デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション)   作:シグレサメ

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飛水の行方不明などによって大きく動揺していた火奈は、部活の秋の地区大会にて先輩である朱野 士穂(あけの しほ)と再開するも、彼女は考え方が大きく変わり、火奈を自分の思い通りに教育し直そうとする。負けてしまった火奈をもう魅力がないと見捨てる士穂に、火奈は自分の無力を感じるのだった。



降り出した雨、振り出しの海・前

 

水の匂い。

 

まるで海の中にいるかのようなふんわりとした感覚が俺を包む。確か俺は黒ローブに吹っ飛ばされて…。三途の川って水の匂いが強いのだろうか…なんて思いながら身体を起こそうとする。

 

「ここは…?」

目に入ってきたのはまるで水族館の中のような光景。ガラスのようなものが貼られた壁には魚や貝のようなものが泳いでいて、そのガラスのようなものに触るとグニンと力を入れた箇所が凹み、力を抜くと元に戻った。

 

少なくともここは人間の世界じゃない(クリーチャー世界で意識を失ったのだから当たり前だが)、そう思った俺の前に、金色の体色に身を包み、歯を剥き出しにした狐のような生き物が、俺の目の前に現れる。

 

「ようこそ、水文明へ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Side:飛水

 

「ようこそ、水文明へ」

「いや、2回言わなくていいわ、どした?」

「『いや、2回言わなくていいわ、どした?』」

 

そのクリーチャーとは話にならないと察した俺は、自分の状況を見直そうとする。ここは何処かの水中に作られた施設のようで、部屋にあるのはベッドが1つと書斎が1つ、そして間違いなくクリーチャー用に作られた机とパソコンのようなものが置いてあった。パソコンはキーボードが馬鹿でかいあたりから、そう判断した。

 

「ここまで機械化とか諸々が進んでる世界…俺は水文明に落ちたんだな」

「『ここまで機械化とか諸々が進んでる世界…俺は水文明に落ちたんだな』」

「なんっだお前!?せめて名前を言え!」

「《芸魔隠狐 カラクリバーシ》、起きたらマスターのところまで連れて行けと言われています。体調が良ければ、すぐにマスターの元に案内いたします」

「カラクリバーシ、それがお前の名前か」

「カラクリバーシ、ワタシの名前です」

「それで、マスター?つまりそいつが俺を助けたってことか?」

「……『マスター?つまりそいつが俺を助けたってことか?』」

「だぁあ!!」

 

恐らくだがこの機械のようなクリーチャーは意図した質問の時にしかちゃんと作動しない。プログラム外のことは聞き返すだけ。芸魔隠狐じゃなくて芸魔インコの間違いじゃないのか?

「…分かった、マスターの元に連れていってくれ」

「了解しました」

 

そう言うとカラクリバーシは身体に電流が走ったかのように跳ねて、ピョンピョンと走り出していってしまう。

「ちょ、待て!早すぎるって!」

そう言った矢先、カラクリバーシは止まってこちらを見てくる。ゲームのチュートリアルキャラなのか?そう言いつつも一定の距離を保ちながら道案内を続けるカラクリバーシに、俺は渋々着いて行った。

「プログラムに忠実なクリーチャーで助かったな…」

 

そう言って水文明の地上に出た俺は、カラクリバーシに変装を促されるのも気づかずその光景に感動した。

水中都市から出ると、周りが水に覆われた、先ほどのガラスのようなものが敷き詰められた明るい場所へと辿り着く。太陽は仄かに身体を温め、まるで船の甲板のような感覚を感じる。そこにいたクリーチャー達が思い思いに詩を唄い、楽器をかき鳴らす。

 

夢にまで見た「マジック」のハイクを操るクリーチャー達が、今俺の目の前にいた。

「すげぇ…本当に俺が使ってるクリーチャー達だ…!」

「再度警告いたします、この仮面をつけて、急いでここから離れてください」

「お、おぉ。すまねぇ。つい興奮しちまって…!」

 

そう言って俺はカラクリバーシの後を走る。あまりの興奮に、自分を見ている存在がいることにも気づかなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カラクリバーシが手をポンと壁に当てると何もないところから扉がズズズと重い音を立てながら開く。

 

