デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション)   作:シグレサメ

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続々とUta-Awase-Fesへの準備を進めるデュエマ部の5人。その頃prayersの3人はアルテナという組織に遭遇、才能を抜き取り人に与えるオーブを売り捌く彼らに怒りを隠せない祈雨(きう)だったが、デュエマに敗北し千弥佳(ちやか)達を事実上人質に取られたことで、彼らの軍門に下るしかなくなるのであった。



嵐の前の嵐

 

Side:御白

 

「じゃあ段取りはこんな感じでいい、皆?」

今日はデュエマ部の皆でビデオ通話をしています。夕哉くん達や公輝さん、須谷さんが集まってUta-Awase-Fesをどう行うかを考えています。

 

「フェスの後半になったらアメイジンが濾過器にエネルギーが溜まると言っていたね。飛水くんがフェスに参加するのは前の方だから飛水くんが濾過器稼働に参加するのは当たり前だけど」

「あたしに行かせてください!」

「分かった、赤坂くん、任せるよ」

「フェスの会場は一番大きな正門、これは南側にあるね。あとは東門と西門があるんだけど…」

「夕哉くん、正門お願いしていいですか」

「うん、任せて!」

「黒井くん、物量が来るなら正門だ、覚悟を決めてくれ」

 

この話をしている理由に、回田さんから連絡を頂いたこともあります。回田さんが体験した話から、それを元にアメイジンさんがその珠を作るための施設があって、それによって汚されたと推測しました。だから近くに彼ら、アルテナのアジトがあるなら、私たちも備えなければならないという話になったのです。

 

「じゃあボクは西門をやる、次に大きな門」

「あたしは東門だね、それで場合によっては飛水のフォローに回る」

「光屋さん、大丈夫ですか?」

須谷さんが心配そうに私の画面がある方を覗いてきます。須谷さん、最近顔に出やすくなっていて何を考えているのか分かりやすくなってくれたんですよね。

「大丈夫です、その施設に忍び込んで止める、ですよね」

 

「光屋くん、ドラン・ゴルギーニにしかできないことだ、お願いできるかい?」

「大丈夫です!皆さん、絶対成功させましょう!」

「「「「おー!」」」」

「ふふ、おー」

「頑張ってくれ、子供達」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

電話を切った私は、一度大きく背伸びをして時計を見ます。時計は昼の2時を指していて、まだ何か動いた方がいいと言われているような気持ちになります。

 

夕哉くんは夕花ちゃんのお見舞いがあると言ってましたし、火奈ちゃんと飛水くんはそれぞれ練習があると言っていました。緑くんはゴルファンタジスタとショッピングモールに出かけると言っていましたね。…暇になりました。

 

その時トントンと部屋の戸が叩かれて、久しぶりに聞く声が私の耳に入ります。

「御白、いるのか?」

「…いますよ、お兄様。どうぞ」

 

ガチャと扉が開き、地毛の金髪から染めた黒い髪をたなびかせて、お兄様、光屋コーポレーションの若社長、光屋白都が中に入ってきます。

「御白、勉強は大丈夫なのか?」

「はい、お兄様」

「いい家庭教師を雇ったと聞いている。せめてお前は…」

 

部屋を見回すお兄様は、私の部屋のある場所を見て不快そうな顔をします。何度も言われたあの言葉に、私は身構えます。

「御白、まだデュエマとやらをやっているのか?」

「…はい」

「マシーンなどお前が欲しいものは父さんが作っていたが、お前はまだ満足していないのか?」

「…すいません」

 

私を見てお兄様は悲しそうな顔をしながら、

「御白、俺はお前を心配している。普通に頭のいい大学に行って、良い人脈を作って、それで良い男と幸せに暮らすんだ。そうすれば…」

「そうすれば、光屋コーポレーションは安泰だ、ですか?」

「御白?」

「お兄様の考えで私を測らないでください!お兄様の言う良い男って、お金や地位があったりする方ですよね!?」

「当たり前だ、光屋家はそれしか許されない」

「そんなこと、勝手に決めないでください!私の大好きなものを、そんな簡単に否定しないでください!」

 

そう言って私は部屋から出て、扉を閉じてしまいました。心に押し留めようと思った言葉が全部出ていたことにも驚きましたが、お兄様が本当に心配していたように思えたことにも驚きました。

 

行くところも無いのでブラブラと歩いて、豪龍市の子供が集まる公園へと気付けば辿り着いていました。

 

