デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション) 作:シグレサメ
Side:士穂
子供の頃から陸上が好きで、中学生になって部活に入って、私はすぐに存在感を示した。最初はひたすらに速くなればその分だけ楽しくて、私はこのために生まれたんじゃないかと思ってた。先輩も優しくて、幸せだった。
中学2年生、後輩が入ってきた。一人凄く不器用で遅い子、燈(あかり)がいて、私が自分から様子を見ていた。彼女は少しずつだけど早くなっていって、それを見るのが毎日楽しくて。そのようにやっていくのが私に陸上とまた違う気持ちを与えてくれた。
問題を起こしたのは他の後輩だった。部内で一番速い私が目をかけているのを見て嫉妬したのが始まり。それが私が速いことに気に食わない先輩も来て、皆で私とその子をいじめ始めた。
「ごめんなさい、先輩…。私この部活辞めます、ごめんなさい…」
夏休み前、その子は部活を辞めた。目標のタイムまであと0.2秒だった。間違いなく才能が開花し始めていた。人間の勝手な気持ちによって潰された。それに対して私は、これから絶対にそんなことを起こさないように誰とも関係を構築しなかった。
「朱野先輩!私、どうやったらもっと早くなれますか!?」
火奈がやってきたのはその次の春。問題の先輩もいなくなって、あの後輩も追い出されたから2年生も表面上は何も言わなかった。そんな中、火奈は私に何度も話しかけてきた。
「先輩がこの部活で一番早いんですよね、だったらあたしもなりたいんです!先輩に追いつけるくらいに!」
燈には勝てないと思った。走りを見ても、彼女のような才能はない。自分がすぐ燈と比べてしまうのを感じて最初は火奈と距離をとっていたけれど、それでも彼女は私に食らいつき続けた。
「先輩、陸上って楽しいですね!」
久しく感じたこともなかったような言葉が火奈から飛び出した。
「なんで、そう思ったの?」
「そりゃ、毎日トライアンドエラーをして、それを見てくれる先輩がいて!自分がしたいことできてるなぁって!」
「見てくれるって、火奈の押しが強いからでしょ」
「でも!見てくれてるじゃないですか!」
燈のようなことが起きないように、結局心を許すことはできなかった。一応才縁高校に入るように勧めたけれど、結局行った先は自分が一番嫌いな空間。人と人が、人間の悪意をじりじりとぶつけ合う世界だった。先生すらもそれに参加してるようであった。
絶望した。せめて火奈がいればとすら思った。私は依然としてそこでも一番早かったけど、それを見る目は前よりも酷かった。燈や火奈がいればなんて、何度思ったことか。
オーブの噂を辿って、アルテナに辿り着いた。まさか目立って好成績でもない須谷さんがと思ったけれど、その後すぐに才縁高校の考え方に染まっている自分を恥じた。
「須谷さん、これがあれば、私は後輩を守れるんだね」
「できるよぉ。それで何するつもり?」
「私は、私達が高めあえるだけの世界が欲しい。後輩達を集めて。一緒に走るの。そしてそれを、私が守る」
「へぇ。面白いねぇ」
私は自分の世界を守るために汚いものを全部請け負うことを約束した。そうして火奈達が来れば、私達には理想の空間ができる。そのはずだったのに…
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火奈 シールド0 マナ6
《ボルシャック・マンリキ・ドラゴン》、《竜皇神 ボルシャック・バクテラス》
士穂 シールド4 マナ4
クリーチャー
《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》、《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弍天」》×2、《時の法皇 ミラダンテⅫ》、《音響の精霊龍 ラフルル・ラブ》
クロスギア
《竜装 ゴウソク・タキオンアーマー》、《竜牙 リュウジン・ドスファング》×2
春風のような温かい空気が、火奈と士穂を包む。
