デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション)   作:シグレサメ

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須谷風音はCOMPLEXを完全に覚醒させ、自分に反応した刃金皇心を切り捨て、自分の配下達を操り人形同然の状態にしてしまう。刃金は夕哉に自分の後悔と風音を止めて欲しいという事を託し、夕哉達は最後の戦いの準備へと入るのだった。


黎明

 

デュエマ部の部室には5人と遥風、公輝が集まり、風音の計画を止める術について話し合っていた。それぞれの分担を話し合い、役割を確認していた。

 

「カクメイジンがどうやって水文明を守っていたかの話にもなるんだが、あいつは特定のエリアを9×9の81分割してそれの異常などを確認することができるクリーチャーでもある、だから俺とカクメイジンが、実質的に今回の司令塔になる」

「今回は才縁高校と場所が決まってるから出来ることですね、遥風さんは夕哉くんにつくことになるので、この上なく好都合ですけど…」

「ひすいは良いの?」

「叔父さんの研究結果の悪用はムカつくが、かといって他にできる人間がいないなら俺がやらなきゃだろ。裏方も演者も、両方必要なことだからな」

「…ありがとうございます、飛水さん」

「一番ハードな人に言われちまった…。夕哉いるとはいえクリーチャー無しでCOMPLEXに立ち向かう人に…」

「そういうものではないと思います、ありがとうございます」

 

「そしてあたしがライダーを学校の中央部まで連れてって、太陽の力で闇を弱めるんだね」

「火奈ちゃんも大概ハードですよね…。太陽の力、大丈夫ですか?」

「前よりほんのり平熱が上がったなってくらい。あとはあたしに影響ないよ。あとは、ライダーは元気そうだけど、時々辛そうに見えるな」

「火奈、俺のことは気にするなと…」

「一緒に英雄になるんだよ?相棒のことはちゃんと見てなきゃ」

「火奈……敵わぬな」

 

公輝が仕切り直して話を続ける。

「緑くんは夕哉くんと御白くんが突破するための槍として働いてもらうことになる。危険だけど大丈夫かい?」

「大丈夫。みんなにお世話になったから、ボクも少しは返したいんだ」

「緑くん……」

(初めて飛水くんと一緒に出てきた時から、本当に彼は成長したよ)

公輝は学校や家などで見る緑の目覚ましい成長を見ながら、少し涙ぐんでいた。

 

「COMPLEXと戦うのはは夕哉くんと御白くんだ、2人とも、大丈夫かい?」

「……御白。本当にあの作戦で行くの?」

「そうですよ、夕哉くん。あのCOMPLEXを討伐した神話を見て閃いたんです。ドランさん、エン・ゲルスさんを使ったあの方法なら、COMPLEXの支配を弱められる可能性が高いですから」

「それでも……御白が危険な方法は取りたくないよ」

夕哉の口に人差し指を立ててそれ以上の言葉を遮った御白は、

「前に夕花ちゃんが病院に運ばれた時、私も許せないって言いました。それも本当です。でも今は、夕哉くんや風音さんを助けて、自分にできることをやりたいんです。私にはこの程度しか言えないですけど、それが私にとっての責任なんです。夕哉くんと、同じですよ」

 

ニコッと笑いかけた御白に、夕哉は何も言えなくなる。元を辿ればデュエマの世界に飛び込んだのも、彼女の押しの強さと、素直な人間性だった。

「分かった。でも、絶対無事で帰ってきて」

「……はい!夕哉くんも!」

あの病院の時のように拳を合わせて、お互いの無事を誓った。

 

「ねぇ皆!この後、少し話さない?英気を養う!みたいな!」

「火奈…?いいよ、どこでやる?」

「すまない俺と緑はパスだ、千弥佳(ちやか)さんから連絡入った。後で絶対合流する。ごめんな」

 

「……分かった。待ってる」

夕哉はそう返して、火奈との会話に戻って行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「多分祈雨ちゃんは、その須谷風音ちゃんの元にいると思う」

 

