デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション) 作:シグレサメ
「《王来英雄 モモキングRX》で攻撃する時、《蒼き団長 ドギラゴン剣》に革命チェンジ!ファイナル革命の効果で《Disノメノン》2体を手札とマナから呼び出して、そのままダイレクトアタック!」
デュエルに敗北し、横に倒れ伏したクリーチャーを運んで、元の世界に返す。
「ドギラゴン、頼んだ」
ドギラゴンが思いっきり口に咥えた大刀を振るうと、歪んでいた空間は少しずつ収まり、ついには小さな狭間にすらならなくなり、消える。これが俺たち、「我龍 竜也(がりょう たつや)が今やっていることだ。
俺は今、フランスで開いたクリーチャー界の扉の処理にまわっていた。
漸く落ち着いて宿に帰ってきた。時計は23時。あちらでは6時とかの筈だから、定期連絡するにはいささか早くて遅いだろうか。
そうは言ってもいられないと連絡をかけたところ、予想外の人物が電話に出た。
「もしもし!竜也さんですか!?」
「夕哉くん!?なんで!?」
「良かった、どうしても連絡したかったんです…!」
「そうなんだ、初めてデュエマしたあとは全然話せてなかったから、てっきり忘れられてると思ってたけど…」
「あのデュエマして忘れられる訳ないじゃないですか!」
電話越しでも尻尾を振っているのが目に見えるような夕哉くんの応対に、少しだけ自分を緊張させていたものが溶けるものを感じる。
「でもそっちは6時だろう?なんで…」
「どうしても自分の口から話したかったんです。言葉だけでも、力を借りたくて」
「…そっか、だから公輝の代わりにね」
「公輝さんは別の仕事がありますし、須谷さんもドローンを飛ばして働いてます。すぐに見つけないといけないって、皆分かってるから」
夕哉くんはここ数日で大きく変わった状況を、淡々と、でも時々感情的に少しずつ教えてくれた。特に妹さんや青海くんの話をしている時は、本当に辛そうだった。
「竜也さんと同じ革命チェンジを手に入れましたし、夕花から才能を奪ったやつを追うのもだし、飛水の行方も探さないといけないから…!」
「うん、うん。ありがとう。ちょっとだけ整理する時間を貰ってもいいかな?」
そう言いながら僕はゆっくりと思案する。本当に、数日で状況が変わり過ぎている。それでも受け止めたであろう夕哉くんに、電話越しに尊敬の念を送った。
「ねぇ、夕哉くん」
「はい?どうしましたか?」
「この電話が終わったら今すぐ青海くんを探しに行きたいだろうけど、ちょっと待ってて欲しい。僕がデュエマを始めようと思った話だ」
「竜也さんが…?」
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「当時の僕は東京の大学に入ったはいいものの、だいぶフラフラしてるだけの人間だった。それで入ってたサークル、と言っても実態は飲みサークルだったんだけどね。それの帰り、大きな龍をつけたんだ」
「大きな、龍?それって…」
「酔っ払ってたし見間違いだと思ったよ。でもなんとなくそれができなくて、翌朝にそこに戻った。そこにいたのは繁華街の隅で小さく丸まっていたドギラゴンだったんだ」
電話先の夕哉くんから、動揺が伝わる。
「じゃあ、クリーチャー世界のことを最初から知ってた訳じゃないんですか!?」
「今でこそ公輝とかを通して色々知ってるけどね。彼はクリーチャー世界から迷い込んで酷く弱っていたから。訳あってお金だけはあったからね。とりあえず近くの倉庫をレンタルして、そこにドギラゴンの部屋を作ったんだ」
「そんなことが…」
「打算とか損得とかはその時なくてさ、今その時目の前で弱ってるドギラゴンをどうにかしてあげたいという気持ちが一番だったよ。何を食べれるかを片っ端から確かめて、近くのホームセンターで買ってきたタンクで水浴びをさせて…カードに戻れるほどの体力も回復してなかったから、あの巨体を抑える場所というのも含めて本当に大変だったんだ」
