強いんだ」
「ほう?めちゃくちゃに?」
「まずは、《邪龍 ジャブラッド》を1マナで召喚!登場時効果で墓地を2枚追加する!さらに《セリヴィエット=エリー》を1マナで召喚!俺と夕花はお互いに手札を1枚捨てる!《深淵の三咆哮 バウワウジャ》を墓地に!」
「《忍鎖の聖沌 94nm4(ガンマ)》を墓地に」
「バウワウジャをアビスラッシュ!その時にエリーを破壊してコスト軽減!1マナで召喚!登場時効果で墓地を4枚増やす!」
「エリーを再度召喚!効果で《邪闘 シス》を捨てる」
「ナルコを捨てるよ」
「エリーの破壊込みで1マナでアビスラッシュ!《スパトー:ド:スパトゥー》!」
「揃い踏み、だね…!」
「そうだね、行くよ夕花!」
「…うん!」
「邪龍 ジャブラッドでシールドに攻撃!その時墓地を2枚増やす!」
ジャブラッドが大きく雄叫びをあげ、夕花のシールドへと突っ込み、尻尾の切先のようなものでシールドを叩き割る。
夕花 シールド2
「シールドトリガーなしだよ!」
(俺の予感が正しければ…こういうので乗った夕花は世界一強い!多分、デュエマでも!)
「バウワウジャで残りのシールドをブレイク!その時、シリエスを破壊!」
夕花 シールド0
彼女は空高くシールドを掲げる。
「シールドトリガー+!それを、2枚だよ!《聖沌大忍者 クーソクゼーシキ》!《忍防の聖沌 h4990u(ハッポウ)》!まずはクーソクゼーシキの効果で手札を2枚見て1枚を手札、1枚をシールドに!更にハッポウの効果で私のクリーチャーは全てアンタップ!破壊されなくなるよ!さぁ?どうする、お兄ちゃん?」
「そんなの決まってる!勿論、スパトー:ド:スパトゥーでシールドを攻撃!」
(お兄ちゃん、やっぱり凄いイキイキしてる!)
夕花 シールド0
「シールドトリガー!《忍爪の聖沌 k491》!トリガー+効果でシールドを1枚追加!次の私のターンの初めにブレイクが発動するよ!」
「まだまだ!ブルームでシールドを攻撃!」
「カギでブロック!」
「ブルームは破壊される!でもまだクリーチャーは沢山いる!ドアノッカで最後のシールドを攻撃!」
(あのカードじゃなきゃ、私の負け…。でも、今は…)
(このお互いが全力でぶつかり合うこのデュエマが…)
「「さいっこうに楽しいから!」」
夕花 シールド0
「シールドトリガー、無しだよ」
「アビスベル=ジャシン帝で!ダイレクトアタック!」
ダイレクトアタックを決めようとするジャシンの前に、突如として一つの風と共にあのシノビが立ちはだかる。
「ニンジャチェンジ5!クーソクゼーシキを《聖(セント)カオスマントラ》に入れ替える!」
「遅れマシタガ、ココでアナタは終わりデスヨ!」
「嘘だろ、まだ隠し玉が!?」
「夕花ちゃんのあのカードは…不味いです夕哉くん!」
「カオスマントラの効果で、お兄ちゃんのクリーチャーをすべてタップするよ!ジャシン帝の攻撃はハッポウでブロックする!」
「クソ、この三下シノビごときに図られるとは…!」
ジャシンは攻撃を受け止められながら舌打ちする。攻め手を失い、カオスマントラによってブロッカーも機能停止し、シールドを失っている以上、大勢は決した。
「…アビスラッシュで出したクリーチャー達を、山札の下に送る」
しかし夕哉の目の前に進もうとする光も、まだ消えていない。
「その時に、スパトー:ド:スパトゥーの離れた時効果、アビス・メクレイド8を起動する!」
「ここでメクレイド?運次第の効果でブロッカーを…?でもそれが出てもカオスマントラ達で止めるだけだよ!」
「俺は夕花みたいに器用じゃないし、凄く心が強かったり、諦めなかったりできるわけじゃない。だから積み重ねたんだ。皆から教えてもらった繋がりも!緑から教えてもらったこの方法も!全部束ねて俺にする!」
「…まさかお兄ちゃん、邪闘 シスのメクレイドの時に!?」
「あぁ、デッキ1周作戦、成功だ!《深淵の襲傘(じゅうさん) アンブレラ=イザベラ》をメクレイドでバトルゾーンに!出た時に俺の墓地を13枚山札の下に送ることで、夕花の場と手札から13枚を山札の下に戻してもらう!」
アンブレラ=イザベラが傘を広げ、グルグルと回し始める。それによって生み出された無数の闇の雨が、夕花のクリーチャー達を包み、手札すらも消し飛ばす。
「あはは…やっぱり技術じゃお兄ちゃんに勝てないか」
「夕花の場にシリエスやナイクーナがいたらこの戦法も成立してなかった、俺も運が良かったんだよ」
「……そっか。私のターン。マナチャージして、ターンエンド」
「ありがとう、夕花。アビスベル=ジャシン帝で、ダイレクトアタック!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Side:夕哉
「夕花!!」
ジャシンのダイレクトアタックを横に逸らさせ、俺は急いで夕花の元に向かう。カオスマントラをカードに戻して、力が抜けて満足したような顔をしている夕花に、俺も一つ安心を覚える。
「とにかく、丸く収まったみたいですね!」
「…ありがとう御白、最後まで待っててくれて!」
