デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション)   作:シグレサメ

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水文明に飛ばされた飛水はアメイジンという2つの人格があるドラゴンと出会い、契約を持ちかけられる。しかし彼らは水文明に住んでいるクリーチャーの犠牲が、水文明の運営をしていく上では必要と考えており…



降り出した雨、振り出しの海・後

 

Side:飛水

 

「つぇえんだけどな…」

確かにアメイジンはめちゃくちゃに強かった。火文明を取り入れればデュエルの幅は大きく増えるだろうし、俺にとって魅力的な提案であることには変わりない。だがそれだけに、この言葉が心を渦巻く。

 

『彼らはこの水文明のピンチにもただハイクとやらを作るだけの非生産的な存在、演算においてはこれくらいはしてくれないといけないのです』

『水文明のクリーチャーは人口が膨れ上がりつつある。住み良い水文明のためには多少の人口削減もやむを得ないだろうな』

 

「…クソ!」

メイさんもジンさんも余りにも冷たいクリーチャーだった。非生産的な存在?人口削減もやむを得ない?許せるわけないだろう!!

でもせめて帰る方法を聞くべきだったかと自分の短慮を恥じる。せめて夕哉達に心配させないようにしてから…。

「でも、ドランゴルギーニも、ゴルファンタジスタも、ボルシャックカイザーも…皆自分を慕ってくれるクリーチャーに対して全力で返していた…!」

ジャシンも自分のアビスロイヤルを大事にしてることは夕哉の話から聞いている。俺はあのクリーチャー達ほど冷たいクリーチャーを知らない…!

 

「待って、そこの貴方」

「………!?《Eine k’Reine(アイネクライネ)》!?」

「あら、私の名前知ってるの?」

「知ってるも何も、Dracheの音楽的にも人生的にもパートナーで、伸び伸びとした水中に溶け出すような音楽を聴けるっていう…」

「へぇ、嬉しいこといってくれるね。Dracheのパートナーってだけじゃなくて、一人のシンガーとして見てくれてるなんて」

「…あ、すいません!初めて俺の好きなクリーチャーに会えたから…」

「良いのよ、ところで貴方が「ニンゲン」?よね?本で書いてあったことが本当なんてね!そうだ、私のユニットの練習場所に遊びに来てくれない!?」

「それって…『壱百年(ひゃくねん)Wish』ですか!?」

「えぇ!?私達知ってるの!?ニンゲンなんて初めて見た!噂でしか聞いた事なかったのよ、目撃情報とかはあるんだけど…」

「それ多分気のせいじゃないですかね…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Dracheさん達の練習会場は水の中にできた地面以外全方向をガラス張りにしたようなものであり、音が反響して、どこまでも歌うクリーチャーの声が伝わっていく。

 

Drache Der'Zen、Eine k’Reine。俺の憧れのクリーチャー達に紙越しじゃなくて、実際に聞くことが、会うことができる。こんなことが許されるのかというほど、贅沢な話だろう。

 

「君がオウミヒスイっていうニンゲンだね?」

「ハァッ…!Drache Der'Zen!?」

「やっぱり名前知ってるのか!俺は異世界では有名人なんだな!」

 

青いコートに身を包み、青い魔法使いのような帽子を被るまるでウィザードのような出で立ち。三味線とギターの合体したような楽器を併せ持つ俺の憧れのクリーチャー、Drache Der'Zen!

 

(やべぇ、嬉しすぎて変な息吸う声出ちまった…!)

