デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション) 作:シグレサメ
Uta-Awase-Fesを阻止しようとする刃金(とがね)達に対し、全力でデュエマでぶつかり、刃金の本音を、本当の黒幕である須谷風音(すたにかぜね)を引き摺り出すことに成功した夕哉。しかし彼女も自身を囮に使っており、フェスに侵入した垣外礼児(かきそとれいじ)の魔の手が、手を伸ばしつつあるのだった。
火奈と緑は、会場の裏口から入り、それぞれで侵入者となる人間、クリーチャーを探していた。
『続いては皆さんのお楽しみ、水文明の生ける2人の伝説!「壱百年Wish」!どうやらサプライズを用意しているみたいですよ!?というわけで演目「Uta-Awase-Session」、まもなく開演です!』
火奈と緑は予め決めた集合場所に集まり情報を交換するものの、芳しい成果が出ることはなかった。
「まずいよひな!もし侵入した人が事件でも起こしたら…!」
「うん、フェスは間違いなく中止になるし、アメイジンの濾過器を作る計画も台無しになっちゃう」
2人が話し合い、焦りが滲む中夕哉から連絡が入る。
『2人とも!地下の水路だ!地下の水路から入ってきてる!』
「ゆうや!?なんで!?」
『今一時的に須谷さんの役割を受け持ってる、とにかく地下水路に注意して!』
「水路って、見つかるわけないよそれ…早く行こう緑!」
「へぇ、誰探してんだ?」
突然横に現れた一人の男子に火奈と緑はすぐに距離をとる。彼は何も怖くないといったふうに、逆に距離を詰めてくる。
「俺は垣外礼児(かきそと れいじ)。よろしくな」
「君が、侵入者…?」
「あぁ、今からフェスを台無しにするんだ」
「それ聞いて、黙って見てるわけないでしょ!」
火奈が垣外に掴みかかろうとすると、掃除の後片付けがされていなかったのか、足が滑って大きく転んでしまった。
「いっつ…!」
「火奈!」
「ひな!かきそとくん、何したの…?」
転んだ火奈をボルシャックライダーが介抱し、緑は垣外を睨みつける。火奈は幸い怪我にはなっていないようだ。
「俺は何もしてねぇよ、強いていうなら俺はめちゃくちゃ運が良いんだ、だから誰も俺の邪魔はできない。じゃ、またな」
「待って!」
そう言って緑が追いかけようとするも、後ろから興奮した観客の手からすっぽ抜けたペンライトが、緑の後頭部にぶつかる。
「ぐうっ…」
「緑ぃ大丈夫かぁ!?」
緑は後頭部を抑えるも、そこまで痛みはないと判断して立ち上がる。
「ゴルファンタジスタ、大丈夫だけど、かきそとが…あれ?」
「運が良いってのはハッタリじゃないみたいだな…。正攻法じゃ捕まえられない上に、多分デュエマも運が良いんだろうな」
「それ、どうやって勝つの…?」
「分からん、大丈夫そうなら追いかけるしかないが…」
「ひすい…」
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Side:飛水
メインステージは映画館を更に広くしたような感じで、客席の方は青色を基調とした扇形に、後ろに行くほど上がるように作られている。全方向から演者を見られるように工夫がされているらしい。雨が降っているため屋根が張られており、晴れるとそこが開くように作られている。
ステージ本体はアメイジンレベルの大型クリーチャーが歌ったり踊ったりできるほどで、そこの花道からDracheサイズのクリーチャーが歌う小型のステージがあり、さらにステージの後ろにあるカーテンは、ここまでに見たものだとそのクリーチャーに合わせたものが投影されるまさに映画館のような仕組みになっている。
Drache、そしてアメイジンから契約を持ちかけられたけど、結局俺はまだ答えを出せてはいない。怖いっていうのはある。夕哉とジャシンみたいにお互いに予断を許さないみたいな関係にならないのは分かってるけど、光屋がドランと契約した当時、暴走した話は聞いてるし、火奈みたいに迷いなく戦いに突っ込めるほど心が強いわけじゃないし、緑とゴルファンタジスタ程絆が強いとは口が裂けても言えない。
「大丈夫か、飛水」
「あぁ、だいぶ落ち着いてきたよDrache」
「俺の我儘を聞いてくれてありがとうな、飛水」
「間違えてもすぐフォローするから大丈夫よ」
