デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション)   作:シグレサメ

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夕花のクリーチャーを従える「才能」が取られた上、飛水が行方不明となり一気にジャシンの闇に呑まれそうになる夕哉。今まで作ってきた繋がり、自分の大好きなものを守りたいと言う気持ちから夕哉は自我を取り戻し、ゴルファンタジスタの力を借りて、アビスは自然文明の力を加え、《アビスベル=覇(デス)=ロード》が誕生するのであった。



ゲームオーバー、その先で・後

Side:火奈

 

「んっ…!ここは…?」

 

あたしが目を覚ました場所は、デュエマ部の部室…って勝手に呼んでるだけの5人の共用スペース。2段ベッドをはじめとして、本棚やゲーム機、パソコンやダンベルなど皆が必要なものがごっちゃになって置いてある。私はそこの下のベッドで目を覚まして、部屋の真ん中でおにぎりを食べている緑を見つけた。

 

「おはよう…こっちに戻ってきたってことは…。もう終わったってこと?」

「………」

「緑?どうしたの?」

「まだ終わってないよ。もしかしたら、今始まったばかりかも。ボクの勘だけど、多分今ゴルファンタジスタが頑張ってる。ゆうやや、みしろも…」

「え、それってどういう…?」

 

あたしがそういうと扉が開いて、須谷さんが息を切らして私達に声をかけてくる。

「良いですか、落ち着いて!夕花さんが怪我した状態でこちらにきます!動ける緑さんは手伝ってください!また、青海さんが行方不明、黒井夕哉さんが謎のデュエリストと交戦しています!」

「ひすいが…。そんなわけない!ひすいは強いから!」

「嘘、夕哉の妹さんと、飛水が…嘘…!」

 

あの文化祭の時、突っぱねたように言った時からまだ喋れていないのに。嘘、行方不明?なんでクリーチャー界に?私を助ける為に?

「え…うそ…でしょ……!?」

「落ち着いてください赤坂さん!守木さん、私と一緒にこちらに届けられる夕花さん搬送の手伝いをお願いします!」

「…了解しました!ひな!大丈夫!絶対ひすいも無事だから!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

現在夕哉4ターン目(攻撃フェイズ)

 

夕哉 シールド1 マナ5

《フォック=ザ=ダーティ》、《謀遠 テレスコ=テレス》、《ア:グンテ》

シン シールド4 マナ7

バトルゾーン なし

 

「革命」「チェンジ!」

「《アビスベル=覇=ロード》!!」

 

フォックザダーティが地面に突き刺したチェッカーフラッグを目印として、暴走族のような風貌となったジャシンがフラッグの持ち手に手を掴みグルグルと黒を基調としたタコをあしらったバイクを回転させて止める。新たな深淵の王の誕生の瞬間である。

 

「ここからはフルスロットルで行くよ!覇ロードはWブレイカー!シールドをWブレイク!」

覇ロードのバイクの右ハンドル部分が展開され、中から同じくタコを模った剣が飛び出してくる。それを右手に持ち、左手でバイクを操りながら、大きくバイクの車体を跳ねさせて、その刀をシールドに振り下ろす。

 

シン シールド2

「シールドトリガー、《閃光の守護者ホーリー》!登場時能力で相手の全てのクリーチャーをタップする!これとハチ公で、チェックメイトになる…!」

「いいや、そうはいかない!覇ロード第一の能力!ターン終了時、墓地またはマナからコスト6以下のアビスをバトルゾーンに呼び出す!墓地から《邪闘 シス》をバトルゾーンに!相手クリーチャー1体のパワーを−∞(むげんだい)!ホーリーを破壊する!」

 

「ぐっ私のターン!ド…」

「ドローの前にテレスコ=テレスの能力発動!そっちのターン開始時、ドローの前に相手の手札を見ないで1枚選び、捨てさせる!左から2番目のカードだ!」

墓地に落ちたカードは、《特攻(ブッコミ)の忠犬 ハチ公》。

「凄いです!ブロッカーがタップされてもテレスコなら妨害を続けられるんですね!」

「更に相手が手札を捨てた時、俺は同じ枚数ドローできる」

 

「本当はハチ公2体を並べるつもりだったが…。まぁ良い、8マナあるならこれだ!《特攻の忠犬 ハチ公》、《Q.Q.QX. (キューキュラーキュラックス)》をバトルゾーンに!このまま畳み掛けてやる!」

「夕哉くん不味いです!QXの効果で夕哉くんは山札を見れないのでガチンコジャッジをしても捲れない扱いでコストは0!不戦勝でガチンコジャッジに負け続けてしまいます!」

「大丈夫だよ、御白!覇ロードの第二の能力!」

 

