デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション) 作:シグレサメ
飛水と夕哉達はアメイジンの研究所に帰還し、データなどの保存を行っていた。飛水は水文明での行動が認められ、アメイジン達のカードを託され、火奈とも和解することができた。そしてデュエマ部の皆は、2週間後のUta-Awase-Fesを目指して各々準備へと入るのだった。
見慣れた、3日ぶりの茶色い扉に手をかける。呼び鈴を押すと、聞き慣れたあの声が平坦に帰ってくる。意外にも鍵は空いていて、扉をゆっくりと開ける。
普段お淑やかで物腰柔らかい俺の母さんが、息を切らしながら俺の前にいた。
「…ただいま」
「………どこに行ってたの!?」
「…友達の家」
「じゃあ何で連絡してくれなかったの!?」
「……ごめんなさい、母さん」
「心配、してたのよ!!」
母さんは大粒の涙を流しながら俺に抱きつく。アメイジンやDrache達のことは言えない。正直、全部言ってしまいたい程だったがきゅっと唇を閉め、涙を堪える。
「ごめんなさい、母さん…!」
「飛水が無事ならそれでいいのよ…」
「2日前、警察の方から連絡があったの。正路さんという方」
「うん」
「訳あって帰ってこれない場所にいる、と言っていたわ。その方は泣いていたの。警察の方は悪くないのにね」
(公輝さんにも、心配されてたんだな…)
「飛水が帰ってきてくれて本当に良かったわ、でも、本当にお母さんに言えないことなの…?」
「……うん、宿題みたいなもの」
「飛水が耐え切れないなら、言ってもいいのよ…?」
「…大丈夫、もう帰ってこないなんてこともしない」
もう一度、母さんが俺を抱きしめる。
「飛水、大きくなったのね。こんなにも…」
母さんは俺の顔を見て悲しそうな顔をした。その後、全部なかったかのような顔、態度に戻って、
「飛水の好きなもの、用意したのよ。待っててね」
「…うん、ありがとう」
「お父さん、早く帰ってくるって」
「うん、父さんにも謝らなきゃ」
一人でなんでもやらなきゃいけない、なんて思っていた少し前の自分に、苦笑いするしかなくなる。一人でどうしようもないと思ったとしても、夕哉や火奈、母さんみたいに心配してくれる人がいる。アメイジンやDracheのように期待を寄せてくれる人がいる。
もう一度、進んでいくしかない。一歩一歩。
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Side:祈雨
才縁高校に変な噂が流れ始めた。ある珠がやり取りされるようになってきたという話。颯星の言うにはこうだ。
テストの赤点がどうにかならないかと言った颯星の友達がいた。私達にも話はあったのだが、クリーチャーの力を使わない以上それをするのはやはり普段の努力だと言うことで、その話は流れたのを覚えている。
話が変わったのはその後だ。そのオーブを家に置いた彼は、テストの当日彼は人が変わったように、とても自信満々でやってきたらしい。数日後テストの結果が返ってくると、それは100点中97点、周りの目が変わり、一躍彼は人気者となった。分かったのは彼が二度と颯星に関わらなくなったということだ。
秋風差し込む神谷神社に、私は千弥佳と颯星を迎えにいく。千弥佳も颯星もゴロゴロしていて、普段通りそれぞれソシャゲと天体の本に熱中していた。
「祈雨ちゃんおかえり、どうだった?」
「駄目、Prayersを結成した時、いやそれ以上に高校生が来てくれない」
「あの話が広がってから、どうしようもない感じですよね」
「あの話が学校の外に広がったら…考えたくもないよね」
神谷神社はというと、学校以外では比較的上手く行っている。緑たちが草の根運動してくれたのもあって、話を聞いてもらいたいお年寄りからの人気を確保して、とりあえずのピンチは逃れた。
問題は若者の方で、学生の中で噂される家に飾るだけで『望む自分になれる珠』というものが、カルト的人気(私が言っていいのか?)を誇っている。他にも運動が急にできるようになったり、料理がプロ級の腕前になったり。私が実際に目撃したものだと、急に異性にモテ始めた女子を見たことがある。見た目とかを特に変えたわけではないのに。
「なんか変ですよね、デュエマ部の皆さんからは?」
「あっち忙しいみたいで…情報が確定するまでは書けないって御白ちゃんが言ってたね」
「何はともあれ私達は草の根活動をするだけだ。Prayers、いくぞ!」
その時呼び鈴が鳴り、千弥佳が応対する。それを見た千弥佳は、驚いた顔をして固まってしまった。
「なんで、いるの…!?」
「Prayersの皆さーん、才縁高校2年、垣外 礼児(かきそと れいじ)でーす」
「外川?知っているのか千弥佳?」
「あ、そっちのモード…。うん、私の元クラスメイトなんだけど、なんていうか…。性格がそんなに…というか。こっちでこの学校来たタイプというか」
そう言って千弥佳は親指と人差し指で丸を作る。
「酷いな千弥佳、友達だろ?」
「元、ね。入学当時隣の席だったから仲良くしただけ」
