デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション)   作:シグレサメ

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Uta-Awase-Fes が開幕し、飛水の出番が少しずつ近づいていく。その頃Uta-Awase-Fesを守るため、ついに始まった刃金と夕哉のデュエマ。一進一退の勝負が進む中で、少しずつ刃金の中にあった感情や後悔を知っていく事になる。刃金の中に渦巻く後悔、その友人とは何者なのだろうか。



誰が為の覇道(デスロード)・後

 

あいつは、何もできないやつだった。鈍臭くて、要領が悪くて。言葉を伝えるのも不器用で、俺がいつも守っていた。

 

「おうしん、おうしん」

「どうしたんだ、風音(かぜね)」

「宿題、できなくってぇ…」

「任せろ。九九も覚えられないなんて、風音は大変だな」

「うん…。でもおうしんがいるから大丈夫だよぉ」

「俺に頼り切りでいいのかー?」

「いいよぉ、おうしんが守ってくれるなら」

 

風音は、何も出来ないやつだった。鈍臭くて、要領が悪くて。親が死んだ時も、彼女は泣くことすらも出来なかった。それで余計に気味悪がられていた。

 

「風音、学校来て大丈夫なのか?」

「大丈夫、私、遅れてるからぁ。もっと勉強しないと」

「つってもお前3年生の勉強で苦戦してるじゃん、今俺たち小4の2学期だぞ?」

「だからやんなきゃいけないんじゃん!!」

「な、風音…」

「私、もう少しでおじさんのところに引き取られるの。お姉ちゃんみたいに凄くないから私はお姉ちゃんと離される!もしそこでも何も出来なかったら本当に捨てられちゃう!本当に、いらなくなっちゃう…!」

「おい風音!風音!」

 

辿々(たどたど)しい言葉で風音は気持ちを俺にぶつけて行った。語尾を伸ばす癖があったのも、今考えるとそれは生まれつきからあったものかもしれない。

 

そうして風音は引き取られていった。それでこの話は終いになる。俺は才縁高校を始めとしたエリート街道を進んで、風音に何処かで会えればと少しだけ後悔する。子供の頃の別離なんてそんなものだ。それで終わるはずだったんだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

刃金 シールド5 マナ10

《「勝利」(ビクトリー)の頂 カイザー「刃鬼」》、《「合体」の頂 アクア・TITAAANS》、《勝利宣言(ビクトリーラッシュ) 鬼丸覇(ヘッド)》×2(内一枚タップ状態)

夕哉 シールド0 マナ6

《謀遠 テレスコ=テレス》×2、《邪幽 ジャガイスト》、《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》、《フットレス=トレース》、《ドアノッカ=ノアドッカ》

 

「…俺のターン!《邪闘 シス》を、6マナでアビスラッシュ!」

(黒井を見ていると、心が軋むようなものを感じる。あの時、憎悪に飲まれながらも、自身を取り戻した。光屋御白を始めとした仲間に助けられながら、こいつは今俺の目の前に立ち塞がっている。)

 

「登場時にTITAAANSのパワーを−∞(むげんだい)!さぁ刃金(とがね)、ガチンコジャッジだよ!」

(コイツを見ていると感じる、この感覚は…)

 

「「ガチンコ・ジャッジ!」」

 

地龍神の魔陣(2)

        VSア:エヌ:マクア(5)

夕哉勝利 このターン夕哉のクリーチャーは攻撃を制限されない

 

「よし、行ける!」

(何?色バランス是正のために2枚だけ入れた地龍神をここで引くのか…!?おかしい、TITAAANSで攻撃を止めて次のターン過剰打点で決まるはずが…!今、間違いなく勝負の風向きは…)

 

「シスで刃金を攻撃する時革命チェンジ!もう1発行くよ!《アビスベル=覇=ロード》!」

 

深淵から再びジャシンとその愛するバイクが飛び出し、深淵の魔人と手を合わせる。先程は感じなかった威圧感を、刃金は何故かひしひしと感じ始めていた。

 

「シスのアビス・W・メクレイド5が発動!行くよ、ジャガイスト、マーダンロウ!まずはマーダンロウの効果で手札を見て、2枚目のカイザー刃鬼を捨てさせる!さらに手札を2枚捨てて、ジャガイストのアビスメクレイド5を発動!テレスコテレスを呼び出して、そのコスト以下、4コストのマーダンロウをバトルゾーンに!」

「クソ、どこまで展開するつもりだ…!」

「マーダンロウでアクアTITAAANSを捨てさせてWブレイク!」

 

