デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション)   作:シグレサメ

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飛水は操られた礼児とぶつかり、全力の勝負の末になんとか勝利を収めることに成功、COMPLEXの支配から解放する。その頃夕哉と御白は操られた風音の叔父、佐竹我煙と遭遇し、夕哉は御白を逃して彼の相手を引き受ける。彼の使うクリーチャーは、絶望神サガという遥か昔に強すぎて封じられたクリーチャーだった…!


絶望の輪廻、牢獄を壊して

 

「《絶望神サガ》は、早い話合計2枚を手札と墓地に揃えればゲームに勝つクリーチャーだ」

『はぁ?』

 

飛水がジャシンの言うことを心底信じられないという風に言葉を漏らす。

「ねぇ、ゲームに勝つって…?」

「奴は登場時に墓地にクリーチャーが3枚以上あれば1枚ドローして1枚捨て、コスト5以下のゴッドまたはオリジンを墓地から呼び出し、自身は破壊される。この意味がわかるか?」

「蘇生効果が、無限に使える…?」

「あぁ、それが奴の恐ろしい所だ。山札が切れるほどに自身を蘇生し、それで数々のクリーチャーを呼び出しそのターン中にゲームに勝つ。ゴッドリンクにより自身が無二の存在となるゴッドのあり方とは思えない、恐ろしい何かだ」

『いや、ありえねぇだろ、そんなカード…』

「実際ここにいるのだから、反論の余地もないだろう?」

『だけどよ…』

 

そう言った飛水の拠点から、着信音が流れてくる。

『飛水!中心点に到着した!ここからどうすればいい!?』

『火奈!分かったけどな…』

「行って、俺たちの目的は結界の破壊と風音を倒すこと!それに関われてない俺が飛水の手を煩わすわけにはいかないよ!」

『…大丈夫か?』

「うん、任せて」

『分かった、頼む』

 

そう言って飛水はドローンを飛ばすと、夕哉はその後に言葉をこぼす。

「大丈夫。だけど…」

「…怖気付いたか?」

「うぅん。そんな強いデッキと戦えるなんて、またとないチャンスだから。それもあるし、あの人のことも気になる。風音の叔父さんなのに、なんで今操り人形になってるんだろう…」

「それを気にするか?奴はどうでもいいだろう?」

「どうでも良くない!助けられる人は助けないと!」

「………。フン、勝手にしろ」

 

佐竹我煙(さたけ がえん)とサガが、何かを察したかのようにデッキを構える。

「……行くよ、ジャシン!」

 

「デュエマ、スタート!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「呪文、《「倒したいか?」》!1マナ加速!ターンエンド!」

「ジュモン」

「エマージェンシー・タイフーンか。上面にクリーチャーがいるため、墓地にクリーチャーが2枚だな」

「じゃあもうサガを呼び出す準備ができてるってこと?」

「そうなるな」

「ターンエンド」

 

「俺のターン!呪文、4マナで《「力が欲しいか?」》アビスメクレイド5を行う!来て、《ア:エヌ:マクア》!登場時に佐竹さんの墓地を全てシャッフルして、山札に戻す!ターンエンド!」

(本来マナ加速&回収効果や、テレスコを使うことで手札を増やすのも選択肢なのに、揃ったら負けるって言うプレッシャーもあってこう動かざるをえない…。これが封印されたクリーチャーの力なのか…)

 

「ジュモン」

「《ローレンツ・タイフーン》。2枚引いて1枚捨てるクリーチャー付きの呪文か。またもリーチというわけだな」

「ターンエンド」

 

「俺のターン!」

「このまま手札の減らない呪文に対して手札を使ってても埒が明かない、ア:エヌ:マクアはデッキに4枚しか入ってないし…」

 

そう言って夕哉は意を決する。

「ここで勝負に出る!《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》!相手の手札を見て、クリーチャーを1枚捨てさせる!絶望神サガを墓地へ!」

「だが墓地に送った程度では対処になっていないぞ?」

「分かってる!マクアでシールドに攻撃する時革命チェンジ!行くよ!《アビスベル=覇=ロード》!!」

 

佐竹 シールド3

夕哉の意を決した1撃が、佐竹のシールドを揺らす。

「シールド、トリガー…」

「エマージェンシー・タイフーンに、《「迷いはない。俺の成すことは決まった」》!?この踏み方って…!?」

「フン、カクメイジンと契約した小僧が言っていたとびきりの運は、こいつに移されたようだな?」

「奪って、与えて…。そんなに好き勝手…!」

「イキカエル」

 

そう言って佐竹は絶望神サガを墓地から呼び出す。

「不味い、さっき手札を確認した時には1枚だったけど、このドローで引かれたら…!」

「ドロー…。イキカエル」

 