果敢にシールドに向かっていたハチ公だったが、気付いた時にはシールドはどこにもおらず目の前にジャシンが立ち塞がる。ハチ公は逃げようとしたものの、一見するとアスファルトのようだが、深淵のどろどろとした闇でできた道から一歩も動けなくなってしまった。

「ようこそ、余の新たなテリトリーへ。名付けるなら余の名前を冠して…死の道(デスロード)というのはどうだ?」

「何故だ…ハチ公はシールドに向かったはず…!」

「覇ロードの第二の能力。相手のクリーチャーがそのターン初めて攻撃するクリーチャーなら、その攻撃対象は必ずアビスベル=覇=ロードでなければならない。来なよ、ハチ公!」

 

ハチ公はヤケを起こしてジャシンに掴み掛かるものの、剣で一撃で切り伏せられ深淵へと沈んでいった。

「そんな…前とは全く戦い方が…!ターンエンド…!」

 

「俺のターン!もう誰もジャシンも止められないよ!まずは5マナで《ドミー=ゾー》を召喚!ここで覇ロード第三の能力!自分のアビスは全てマッハファイターを獲得する!」

「む、無茶苦茶すぎる…!」

 

「まずはドミー=ゾーでQXを攻撃!パワー6000で4000に勝利!破壊する!続いてシスで相手のシールドに攻撃する時、アビスWメクレイド5が発動!テレスコ=テレス2体をバトルゾーンに!」

 

シン シールド0

「な…何を引いても…勝てない…!」

「これが俺の新たな道だ!アビスベル=覇=ロードで、ダイレクトアタック!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Side:夕花

 

「ん…!」

見覚えのある天井、何度も嗅ぎ慣れた病院の匂い。

「…結局、戻って来ちゃったなぁ」

 

私が目が覚めたことに気づいた看護師さんが、急いで外に出ていく。代わって入って来たのは、お兄ちゃんと御白お姉さんだった。

「お兄ちゃん、御白お姉さん!どうしてここに?」

「体力の消耗が激しいから一度こちらに戻って休んでほしいと。彼の方は協力者の方が探してくれています、私達も後で参加しますけどね」

「夕花、その、大丈夫だった?」

「うん、怪我とかは無くて、足もマントラさんからのギプスでかなり回復傾向にあるって。でも…」

「でも…?やっぱりあの銃で撃たれたことですか?」

 

「うん、私は『カオスマントラさんの声が聞こえなくなった』んだ」

2人は驚いた顔をしたあと、お兄ちゃんが私のことを抱きしめる。

「そっか…。とりあえず、無事で良かったよ、夕花…」

「うん、ごめんなさいお兄ちゃん…いっぱい、いっぱい…!」

「大丈夫、落ち着くまで待ってるよ」

 

そう言われた私は感情を抑えていた何かが壊れて、大きな声で泣き出してしまった。家族と会いたい気持ち、お兄ちゃんに守ってもらっていた安心、それを知らずにお兄ちゃんに何も聞かずに刃を立てようとした罪。いろんな感情が混ざって、私はしばらく涙が止まらなかった。

「改めて、何も聞かずにお兄ちゃんにマントラさんの力を使ってごめんなさい、早とちりでこんなことして、ごめんなさい…!」

「俺もだよ、もっと夕花のことを見ておくべきだった。寂しがってるのは分かってたはずなのに、自分のことばかりに集中してた、ごめん」

 

そういうお兄ちゃんを見て、私はまず最初に

「違う、違うよお兄ちゃん!」

そう言いたい気持ちが収まらなかった。

「夕花?違うって…」

「私のためにお兄ちゃんがお兄ちゃんである人生を無駄にするなんてこと、あっちゃいけないと思う。私、文化祭で変装してお兄ちゃんを見に行ったんだけど、その時のお兄ちゃんは本当に幸せそうだった!私なんかよりも、自分を大事にしてあげてよ!」

「私なんかって!夕花はそうやってすぐに自分がいなくなれば、損をすれば良いじゃないかって言い出して!それで今、俺がどれだけ悲しい気持ちになったのか分かってほしいよ!」

 

お互いに気持ちをぶつけ合ったところに、御白お姉さんが私とお兄ちゃんの手を繋いでくれる。

「お互いに、お互いのことが大事なんですね。自分と相手、両方を取ると考えてもバチは当たらないと思いますよ。お二人とも、もう少し欲張っても良いと思います」

「御白(お姉さん)…」

「私は夕花ちゃんとのデュエマも好きですし、夕哉くんとのデュエマも好きです、どっちかでもいなくなられたり、不幸になったら耐えられません!ですから、私が2人とも大事にしますから、お二人もお互いを大事にしてあげてください」

 