刃金 シールド3

「Gストライク!メチャデ塊ゾウ!このターン出たマーダンロウ1体の動きを止める!」

「マーダンロウはもう一体いる!覇ロードの効果で俺のアビスは全員マッハファイターを獲得している!カイザー刃鬼に攻撃、マーダンロウのスレイヤーで破壊だ!」

「グッ…!鬼丸達がまだ…!」

「前のターンに出たマーダンロウ、このターンに出たジャガイストでそれぞれタップ、アンタップしている鬼丸を攻撃!マーダンロウはバトルに負けてもスレイヤーで破壊する!さらに鬼丸の今のパワーは9000だから、ジャガイストで相打ちを取れる!」

 

「ジャガイストが、墓地に落ちた…!」

「ターン終了時、覇ロードの効果でジャガイストを墓地からバトルゾーンに。再びメクレイドと墓地からの2体分の連鎖展開を行って、テレスコテレス、フットレス=トレース2体をバトルゾーンに」

 

「場にあった俺のクリーチャーが、ゼロになって…、黒井の場が、5体から11体に…!」

「あぁ、これで次の刃金の番を凌げば、俺の勝ちはグッと近づく」

 

(黒井夕哉なら、あいつを止めてくれるんじゃないのか)

 

「…才能を取るべきだったのはお前の方だったか」

「そんなことないよ、夕花も、御白も、飛水も火奈も緑も。皆凄い人だから、大事な人だから。だからこそ、絶対に渡さない、絶対に負けないって、心から思えるんだ。だから俺の才能がもし取られたとしても、御白達が全力でそれを取り戻しに行くと思う」

 

刃金は少しだけ期待するかのように言葉をかける。

「…黒井夕哉、少し話せないか?」

「デュエマはいいの?」

「少し中断だ、勝ち負けが決まると、俺はあいつに会わなきゃいけなくなる」

「…そっか」

 

「…お前は大事なものを失った時、何を責めた?自分か?周りか?」

「…自分だよ、いつも。何か大変なことがあった時、必ず俺は自分を責める。御白達からは良くないって言われるんだけどね」

「そうか。俺は自分を責めることを許されなかった。周りが描くものは全てエリートの刃金皇心で、虚勢を張ることしか、俺に生きる為の道はなかった」

 

「じゃあ俺からも質問。もう一度になるけど、なんで夕花の才能を取ったの?本当のことを教えて」

「…必要としている奴がいる。どれだけ才能を集めても飽き足らず、自分を完璧な存在にしようとしているんだ」

「それが、刃金が戦う理由?そんなの、才能を集めるのを辞めさせればいいんじゃ…だって君の作った銃で、才能を集めてるんでしょ?」

「…あいつにもできるんだ、俺よりも、非道な方法で。あいつが才能を奪った人間は暗い気持ちに支配される。嫉妬や、絶望。だがあいつはそれを全く気にせず、とにかく自分に取り込んでいる」

 

夕哉は刃金のそんな悲痛な、絞り出すような言葉を聞きながら、核心に迫る言葉を聞こうとする。

「ねぇ、その人を止められないの?」

「…俺には無理だ。俺には…」

「俺には…。何か弱みを…?」

「あいつとは、もう別れたつもりだった。邪険にしてしまった!一人にしてしまった!でも住んでいるのが違う世界だからと誤魔化す事にしたんだ。でもあいつは!才縁高校に来た…。俺を覚えていたんだ…。前と同じように俺に接して…。俺を友達として扱った…。でもそれが、俺の過去そのもののような彼女が!本当に怖いんだ、本当に、恐ろしいんだ!!」

 

何かに突き動かされるような刃金の悲痛な声に、夕哉は驚く。

「刃金落ち着いて!その彼女って一体誰!?」

「俺のターン!これ以上の中断はダメだ、俺は、お前に勝たなければならない!」

「ぐう…!テレスコ、4枚ハンデスだ!勝って落ち着かせる!」

「鬼丸覇を召喚!覇ロードに攻撃時ガチンコジャッジ!」

「「ガチンコジャッジ!」」

 

闘争類喧嘩目 ステゴロ・カイザー(7)

        VSア:エヌ:マクア(5)

刃金勝利 追加ターン獲得

 

「フットレスでブロック!」

「俺のターン!」

「テレスコ!全部の手札を吹っ飛ばして!」

「ドロー!マナチャージして鬼丸覇で攻撃!」

「「ガチンコ・ジャッジ!」」

 

