デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション)   作:シグレサメ

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飛水と夕花を犠牲にした刃金を倒すためにアビスに自然文明の力、アビスベル=覇=ロードの解放に成功した夕哉。その力は強大なものであり、刺客を撃退することに成功するが、飛水の行方を掴むことは敵わない。その頃火奈も、自身の大会と、因縁の相手との再会がすぐそこまで迫っていた…。



私は全てを手に入れる

 

Side:火奈

 

皇龍高校文化祭から2日、夕哉と夕花の決戦、刃金(とがね)の出現、飛水の失踪の翌日。夕哉や御白ちゃん、緑達が飛水捜索のために班分けを行い捜索に取り掛かっていた。夕哉が倒してくれたシンという人も、記憶を全部失ったみたいに何も喋ってくれない。刃金に何かされたのは確実だった。

 

公輝さんが大会には出た方がいいと言って、私をここに送り出してくれたのは良かったんだけど…。

 

(って言って集中できるわけないじゃん…!)

ウォームアップをしながら動きのギアを上げようとするけど、やはりどうしても心のギアが上がらない。

 

『そっか、勝手にしてよ。友達のことも見れないで、追いつけるなんて思える日はいつなんだろうね!』

 

あの言葉はどう考えても言いすぎた。あのタイミングで後ろを向いていた飛水にかける言葉としては強すぎたし、自分のこともそのまま言葉に反映してしまったせいで意味がずれてしまった。それを謝る暇もないまま、飛水は行方不明になって、あたしは何も言えないままここに来てしまった。

「最低だ…あたし…!」

そう思い始めると余計に身体が強張って、まともに走れるような感覚では無くなってくる。体調不良ということにして逃げようかとすら思ってしまった自分にさらに嫌気がさす。そう考えているうちに後ろから、

 

「久しぶり!火奈!」

優しく、そしてあたしの体を否応なく引っ張る言葉が、後ろから聞こえてくる。

「…士穂(しほ)先輩。お久しぶりです」

「うん、火奈は…元気じゃなさそうだけど大丈夫?」

 

朱野 士穂(あけの しほ)先輩。あたしの世界で一番尊敬する陸上選手。容姿端麗で、面倒見の良い優しい先輩。中学時代は同じ学校であったんだけどあたしはずっと勝てなかった。凄い仲のいい先輩だったんだけど…

 

「ねぇ火奈、どれくらい早くなった?」

「あたしは…結構練習しましたけど、13.3が限界です」

「…そっか。一緒に走れるといいね!」

 

先輩が学校を才縁高校に決めてから、先輩と話す機会が段々と減っていってしまった。なんでなのか自分にも説明できないけど、きっとお互いに波長が合わなかったのだろうと、自分を納得させていた。

 

「火奈!もうすぐ集合だよ!早く!」

友達の岩波 百華(いわなみ ももか)に呼ばれて、あたしは急いで学校のテントに向かう。隣には才縁高校のテントがあって、一瞬目があった士穂先輩が手を振ってきたので、一応振り返しておいたけど、先輩の顔は、一切笑っていなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

大会に呼ばれた選手が順に走り出していく、あたしと百華も出走順を見たところ、百華と一緒に、士穂先輩と同じ出走だった。「完全に出汁にされてるなぁ」、なんて考えていたら近くに士穂先輩が来て、こちらの出走順を覗き込んでいた。

 

「良かった、火奈に私の今を直接見せられるんだね」

「士穂先輩!?そんな、先輩の活躍は見てますって…!」

11秒台を出す士穂先輩には、地区大会ごときでは敵なしだろう。そう思って言葉をかけたところ、

「火奈、弱くなったね」

 

と、凍りつくような視線であたしを見てきた。

「な、何を言ってるんですか!?火奈ちゃんにいきなりそんなこと…!」

「そうやって仲のいい方向、楽な方向に進んでいくから人間はダメになるんだよ?火奈の邪魔をしないで」

「……何を持ってそんなことを言うんですか」

「待って百華、これは、私と先輩の話だから。ちょっと話してくる」

 