飛水と緑は千弥佳、颯星(はやせ)と神谷神社で合流して、つくや否や千弥佳の口からこの言葉が飛び出てくる。

 

「最低限の反応はしてくれるんだけど神社に帰ってくる時間も遅いし、私たちに何かわかりやすく隠してる。多分、飛水くんや緑くんの追ってるアルテナに取り込まれたっていうのであってると思う」

 

「かみやさん、そんな…。ごめんなさい、気づけなくて」

「まぁ垣外強かったからな…それに負けて何らかの取引させられたんだろうが…。すまねぇ、こっちも忙しかったんだ」

「アルテナの話だけじゃないくらい忙しそうだったよね、ひすい」

「いや、個人的に気になったことがあってな…。それを調べたりしてたりしたら時間をだいぶ消費してたな」

 

飛水と緑に、颯星が改めてこう話す。

「神谷さんは、お二人が知っているように、凄く責任感が強い人です。その計画が実行されるまで僕たちが擬似的に人質になっていたら、彼女は協力しないわけがないと思います。だからこそ、神谷さんも探してもらえないか、お願いしたいんです」

 

今度は颯星が頭を下げる。それに飛水は

「クリーチャーの力を手放せって言って手放してくれたんだ。これくらい当たり前に返させてくれ」

「うんうん。ボクもかみやさんを助けたい。ボクの友達の一人だし、いい人だって知ってるから」

「ありがとうございます、神谷さんを、才縁高校を、助けてください」

 

その様子を見届けた千弥佳は、パソコンを立ち上げて生徒しか入れないページへと入る。

「これが私達の学校の全体図。先生達に避難するように掛け合ったけどまるでダメだったから、私たちにできるのはこれが限界」

「いや、それだけでも助かる。つーか警察が言ってダメなんだからどのみちダメだわ。凄く誇り高いんだろうな、オブラートに言うと。何はともあれ、普通の調べ方じゃ学校の中は詳しく見れないからな。これをカクメイジンにインストールすればナビがかなり高精度でできると思うわ」

「……私からも。祈雨ちゃんをお願い」

 

「任せろ」「任せて」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その会議の少し後の頃、火奈に連れられ夕哉と御白は近くのボウリング場へとやってきていた。

 

「私、こういうの初めてやるかもです…」

そう言った御白はボウルの重さを支えきれずふらつき、夕哉に介抱されていた。

「御白、まっすぐ立てる?大丈夫?」

「大丈夫ですよ!なんかちょっと親っぽくなってません!?」

 

御白がふらつきながらも1投して、それがガターに刺さっていくのを見て夕哉は火奈に尋ねる。暫くボールを投げて、火奈がなんとなしに何か話したそうにしているのを見た夕哉は、先ほどから聞きたかった疑問を投げかける。

 

「ねぇ、なんでここに来たの?」

「あたし部活的に食べて発散とかはしづらいからさ、昔からモヤついたり、踏ん切りがつかなかったらこういう体動かせるところに来るんだ」

「へぇ、俺も初めてきたけど、そういうのもあるんだ。カードはロッカーに置いてきてあるってことは…カイザー達には言えない話?」

「うん、察しいいね夕哉。夕哉も御白ちゃんもさ、正直、怖くなったりしない?」

 

そう言いながら火奈は椅子の上で手を組んで何かを考えているように見えた。

「カイザーのあの力さ、絶対無理してると思うの」

「そうなの?」

「それは…なんとなくそんな気がします、伝承では闇を払ったあと、『そのボルシャックがどうなったのか』描かれていませんから」

「多分カイザーは大丈夫って言うからさ、こういう話は一番最初にクリーチャーと契約した2人に聞きたいなって」

「火奈ちゃん、どこまでも人の為に心配できるんですね、カッコいいです」

「そういうのはいいよ、なんかさ、最初成り行きだったけど…クリーチャー達と話したりしてるうちにさ、デュエマが、ボルシャックカイザーが、大好きになってたんだ」

 

そういう火奈の目には涙が溜まっている。

「だから、相棒のためって言って無理してるライダーが、辛くて…」

「火奈ちゃん…」

 

