デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション) 作:シグレサメ
初めてクリーチャー界に入ってから数日、夕哉達は無事皇龍市へと戻り、普段通りの生活を続けていた。しかし火奈のみは、心に穴を開けたままなのであった。
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Side:夕哉
公輝さんによると、神谷祈雨という人間は知らない、おそらく真沢と関係ないところで契約する力を手に入れた人間だという話になった。あの時ジャブラッドが暴れてくれたことで、飛水が危惧していた植物の持ち帰りは止められた。でも彼女がどうやってクリーチャー界に来たかも分からないからもう一度行くのも危険。とにかく今は…八方塞がりだ。それに…火奈のことも。
「なぁ夕哉…おい…おーい!夕哉ー!」
飛水に引っ張られて俺の意識は現実に戻る。
「ごめん飛水、ちょっとぼーっとしてた」
「勘弁してくれよ…そういや緑が転校してくるのって今日だよな?」
「…あ!」
「あ!じゃねーだろ地味に大事なことなんだから…」
公輝さんが本当に、本当に頑張ったことの一つに、緑が皇龍高校に入ることがある。本来はかなり複雑な手順を踏むところを、彼の養子であることにしたことと弛まぬ努力でなんとか俺たちと同じ学校に入ったみたい。学力的な問題は、クリーチャー界にいた時と真沢の教育が良かったこと、ここ2ヶ月の緑の努力が実った結果らしい。それでも付け焼き刃だと緑は言っていた。そんなことないと思うんだけどな。少なくとも御白は彼の垢を煎じてがぶ飲みしなきゃいけない。
「夕哉ー!勉強教えてー!」
突如としてクラスの扉が開き緑が突っ込んでくる。
「いったぁ…!」
「あ、ごめんゆうや…学校で会えたの嬉しくて…」
「気をつけてくれればいいよ…勉強見て欲しいの?」
「うん、分かんないところがあってね…」
「あーあ、夕哉と同じクラスなら良かったのに」
「そうだよね、他の3人もどこか被ってれば良かったのに…うん?」
気づけば俺と緑はかなり注目を集めていた。眉目秀麗で今日来たばかりの転校生、人を惹きつける性格の緑の人気を舐めていたみたいだ。ちなみに飛水はいつの間にか離れていったらしい。お昼休みの間、俺たちは質問攻めを受けることになった…。
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Side:飛水
俺と火奈は個人的に連絡を取り合っていて、概ね音楽とか、デュエマのことについて話したりする。つってもたまに程度だが。最後に動かしたのは5日前、ちょうどクリーチャー界に行く前日だ。それ以来連絡を入れてもあいつは返事をくれない。学校には来てるらしいんだが、昨日光屋から昼飯時と放課後どこにいるか分からないと言われた。こういうの嫌なんだがな…
「おい、光屋いるか?」
「飛水くん!やっぱり火奈ちゃん見てないですか?」
「お前が見てないのに、だろうよ。まぁ探してみるわ」
とりあえず俺は学生が行けるエリアを回る。ちなみにこの学校は屋上が閉まっている。空いててくれた方が見当つけやすかったかもしれねぇのにな。俺は5分ほど歩いてなんとなく考えつく。案の定…あいつは学校の校庭、運動場に座っていた。
「あ…飛水」
「何してんだ?飯食えよ」
俺は購買で買ってきたパンを手渡す。彼女の手を見ると…カードを並べて、ストレージを弄っていた。
「そういうの…スリーブ入れてるとはいえ校庭でやるなよ…」
「あはは…何かじっとしてられなくて…」
その時学校のチャイムが鳴る。
「あ、予鈴だ、じゃああたし行かなきゃ!」
火奈は逃げようとしている。今逃したらいつ本音を聞けるか分からない。火奈の手を掴んで、こう声をかける。
「どうせ今戻っても集中できないだろ?何が辛いのかくらい、光屋達にも、俺にも、言えないか?」
「…あー…あたし達サボり魔になっちゃった」