「回田先輩に近づかないでください、僕と神谷さんの大事な仲間なんです」
「…ケッ、邪魔だ能無し」
そう言って垣外は私たちの悩み相談に必要なものが置いてある本棚を正面から蹴り飛ばす。バラバラと本が落ちてくるが、何故かその本は1冊たりとも垣外には当たらなかった。
「これ、心当たりねぇか?」
「…『望む自分になれる』?」
「ご名答だ千弥佳!今回俺はスカウトに来た!俺たちはある人間の手伝いをしててな、それを円滑にするために千弥佳の力が必要なんだ、来てくれるよな?」
「何を言っている、千弥佳は私たちの大切な仲間だ…!渡すわけないだろう!!」
「あー、そっか、そうだよな」
そう言って垣外は部屋を見回す。
「ここじゃ狭い、学校に行こう。そこで1発デュエマして、勝った方が千弥佳を引き取る権利を得るってのはどうだ?」
「私達に受けるメリットがない」
「なら作ればいい、実はこのやり取りはカメラに取られている。どういう風に使われるかは、この後のお前ら次第だ」
「……学校のもっと深いところに根ざしているのだな」
「利口で助かるわ、ちなみに俺にはボディガードがいるから、それも忘れなくな」
「…デュエマ、スタート」
「デュエマ、スタート。だっけな?」
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始まった祈雨と礼児のデュエマは、垣外の先手で始まり、お互いに序盤は手札を整えるところから始まる。祈雨は得意のデスフェニックス戦術を、垣外は火と水文明を使い、手札を整えていった。
「がんばれー!祈雨ちゃーん!」
「負けないでください、神谷さん!」
「私のターン、《虚∞龍 ゲンムエンペラー》をバトルゾーンに、4枚肥やして、《暗黒破壊神 デス・フェニックス》を手札に、ターンエンド」
「あれ?なんか喋り方違くない?」
「うるさい、私の勝手でしょ!」
「それは確かに。まぁいいや、俺のターン!4マナで《戦慄の魔女(ムジカ・マギカ)アリス》をバトルゾーンに。3枚引いて2枚を山札の下に。こいつはラストバースト、破壊された時に呪文側が起動する。気をつけなよ?」
分かりやすく礼児が挑発に走る。祈雨はそれを聞き流し、自分の動きの準備に入る。
「行くよ、《暗黒破壊神 デス・フェニックス》!攻撃時にメテオバーンを使って、墓地から《極限龍神 ヘヴィ》をデスフェニックスにゴッドリンクして、Tブレイク!」
「へー、パワー14000の強制攻撃させる壁。なかなか強いじゃん」
礼児 シールド2
「お、ラッキー。Sトリガー、Sバック!それぞれ、《熱血大帝 カツカイザー》!先ほどのアリスの呪文側、《神にも届く旋律(ゴッド・ノレッジ)》!まずは呪文からだ、アウトレイジ・メクレイド8を行う!来い!《終絶電融(しゅうぜつでんゆう) パワーロビン》!さらにカツカイザーの効果でヘヴィデスフェニックスとバトルして、破壊される。そしてカツカイザーが破壊された時、手札からコスト8以下のクリーチャーをバトルゾーンに出す!来い!《終剣連結 アビスハリケーン》!」
礼児 シールド4(内2枚EXライフ)
「パワーロビンはクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手1体を手札に戻すか1枚ドローする効果があるんだよな、デスフェニックスを手札に戻す」
「ヘヴィを身代わりに耐える!」
「アビスハリケーンが出た時の分を忘れてたわ、デスフェニックスをもう一度手札に」
「ぐぅ…!ターンエンド」
「さて、俺のターンだ。バトルゾーンにあるクリーチャーの数(3体)だけコストを下げて、5コストで《飛翔龍(フライングブイ) 5000VT》をバトルゾーンに」
ギターを持ったドラゴンのようなクリーチャーが大きく咆哮する。
「こいつの効果でパワー5000以下の相手クリーチャーを全て手札に戻し、次のお前のターン、パワー5000以下のクリーチャーをあらゆる手段で出すことはできない、あぁ、パワーロビンで1ドローな」
(ヘヴィを使う戦法が消された…。と言ってもクリーチャーが出るたびにバウンスされるから厳しいけど…)
「アビスハリケーンは全てのクリーチャーにスピードアタッカーを与え、攻撃終了後に破壊する。パワーロビンでシールドを攻撃」
祈雨 シールド3
「シールドトリガー、《ヴィオラの黒像(シャドウ)》!アビスハリケーンを破壊して、墓地からそのコスト以下、虚∞龍 ゲンムエンペラーをバトルゾーンに。墓地を4枚増やして《阿修羅ムカデ <デスシラズ.Star>》を手札に加えます!」
「アビスハリケーンはEXライフで1度の除去では倒れない、5000VTの動きを止められなかったのが運の尽きだな!まぁこいつはジャストダイバーなんだがな。5000VTでシールドを攻撃!」
「シールドトリガー…!来た!《バーニング・フィンガー》!さらにGストライク!《白骨の守護者 ホネンビーGS》!バーニングフィンガーのトリガー+でアビスハリケーンを破壊して、ホネンビーでアリスの動きを止める!」