「でも、それが噂にならないなんて不可能なんじゃ…」
「あぁ、そこでやってきたのが公輝だったんだ」
『正体不明の生命体を飼育しているという話を聞いた』
『…知らない!倉庫に入った猫の鳴き声と間違えたんじゃないか?』
『夜、大きな身体の爬虫類が街を徘徊しているという目撃情報、写真まである、本当に心当たりがないのか?』
『………』
「公輝さん、これを元に真沢とかを追い始めたんだ…」
「ドギラゴンの状態を見せたらすぐに納得してもらえたよ。何処の国にも、地球にもいない不思議な生命体。それで目的が保護から研究に変わることが分からないほど僕も馬鹿じゃなかったから、全力で反対した」
『君のお人よしも、この龍を助けたいという気持ちもわかる!だがコイツは特殊すぎる!世話をすると言ったって、そんな場所が、リソースが何処にある!』
『作ってやる!この子が安心して、生きてていいって思えるような場所を、僕が作ってやる!』
『大変です公輝さん、ドギラゴンが光り輝いています!」
『何!』『何だって!?』
「ドギラゴンはカードに入って、僕の元にあることを選んでくれた。その時契約もしてくれたんだ」
「そう、だったんですね…」
「デュエマをその後しっかり勉強して、クリーチャー世界という存在を公輝と一緒に知った。最初に行った時はお互いに開いた口が塞がらなかったよ」
「じゃあ、ドギラゴンって契約のために生まれたクリーチャー…?」
「逆だよ、デュエマを知って初めて知ったけど、ドギラゴンは世界中の人に愛されているクリーチャー。沢山の人に愛されたドギラゴンのうちの1人が、僕に力を貸してくれてるんだと思う、まだ知られていないクリーチャー達との繋がりから新しい相棒を呼び出した君たちとは逆なんだ」
「そうなんですね…!」
「最初真沢の事件も俺1人で対処しようとしていたんだ、他にクリーチャーを使える人間もいなかったからね。でも、そこで君が出てきてくれた」
「俺が…ジャシンと会ったから…」
「あぁ、初めて会った時は危険なクリーチャーなら引き剥がすくらいのことを覚悟してたからここまで穏便に、そしてここまで頼もしい人になってくれると思わなかったんだ」
僕は一呼吸して夕哉くんに伝える。
「デュエマを始めてくれて、僕の言ったことを守ってくれてありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます。竜也さんと会ってなかったら、デュエマをする上での礼儀とか全く分からなかったと思います。デュエマをもっと楽しもうと思わなかったと思います」
「そっか…あの言葉を言った時、ドギラゴンを助けた日を思い出していたんだ。人を思いやる気持ちを持って、相手に向き合い続けていれば、全員でなくてもこちらを向いてくれる人がいる、助けてくれる人がいる。その筈だって、今でも思うよ」
「海外でのクリーチャー界の扉のことは僕達に任せて。刃金(とがね)がこちらに来るならそれの対策も打つ。君たちは狙いがわからない以上最もクリーチャー世界の扉が開く皇龍市にいるべきだ。お互いにやることは変わらない」
「…そうですね、これからもよろしくお願いします」
「うん、後は…。君は絶対これからの選択で迷う時が来るだろうけど、その時は色んな人を頼って、それを元に自分を作り上げて答えを出すんだ。デッキ作りと同じだよ」
「…はい!」
「緊張してたでしょ」
「まぁ、そうですね…!」
「よし、僕は夕飯食べて寝るから、後はよろしくね、夕哉!」
「こちらこそよろしくお願いします!竜也さん!」
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電話を終えて、僕はベッドに寝っ転がる。
「あの時助けたドギラゴンが、今では僕の相棒で、あの時声をかけた夕哉くんが、今ではあんなに頼もしくなるなんてね…」
「過去って、何がどう作用するかわかったものじゃないな」
そう言いながらも僕は、今日一番の充実した気持ちで胸がいっぱいだった。
「…頑張れ、後輩!」