「お前が早く言ってくれりゃ早いよ、なんてな。…待ってるよ」
「…あたしさ、全然手も足も出なかった」
火奈はゆっくりと話し出す。
「今まで何となくデュエマやってさ、何となく皆を助けたいと思ってやってきたけど…神谷さん見てよく分かんなくなっちゃって」
「アイツがどんな理屈こねたってやろうとしたことは外来種のバラマキだろ?それで悩むことねぇだろ?」
「でも神谷さんと戦ってた時、すごい動揺してたタイミングがあって。そういう神谷さんもいるのかなとか思ってさ」
「演技の可能性もあるだろ?」
「そうかもだけど…あたしはどうしても嘘だと思えなかった」
火奈は言葉を続ける。
「それにさ、あたし夕哉や御白ちゃんみたいにデュエマやメンタルが強かったり、凄くデュエマの知識があったりするわけじゃないからさ」
「目的達成まで止まらない暴走特急と悲しいくらいのデュエマオタクなだけじゃねぇかな…」
「そうかもだけど…あたしに無いのは確かだからさ」
「だから必死にデッキ改造してたのか?」
「うん、あたしのデッキは御白ちゃんに作ってもらってるから、あたしも何かー!って思ったんだけど」
向こうから見える火奈のデッキは文明もシナジーもぐちゃぐちゃで、とてもデッキと言える出来のものじゃない。
「あたしなんかじゃ足りないなぁって。陸上とかやってる時は忘れられるんだけどね」
火奈の悲しそうな顔を初めて見た。こんな顔するんだな、こいつ…。
「別に…無理して変わろうとしないでもいいんじゃねぇの?」
「…え?」
「俺も夕哉や御白、緑やお前と会って、すげえなって思うことはあるけど、夕哉になりてぇ!緑になりてぇ!って思ったことはないなってふと思ったんだ、お前もそれでいいと思う」
「うん…」
「でもさ、それはそのままでいいってことじゃねぇから…。だからさ、お前はお前のまま変われるんじゃないかな、お前のまま、前に進めんじゃないかなって…思う」
この伝え方であってるか不安になっちまう。俺も火奈のこと言えねぇかも。
「…確かに、凄い選手のことは勉強するけど、その人そのものになろうとはしないよね…うん、ありがとう!少し吹っ切れたかも」
「そうなのか…?だったら、良かったけど」
「うん!ありがとね!」
「飛水くーん!火奈ちゃーん!」
向こうから御白と…なんか夕哉と緑までいる。
「全然授業に来ないから探しにきちゃいました!」
「俺も。飛水全然連絡くれないんだもの」
「ボクは…なんかついてきちゃった」
緑の発言に他の全員が笑う。緑も釣られて笑っている。
「ごめんね皆、あたし考えすぎてた。あたしらしく、やってみるよ」
「おう、これ以上いて俺ら全員にサボり魔のイメージつく前に戻ろうぜ」
火奈の少し晴れた顔を見て、俺だけじゃなくて夕哉達も少し安心したように見えたのが印象的だった。雰囲気や気持ちって、やっぱり伝播するものなんだな。
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それから2日後、公輝からデュエマ部に連絡が入る。
『彼女の概ねの居場所が分かったよ。聞き込みが功を奏してね、神谷という苗字で自分のことを我って呼ぶ人がいるって話が聞き出せたんだ。早めに不安の種は摘んでおきたいんだ、オレ達が行ったら怪しまれるから、神谷さんの顔をちゃんと知ってるメンバー、そして少人数に言ってもらいたいんだ」
というわけで当日集まったのは火奈、緑、飛水。残りの2人はというと…
「というわけで光屋御白さん」
「ハイ、ナンデショウカ」
「ここにじいやさんからいただいた小テストがあります、50点中20点と書いてありますね」
「ハイ」
「クリーチャー界の問題の方は他の3人が対処するようなので、俺たちは小テスト、並びにその先の期末テストとデュエルしましょう」
「オコトバデスガ、ユウヤクンハナンテンデスカ?」
「48点、だからあなたを1日中教えられる予定です、何か言い残すことはありますか?」
「アリマセン、タイセンヨロシクオネガイシマス」