「ニンゲンかぁ…やっぱりこういうのは創作意欲が刺激されていくなぁ、一緒にセッションできる?何を弾ける!?」

「ギ、ギターなら…!」

「オッケー、じゃあ俺がベースやるから。曲は人間界から伝わってきたと噂のこの曲でいい?」

「はい、知ってます。それでお願いします」

「AQ NETWORK、キーボード!drAm’n rAsh(ドラムン ラッシュ)!ドラム頼んだ!」

「え、良いんですか!?セッションって…!」

「無理強いはしないが、やっぱり楽器は一番早くそいつの人となりを知ることができる!ギターならここにあるから」

「あ、そうだ。俺はギター持つと少し「荒く」なるから、よろしく」

 

ギターのネックを強く握る。まさかこんなところで憧れのクリーチャーと演奏することができるなんて。

 

「よろしくお願いします、Dracheさん」

「Dracheで良いよ、…行くぞ」

 

人が変わったようなDrache達の演奏に俺は圧倒される。こちらの世界のプロ、それもトップクラスの演奏に俺は飲まれそうになるが、流されてたまるかと必死に1音1音を手繰り寄せようとする。

途中で気づいたのか、Dracheがあからさまにペースを落とし、こちらにベースを傾けてくる。まるで「大丈夫か?」と言うように。

 

「…待ってくださいよDrache。俺はまだ、やれます!」

「…そう!じゃあ俺も本気で行こうか!」

 

まだ本気じゃなかったのかと言う間もなくDracheはベースを掻き鳴らす。これで本領の楽器じゃないのだからとんでもない。俺のとんでもない差、Dracheの凄さ、そして、このクリーチャー達に不幸な目にあって欲しくないと言う気持ちが弾きながらゆっくりと湧いてきた。

 

「……きっつ…!」

「お疲れ様、Drache、ヒスイ。すごい楽しそうだったね」

「ニンゲンに会えるなんてまたとない幸運だからね!気合いが入ってしまったよ…。ごめんねヒスイ」

「大丈夫、です…。すいませんDracheさん、暇な時で良いんですけど、ちょっと2人で話して良いですか?」

「…暇な時と言わずこの後にしよう。俺も君に聞きたいことがいくつもあるんだ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Side:夕哉

 

「ジャブラッド、お疲れ様」

「ジャブラァ!」

 

ジャブラッドにいつも通り唐揚げを食べさせて、自然文明の探索を終える。飛水が吹っ飛ばされた方角にあったのは自然文明と水文明。しかし水文明は水中都市である上にクリーチャー達の警備が厳重で、フラウム・ゴルギーニに乗って入ろうとした御白はすぐに追い出されてしまった。

 

「須谷さん、やっぱり飛水は水文明に…」

『はい、そう思うのもわかります…自然文明は今日黒井さんが探したところで考えられる位置としては全域を探しています。あとは入れ違いになってる等で…』

「各地でゴルファンタジスタの仲間が動いている以上入れ違いって考えるのは厳しいものがある気がしますけど…」

 

そう言ってポータルに戻ってきた俺は、緑がカメラを持って何やらゴルファンタジスタと話しているのを見つける。

「緑、何やってるの?」

「うん、ゴルファンタジスタが抜けた記憶を思い出そうとしてるんだって」

「お前がアビスに自然文明を加えたのを見て思い出したんだ。歴史上クリーチャー達が複数の文明にまたがって暮らしてたことは決して珍しくなかったらしい。だから…」

 

ゴルファンタジスタが腕を組み、必死に何かを思い出そうとしている。

「ゴルファンタジスタが別の文明、水文明との繋がりを思い出そうとしてくれてたんだ」

「自撮の超人(セルフィー・ジャイアント)とか竜脳鎧冑アナリスとか、そういうクリーチャー達の情報も見つからなかったわけじゃないんだが…」

 

そう言いながらカードからカメラをスクロールするゴルファンタジスタの指を緑が止める。

「ねぇ、こことかに暮らしてたクリーチャーっていなかったの?オービーメイカーくらい大きかったら…」

「池ポチャ、ペナルティエリアのことか?基本的には掃除した後以外はゴルフボールが水の中に溜まってるから、水鳥が休憩に入るくらいだぞ。ん、池ポチャ…?」

 

ゴルファンタジスタが大きく手を打って、大声を出す。

「それだーーー!!!」

「五月蝿いぞゴルフ馬鹿!!!」

「ジャシンも大概うるさいよ!」

「何が分かったのゴルファンタジスタ!?」

 