「確かに、無理はしている。俺がどれだけ持つか、分かったものではない」

ボルシャックカイザーの声が聞こえて振り向いた火奈の前には、ロッカーからカードを取り出してきた夕哉がいた。

 

「カイザーに話さないようにって……」

「それで本当に話さなかったら、もっと言いたいこと言えなくなると思ったんだ」

「……夕哉、カイザー、ごめん」

 

そう言った火奈にカイザーは語りかける。

「俺も、偶々火奈に出会っただけだ、最初はただの人間だと思っていた。お前の直向きさに心打たれた。勉強が苦手ながらも精を出す姿に感心した。とても楽しそうに走る姿に、俺もどこまでも行きたいと思えた。俺も同じなんだ、だから、火奈の為にこの身体を使いたいと思ったんだ。俺はクリーチャー界も人間界も赤坂火奈も、大好きなんだ。伝わるまで言い続けてもいい、俺はそう思えたんだ」

「ごめん、疑うようなこと言って…カイザー……」

 

夕哉がジャシンをデッキケースから取り出す。

「俺もさ。結構成り行きだったんだ。多分デッキケースを拾わずに普通に夕花のために頑張ってた可能性もあったんだろうけどさ、そうしたら今起きてることに気づかなかったと思う。ジャシンに乗っ取られかけたこともあったし、大変なことは色々あったけど、それに後悔してないよ。多分、火奈もカイザーも同じなんじゃないかな」

「ほう?なら今すぐ余に乗っ取られてもいいのか?」

「もう乗っ取られないって言ったでしょ?……前に御白と文明診断みたいなのやったんだ。実は俺の適性は火文明だったんだけど。闇文明一番向いてないんだってさ。でも、ジャシンと出会った。向き不向きとかじゃなくて、それが最善だったからじゃなくて、会った人を大好きになったからこそ、進めるんだと思う。俺も、アビスロイヤルの皆が大好きだし」

「ふん、いつ食われてもおかしくないな」

「ううん。皆、いいクリーチャーじゃん」

「………」

 

御白がその様子を見て、自分もと話し始める。

「私はドランさんと出会う前からデュエマ大好きでしたけど、夕哉くんとデュエマするようになって、ドランさんと出会って、もっと世界が広がったように見えました。できないことが、できるようになるように思えました。だから、自分のせいにしなくていいと思います。お互い、一緒にいたいと思うから一緒にいる、助け合うんだと思うんです」

 

「夕哉、御白ちゃん…」

そう言った火奈は最後の涙を拭った後、カイザーに語りかける。

「ありがとうカイザー、でもやれることは全部やる!その上でカイザーを助けるよ!絶対!」

「……そうだな、俺も、隠してすまなかった。ありがとう、人間達よ」

 

「なんか話してたけど終わっちまったのか?喧嘩でもあったのか?」

「ボクもぼうりんぐやりたいのに!!」

 

そのタイミングで飛水と緑が合流し、火奈は笑顔で告げる。

「ううん、お互いに優しくしすぎただけ。そうだ、皆でボウリングしよう!『クリーチャーの皆も一緒に』!」

 

そう言って5人で遊ぼうと言って、火奈は跳ねながらこう考える。

(もしお別れが近づいていたとしても、それは今を楽しんじゃいけないってことにならない。その時に悔いなくお別れするために、今を全力で生きるんだ。少なくともあたしは、そうしたい)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Side:夕哉

 

電話がかかってきた。その電話の主は、俺がこの旅を始めるきっかけになった、たった一人の妹だった。

 

「お兄ちゃん。今、大丈夫?」

「大丈夫、夕花は大丈夫?」

「うん。まだ痛むけど、カオスマントラさんに会う前よりは全然。もう少ししたら計画退院できるかもだって」

「……そっか」

 

「お兄ちゃん。前に置いてかれたら怖いって言ったじゃん」

「うん。言った。それが?」

「今は、それを考えないで済んでるって。言いたくて。御白お姉さんにカオスマントラを渡したら、少し寂しいんじゃないかって思ってた。またクリーチャーを、私の足を失うんだから。けどさ、本当は逆だった。私が、私の相棒が少しでも人の役に立ててるって思ったら、生きる気力が前よりも湧いてきたの」