百華を遠ざけて、先輩と向かい合う。

「私が卒業した時、火奈は才縁高校に来ると思ってた。あの才能の原石なら、私と並んで日本記録、延いては世界記録を目指すことができるようになると思ってた」

「…才縁高校は色々な勉強からスポーツまで、幅広い人が世界で活躍してますものね」

「うん、もう一度聞くよ。なんで来なかったの?まだ1年生だよ、私が教えることもできるんだから」

「…入学説明会に行った時に、すごく嫌な雰囲気を感じたんです。自分を全部すり潰して、その上で他人を蹴落とすような場所だって、あたしは思ったんです。だからスポーツ推薦で行けると言われても、行く気が起きなかったんです」

「どっちもできないって?」

「……はい」

 

「そっか、じゃあやっぱり火奈は期待外れだったんだ」

「先輩…昔はそんなに勝利に価値があるって感じの人じゃ…!前みたいに一緒にゲームセンター行ったりして…」

「五月蝿い!それだけじゃ…ダメだったんだよ…!」

 

そう言って士穂先輩は私の頬を叩く。

「兎に角、朝のような腑抜けた態度だったら…全部奪うだけだよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

スタートラインに選手が並ぶ。

「ねぇ火奈、昔に言ったこと覚えてる?」

「選手は、色んな人に助けられてそこにいる、ですか?」

「うん、あの時はそう言ったけどね。結局勝つための力を引き出せるのは自分自身しかいないんだよ」

 

私達がクラウチングの姿勢をとり、合図を待つ。

心を無にして、いつも走る前に絶対する手をほんの少しだけ開いて閉じてをすることで、心をさらに落ち着かせる。

 

号砲と共に、私が身体を起こした瞬間、私の視界で士穂先輩が走り出していた。

フライングをギリギリまで攻めて、それでも飽き足らず何かを求めるように走り続ける。あたしも必死で足を回転させて、先輩に追いつこうとする。

 

差が、縮まらない。1mだった差が2m、3mとどんどん離されていく。自分の不甲斐なさに、何もできなさに足が止まりそうになる。

(なんで今、飛水達のことがフラッシュバックするの!?あれはちゃんと走り終わるまで振り払うようにしたはずなのに!)

 

必死に走った私のタイムは、練習でも中々出さないような酷いタイムだった。

「ハァ…ハァ…ハァ…」

「火奈…。終わったら、この場所に来てくれない?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は同じ部活の人達の走りを見学した後、スポーツドリンクを片手に競技場の裏側?裏口をさらに曲がった先の雑多に植物が生えた場所に辿り着く。

 

そこで待っていた士穂先輩は競技用の服を脱ぎ、才縁高校の夏服を着ていた。

「まだ、暑いね」

「…はい」

「あの時、何を思ったの?」

「…置いてかれそうで、焦って、色んなことを考えました」

「そっか、やっぱり火奈を邪魔するものがあるんだね」

 

「それを全部私に渡して。火奈は、こんなところにいる人間じゃない」

先輩の手には、デュエマのデッキが握られていた。

「………!?なんで、先輩…?」

「火奈は色々なものに惑わされてる、私がそれを取り除くから。また、一緒に走ろう?」

「…嫌です、先輩!どこまで知ってるか知らないですけど、どれもあたしの大事なものなんです!」

「火奈、こいつは何者だ…!?」

「私の大事な先輩、のはずなんだけど…!」

 

「そっか、ならやることは一つだよね」

「先輩…なんでこんなことに…!」

 

「「デュエマ、スタート!」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

火奈の先行で始まった士穂と火奈のデュエマ。お互いに火文明のスピードアタッカーを基軸としたデッキである、鎧袖一触の展開になることは、お互いに予想立てていた。

 

「…あたしのターン!《アシスター・コッピ》を召喚!ターンエンド!」

「私のターン、《竜装 ゴウソク・タキオンアーマー》をジェネレート!」

「え、何そのカード!?」

「これはクロスギア、クリーチャーと違って攻撃したりすることはできないけれど、クリーチャーに装備させたりすることでさらにパワーアップさせることができるの、ターンエンド」

「あたしのターン!《決闘者・チャージャー》を唱えて、山札上3枚から《覇炎龍 ボルシャック・ライダー》、《ボルシャック・テイル・ドラゴン》を手札に!」

 

「なんでデュエマのこと、あたしの大事なクリーチャーのことを知ってるんですか!?しかも、ちょっと乱暴な言い方したら先輩には関係ない話ですよ!」

「関係あるよ、私にとって火奈は一番大事な後輩。それは今でも変わらない。だから引っ張り出すの。私がこのデュエマで火奈の全てを叩きのめして、考えを改めさせてあげる」

 