その扉の先、薄暗い施設の中には幾つかの培養液なようなものがあり、その中に幾つかのカラクリバーシのようなクリーチャーが浮いている。

「これ、ヤバいところに…!」

自分を助けたのがそいつだろうと、今のこの状況に背に腹は変えられない、そう思って急いで外に出ようとしたところガシャンと扉が閉まる。

 

「これが人間ですか、私(わたくし)が思っていたよりひ弱な存在でしたね」

「しかしこいつと契約すれば我の力もとても強くなる…!」

後ろを振り向いた際に俺は固まる。

『龍王』と書いてある将棋の駒がかけられた城のようなものから、赤いドラゴンと青いドラゴンが顔を出している。そんな名状し難いクリーチャーが一人で2人分喋っている。とんでもない光景に俺は固まるしかなかった。

 

「私は《芸魔龍王 アメイジン》と申します。貴方の疑問に答えるにはカラクリバーシでは力不足だったでしょう」

「我は《芸魔龍王 アメイジン》だ。カラクリバーシはプログラム上の簡単なものはほぼ完璧に行うのだが、それ以外はてんでダメなんだ、しかし他の芸魔の連中も欠陥を抱えていてな…」

「ちょっと待ってくれ、お前達は何者なんだ!?2人で同じ名前…?」

 

「不本意ながら私はこのクリーチャーと身体を共にしているのです、何度か抹消もしようと思ったのですがその権限も消されており…」

「それは我の台詞だ!生まれて気づけばこの堅物野郎と一緒にされているんだよ!身体を動かす権利もピッタリ半分!すぐにでも消してやりたい!」

 

そう言いながらアメイジンというクリーチャーは顔同士をぶつけ合って喧嘩を始める。アメイジンも大概変なクリーチャーなのでは…?

「分かった、女性声の方をメイさん、男性声の方をジンさんと名義上読んでいいか?このままじゃどっちに話してるのか分からなくなる」

「…わかりました、それで今は妥協しましょう」

「絶対追い出す…名前区別されたら余計にそう思った…」

「奇遇ですね、私もそう思っていたところです」

 

ようやく喧嘩を辞めたアメイジンを見て、飛水は先ほどからあった疑問を投げかける。

「なぁ、俺はなんでここにいるんだ?どう助けてくれたんだ?」

「我から説明する。我らは水文明を守護する為にある方に生み出され、その平和をパトロールなどで守っていた。3日前に水文明に何かが落ちてきて、それで水の中に入ったクリーチャーか何かだと我達が救助を出した」

「それ、俺の身体強すぎねぇか…?」

「実際、かなり状況が悪いものでした。少しでも発見が遅れていたら絶対に助からなかったでしょう。2日ほど栄養を与えながら怪我を回復するためにまず水文明の技術力を駆使して私達が診て、1日休んで貴方が起き上がったというわけです」

「治療してくれたのもお前達だったのか、やっぱりクリーチャー世界の医療はすごいな、ありがとう」

「まぁ水文明に落ちたのが正解だったな。ここでもない限り治せるかは微妙だった」

 

そう言ったアメイジンは、飛水の方に向き合って言う。

「それは兎も角、私達が貴方を助けた理由は私たちと契約したいということです」

「契約!?」

「はい、他の文明の情報を見る限り、火文明に1体、光文明に2体、自然文明に1体、闇文明に1体、クリーチャーと契約している人間を確認しています」

(俺の仲間達のことだ…多分ある程度情報を握っているクリーチャーだろうけど…)

 

「水文明を守護するための力が我達には必要なんだ、その為には念の為お前がクリーチャーを扱える人間か知る必要がある」

「そうですね、その為には…」

「デュエマか、了解した!」

「分かっているじゃないか、よしやろう」

「私たちの力を見せてさしあげます」

 

「「「デュエマ、スタート!」」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

始まった飛水とアメイジンのデュエマ。飛水は水単のマジックを、アメイジンは火と水のマジックデッキを使ったミラーマッチとなる。どちらも呪文を多用するデュエマ、飛水の先行となる。

 

「そういやアメイジンはどっちがデュエマするんだ?」

「我だ」「私です」

「よし、ターン毎に入れ替わりでデュエマしようか」

 

「俺のターン!《アシスター・Mogi林檎》を召喚!ターンエンド!」

「我のターン!《AQvibrato(アクアヴィブラート)》を召喚、出た時に1ドロー!」

 

「俺のターン!Mogi林檎でコストを下げて、《コーボー・マジカルショッカー》をバトルゾーンに!3枚ドローして2枚を山札の下に!ターンエンド!」

(これで次のターンからメクレイドラッシュ…!)