火奈達3人が公輝の指示の場所に行くと、そこには古びた神社がポツンと建っていた。周りの建物は住宅街として開発されており、そこに神社がある異質さから、そこだけタイムスリップしているような錯覚を覚える。
「おっきなお寺…」
「神社じゃない?」
「そうなの緑?」
「うん、ゴルファンタジスタとそういうところを回ったことがあったし、まざわさんからも教えてもらったし、あとここ神谷神社って書いてある」
「あ…お恥ずかしい…」
「どうすっかな…真っ向から入って逃げられたら不味いから、顔を知られてない俺がまず一人で様子を見てみる。顔も覚えてるし」
飛水が神社の中に入っていき、見えなくなる。しかし突然飛水の叫び声が聞こえたかと思いきや、そのままぴたりと音が止んでしまった。
「え、これ…めっちゃ怖いやつ…?」
「飛水、神様に失礼なことしちゃったのかな」
「あぁーそれであの声か、ってならないよ!?早く助けに行かなきゃ!」
火奈達は急いで神社の境内に入る。そこには大きな神社の拝殿並びに本殿と、その横に社務所がある。社務所には…火奈達にとって見知った小柄な女の子がいた。
火奈は緑に目配せする。
(え、アレって神谷さんだよね、凄い行列、何してるんだろう…)
(分かんないけど、ボク達も並ぼう)
火奈はマスクをして、緑と一緒に行列に並ぶ。耳を澄まして、彼らの神谷さんの会話を聴く。
「ダイエットしようしようと思っても、ついつい甘いものを食べちゃって…」
「それは大変だ、その為にはやはり簡単な目標をつけることと、厳しい友人が大事だ。少しずつ目標を突破しながら達成感と自信をつけて、厳しく自分を見てくれる人にモチベーションをつけてもらう。そういう友人がいなかったとしても、最近はスマートフォンのダイエットアプリなどでリミッターをかける人間も多いと聞いている。一番大事なのは自分ならできるという自信だ。応援している」
((なんか…めちゃくちゃマトモだ…))
「現人神(あらひとがみ)様、友達が最近身体の調子が悪くて、薬とかもそんなに効いている感じがしないんです、どうすればいいですか?」
火奈と緑はお互い顔を見合わせる。普通に考えてアイデアとかでどうこうなるものではない。それを彼女はどう答えるのか。
「ふむ…少し持ち帰らせてくれないか。私の友人に病に詳しい人間がいる。彼に紹介してもらって特別な薬を調合してもらうとしよう」
「そうなんですか!ありがとうございます!」
火奈と緑は、この返答がかなり危ないものであることは瞬時に考えついた。おそらくクリーチャー界に来た理由もそういうもののためだ。火奈は人混みをかき分け飛び出していく。
「ちょっと神谷さん!これどういうこと!?」
「ふぇっ!?なんで貴方が…!?」
「いいから!来てもらうよ!」
火奈は神谷を引きずり神社の外に降ろそうとする。そこで並んでいた人達に止められる。
「何をしてくれてるんだうちの現人神さまに!」
「割り込みどころか、現人神様に楯突くとは!」
火奈が逆に閉じ込められそうになり、緑は何もできずに留まる。
(早く、早く!ひなを助けなきゃ…!)
突如カードケースが緑色に光り、火奈を抱えて飛び上がる。
「ひな、逃げるよ!」
「…今日の相談は中止だ、また別日にしてもらえないか?」
「現人神様がそういうなら…」
神谷も、急いで火奈達を追いかけて行った。
火奈と!緑の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「轟炎の竜皇 ボルシャック・カイザー!」」
「あたしの切り札であり相棒のカードなんだ!」
「シビルカウント3でスピードアタッカーとバトル中パワー+50000、さらにシビルカウント5で無限攻撃を獲得するんだー」
「さらに破壊された時に手札を1枚引いて、ボルシャックと名のあるクリーチャーを呼び出すこともできるよ!」
「絶対に対処しないといけない無限攻撃、一度出たらすごい圧力になるねー」
「というわけで次回、『ガチャはお好き?』」
「「お楽しみに!」」