「嫌よ、私は守られたくなんかない、寧ろ守らないと、私の居場所を…!」
「居場所を守りたいのは、あたしも同じです!ボルシャック・バクテラスの登場時効果発動!山札の上から4枚を見て、その中のアーマードを全てバトルゾーンに呼び出す!」
ボルシャック・バクテラスが取り出した火球の中から、数々のアーマードが飛び出してくる。
「《ボルシャック・ヴォルジャアク》!《アシステスト・インコッピ》!《飛ぶ革命 ヴァル・ボルシャック》!《輝く革命 ボルシャック・フレア》!」
「火奈…!?火奈……!」
「これまで守ってくれてありがとうございます、でも守ってもらってばかりだと、いずれあなたの太陽が燃え尽きる。だから対等になるって、助け合うって、そう決めました!ヴォルジャアクの効果でシールド追加!インコッピの効果でドロー!ヴァル・ボルシャックの効果で武者ムサシ2体をタップ!そして、ボルシャック・フレアでヴァルキリアスを攻撃!」
火奈 シールド1
「そんな…」
「皆行くよ!ヴォルジャアクでラフルルラブを攻撃して破壊!ヴァル・ボルシャックで武者ムサシに攻撃する時、ボルシャック・ヴォルジャアクの2体目と革命チェンジ!」
火奈 シールド2
「どれだけシールドを増やすつもり…!?」
「ボルシャック・マンリキドラゴンで武者ドラゴンを攻撃する時ボルシャック・フレアの2体目と革命チェンジ!撃破!」
「場に残ったのは、ミラダンテⅫが1体…。でも、ここから過剰展開で勝ち切れる!私は、負けるわけにはいかないの!」
「ボルシャック・バクテラスの能力。自分以外のアーマード全てにスピードアタッカー、ブロッカー、ターン終了時アンタップを与える!ターン終了時、バクテラス以外の全てのアーマードがアンタップして、ブロッカーを獲得する!」
士穂はカードを引き抜く。そこに何か打開のカードがあると信じて。
「……私は守るの、自分の世界を!私は手に入れるの!誰も傷つかない世界を!ドロー!アシスターコッピを2マナで召喚!」
「ボルシャック・フレアの効果で1体目に出るクリーチャーはタップインになる!」
ボルメテウス武者ドラゴンをコッピとタキオンアーマーで軽減して2マナで召喚!手札から《龍装 ザンゲキ・マッハアーマー》を侍流ジェネレート!」
「ヴォルジャアクでシールドを2枚追加!」
火奈 シールド4
「リュウジンドスファング2枚とタキオンアーマー、マッハアーマーをクロス!パワー7000、攻撃時に2回メクレイドする!シールドに攻撃!ボルメテウス・武者ドラゴン、《爆炎ホワイトグレンオー》をバトルゾーンに!シールドをブレイクしてインコッピを破壊!」
士穂 シールド3
士穂は勢いよくシールドを引き抜き、まだ終わっていないとばかりにその呪文を叩きつける。
「シールドトリガー、《極閃呪文「バリスパーク」》!相手クリーチャーを全てタップした!あなたを守るブロッカーはいない!シールドをブレイク!」
火奈 シールド3
「ぐうっ!トリガーなし!まだまだぁ!」
「武者ドラゴンでWブレイク!」
火奈 シールド1
「シールドトリガー、《光鎧龍 ホーリーグレイス》!相手クリーチャーを全てタップ!!」
士穂の頭に叩きつけられた逆転の2文字に、士穂は腕をフィールドに持たれかけ、力なく宣言する。
「……ターンエンド」
「あたしのターン。先輩のことは信用してます。凄い人だと思ってます。だから知りたかった、なんでこんなことをしたのか。少しでも知りたくて中学の先輩に聞きました。知らなかった、先輩が傷つくような出来事があったなんて。先輩は、あたしを知らないうちから守ってくれてたんですね」
「なんでそれを…。聞いてもあなたにいいことなんて」
「なくてもあっても、あたしにとって先輩の辛さを分け合えるならそれで十分です」
「火奈…!」
ヴォルジャアクが力を蓄え、バクテラスと共に光り輝く。
火奈 シールド0
「ボルシャック・ヴォルジャアクの終極宣言。シールドを全てブレイクして、あたしは次のあたしのターン開始時までゲームに敗北しなくなる」
「……私は、私は、なんで…!?」