この公園は子供からお年寄りまでが分け隔てなく集まっていて、自分がいても変じゃないということでたまに来ていました。そういえば火奈ちゃんと初めて会ったのもこの公園でしたね。

 

「…ドランさん、出てきてもらえますか?」

「御白さん、どうかしましたか?」

「いえ、どうかしたという訳ではないのですけど…。なんか、不公平だなって」

「不公平、とは?」

「夕哉くんたちがやりたいこと出来ているのに、なんだかんだ私には光屋という血が流れているのを実感するんです。逃げられない、みたいな」

「…そうかもしれませんね、私とドメチアーレ達が同じ立場なんて考えたことは一度もありません」

 

ドランさんは丁度ガソリン補給のタイミングだったみたいで、今ガソリンを飲みながら色々考えてくれているようです。

「人間が仲良くなるために必要なのは、共通点だと聞きます」

「そうですね、何々が好き、とか。学校が同じとか」

「違う人間だったとしても、共通点があれば仲良くなれる。理解しようとする努力ができるのではないかと思います」

「理解しようとする、努力…」

 

「理解、ってそう簡単に言わない方がいい言葉だよ」

ベンチの後ろから声が聞こえて、私はすぐに後ろを振り向きます。そこにいたのは、自分と同い年くらいの黒髪の女の子。インナーカラー?というのでしょうか、それが青色で目を惹きますし、焦げた赤色のフードをかぶって、自分の顔を見られないようにしているところ、それよりも何処かのんびりして親しみがあるようで、、何処か遠くに感じるようなその不思議な風貌。兎に角それは、私の気持ちを動かすものでした。

 

「ねぇ、誰と話してたの?…あで!」

ミステリアスに話しかけてきたと思いきや、その人は思い切り転んでしまいます。手を差し伸べますが彼女は自力で立ち上がって、私の横に座りました。

「さっきの話の続き、いい?」

「あー…。友達とメールで話してたので、それが口に出ていたかもしれません」

「ふーーん、そっかぁ」

(隠し通せた、のでしょうか…?)

 

「最近さ、願いを叶える珠、オーブが流行ってるって話じゃん、どう思う?」

「なぜ急にそんな話をしたのですか?」

「世間話だよ。年齢近そうだし、この話知ってるかなぁって」

「…私は使いません、それで力を得たとしても、私の好きなものに失礼だと思うので」

「へー。なるほどねぇ、急にそういうのが上手くなったりしたら、周りの目線が怖いかもねぇ」

「…そういう話なのでしょうか」

 

その女の子は淡々と話を続けます。ただ世間話がしたかっただけなのでしょうか?

「凄いよねぇ、5桁はかかるのは当たり前とか言われているから、貴重だと思うのにちゃんも広がってる」

「…そうなんですね」

「うん、そんなに値段かかっても皆欲しがるんだからすごいよねぇ」

「自分と周りの差を埋めたい、もっと自分をよくしたいと思う気持ちは、人にはよくあるものだと思います。実際、心当たりがない訳ではありませんから」

「うーん、そうだねぇ」

 

「世界は残酷なまでに誰かとの『差』で出来てるよねぇ。お金、運、人脈、生まれ、話術、学力、見た目、運動能力。どれもこれもが人を勝ち組と負け組に残酷に分けるんだ。しかもその境界線からは誰も逃げられない」

「…逃げられない、ですか」

「私はさ、そんな差がない社会だったらどうなるのかなと思ってる。勝ち負けのない、優劣のない世界。それはきっと心が休まり続ける、素敵な場所なんじゃないのかなぁって」

「…私は、違う考えです」

「そうなの?オーブ使うことには反対なのに」

 

私は気付けば熱くなって彼女に語りかけます。

「『差』が無くなったら、人は進もうとしなくなると思います。自分ができないことは他の人の力をお借りする。自分にできることは全力でやる、だからこそ、世界は回ってるんだと思います」

「それは、あなたが勝ち組だから?」

「え、勝ち組…!?」

「そうじゃないの?光屋御白さん」

「なんで名前を…」

 

彼女が振り撒く雰囲気が冷たいものに変わり、彼女の言葉は棘を帯び、触れるものを刺そうとしてきます。

「絶望的な『差』があったら、人は進む気力すらもへし折られるんだ。広がっていく差を見ていくことしかできない、ただ絶望に打ちひしがれる日々。それを持って差が必要だっていうのかな」