そう言って士穂はカードを思いっきりドローする。

「私のターン!《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」(ぶい)》を、タキオンアーマーの軽減を合わせて1コスト軽減!3マナで召喚!」

 

青い身体に武具を纏った4足歩行のドラゴンが、バトルゾーンに着地した途端大きな咆哮を上げる。

「武者ドラゴンは2つの登場時能力を持つ!一つ目はシールドを1枚ブレイクすることによって発動するパワー6000以下のクリーチャーの破壊!アシスターコッピを破壊する!」

 

士穂 シールド4

「さらに手札からクロスギア1枚をコストを払わずバトルゾーンにジェネレートする『侍流ジェネレート』を持つ!《竜牙 リュウジン・ドスファング》をジェネレート!ジェネレート時の効果でサムライ・メクレイド5を行う!」

(あたしのクリーチャーを破壊しながらバトルゾーンに展開して、挙句の果てにメクレイド!?レベルが違いすぎる…!)

「《爆炎ホワイトグレンオー》をバトルゾーンに!これで私のサムライは全てスピードアタッカー!さらにドスファングはサムライに無料でクロス、装備することができる!」

 

ドスファングを前足と身体に纏った武者ドラゴンが、火奈のシールドに向かって走り出す。

「クロスしたクリーチャーの攻撃時もサムライメクレイドは発動する!2枚目のドスファングをバトルゾーンに、さらにメクレイド!《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弐天」》をバトルゾーンに!場の光のエレメントの数、3つ分までドロー!そしてシールドを攻撃!」

 

火奈 シールド3

「トリガー、なし…!」

「ホワイトグレンオーでも攻撃!」

 

火奈 シールド2

「シールドトリガー!《ボルシャック・テイル・ドラゴン》!ホワイトグレンオーとバトル!」

「シビルカウントは達成してないから相打ちだね」

「十分!全体スピードアタッカー付与はこれで切れる!」

「分かったよ、火奈。ターンエンド」

 

「火奈、才縁高校は人を踏み躙ったりする人が多いって言ったけど、それは何処でも同じなんだよ?」

「…どういうことですか?」

「どこに行ったとしても、優劣をつけるレースは終わりがない。逃げることもできない。だったら自分が優劣をつける側に回れるくらい強くなるのは、自然なことじゃない?」

「そんなこと…あたしはしません。それで辛い目に遭う人もいるんですよ!ライダーさんと一緒に戦うようになって、さらにそう思うようになったんです、そんな好き勝手な神様みたいになりたくない!」

「…火奈は優しいね。クリーチャー界は弱肉強食だし、人間も何かを犠牲にせず生きることは不可能なのに」

 

そう言った士穂に対し、ライダーが反論する。

「俺もそう思うが、だからこそできる限り多くの人々のことを救うのだ、お前は自分の気に入った人間を救いたいだけだろう!」

「じゃあ本当に救う者は無作為にできるの?無作為にして貴方は耐えられるの?できないでしょう?だから私は、刃金くんの意見に賛成した。少しでも自分が選べるようにね」

「刃金って…!先輩、あの人の仲間に…!」

「嫌なら止めてみなよ、火奈、貴方の言ってることも私の言ってることも、突き詰めればそれでしか証明できないよ」

 

「あたしのターン!《クック・撃(スクラン)・ブルッチ》を召喚!次に使用するアーマードのコストを6下げて、味方のドラゴン全員にスピードアタッカーを与える!来て!《覇炎龍 ボルシャック・ライダー!》

「来たね、火奈の切り札!」

 

「ボルシャック・ライダーでシールドに攻撃!その時、ブレイクするシールドの数だけアーマードメクレイド5を発動する!《ボルシャック・アークゼオス》!《ボルシャック・テイル・ドラゴン》!アークゼオスの登場時効果でさらにメクレイド!アークゼオス2体目をバトルゾーンに!さらにメクレイド!クック・撃・ブルッチを召喚!アークゼオス2体が、ファイアーバードが出た時にバトルする効果を発動!パワー11000で、武者ドラゴン、武者ムサシをバトルで破壊!」

 