(それを自分一人で受け止めようと思ったんだろう)
「《ボルシャック・ガラワルド》をクリーチャー数だけ軽減して1マナで召喚!ヴォルジャアク効果でシールドを2枚追加して、登場時能力でミラダンテⅫとバトル!ボルシャックフレアの各ターン初めてのバトルに勝利する効果で突破!さらに武者ドラゴン攻撃する時、ホワイトグレンオーとバトル!武者ドラゴンにも攻撃して破壊!」
「火奈、本当に…」
(私は、誰かに…。ううん、大好きな誰かに…)
火奈 シールド2
「ヴォルジャアクで武者ドラゴンを攻撃!バクテラスで、シールドをTブレイク!」
(大丈夫だよって、言ってもらいたかっただけだったんだ)
士穂 シールド0
「なんて、優しい光…」
「ボルシャック・ヴォルジャアクで!ダイレクトアタック!!」
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士穂が倒されたことで才縁生達が統率を失い、傾れるように動き出す。
無軌道に動き出した群衆に、士穂はそれを止めようとするがボルメテウスは敗北により力が切れており、統率が効かない。そしてその群衆に士穂が呑まれると思われた時…。
「士穂さん!大丈夫ですか!?」
「…火奈、助けてくれたの?」
ボルシャック・バクテラスが身体を輝かせ、群衆のマイナス感情を優しく焼いていく。なぜこんなことをしているのだろうと我に帰った人間達は、警察や飛水の誘導で急いで結界の外に出ていく。
「士穂…さん。やっぱりせめてさん付けですね」
「なんで助けたの?なんで…」
「士穂さんは、あたしのヒーローってことに変わりはありません」
「ごめんなさい、火奈。……私ってなにしてたんだろ。勝手に人を選んで、それだけ助けるなんていう自分勝手なことして…」
「それは、絶対に許されないことだと思います、でも、それでも、先輩を助けないのは違うと思ったんです」
ボルシャック・バクテラスが天へと昇り、優しく校内に向けて太陽の光を浴びせていく。正気に戻った生徒達が次々と学校から出ていくのを、士穂は寂しそうにみていた。
「火奈の相棒、凄いね」
「はい、あたしの最高の相棒です!」
火奈は少し考えた後、この言葉を士穂にかける。
「士穂さん。一回走りませんか?」
「……え?」
「100m1本でいいので!お願いします!」
「でも、私はクリーチャーを失った、ここに長くは居れない」
「お願いバクテラス!士穂さんの分も助けてくれる?」
「分かった、火奈が言うのなら」
そう言ってバクテラスは士穂に暖かい光を与える。
「行きますよ!士穂さん!」
「俺がスタートの合図をしよう」
「ありがと、バクテラス!」
「え、その、嘘、本気でやるの!?」
「はい!本気の本気で!先輩に勝って、あたしは大丈夫って証明するんです!」
二人はクラウチングの姿勢に入り、腰を上げる。
「一について、よーい!」
バンとバクテラスの手の中で火球を破裂させたのを合図に火奈と士穂は同時に走り出す。勿論あの競争から、そんな短期間で火奈が士穂を抜くなんてことはできない。しかし火奈は全力で、士穂の斜め後ろを走り続ける。そして士穂は、一瞬後ろからついてくる火奈について考える。
(前に会った時より速くなってる!私の前に出られるはずないのに、なんでこんな怖がってるの!?)
『だからあたしが先輩に負けることに、自分が負けることに、少しの疑いもない。だからそう言うんです』
火奈の言葉を思い出してしまう。自分が火奈のことを下に見て、一方的に守るべきと断じていたことを嫌でも分かってしまう。士穂の足を進める速度が、少し鈍ってしまう。そう思うと怖くなって、士穂の足を進める速度がさらに緩まる、そんな時…。
「先輩に勝って…!安心してもらう…!」
火奈の声が、横から聞こえてくる。
「……私が手を抜いちゃ、ダメ…!!」
絶対に足を止められない。止めてはいけない。彼女は体験したことないほどの風を感じる。バクテラスが産んでいるその暖かい風が、士穂の魂を奮い立たせる。
(これで私が手を抜いて勝っても、火奈は絶対嬉しくない!!)