「ラウンドナンバーズは基本自然文明に住んでたんだが、隣り合っていた水文明の未開の地にラウンドナンバーズが住んでいた例もあったんだ。その一つが《五番龍 レイクボーチャー ParZero(ゼロ)》!」

「じゃあそのクリーチャーを見つけたら!」

「あぁ、水文明に入れるかもしれねぇ!さらに緑にとっては!」

「ボク、水文明を使えるの!?」

「そういうことだ!そうと決まったらすぐ行くぞ!」

「おー!」

 

「ちょっと待ってまずは公輝さんに!行っちゃった…!」

「別の文明にゴルフコース作るとか、アイツら、ゴルフ馬鹿の向こう側なんじゃないか…?」

「ごめんジャシン、俺も少しそう思った…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Side:飛水

 

Dracheと一緒にステージ外のベンチで横に座って話す。

 

「つまりヒスイの世界には沢山のニンゲンがいて、そこでは音楽もハイクも盛り上がってるんだね」

「はい、でもDracheさんほどレベルが高い人も早々…」

「謙遜しなくて良いよ、俺達の世界には人間界から流れてきたものが多いから、人間がいなかったらクリーチャー世界は良くならなかったんだ」

「そうなん、ですね…」

 

言えない。この文明を救うためにDrache達を犠牲にしようとしてるクリーチャーがいるだなんて。

「ヒスイが言いたかったのはそういうことじゃないでしょ?」

「…はい、もし、もしもですよ。明日自分がもし自分がこの世界から居なくなるとしたら、Dracheはどうするんですか」

 

少し聞き方を間違えたかもしれない、Dracheは考え込んで、一つの答えを導き出す。

「ハイクを詠むかな。この世界はとっても綺麗だっていう」

「…ハイク、ですか…?」

「求めてた答えじゃなかった?」

「いや、そんなことは…」

 

「場数を踏んでいないわけじゃないから、人の顔から心情を予測したことも一度やニ度じゃない。それくらいわかるよ」

「…すいません」

「良いよ。多分水文明の皆は俺に助けを求めると思うから。でも俺に守れる人間はアイネとそのお腹の子供を守り切れるかってところだと、正直思ってしまうかな」

(アメイジンのことは皆知らないんだな、本当に文化から独立してるのか…。それでも、Dracheは目の前のものを守ろうとするんだ)

 

「できないことをできるって言うものじゃないからね。昔は言ったけどその度に後悔してきた。アイネとも一度その向こう見ずが原因で別れたからね」

「アイネさんと別れたんですか!?」

「うん、それで俺の方から謝って漸く許してもらったんだ。そしてその時の俺達の気持ちを綴ったのがこのカード」

 

俺にDracheが渡してきたのは《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》のカード。

 

「本当は何が起きているかまでは分からないけれど、ヒスイはこれなら後悔するようなことはいっぱいするし、自分の手に負えない失敗はいっぱいすると思う」

俺には火奈に謝れてないこと、黒ローブ相手に無茶をしたこと、アメイジンの考えを慮らずに出てきたことを思い出す。ここ数日だけでも大きなやらかしだらけだ。

 

「ヒスイ、でもそれを良い方向に変えるのも行動だ。諦めて全部やめたら、このハイクも出来なかったし、壱百年Wishの再結成も出来なかった。だから話したいと思った時に、少し勇気を出して話してくれると嬉しいなって」

「Drache…!」

 

(アメイジンのこと、言うべきだな…)

飛水が意を決して、Dracheに口を開けようとしたところ、横から聞き覚えのある機械音がしてくる。

 

「そのニンゲンから離れなさい、Drache Der'Zen」

「なんだこのクリーチャーは、機械?」

「カラクリバーシ…!アイツらからのお迎えか?」

「……はい、抵抗せずに来てください」

 