「必然」の頂 リュウセイ(10)

        VSRev:タイマン(3)

刃金勝利 追加ターン獲得

 

「テレスコでブロック!」

「俺の追加ターン!」

 

取り乱す刃金にジャシンは疑問を呈する。

「なんだコイツは、余の作ったテリトリーで勝てるわけがないのに、鬼丸で単騎突撃か?」

「確かに、ガチンコジャッジに勝ち続けて、ブロッカーとジャシンを全部どかすのは現実的じゃない、と思う。でも可能性がある以上やっているんだと思う。それが刃金の、意地なんだと思う」

 

「…刃金!」

「五月蝿い!お前に何が分かるんだ!」

「分かるよ!大事な人に伝えたいことを伝えられなくてギクシャクした事も!大事な人が傷ついてやけになった事も!それを助けるために進もうと思う事も全部!俺も夕花とそうなったんだ…」

「な…!俺が、やったことが…」

 

刃金は膝をつく。自分が傷つかないためにやったことが自分のような人間を生み出していた事に、そしてそれに気づかなかった事に、ひどく狼狽しているようだった。

「ねぇ刃金。デュエマをしよう。復讐とか償いとか、そういうのを一旦全部置いて」

「………」

(黒井夕哉なら、風音を…!)

 

「必然の頂リュウセイを召喚。鬼丸覇で攻撃…!」

「「ガチンコジャッジ!」」

 

流星のガイアッシュ・カイザー(6)

        VSアビスベル=覇=ロード(7)

夕哉勝利

 

「ここで4枚目、か…」

「テレスコでブロック!」

「リュウセイで攻撃」

「ジャガイストでブロック!」

「…ターンエンドだ」

 

「俺のターン!《ドミー:ゾー》をアビスラッシュ!覇ロードでシールドを攻撃!」

 

刃金 シールド1

「シールドトリガーなしだ」

「ドミーゾーで攻撃!」

 

刃金 シールド0

「シールドトリガー、《「その運命、我らもそれに従おう」》。1枚引いて1枚捨てる。捨てたカイザー刃鬼、11以下のコストになるように選んで手札に戻す。テレスコ2枚を手札に」

「マーダンロウでダイレクトアタック!」

「必然の頂リュウセイの効果で各ターンに一度だけ、ハンターを破壊する事で敗北を回避する、リュウセイを破壊」

 

「…ジャガイストで、ダイレクトアタック!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

決着がつき、刃金に夕哉は駆け寄る。酷く疲れた顔をしている刃金を急いで保護しなければならない。夕哉の目的は敵討ちから目の前の人間を助ける事に変わっていた。

 

「お前、俺を助けるのか…?」

「許せないに決まってるじゃん。でもそれで今の君の辛さを無視したら、それこそ君と同じように自分の都合で動く事になる」

「そうか…」

 

夕哉は手を出し、刃金に肩を貸そうとする。刃金がその手を取ろうとした時、突如空から刃鬼と同じく虹色のラインが入ったクリーチャーが現れる。

 

「まだ、誰かいるのか…!?」

「…風音」

「風音?それがこの人の名前?」

 

片手に剣、もう片方に盾を持ち、それを動かす人形のようなクリーチャー。とにかく荘厳な雰囲気に夕哉は圧倒されるが、1番の驚きはそのクリーチャーの肩から降りてきた、黒に青のラインが入った髪の女子だった。

 

決して衣装として派手なものは無く、どこにでもいるような普通の人間。それが逆に夕哉の緊張を強める。刃金が震えているように見えた事も、要因の一つだった。

 

「皇心、喋りすぎじゃないかなぁ?」

「風音、すまない」

「大丈夫だよぉ、礼児がもう会場に着いてるから」

 

「会場に着いてる!?そんな、ジャブラッド達や、火奈や緑が守ってたはず…」

「水文明にわざわざオーブの製造場所を作ったんだよぉ?地下の水路を使うルートがあるくらい、気づかなかったのかなぁ?」

 

アメイジンが演算の結果、いつ水が流れるか分からないから危険だと言っていた場所だ。夕哉はそれを知っている。

「あぁ危険性かぁ、大丈夫じゃない?彼ら運がいいから、絶対に水が流れるルートは選ばないよ」

「ねぇ、君は何者なの?」

「良いの、フェスが襲われるよ?」

「それは大丈夫。この連絡を聞いている俺の仲間も間違いなく動き出してる。俺は君を今ここで止める」

「ふーん、お互いに信頼してるんだねぇ」

 