DracheとEi'neが俺を励ましてくれる。でもそれよりも、俺が気になっていることは…
「今、俺の肩には色々のしかかってるんだな…」
「飛水!緊張に真っ向から向かうな、自分のパフォーマンスを…」
「分かってるよ、だからこそ、今俺の闘志は燃えているんだ。絶対に失敗しない。ここに来てくれたお客さんのため、濾過器のエネルギーを溜めるアメイジンのため、こんな俺のために全力を尽くしてくれてる仲間達のため」
「全部背負って、俺は演(や)りきります」
「じゃあもう一つ、俺と進む覚悟を決めたか?」
「…はい!」
「よし、それが君の見つけたやり方なら歓迎する。行くぞ」
「はい!」
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飛水とDrache、Ei'neがステージに現れ、クリーチャー達の歓声に彼らは包まれる。
「壱百年Wishサイコー!!」
「ニンゲン、よく分からんが頑張れー!」
Dracheがマイクを高く掲げる。これは彼らのファンにはすぐに少し話すから静かにしてほしいという意味だと伝わった。
「Drache Der'Zenだ、初めて見た人も、もう知っている人も、是非このライブを楽しんでいってほしい」
会場が大歓声に包まれる。それを再度制止したDracheは、中央のスポットライトに飛水を立たせた。
「まず一つ。今日はUta-Awase-Fesに集まってくれてありがとう。突然の取り決めに付き合ってくれたスタッフの皆、魔力を集めるためと知っていながらも集まってくれたギャラリーの皆に、再度お礼を言わせてくれ」
「濾過器がなんとか言ってたよなー!」
「急にそんな話するからビックリしたー!」
「俺らしくはないな…。実際、少し前の俺だったら海の汚染なんて気にしなかったのかもしれない。そうしようと思った理由はある人間とクリーチャーに出会ったからだ。まずは青海飛水」
飛水はDracheからマイクを渡され、おっかなびっくりながらも話し始める。
「初めまして、青海飛水って言います。今日は、Dracheの代わりにギターを弾くことになっています」
会場がどよめく。Dracheのギターを聴こうとしていた一部のクリーチャーからはブーイングすらも上がった。それを再度制止したDracheは、高らかに宣言する。
「2人で話した結果なんだが、俺はこの人間と契約することにした。人間界に行くタイミングが増えるから、今まで通りの頻度でライブしたりはできなくなる」
Dracheの全てを決めた、揺るがない瞳が観客達に口答えを許さない。Ei'neが安心したような顔をしたあと、Dracheの代わりに喋り出した。
「確かにDracheはここにいることが少なくなるわ。でも、だからこそ今日飛水くんとのライブを聴いてほしい。変わることに頭ごなしに拒否の意思を表すんじゃなくて、少しでいいから私達の意思を聞いてほしいわ」
「行けるか、飛水?」
「はい…!」
「俺は、不器用な人間です。夕哉みたいに凄い我慢強くて諦めないほどメンタルが強くないし、御白みたいに好きなことに妥協しないでも、火奈みたいに友達のために全力で動けるわけでも、緑みたいに優しさに溢れているわけでもないです。だから正直、ずっと劣等感を抱いてました。クリーチャー世界に行くようになってもそれが変わるわけじゃなかったんです」
飛水の話を聞く緑は驚きの表情を隠せない。火奈は飛水の独白に、ようやくしっかりと言えたのだと、乗り越えたのだと安心していた。
「ひすい、そんなことを考えてたんだ…」
「なんとなく、分かってたよ。飛水の言うこと、少しわかる」
「あたしも、乗り越えなきゃ…」
「あっちの世界の文化祭で、勇気を出さなかったら、自分から変わろうとしなかったらずっとそのままだってことを知りました。だからこそ、今はDracheに並ばなくても、いつか絶対に、Dracheの横にいて相応しい人間になってみせます」
「でもそれは今は駄目だから見逃してと、言い訳に使うつもりはありません。今俺にできる全部を、ギターに乗せます」
「…行くぞ飛水!人間界の曲だ、『JIBUN』!」
飛水が今できるありったけをギターに乗せて伴奏を掻き鳴らす。確かにDracheに比べてギターの技術は大きく劣っていたが、彼の真剣さに対して、ヤジを飛ばすようなクリーチャーは1体としていなかった。そしてDracheは飛水が作った波に乗るかのように、人間界で飛水が好きな詩を乗せる。