(やっぱりアメイジンには逆らえないか…!アイツらは水文明を守るために全てを捧げるつもりだ…)

「ちょっと待ってくれ」

「Drache Der'Zen、貴方は関係ありません、このニンゲンのみが必要なのです」

「ごめんDrache、今は…」

「いいや、交換条件だ。ヒスイを連れていく代わりに俺も連れて行け」

「それは認可されていません」

「…俺は飛水の契約クリーチャーだ、連れて行け」

「はぁ!?」「ナンデスッテ!?」

 

Dracheが咄嗟についた嘘に俺もカラクリバーシも困惑する。

「ニンゲンと契約クリーチャーはセットの存在、それなら連れて行かなければならない…?」

カラクリバーシが混乱している間にDracheに小声で声をかける。

「良いのか、俺なんかの相棒って…」

「俺はヒスイの相棒になれる程力が強くはないが、言葉を扱うことに関しては少し自信があるんだ」

 

「Drache、凄いクリーチャーだな…」

「言ったでしょ、少し言葉を扱うのに自信があるくらいだって」

俺はDracheを連れて、再びアメイジンの研究所へと向かっていくのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Side:緑

 

ゆうや、みしろ、ひなと一緒にゴルファンタジスタの言った場所に向かうと、海の近い崖に着いた。

 

「ねぇゴルファンタジスタ、ここで合ってる?」

「あぁ、ここら辺のはずなんだが…」

 

人間の世界では2日が経ってる。何かがあった場合本格的に危ない時間だ。何も起きない崖を見て、ボクは焦りを募らせる。

そう思いながら10分ほど過ごしていると、海の方からザザザザと、何かが水を搔く音が聞こえてくる。

 

「何ですか!?潜水艦!?」

「どれにしても大きい、皆、クリーチャーの準備を!」

「大丈夫だ人間たち!コイツが俺たちを水文明に連れて行ってくれる船になるんだ!」

 

 

緑と灰色でできた体色、紫の角。水の中から姿を現したそのクリーチャーは、体中に池がある不思議なドラゴンだった。

「おっきい…。…オービーメイカーの仲間だから当たり前か」

「コイツがレイクポーチャーだ、よろしくな!」

「ポーッ!」

「えっと、なんて言ってるの?ゴルファンタジスタ?」

「あぁ、コイツは口から水が出続けている以上喋ることがとっても苦手なんだ、『よろしくー』って言ってるぞ」

「そうなんだ…」

 

皆が乗り込んだのを確認して、頭の上に乗ったゴルファンタジスタが指揮を取る。

「頼んだぞ、レイクポーチャー!」

「ポー!ポー!」

 

「よろしく、レイクポーチャー!」

「クリーチャーに乗って船の旅なんて…よろしくお願いしまーす!」

「ゴルファンタジスタ、格好つけすぎて落ちないでね」

「しねぇよ!」

ゆうやとみしろが元気よくレイクポーチャーに乗り込む。ゴルファンタジスタが用意していた椅子を見つけたみしろは、満足そうに座った。

 

「………飛水、待ってて」

逆にひなはゆっくりとレイクポーチャーに乗ってた。でも皆、ひすいがボクを助けてくれた時みたいな顔をしていて、少しだけ安心した。

 

ボク達の船は、ゆっくりと水文明に向かって走り出した。

 




飛水と!Dracheの!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「芸魔隠狐 カラクリバーシ!」」
「マジック全てから革命チェンジできるスピードアタッカー。5コストなのも強力なカードっすね」
「出た時に1枚引いて3コスト以下の呪文を唱えることで更なる展開の呼び水になる。アンタップできれば更なる展開に繋がるんだ」
「というわけで次回、『動き出せ種族(オレら)たち』」
「「お楽しみに!」」
「その、Drache!」
「どうしたんだい?」
「普段どんな練習してるんですか!?」
「えぇと。本番前は10時間くらい時間作るかな。そして前日はメンタルを整えるのに使うんだ」
(もうレベルが違う…!)
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