「私のターン!《終止の時計 ザ・ミュート》を召喚!登場時に2枚ドローして1枚捨てる!」

「vibratoでシールドに攻撃する時革命チェンジ!《芸魔隠狐 カラクリバーシ》をバトルゾーンに!」

「革命チェンジ!?」

 

ふと消えたかのように見えたvibratoだが、上に飛び上がって上から降ってきたカラクリバーシとバトンタッチする。

「カラクリバーシの登場時能力で1枚ドローした後コスト3以下の呪文、《フロスト・チャージャー》を唱える、クリーチャー1体を攻撃も防御もできなくなる!マジカルショッカーの動きを止める!」

(カラクリバーシへの殴り返しを消された…!)

 

飛水 シールド4

「シールドトリガー、無し…!」

「ターンエンド、この革命チェンジ戦法に、穴などありません!」

 

「俺のターン!2マナでMogi林檎の2体目、さらに2体の軽減を入れて1マナで《♪ 閑かさや とにかくブレイン 蝉ミンミン》を唱える!山札の上から3枚を引いて、2枚を山札の上に!さらにマジカルショッカーは各ターン1回呪文を唱えた時に手札を1枚捨ててマジックメクレイド5を行う!」

「山札上を固定しながらメクレイド、やはりこの人間は高水準に戦える…!」

「私達の力を、使いこなすことができる…!」

 

「マジックメクレイド5!《Kl'avia Mondo(クラビアモンド)》を召喚!Mogi林檎でシールドを攻撃!」

 

アメイジン シールド4

「シールドトリガー、《AQ NETWORK》!手札から呪文、《瞬閃と疾駆と双撃の決断(パーフェクト・ファイア)》!手札からコスト3以下のクリーチャー、アシスター・Mogi林檎、AQ Vibratoをバトルゾーンに!」

「…ターン終了時クリーチャーと呪文を両方使ったため、クラビアモンドのマジックメクレイド8が発動!ここは運だが…来た!《Kl’avia Tune(クラビア チューネ)》!」

 

「こいつはパワー12000のブロッカーで、次のターンの初めまでコスト7以下のクリーチャーは攻撃も防御もできず、こいつはコスト7以下の効果に選ばれず、クリーチャー以外の7コスト以下のコストは8に書き換えられる!」

「バトルゾーンの処理に、強力な除去耐性、呪文対策まで…やるじゃないか」

「しかしこれを突き崩さなくて、何が水文明の守護者か!」

 

「我のターン、Mogi林檎がバトルゾーンにいるので1コスト軽減、《紅奏龍 メルダウ》をバトルゾーンに、効果で相手のパワー3000以下のクリーチャー、Mogi林檎2体を破壊!メルダウでシールドに攻撃する時革命チェンジ!《芸魔龍王 アメイジン》!」

「パワー7000?ならクラビアチューネでブロック!」

「無駄だ、我の効果で墓地にある呪文を全て、つまりここまでに捨ててきたカード全てを手札に!そして手札枚数、9コスト以下の相手のクリーチャーは次のターンまで攻撃も防御もできない!」

 

飛水 シールド2

「シールドトリガー、《♪大空に ムーンサルト やや斜め》!相手はアンタップしているクリーチャー2体を手札に戻す!」

「ミュート、カラクリバーシを手札に戻すぞ」

「マジカルショッカーの効果でメクレイド5!《歌舞乙女 ヒメカット》をバトルゾーンに!」

「ターンエンド」

「そっちのターン終了時にこのターンクリーチャーと呪文を出してるから、マジックメクレイド8!《マジック・A(アコギ)・セミプーロ》!」

 

(成程、このようにして計算されたコンボをするのが青海飛水の強さ…。これなら私たちの力も…)

(我らのデッキを扱える人間は数少ない、これで契約者として…)

(アメイジン、出鱈目に強え…!コスト軽減を除去しながら手札増やして残りのクリーチャーは動けなくするってなんだよ!?一応ブロッカーのセミプーロを立てたけど、アメイジンからアメイジンへの革命チェンジが成立したら攻撃防御が完全に無効化される!手札戻しじゃ革命チェンジへの有効な対策になってねぇ…!)