 

夕花が嬉しそうに語るのを見て、俺も気づけば顔が綻んでいた。

「そっか。本当に良かった、御白も心配してたからさ。自分が夕花の切り札をお借りして良いのかって」

「うん。……正直、生きる気力無かったんだ。今までの自由が失われて、また怪我したりさらに悪化したりしたらって。怖かった」

「……俺は、夕花が苦しんでると思ったら自分が幸せになっちゃいけないと思ってた」

「「でも違った」」

 

言い出すタイミングも、言った言葉も被って、2人で一緒に笑う。

「夕花、先いいよ」

「うん。怪我して良かったなんて口が裂けても言えないけど、でもマントラに会って、お兄ちゃんと本音でぶつかって、御白お姉さんと出会ったりもできなかったんだから、後悔するのも違うなって、思ったの」

「俺もだよ」

「お兄ちゃん、頑張れ」

「……ありがとう」

「全部終わって私が退院したら唐揚げパーティーやろう!絶対!」

「うん、絶対元気で待ってる」

「じゃあね!また明日!」

 

絶対に、負けられないな。そう俺は心に刻み込んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

才縁高校は授業が多い分、少し登校時間が早い。そこで朝の8時丁度には集まっていた生徒達、その頭上に、あの機械の化け物が覆うように広がっていく。

 

「なんか空暗くねぇか?」

「うわぁなんだあれは!!?」

「先生!なんかとんでもないものが!」

「須谷…!買えば俺を巻き込まないんじゃなかったのか!」

 

そう言ってパニックになり始めたのも束の間、紫色のオーラが学校全体を包む。

 

「……あいつ、セレクションの時に足を引っ掛けて俺の邪魔しやがった…。なんで復讐しようと思わなかったんだ、今すぐに潰してやる…」

「おい、何あの化け物の前でそんなこと……。あの女子、俺ができなかった問題を易々と解いて俺に見せつけるようにドヤ顔してたな…!」

 

そのようにしてこの上なく小さなところから始まった憎悪はやがて大きな潮流となり、誰にも止められない復讐と怨嗟の大波へと変わっていく。人間達は皆暴徒となり、マイナスな感情に瞬く間に支配されていってしまう。

 

[やはりこの瞬間は極上だな]

 

「やっぱり、何回もこう言うことやってきたのぉ?」

 

[あぁ、小さい憎悪からやがて大きなコンプレックスとなり、それは絶対に取り返しのつかない恨みの連鎖となる。その前ではどんな文明も自滅し、全て塵と化す。いつ見ても最上の瞬間だ]

 

「なんか、面白くないなぁ」

 

[見ていればわかる。ここを拠点としてこの街、いやこの世界を覆い尽くす。この文明が崩壊する瞬間が、今から楽しみで仕方がない]

 

「ふぅん」

 

そう言って風音は学校の外に目を向ける。

「御白ちゃん。私のところまで来てくれるかなぁ」

 

そして夕哉に連れられた遥風の姿を確認した風音は、一段と機嫌が悪そうに呟く。

「……お姉ちゃん。今更、何しに来たの」

 

そう言って彼女は屋上から校内へと入っていった。戦いの火蓋は、もうすぐ切られるところまで迫っていた。

 




御白と!夕哉の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「ドラン・ゴル・ゲルス!」」
「クリーチャー側はあらゆるメカから革命チェンジできる5コスト!登場時にシールドを1枚ブレイクして、コスト3以下のメカを呼び出すことができます!」
「呪文側はシールドを追加してそれにシールドトリガーを与える。メガラストバーストがあるお陰でニンジャチェンジや革命チェンジで簡単に発動するね」
「仲間を呼び出すドランさんらしさをそのままに、攻めも守りも追加された私の新しい相棒です!」
「というわけで次回、『革命の狼煙』」
「「お楽しみに!」」
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