「…じゃあ須谷遥風と2人で話させてくれない?いるんでしょう?」

「須谷さん…?なんで」

「それは本人に聞けば分かるよぉ」

「………?」

 

夕哉は公輝達に連絡を繋ぎ、遥風(はるか)が電話に出るのに1分もかからなかった。

 

夕哉が連絡を終えると刃金が夕哉を自分の方に抱き寄せ、小声で相談を始める。

「黒井夕哉、こちらに来い」

「刃金、なんで」

「いいから来い、俺たちには間に入ることは出来ない」

「刃金が言っていた人って」

「あぁ、俺が才縁高校に入って会ったのは、昔とは似ても似つかない、須谷風音だ」

「須谷…!?」

 

「久しぶりぃ、お姉ちゃん」

『………お久しぶりです、風音』

「まさかお互いにクリーチャーと繋がりを持ったなんてね」

『私は…黒井さん達に頼り切りです』

「随分差がついたね、クリーチャーの1体とでも契約しなよ?」

『私に…そんな力はありません』

「ははは!そうなの!?お姉ちゃんが『出来ない』かぁ!初めて聞いたなそんなこと!ドローン越しでしか喋れないこと、今やってること、全部私と差が付いちゃったねぇ!」

 

風音は心底愉快そうにドローンを指でツンと弾く。

「今日は挨拶しにきたんだぁ、私はもう昔の須谷風音じゃない。できることが増えた。出来ないことがなくなった。もう前みたいにお姉ちゃんの出来損ないじゃない!!」

『風音!そんな言葉今も…!』

「覚えるものだよぉ。私は全部覚えてる、私に向けられた感情全部。だから才能を手に入れた。もう2度と誰にも出来損ないと言われないよ。むしろ今は、お姉ちゃんが私の出来損ないなんじゃない?」

『風音!!』

 

風音は夕哉の方を向いて一度軽く会釈する。

「黒井夕哉、ありがとう。黒井夕花の才能をくれて。これで私はデュエマに負けるような事、クリーチャーを従えられないなんてことも無くなる」

「俺は、君の自己満足のためなんかに妹の才能を渡すつもりはない!返してもらうよ…!」

「それは出来ないなぁ、これは私の一部なの。失うなんて考えられない」

 

風音は一度大きく伸びをした後、先ほどのクリーチャーに刃金を抱き抱えさせて、帰り支度を始めた。

「じゃあ帰ろう皇心。オーブ作りはもうお終い。最後に工場のオーブを回収したら次のフェーズだよぉ」

「…あぁ、風音」

「待って!風音!皇心!」

「私達帰らないとなんだけど…。うーん、じゃあ一問だけ許すよぉ」

「風音はそのオーブ、才能はどうして集めてるの…?」

「…勿論、私のために決まってるじゃん」

「自分のためだけに…」

「質問終わり?じゃあ帰るねぇ。いこう皇心」

 

皇心は夕哉の方を悲しそうに一瞥した後、風音の後について行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そのクリーチャーはワープ能力を持っているのか、風音と刃金を抱えたと思った瞬間にはもう消えてしまっていた。

 

「須谷さん」

『それだと混乱するでしょう、遥風でお願いします』

「遥風さん、全部終わったら詳しい話を聞かせてください。断片的に皇心から聞けたけど、もう少し欲しいです」

『…分かりました』

「遥風さん、大丈夫ですか?」

『ごめんなさい、少し…休ませてください…』

 

そう言う遥風の言葉の間には啜り泣くような音が入っており、何が起きているのか夕哉には何となく分かった。

「俺は今から飛水と御白のカバーに行きます、遥風さんは休んでてください」

『…お願いします』

 

ジャブラッド達をカードに戻して、夕哉はフェスの会場に走り出す。気になることで頭がいっぱいになりそうだが、それで目の前のことを見失ってはいけないと、心に言い聞かせながら。

 




夕哉と!火奈の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「「勝利」の頂 カイザー「刃鬼」!」」
「シンパシー:ハンターでコストが軽くなって、召喚時と攻撃時にハンターWメクレイド10を行うジャストダイバーのとんでもない巨大クリーチャー!パワー17000か…」
「相手のシールドが5枚以上ならスピードアタッカーを獲得するから、このクリーチャーが出るだけで脅威の4体メクレイドで呼び出す事になる、メクレイドの王様だね」
「強力な刃金の切り札だよ、本当に強かった…」
「というわけで次回、『革命、虹かかる時・前』」
「「お楽しみに!」」
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