 

「俺のターン!呪文《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》を発動!こちらの墓地を無くして2枚ドローする!コーボーマジカルショッカーで1枚捨ててマジックメクレイド5!《Drache Der'Zen》をバトルゾーンに!ターンエンド!」

「私のターン、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》を召喚!1枚ドローして、呪文《瞬閃と疾駆と双撃の決断(パーフェクト・ファイア)》!コスト3以下を呼び出す効果と、味方1体にスピードアタッカーを与える効果を発動!ミュートを呼び出してスピードアタッカーを付与する!」

 

(すげえ強さ…このカードがあれば…俺も…!)

「アメイジンで攻撃する時アメイジンに革命チェンジ!先ほどと同様に全てのクリーチャーの動きを止めます!」

 

飛水 シールド0

「シールドトリガー、なし…!」

「「カラクリバーシでダイレクトアタック!」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アメイジンは嬉しそうに体を稼働させながら、俺に身体を近づけてくる。

「あなたは契約するに相応しいとまでは言えませんが、私達の力を使いこなすことができるでしょう。私と契約しましょう」

「あぁ…俺負けちまったけど…?」

「問題はない、我らの目的のためには契約する人間が必要だったのだ。これでお前はクリーチャーと戦う力を手にする。我らは問題を消去する方法を手に入れる!」

 

そう力説するアメイジンに少し、しかし無視できない違和感を感じる。

「なぁ、メイジンは何から水文明を守ろうとしているんだ?」

「深刻な水質汚染です。最近水文明が段々と汚され、この海中都市の外側には何処から持ち込まれたかも不明なゴミなどが浮き放題になっているのです」

「それは…深刻だな」

(持ち込んだ可能性があるのは…あの黒ローブか?それとも…)

「その為には我らはある装置を作った、電磁砲として水文明の遠く彼方までそれらのゴミ、汚染を浄化するための濾過をするための装置だ」

「その動力のためには、沢山のクリーチャー達の力が必要です、勿論、私たちも」

 

「そうか。…なぁ、それだけじゃ足りないよな?」

「よくわかっているな、我らだけでは足りないから、水中都市の音楽を使うクリーチャー達から魔力を貯めて、水質を戻すつもりだ。それの発射に相棒の人間が必要だ」

「…待てよ、それはそいつらに許可取ったのか!?」

「彼らはこの水文明のピンチにもただハイクとやらを作るだけの非生産的な存在、演算においてはこれくらいはしてくれないといけないのです」

「水文明のクリーチャーは人口が膨れ上がりつつある。住み良い水文明のためには多少の人口削減もやむを得ないだろうな」

 

そんなことを話すアメイジン達を見て、俺は拳に力が入る。

「…なぁ、お前ら本気でそれ言ってるのか?」

「はい、水文明の未来のためなら、少しでも救えるような選択を…」

「俺は、あんたらとは組まない。世話にもならない。元の世界に戻る方法も自分で探す。じゃあな」

「何を言っている!?お前がいないと動力させるものがおらず、濾過器が動かせないんだぞ!?おい、逃げるな!」

 

アメイジンが呼び止めるのを無視して、俺は走り出す。

(アイツらなりに考えてるのは伝わってくるけどよ…俺がわがままなのは分かってるけども…!こんなことぜってぇ違えだろ…!)

「カラクリバーシ!扉の開け方を教えろ!」

「5分ごとにパスワードが変わるためそれを入力します、現在は7010」

「サンキューな!」

「「カラクリバーシ、何をやってる!!」」

「プログラム通りに動きました」

 

俺は言うに言えないモヤモヤを抱えながら、アメイジンの研究所の扉を開けて、水文明の広場に向かって走り出した。

 




飛水の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「《芸魔龍王 アメイジン》」
「コスト5以上のマジックから革命チェンジできる強力なマジックのクリーチャー。パワーは7000と最低限だが」
「出た時に墓地から好きなだけ呪文を手札に加え、手札枚数以下のコストのクリーチャーを全てアタックもブロックもできなくする強力な制圧性能を持っているぞ」
「というわけで次回、『降り出した雨、振り出しの海・後』」
「お楽しみに」
「水文明のために住人を犠牲にするって、やっぱりおかしいだろ…!」
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