「へぇ、運がいいねぇ。アビスハリケーンの効果で5000VTを破壊して、ターンエンド」
「私のターン!阿修羅ムカデをヴィオラの黒像の上に4マナで進化!登場時に墓地から暗黒破壊神デスフェニックスをバトルゾーンに!EXライフを失って残り2枚!行ける!阿修羅ムカデでシールドをWブレイク!」
礼児 シールド0
「なぁ、俺は何の才能を貰ってここにいると思う?」
「…急に、何?」
「これがあれば絶対に負けない、「強運」!シールドトリガー、《終末の時計(ラグナロク) ザ・クロック》、効果でお前のターンを強制終了する!」
「そん、な…!」
「パワーロビンで、ダイレクトアタック」
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Side:祈雨
「嘘…」
「まぁそういうことだ、これはまぁ良い感じの宣伝ビデオとして残しておくとして…」
垣外がこちらに向かってくる。
「…今は千弥佳よりお前の方が使えそうだな、Prayersの顔役が来てくれた方がPrayersと仲のいい連中を引っ張り出せるしな」
「…私がそうするとでも?」
「それはそうだな、どうすっかな…この宣伝ビデオが撮れただけでも良いんだが、お前をスカウトしたらあの人に喜んでもらえるしな…」
「じゃあ、私がスカウトするね」
その言葉のした方を向くと、私ですら知っている才縁高校陸上部のエースとも言えるような人が、その場所に立っていた。
「朱野、士穂先輩…!」
「名前知ってるんだ、嬉しいな」
「あなたも、これに1枚噛んでるんですか…!?」
「うん、私の目標のために必要なんだ。礼児くん、回田ちゃんや天見くんをお願いね」
「はいはい、1対1で話すの好きだよな、アンタ」
「まぁね」
校内の鍵を何処からか出した朱野先輩に着いていく。普段使われていない空き教室に入った。私たちの間に流れた少しの沈黙は、先輩が話し始めたことで破られる。
「…どう思った?」
「失望してます、あんなに凄い人なのに」
「どうしても引き込みたい子がいたんだけど…。その子がダメそうだったから代わりにね」
「答えになってないです」
「私じゃできないこともあるってこと」
朱野先輩は黒板に何かを描き始める。ただ丸がいっぱいあるのと、人がいっぱいあるということしか分からなかったけど…。
「これが私たちの目的。才能、能力を必要な人に分配する、って言ったらいいのかな?それで助かる人が山ほどいるんだから、Prayersの人助けと合わない?」
「合いません、努力なしに手に入れる結果なんて、何にも残らない。そして何より、その才能は何処から来ているんです?」
「…ふーん、どうしてそう思ったの」
「友人達が忙しくし始めたタイミングと、これが出てきたタイミングが一緒なんです」
「そっか、勘がいいね」
「人の顔を見て生きてきましたから」
「じゃあこれも気づいた?自分の神社に都合よくデスフェニックスが落ちてた理由」
「え、そこまで…!?」
「うん、ありがたくクリーチャーと契約するための実例に使わせてもらったって、彼が言ってたよ」
朱野先輩が楽しそうに近くの椅子にどっかり座る。私の受け答えに満足したように。
「じゃあ分かるよね、今の状況」
「さっきの敗戦、どう使われるんですか?」
「うーん、仲間になってくれなかったら、まぁ可哀想な役回りになるかな」
「…先生も味方に引き込んでるんですね?」
「うん、鍵使ったし分かってると思ってたけどそう。あとは才縁高校の特徴を考えたら、分かるよね?」
「…千弥佳と颯星を事実上人質にとるつもりですか?」
「人間って怖いよねー。自分が上に立つためなら何だってできちゃう」
「…そんなに私が必要なんですか?」
「人の才能ガンガン取ったら大変じゃん、だから必要なの。貴方の「人を引き寄せる才能」が」
朱野先輩の余裕は崩れない。全部予定調和であるかのような会話にとてつもない不快感を覚える。
「………私は何をすればいいんですか」
「良いね、そういうところ大好きだよ祈雨ちゃん!」
「ようこそ、私達アルテナ(Altena)へ!」
「意味も…察しました」
「良いでしょこの名前、Alter(代わりに)とか色々かかってるんだけど…」
「良いです、それはもう」
「フフ、改めてようこそ祈雨ちゃん、私と一緒に戦おうね」
私はその全く心から笑っていないことが分かる朱野先輩と、握手せざるを得なかった。逃げ場なんて、なかった。
千弥佳と!颯星の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「飛翔龍 5000VT」」
「ジャストダイバーのTブレイカーで、場にあるクリーチャーの数だけコストが軽減される強力なクリーチャーだね。8コストだから結構出てくるね」
「登場時効果でパワー5000以下の相手クリーチャーを全て手札に戻して、挙句次のターンあらゆる手段で出せなくしてしまいます」
「除去、妨害、強力な打点。何にしても腐らないスーパーカードだよ」
「というわけで次回、『嵐の前の嵐』」
「「お楽しみに!」」
「祈雨ちゃん、無事でいて…」
「神谷さん…」