士穂 シールド2

「火奈の今の本気…こんな感じなんだ」

「ハァ、ハァ…!どうですか…!」

「攻めだけに特化した勢いだけのデッキだね、このままじゃ私には絶対届かないよ。シールドトリガー、《極閃呪文「バリスパーク」》!相手クリーチャー全てをタップして、トリガー+効果でシールドを1枚追加する!」

「…ターンエンド!」

「火奈に足りないものを教えてあげる。攻撃の後の隙、防御力の欠如、そして継戦能力の低さ。貴方は今のそれだけじゃ、絶対に私には勝てない」

「そんな…!」

 

士穂 シールド3

「私のターン、ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」を召喚、登場時にシールドを1枚ブレイクして、クック撃ブルッチを破壊、さらに3枚目のリュウジンドスファングをジェネレートして、メクレイドでホワイトグレンオーをバトルゾーンに出して、全体にSAを付与する!さらにタキオンアーマー、ドスファング3枚をクロスする!」

「盤面を0にしたのに、クロスギアのせいで盤面が一気に…!」

「何を恐れているのか知らないけど、今の貴方は私の敵じゃない、じゃあね。武者ドラゴンで攻撃する時サムライメクレイドを3回発動!武者ドラゴン、ホワイトグレンオー、武者ムサシを1体ずつバトルゾーンに、ムサシの登場時効果でボルシャックライダーを破壊!」

「撃ブルッチでセイバー!」

 

火奈 シールド0

「シールドトリガー、なし…!」

「武者ムサシでダイレクトアタック」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

デュエマに負けて土をつくあたしに、先輩が優しく声をかけてくる。

「ねぇ火奈。私の元に来なよ。そのカードも、貴方の友達も捨ててさ。火奈が強くなれば、もう辛い目にも遭わない、私も嬉しい。どう?」

 

手を伸ばしてきた士穂先輩の手をカードから手を出したライダーが跳ね除ける。

「それは逃避と変わらない、お前についていったら、火奈はさらに弱くなってしまうだろう…!連れ帰るなら俺を連れ帰れ!」

「…そっか、見込みがあったら連れてこいって話だったけど、両方とも微妙そうだったな。じゃあね『赤坂さん』、また会えると良いね」

 

そう言う士穂先輩の遠ざかる背中を見ることしかできなかった。

「ねぇ、ライダー。あたし、強くならなきゃ」

「あのような人間の言うことを聞くこともないぞ、火奈。今日は負けたがまた…」

「ライダーは本当にそう思ってるの?今のあたしじゃ、何もできない、飛水に何もいえないまま行方不明にする原因を作っちゃって、士穂先輩に手も足も出なかった…!」

「火奈…」

「そして何より、私はさっき、先輩の手を取ろうとした、そんな自分が嫌だよ…!あたしは、何もできなかったんだ…!」

 

その言葉を聞いたライダーは、少しだけ考えて話し始めた。

「…火奈。少しだけ強くなる為の心当たりがある」

「何…?」

「黒井がやっていた文明を混ぜる力だ。基本的にデュエマは文明が多いほどできることが増えるし、強くなる傾向にある」

「じゃあそれをやって…」

「だがその分難しくなるし、俺がパワーアップするとなると火奈にも負担がかかる可能性がある」

「やるよ、絶対に、どれだけ辛くても」

「…それだが、お前がそのまま強くなるためだけに進めば人を踏み躙ることを是とする朱野のような人間になるだろう」

「じゃあどうやって!そうしないと先輩に!」

「少し考えさせてくれ。青海を探すのが、今やることだろう」

「じゃあ、どうすればいいの…!また士穂先輩に会ったら…」

 

あたしの心に、士穂先輩が、重くのしかかった。

 




火奈と!御白の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」(ぶい)!!」」
「侍流ジェネレートと自分のシールドをブレイクすることによる6000以下の破壊、両方を使いこなす器用なドラゴンですね!」
「うん、龍牙 リュウジン・ドスファングがあれば侍流ジェネレートで爆発的な展開、さらにバトルゾーンを空にされても、そのままカウンターできるほどの継戦力を持ってるよ」
「総じて強力な朱野さんの相棒ドラゴンですね…!」
「というわけで次回、『降り出した雨、振り出しの海・前』」
「「お楽しみに!」」
「火奈ちゃん、大丈夫ですか?」
「うん、多分…」
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