「…私だって、たくさん出来ないことがあります!勉強は家庭教師の方に教えてもらえなきゃわからないですし、運動はできません!デュエマが大好きでそれに関する知識には自信がありますけど…」

「ふーん、じゃあなんで絶望しなかったの?」

「人が、いたからだと思います。一緒にいたいと思える人が、いたからだと思います」

 

彼女は大きくため息を吐き、敵意が治るのを感じました。そして彼女は呆れたように、この言葉を続けます。

「はぁーあ。ようやくスッキリしたよ。辛い時に助けてくれる人がいるのも運というか、才能だよねぇ」

「そんな、私はそんなことは…!」

「ありがとう、御白ちゃん。お陰で私の結論は決まったよ。差のない、誰もが助けを必要としない世界。これなら人は、もう辛い思いをしなくて済むんじゃないかなぁ」

「待ってください、それは…!」

「じゃあ、『また会おうね』」

 

そう言って背を向ける彼女を追いかけようとすると、突然吹いてきた突風によって、吹っ飛ばされそうになります。それが収まる頃には彼女はもう見えなくなっていて、私は1人残されてしまいました。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日、作戦を昼に控えた私達は、公輝さんの秘密基地に集まっていました。

 

「刃金 皇心。才縁高校2年の、生徒会長だ。実力テストでは順位の1桁台は当たり前、運動も赤坂くんとタメを張れるくらいにはできるし、各種芸術に関する賞をはじめとしてたくさん受賞している」

「すごい人だね…」

「すごいっつーか、それ本当に人間のキャパシティなのか?」

「たまーにいるよね、こういう人…。お父さんもお医者さんか…。お金あるんだろうな…」

 

緑くん達が口々にその話をする中、夕哉くんは一人考え込んでいました。

「どうしたんですか夕哉くん」

「なんていうか、そんな凄い人だったのなら、余計になんで才能を取って売り捌くようなことを始めたんだろうって思って。クリーチャーの力を使ってるからバレるリスクが低いとはいっても…」

「…確かに変ですね。そんなに満ち足りていそうな方なら、なんでそんなことをするのでしょうか?」

 

公輝さんが夕哉くんの元にやってきて話かけにきます。

「僕たちが考えても仕方のないことではあるけどね。夕哉くんは刃金くんに仇を打ちに行きたいのかい?」

「夕花の仇なのも確かですけど、まずは話を聞きたいです、どうしてそんなことをしたのか、夕花を狙った理由はなんなのか。それを聞いてからでも遅くないと思います」

「夕哉くん、いいことだと思うよ。今の君なら刃金くんとぶつかっても大丈夫だろう」

 

「光屋さんは大丈夫ですか?」

「須谷さん。はい、少し緊張しますが…」

「サポートは私が回ります、安心して行ってください。今度は、見失いません」

「よろしくお願いします!」

 

挨拶もそこそこに、私は公輝さんにもう一人お願いしていた人探しを聞く。

「ところで公輝さん、昨日言っていた女の子は…」

「うん、才縁高校の関係者かなということで確認をしているけど、まだ答えが出ないんだ。証拠のオーブでも突きつけられればすぐに大々的に調べられるんだろうけど、それができない以上調べられないから、申し訳ないよ」

「それでも刃金さんのことは分かったんだ」

「あとは士穂先輩も…」

「目立つ生徒は学校側が大々的に宣伝するんだ。まぁそのままその道のプロの世界に行く生徒が沢山だから妥当であるだろうけどね。逆にいうとそれに引っかからない生徒は時間がかかりそうだ」

「…分かりました、ありがとうございます!」

 

皆がそれぞれの持ち物を用意して、まず文明に出発する準備を整え、夕哉くんの号令で5人で手を重ね合わせます。

「さぁ、皆行くよ!」

「「「「「おー!!」」」」」

「ひすい!絶対ライブ成功させてね!」

「おう、任せとけ!」

 

とにかく今は進むだけです、そうした先に答えがあるはずですから。

 




夕哉と!火奈の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「謀遠 テレスコ=テレス!」」
「5コスト、パワー5000のブロッカーだけど、手札のないプレイヤー1人につきパワーが5000上がる」
「相手ターン開始時に手札を1枚見ないで捨てて、手札を捨てたらドローできる!ドローとハンデスを両立する厄介なブロッカーだよ…」
「2体以上並べば倍々ゲームで4枚以上引けるかもしれない!」
「というわけで次回、『誰が為の覇道(デスロード)・前』」
「「お楽しみに!」」
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