『気づけば弱気になったな 昔は上だけを見てた 英雄(ヒーロー)に憧れてたのに今じゃ隣ばっか気にして』
演奏が始まり、濾過器にエネルギーが溜まっているのを見ていたメイとジンは安息のため息を漏らす。
「これで一旦は大丈夫そうですね…」
「だが侵入者の情報が入っていない、安心するわけには…」
「分かっています!ジンは少し黙っていてください!」
「はぁ!?お前俺の身体を半分借りてる分際で…」
そういつも通り喧嘩を始めたアメイジンの城の城郭を、カラクリバーシがツンツンと突く。
『Drache様からのプログラムを実行します』
「「はぁ!?今なんて!?」」
トリノドミノがギアをグルグルと駆動させながらアメイジンを持ち上げ、そのまま何処かへと飛んで行こうとする。必死に逃げようとするアメイジンだったが、トリノドミノの足にはDracheの魔力が篭っており、暴れれば城郭の部分が割れてしまうことに気づいた2人は、大人しくするしかなくなってしまった。
『自分革命巻き起こせ 悪戦苦闘上等 明日に生きる自分を信じ 手を差し伸ばし生きる 人生活性忙しく 過ごす日々もいいだろう 選んだ道に もう嘘はないから 真実がなんだって 立ち向かう』
間奏に入ったところでDracheが2人に、後手でピースサインを送る。これは本人曰く「アドリブで繋げ」という意味らしく、本人のライブでは多発しているが、今初めてDracheと組んだ飛水は困惑してしまった。
(なんかサプライズするって言ってたけどこれのことか!?急すぎるだろ!?)
そう思って演奏を一瞬躊躇しそうになった時、横でキーボードを弾くEi'neの動きが変わる。
「あの人っていつも自由なのよ。水文明らしくないけど、それが素敵なんだけどね」
Ei'neのアレンジに乗る形で飛水も立て直す。その様子を見届けたDracheは観客席の方に目線を向ける。
「ここでサプライズとして今日のスポンサーの紹介だ!水文明を陰で守り続けてきた守護者、《芸魔龍王 アメイジン》だ!」
アメイジンが突然ステージ裏からカラクリバーシ達に連れ出され呆然としている。
「飛水!紹介頼んだ!!」
Ei'neがウインクをして、飛水は一度演奏を止め、Ei'neが代わりにキーボードで伴奏を続ける。
「え!?………アメイジンはメイさんとジンさんという2つの意思で水文明を守り続けてきました。たまに喧嘩することもありますし、たまに容赦ないことも言いますけど、俺やDracheのことをちゃんと聞いて、それでちゃんと考えて解決しようとしてくれる、凄いクリーチャーです!」
そう言われたアメイジンは照れたように頭を隠そうとするがカラクリバーシ達がそれを許さない。後に絶対に反逆できないようにプログラムを変えるべきかと思ったアメイジンに、Dracheが声をかける。
「俺たちを繋いでくれたのは間違いなく飛水だ、だから俺たちも分かり合いたい。どうすれば良いんだ?」
「…勝手に決めていたようだが、私たちも青海飛水と契約したいのですが」
「練習の時間を使って先に決めるとは…」
「だってさ、どうする、相棒?」
「…烏滸がましい話ですけど、やるって決めた時から言うつもりでした。両方と、契約させてください!」
『俺の、俺たちの音が、ずっと皆を守っていけるように!』
飛水は2人、いや3人のクリーチャーに深々と頭を下げる。2つの文化、考え方に触れて、彼なりの誠意を見せたのだった。
「それで大丈夫です(だ)、人間の力、使わせてくれ」
「俺もだ、よろしく頼む」
「………!よろしくお願いします!!」
「…君も君らしくだ。俺はタメで大丈夫だ」
「私達も大丈夫ですよ」
「これからよろしく頼む、アメイジン、Drache!」
「さあ、ラストサビ行こうか!アメイジンも頼んだぞ!」
Dracheの無茶振りに困惑するアメイジンを、飛水はギターを弾き始めながらお願いする。
「なんでも良いんです!心を伝えるならそれで!」
『自分革命巻き起こせ 唯我独尊上等 誰かになるじゃなくて 自分になるために生きる 絶対宿命 悔しさに泣くことだってあるだろう 強さの限界と僅かな弱さを 超越したREALへ 駆け抜ける!』