そう言ってくれる人が欲しかったのかもしれない。私を守ってくれるお兄ちゃんを、守ってくれる人達がいるんだ。安心した私は、ある決心をした。

「さっきも話しましたけど、ドランさんに搬送されてた時からマントラさんの声が聞こえなくなったんです、多分。契約が切れたような状態になっていると言うか」

『クリーチャー達と契約する人間は、ある程度そのような資質に溢れていると聞きます。御白さん、夕哉さん、心当たりがありますよね』

「『才能』って刃金(とがね)が言っていたものですよね」

『はい、夕花さんはそれを取られて、マントラさんの力を引き出すのができなくなったのでしょう』

「やっぱり刃金のせいか、許せない…!」

 

「御白お姉さん、このカード、《聖カオスマントラ》とシノビのカード達をあげます、上手く使ってあげてください。今は寝てますけど、起きたら凄い頼りになると思います」

「あげるって、良いんですか!?夕花さんの大事なものですよ!?」

「そうだよ夕花、自分のために必要なものって…」

 

「私の才能が取られたことも悔しいし、出来ることなら自分の手で取り返したいけれど、できない以上誰かに託すべきだと思ったんだ」

「夕花…」

「大丈夫、待つことには慣れてるし。私ね、今は凄く幸せなの!お兄ちゃんと本音で話せて、御白お姉さんっていう友達もできて!マントラさんのリハビリ器具のおかげで、退院の目処も立ちそうだって!」

 

私は大粒の涙を流しながら、2人を送り出す。

「だからさ、頑張って!お兄ちゃん達!全部終わったら、いっぱい、いーっぱいデュエマしよう!」

「……うん!絶対やろう、夕花!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

病院の外に出た夕哉と御白は、近くの日陰のベンチでまだ暑さ残る風を浴びながら、2人で飲み物を飲んでいた。

 

「…夕哉くん、私、刃金さんのことが許せないです」

「俺もだよ、夕花や飛水のことを、あんな風に扱って」

「はい、私達の大切なものや人を、あんな風に踏み躙ることは許せません、まずは早く飛水くんを見つけなければ」

「うん。飛水…待ってて…!」

「…夕哉くん?どうかしたのですか?」

 

「刃金と話してて一番引っかかったというか、許せなかったのは、『才能』を集めるためにあんなことをしたことだと思うんだ」

一度麦茶を飲み、夕哉は言葉を続ける。

「確かに夕花は勝負強くて、多分俺よりもクリーチャーを操る力に秀でていたと思う。そしてあいつは、夕花のパーソナルなところや、人間であるところを全て無視して、才能のありかとして夕花を扱ってた。そこに至るまでの俺たちのデュエマを道具として扱ってた、勝ち負けしか見ていなかった」

 

「竜也さんから聞いた言葉の受け売りもあるけど、デュエマってさ、人となりが分かるんだよね。挨拶とかの仕方、カードのプレイの仕方、プレイング、ゲームに関係ない雑談の内容」

「…ですね、私は夕哉くんと何度もデュエマしてますけど、これら全てが全部一緒だったことなんてありませんね」

 

「うん、そうやって少しずつその人のことを知れるのが楽しいんだ。Prayersと仲良くなれた。虹村とも最後は分かり合えた。だからこそ、それを無視して才能だけを得ようとしている刃金を、別の意味でも許せない」

「…私も同じです。デュエマを目的達成の手段としているのが、私にとっても嫌なことです」

「いっぱい許せないことあるね」

「ですね。…絶対に負けないように頑張りましょう、夕哉くん!」

「うん、まずは飛水を助ける!これからもよろしくね、御白!」

 

2人はお互いの拳を合わせて、仲間達、自分達のこれからの無事を空に祈るのだった。

 




夕哉と!御白の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「アビスベル=覇=ロード!!」」
「コスト5以上のアビスから革命チェンジで手札から入れ替えることができる7コストのパワー11000のクリーチャーだよ」
「ターン終了時にマナまたは墓地からコスト6以下のアビスを呼び出して状況に応じた味方を増やしたり!」
「アビス全員へのマッハファイター付与によって相手の場を制圧したり!」
「相手の初めて攻撃するクリーチャーがアビスベル覇ロードに攻撃させることで防御力を上げたり!」
「とにかく攻防万能に使い分けられる、俺の新しい相棒なんだ!」
「というわけで次回、『私は全てを手に入れる』」
「「お楽しみに!」」
「さらにこの後『番外編:ドギラゴンズ・ファースト』もありますよ!」
「さて夕哉くん、私と一戦いかがですか?」
「覇ロードと戦いたいだけでしょ?いいよ、やろう!」
「やりました!ありがとうございます夕哉くん!」
「「デュエマ、スタート!」」
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