ゴールテープを先に切ったのは、朱野士穂。
「ハァ、ハァァ、負け、た……!」
「火奈大丈夫?スポドリ取ってくるから。ちゃんと昔教えた風にクールダウンしてね」
そう言い切る前に火奈が歩きながら(短距離走から急激に止まると危険であるため)自分の教えた通りに動いているのを見て、士穂は思わず笑顔を溢す。
「士穂さん、スポドリ幾つか持ち歩いてるんですね…」
「当たり前でしょ?私先輩なんだから……あ」
「やっぱり!」
「やっぱりって、火奈、ちゃんと持ってきてたの?」
「持ってきてますよ!熱中症とか脱水症状が一番大変ですから!」
「でも、やっぱり皆を大事にしてくれてるんだなって」
火奈のその笑顔に、士穂は笑い返す。
「ごめん火奈。簡単には、償えないことだけど」
「大丈夫です。でも、早く帰ってきてください」
「約束できないけど…。でも、待っててくれる?」
「はい!!」
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その頃御白は高校中を走り回り、遥風と一緒に風音の場所を探していた。しかし学校中を探しても彼女は見つからず、お互いに疲弊していた。
「遥風さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫です、御白さんこそ、息が上がっていませんか?」
「そりゃあ、オタクは運動不足なんですよ…」
そう言って御白が持ってきた飲み物を開けていると、学校中に放送が響き渡る。
『光屋御白さん、職員室に呼び出しでーす』
「今のって…、風音さん!?」
「御白さんだけを呼び出していましたね……」
「他に誰も来ないでとは言ってませんよ!行きましょう遥風さん!」
そう言って職員室への廊下を上がると、まだバクテラスの影響を受けていない生徒がいたのか20人ほどの生徒が列をなして御白達を待ち構えていた。しかしその列は統率をもって左右に開き、御白達の道を作る。
「御白ちゃん、待ってたよぉ」
「風音さん、なんで場所が割れるようなこと…」
「確かに私はずっと逃げ回っていれば勝ちだった。でも御白ちゃんとは決着つけたくてさぁ」
そう言って風音はCOMPLEXの腕だけを呼び出し、御白を掴んで自分の側に引き寄せる。
「御白さん!!」
「お姉ちゃん、邪魔」
そう言ってもう一本の腕が遥風に向かうが、初撃をカードから飛び出したジャブラッドがいなし、御白を掴む腕を千切ろうとする。
「あぁ、お守り付きだったんだ、でも黒井夕哉の詰めの甘さなら」
そう言って風音は御白とジャブラッドの間に生身の人間を割り込ませ、ジャブラッドの動きを止める。狭い廊下、ジャブラッドの周りに人間が取り囲み、ジャブラッドは動けなくなってしまう。
「やっぱり人間を襲えないようにロックかけるよね。こういう時に利用されるだけなのにねぇ」
「夕哉さんを、御白さんを馬鹿にしないの!風音!」
「偉そうにしないでよお姉ちゃん、貴方はもう関係ないって言ったでしょう?」
そう言って風音はCOMPLEXによるワープホールを呼び出し、そのまま遥風にトドメを刺そうとする。そしてCOMPLEXの腕が遥風を貫こうとするその直前…。
「ファー!詰めが甘いのはそっちの方だぜ!」
ゴルファンタジスタが割って入り、腕を自分ごと壁に激突させる。
「はるかさん!早くワープゲートに入って!」
「緑さん!!」
「早く!ボク達じゃ抑え切れない!」
「……はい!!」
遥風は御白を持った風音に飛びかかり、一緒にワープゲートの中に入っていく。後に残されたのは、緑とまだ操られている才縁生のみ。
「ひすい!カクメイジンの力でかぜねがどこに行ったのか調べて!ボクはこの人たちをバクテラスの光が当たるところに誘導する!」
『分かった、夕哉聞こえてるか!?』
「うん、とりあえず学校の外…。今ジャブラッドが戻ってきた!ねぇ飛水、風音がいる元の場所って多分、学校とかの状況が確認できる場所だよね!?」
『あぁ、でもそんなの探せばいくらでも…』
「全部片っ端から探す!御白がいるならデュエマしてる可能性もあるからとびきり間違いじゃないはず!」
『おま、…はぁ。分かった、正確な位置が分かったら送る。学校の中ならともかく、外でデュエマしたら絶対目立つだろうしな、緑は火奈と学校を頼む』
「了解だよひすい!」
「ありがとう飛水。絶対に、間に合わせる!」
火奈と!御白の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「竜王神 ボルシャック・バクテラス!」」
「コスト7以上の多色ボルシャックから革命チェンジできる強力なクリーチャー、出た時に山上4枚からバクテラス以外のアーマードも呼び出せるよ!」
「更に他のクリーチャーにスピードアタッカーとブロッカーを与えます!まさに皆の背中を押す、優しい太陽ですね!」
「というわけで次回、『境界線に伸ばした手・前』」
「「お楽しみに!」」
「御白ちゃん!頑張ってきて!」
「任せてください、火奈ちゃん!」