Dracheが歌い、飛水とEi'neがギターとキーボードで彩り、アメイジン、カラクリバーシ、トリノドミノが自分の思うノッているというものを表すために身体を揺らしてダンスをした。
一つ、二つ、そして、数えきれない万雷の拍手。肩で息をする全メンバーに、数々の労いの言葉が投げかけられ、感動したと涙するもの、アンコールを切望するもの。とにかく会場は、このステージを中心として一つになったのだった。
「ジン、これがバンキシー様が水文明を守れと命じた理由であると推測します…」
「あぁ、クリーチャー達が一つになって、大きな潮流を生み出している…」
「「水文明を守るとは、この風景を守るためでもあったのだろうか…」」
その時突如として照明が落ち、観客がどよめく。
「早く!照明の復帰を!」
「水路に入ったら水で流されかけるし、まずステージが複雑すぎるし…まぁやっぱり運に救われたな」
照明が再び着くと、5000VTを従えた少年が、ステージの真ん中で飛水達を睨んでいた。
「俺は垣外礼児。刃金のやつに言われて、この会場をぶっ潰しにきた!さぁ怪我したくなかったら今すぐ逃げろ、お前らみたいな後先考えないで騒ぐ奴らが大っ嫌いなんだよ!」
礼児はクリーチャーを呼び出し、ステージへと赴かせようとする。クリーチャー達は逃げ惑いパニック状態に入る。
「お前、今なんて言った…?」
「あ?なんだっけ、デュエマ部で唯一クリーチャー使えない奴だっけ?お前に用はないんだよ、ボルシャックとゴルファンタジスタ使いは俺の幸運とクリーチャー達で足止めしてるし、後の俺の仕事は濾過器をぶっ壊すだけだからな」
「…Drache、2曲目はアドリブでもいいか?」
「飛水、何を…!?」
「ギター頼む。旋律は俺が作るから、それに合わせて、客達を守ってくれ」
「飛水…?」
「…なるほどな。我からも忠告だ飛水、それはお前に多大な負担がかかるぞ、契約したばかりで真のデュエルなど…」
「俺がここで踏ん張らなかったら、夕哉達がフェスのためにやってくれた努力が無駄になる。頼む、俺の我儘を聞いてくれ」
「…分かりました、私達の力を貸しましょう」
「ありがとう、3人とも」
カラクリバーシが裏舞台に行き、再び照明がピカピカと動き出し、音楽のイントロが鳴り出す。想定外の事態に礼児は、
「なんだ、観客はほとんど居ない、何やってんだ!?」
「今から2曲目、青海飛水のデュエマが始まります!さっきは過激なパフォーマンスで皆を怖がらせてしまい申し訳ありません!今からは100%の安全を保証し、皆を熱狂の渦に巻き込みます!」
それを聞いた水文明の住人達が、困惑しながら話を聞く。そこにどこからか、
「ひすいのライブだー!頑張れー!」
「あたし達のことなんか気にせずやっちゃってー!」
と仲間達の声が飛んでくる。
「言われた通り、俺は今からやるライブは1回きりの超貴重なライブ、Dracheの勇姿が見たい方、アメイジンについて知りたい方、人間のことを信じてくれる方、ぜひ席に着席してご覧ください!」
それを聞いた礼児は激昂して、
「お前ぇ!!調子に乗るなぁ!!」
とクリーチャーを客席に飛ばすが、トリノドミノが空を舞い、華麗にその攻撃を身を挺して防いでみせた。
「そう言って俺を狙わないようなやつに、俺は負けるつもりはねぇよ」
「……!!貴様ぁ…」
「さぁ、やるのか、デュエマ?まぁ、俺を狙えない弱虫には出来ないか」
「黙れぇ!気が変わった、お前の口を塞いで、このフェスを無茶苦茶にしてやる!」
Dracheが会場に音頭を取る。
「さあ皆、この世界に伝わる伝統の決闘方法デュエマ、それの特別試合だ!皆で最初の掛け声をやるぞ!せーの!」
「「「「「デュエマ、スタート!」」」」」
飛水と!緑の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「Napo獅子-Vi無粋 / ♪オレの歌 聞けよ聞かなきゃ 殴り合い!」」
「クリーチャー側はパワー6000のWブレイカーで、2枚まで捨ててそれに1枚プラスしたカードを引くことができるな」
「しかも呪文側はメガラストバーストで打てて、コスト2以下の相手エレメントを全て破壊できるんだぁ!豪快だよね、飛水!」
「あぁ、手札交換と除去、革命チェンジせずともアタッカーになれる万能な1枚だ」
「というわけで次回、『革命、虹かかる時・後』」
「「お楽しみに!」」