御白と飛水に感謝の言葉を渡して、俺は夕花に顔を向ける。
「お兄ちゃん、対戦ありがとうございました、だね」
「うん…こちらこそ、対戦ありがとうございました」
「お兄ちゃん…勝手にアビスを使っているお兄ちゃんを騙されてるって決めつけて、ごめんなさい」
「俺もだ。もう少し夕花と話しておけば、こうならずに済んだかもしれないのに」
「でもお互いに秘密にしてたし…」
「理屈の話じゃないけどさ。でもやっぱり兄としてはね」
「ふふ…そっか。お兄ちゃん、変わってないところもあるんだね。2つの意味で安心したよ」
「…夕花。デュエマとか、怪我のこととか、そういうのは全く抜きにしてさ。これからも、一緒にいてくれないかな?」
夕花はその言葉を聞いてとても感激したような顔をして、
「…もう!お兄ちゃんこういうずるい台詞簡単に喋るんだから!」
(足手纏いとか考えてた私が、馬鹿だったなぁ…)
夕花は笑顔で俺の身体に抱きついて、こちらの背中に手を回して3秒ほどゆっくりと息を吸う。そして俺から手を離して、夕花はこう続けた。
「大好きだよ、お兄ちゃん」
「俺も、大好きだよ」
そう言って言葉を続けようとした時、白に虹色のラインが入った銃が直接突きつけられ、弾が夕花の体を貫いている光景が俺の目に飛び込んできた。
「…は?」
「お兄…ちゃん…!」
その銃は夕花の何かを吸い出し、持ち手についた白い球がみるみる黄色に染まっていく。黒いローブで身体を覆い隠した持ち主は銃を夕花から離して、持ち手からその球を取り出した。
「ユウカ…夕花…!」
カオスマントラが必死にその球を取り返そうとするが、その人間はまるでクリーチャーかのように体を翻し、カオスマントラの猛追を避ける。
「お前…何者だよ?お前、なんなんだよ!?」
「命は取っていない。今から人間の世界に帰せば半年もせずに彼女は元の生活に戻れる。今すぐに助けてやるといい」
「…そういうことを、言ってるんじゃねぇんだよ!!」
「ドランさん!!夕花ちゃんをゴルギーニ・ピット、ワープゲートに!早く!!」
「分かっています!全身全霊!全速力で!」
ドランが走って行ったのを見て、ローブの男は何もせずに俺の目を見続ける。
「お前は…夕花に何をしたんだ…!?」
「黒井夕花のクリーチャーを従える力、勝負に賭ける情熱の力は、他の人間に比べるとかなり強い。『才能』と言って良い力だ。俺はその才能を集めている」
「才能?ふざけるなよ、そんなことのために夕花を!」
身体から熱が帯びていく代わりに、頭からは様々な思考が抜け落ちていく。ある一つの思考に、俺は辿り着こうとしている。
「そんなことではない。俺たちにとっては本当に必要な、不可欠だった力だ。彼女とその相棒が負かされる時、それによって隙が生まれる時を待っていた。まぁ、黒井夕哉が負け、お前から奪い取った方が良かったのか?このように恨まれるくらいならば」
「お前…何を言ってるのか分かってるのか…!?」
「あぁ、分かりやすいように言い方を変えよう。『どちらでも良かった』。クリーチャーを使いこなせる才能を持った人間なら、どちらでも」
今、思考がドス黒いものに固まる。それ以外考えられなくなる。
「夕哉くん!ダメです!その考え方は!」
『お前を殺してでも!ここで!止める!』
「あぁ、分かっているよ、そのケースは調べている。黒井夕花の方を取った以上、黒井夕哉が激昂するのは分かっていた。だから、『激情で自滅させればいい』。」
何か大きなクリーチャーが飛び出して、俺の後ろを通り過ぎる。そのクリーチャーは自分ではなく御白の方に向かっていたことに、少し遅れてしか気づかなかった。
「…!!?御白!!逃げて!!」
「嘘、私ドランさんを…それすらも読まれて!?」
その時にカードから飛び出したゴルファンタジスタが御白の目の前に現れ、その影を受け止める。
「おい、これ何が起きてる!?大丈夫か!?」
「飛水くん!逃げて!早く!!」
そう言った次の瞬間、飛水は掴み掛かられ、そのクリーチャーに壁に叩きつけられる。
「グアッ…!」
「黒井夕哉の後始末は俺がやる。やれ」
「やめろ、やめてくれ…!!」
そう言って掴みかかろうとしたのを黒ローブに避けられ、飛水を掴んだクリーチャーは思いっきり飛水を投げ飛ばす。飛水は空中都市から投げ出され、すぐに見えなくなってしまった。
「飛水くん…」
「飛水…飛水まで…どうしてだよ…なんで…!」
「第一に、黒井兄妹どちらかの『才能』の獲得、第二に、残った方の人間の心の原動力の破壊。そして第三に、この後の計画の不安分子の掃討。さぁ、まだ戦えるか?黒井夕哉?」
御白の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「深淵の襲傘(じゅうさん)アンブレラ=イザベラ」
「8コストのアビスと中々難しい条件ですが、出た時か攻撃する時に相手1体を破壊してそのコスト分の墓地肥やしを行うか、墓地13枚を山札に戻して相手の場と手札から同じ枚数を戻させる事ができるアビスの最終兵器です」
「というわけで次回、『ゲームオーバー、その先で・前』」
次回、魔覇革命編開幕