佐竹が呼び出したのはサガではなく《蒼狼の大王 イザナギテラス》。

「サガヲ、ハカイ。5マイミテ、1マイ…。サラニ、ジュモン…」

「2枚目のサガに、ローレンツタイフーンで手札を整えられた。どうするのだ夕哉よ」

「次は4マナ、まだ1ターンで負けはしない!覇ロードのターン終了時能力マナから《邪幽 ジャガイスト》をバトルゾーンに!マクアと《ア:グンテ》を捨てて、アビスメクレイド5を行う!《謀遠 テレスコ=テレス》をバトルゾーンに!山札からクリーチャーが出た時、ジャガイストの連鎖蘇生効果で、墓地からそのコスト以下のア:エヌマクアをバトルゾーンに!再度墓地をリセット!」

 

「マタ、ボチガキエタ…」

「成程、確かに余を着地させれば一気にマナと墓地をリソースにすることができる。多少シールドブレイクの負担を背負ってでも取りに行ったというわけか」

ジャシンの関心を他所に、夕哉は佐竹を見据える。

(さっきから、ずっと感情が見えない…。飛水が操り人形みたいなものって言ってたけど…)

 

「そっちのターン開始時、テレスコ効果で1枚ハンデス、1枚ドロー!」

「イザナギテラス…」

(なんかさっきより言葉が喋れるようになってる?それなら…)

「ローレンツ・タイフーン…。ターン、エンド」

 

夕哉はここで、

「佐竹さん!風音に利用されてないで、自分を取り戻して!」

「カゼネ…?タスケル…?」

「はい!だから…」

「タスケル…。アイツヲ…?キミハ、スゴイナ…」

 

佐竹の放った初めての言葉らしい言葉に、夕哉は喜びを露わにする。

「それは、経験値です。余裕で勝てた勝負なんてないし、自分に才能があるなんて…」

「ソレガアッタラ、アイツモスコシハマシダッタノニ」

「………え?」

 

夕哉は全身から熱が引いていくような感覚を味わう。絶対に聞きたくなかった言葉を、今目の前で放たれて、動揺する。

「アイツハ、ナニモデキナイ。ソンナヤツヲタスケタ所デ、ナニニナル?セッカクヒロッタノニ、アイツハ何ニモナラナカッタゾ?」

「…何を言ってるのか、分かってるんですか…?」

「…ハァ?ミトメラレルコトガ至高、ソレガイキル意味。ソレガナイモノハ、惨めナオモイヲスルダケダゾ?」

「……何言ってるのか、分かってるのかって言ってんだよ!!」

 

夕哉は感情のまま、デッキからカードを引き抜く。

「俺のターン!《ドミー:ゾー》を5マナでアビスラッシュ!ドミー:ゾーでイザナギテラスに攻撃!さらに覇ロードでシールドをWブレイク!」

「おい待て夕哉!リスクあるブレイクを重ねるな!」

「大事な人であるべき人から存在を否定されて、それがどれだけ辛いことか、どれだけ人を傷つけるのか!!」

 

その夕哉の叫びは、佐竹には無情にも届かない。

佐竹 シールド1

「シールドトリガー」

「《終止の時計(ドゥームズデイ) ザ・ミュート》だと!?攻撃が止まるぞ、夕哉よ!」

 

そこで自分がしでかしたことを認識した夕哉は、動きが止まる。

「俺、なんてことを…」

「イイ直ソウ、オマエモ無能ダ。アイツモスグアツクナル割二、何モデキナイデキ損ナイダッタ。須谷家ダッタカラ養子二シタノニ。金モカケタノニ。ナニカノ方法デ才縁高校にハイッタト思ッテイタガ、マサカ才能ヲ奪イトッタナンテナ。ソレナラソウト言エバ、ワシモソレヲツカッタノニ」

 

佐竹のその言葉に、夕哉は絶句する。

「……腐ってる…」

「COMPLEXの洗脳を、こんな方法ですり抜けるとはな。人間のマイナス感情に反応して強くなるのだから、そのマイナス感情が振り切っていれば洗脳を振り切れるのだろうな」

「……ターン終了時、覇ロードの効果で墓地からテレスコ=テレスをバトルゾーンに。ターンエンド」

 

「今ノワシハツイテイル!コレナラカンタンニ勝テルンジャナ!」

「そうはさせない!テレスコテレス!頼む!」

 

そう言って夕哉が落としたカードの中に、絶望神サガはなかった。夕哉は力が抜け、座り込む。

「そんな…。じゃあ、ここで3枚目を引かれたら…」

「ハハハハハハ!ドロー!呪文!エマージェンシー・タイフーン!コレデ2枚目ヲヒイテ終ワリダ!コレデコノ才能ハ……!」

 

そう言った佐竹の動きが、ぴたりと止まる。

「何故、ヒケナイ!?コンナニカードヲ引イタノダゾ!?絶望神サガヲ召喚!ナゼ、引ケナイ!!?」

 

今度はジャシンが高笑いする。

「…こんなニンゲンは初めて見たぞ!まぁカゼネに無理矢理引き合わされたのだから当然と言えばそうだろうな!」

その様子を見ていた夕哉が、ジャシンに尋ねる。

「ねぇ、何が起きてるの…?」

「ニンゲンとクリーチャーの契約を奴は出来なかったようだな。契約には契約の言葉も必要だが、安全弁のためにお互いにそいつを利用する価値があると思うことも必要なのだ」

「ジャシンにとって俺は、完全復活のために…ってこと?」

「あぁ、お前の周りのニンゲン達は信頼や仲間とやらで繋がっているアレだ。そしてこの人間は、最初から最後までクリーチャーにメリットも提示せず、自分のことしか考えなかった愚か者だ。その人間がどうなるか。それは…」

「契約の意味が、なくなる…?」

 

ジャシンは再度、佐竹に見せつけるように高笑いする。

「ハハハハハハ!そうだ、奴は絶望神サガに、この人間に自分を復活させる価値はないと切り捨てられたのだ!だから幾ら才能を積み重ねようと、その運が巡ってくることはない!3枚目ののサガは1回目のイザナギテラスで『捲ってしまった』カードだ、もう1枚サガがあったから回収出来なかったのだな。そしてもう1枚は…」

「ソンナ訳ガナイ!オマエゴトキニ分カルワケガ!」

「3枚目の在処は当たりらしいぞ、夕哉よ。あとは分かるな?」

「俺のターン!ドミー:ゾーをもう1体アビスラッシュして、ジャガイストでシールドを攻撃!」

 

佐竹 シールド0

ジャガイストがブレイクしたシールドは、《絶望神サガ》。サガはその瞬間、佐竹の元から離れて、見放したように深い闇の中へと還っていく。

「ソンナ、馬鹿ナ…!」

「本当に、危なかった…!アビスベル=覇=ロードで、ダイレクトアタック!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

佐竹を外に連れ出すのをシスに任せて、夕哉は教室の机にデッキを広げ椅子に座っていた。

 

「小娘を追いかけないのか?夕哉よ」

「ごめん、5分だけデッキ弄らせて」

「ニンゲンとはそんなものだ。一皮剥ければ自分のことしか考えない」

「……そんなことない。そう、信じたいよ。俺が会ってきた人達は、色々な考え方があったけど、戦ったりもしたけど、皆誰かのために戦う人だった」

 

ジャシンは嘲笑うように夕哉に顔を近づける。

「カゼネに会うのが怖いのか?」

「……正直そうだよ、もしこれで、皇心達を駒としか思ってなかったらって、そう思う」

「フン、それでもデュエマで倒すことには変わらないだろう?」

「そうじゃないんだって。デュエマで戦うのはただ自分を押し通すだけじゃないって、そのはずだから」

 

そう言って遠くを見る夕哉に、ジャシンが1枚のカードを差し出す。

「これ、何?」

「正直、COMPLEXを『完全に倒す』にはボルシャックやゴルギーニでは厳しいものがあるだろうな。もし倒し損ねれば、カゼネの強烈なマイナス感情で、再度復活する可能性の方が高い。そうやって君臨されては、余としても不本意だ」

「………」

どこまで信頼できるか分からないジャシンの言葉を、夕哉は静かに聞く。

 

「これは余の最強の力だ。お前の先程の戦いでの闇を利用して、短時間なら出せるようになった。このカードを使えば、COMPLEXを葬れる可能性がある」

「……少し、考えさせて。これを使ってもし俺が闇に呑まれたら、どうなるの?」

「勘がいいな、余の完全復活だ」

 

夕哉は大きく息を吸った後、そのカードを手に取る。

「そっか。じゃあ大丈夫。絶対に見失わない」

「説得力がないぞ?大丈夫なのか?」

「皆、頑張ってくれてる。御白は俺が追いついてくるって、信じてくれてる。だから、負けられない。だから、やらなきゃ」

 

夕哉はデッキのメンバーを入れ替え、席を立つ。

「お前のそれも、信頼やら、仲間やら、か?」

夕哉は意を決したようにこう返す。そこに先程までの迷いはない。

「うん」

「面白いな。サタケもかなりの愚か者だったがお前はそれ以上の愚か者だ。何故そこまで人を信じる」

「俺の今までは、色んな人に支えられてできてるんだ、一人で戦うなんてできなかったと思う。だから信じたいんだよ」

「典型的な性善説か。本当に愚か者だな」

「好きに言いなよ。今度は、絶対に負けない。皆のためにも、俺の大好きなクリーチャー達とまだ一緒にいるためにも」

「フン、余も巻き込むか。勝手にしろ」

 

夕哉は教室に一礼した後、扉を開ける。渡したカードを受け取ったことに一度笑みを浮かべたジャシンは、大人しくカードの中に戻って行った。

 




夕哉と!火奈の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「絶望神サガ!」」
「出た時に1枚ドローした後に1枚捨てて、クリーチャーが墓地に3枚以上あったら5コスト以下のゴッドまたはオリジンを墓地から踏み倒せるんだ」
「自分から自分が出るから簡単に同じ状況、ループが続くまさに禁じられたカードだね」
「色々な勝ち方があるらしいけど、どれもまさに一撃必殺。正直負けてたと思う……」
「というわけで次回、『照らした先にあるものは・前』」
「「お楽しみに!」」
「火奈、頑張れ!」
「うん、今度は絶対に!先輩に負けない!」
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