デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション) 作:シグレサメ
Side:御白
「ぐうっ!」
肩に痛みが走り、私は地面に叩きつけられます。どうにか起き上がって周りを見回すと、私がいる丘の下に皇龍高校、才縁高校の2つが見えます。おそらく皇龍市のどこか、見晴らしのいい場所に飛ばされたのでしょう。
「遥風さん!」
近くで横になっている遥風さんを見つけて体をゆすると彼女はパチリと目を覚まして起き上がります。
「御白さん、ここは…?」
「わからないです、通信機器もここに来る際に壊れてて…。でもあれ見てください!」
私達が見たものは、紫色の結界がどんどん狭まっていく様子。そして学校の外に人の波が出ていくのを確認することができました。
「火奈さんは、成功したみたいですね」
「はい、あとは…」
「ねぇ、なんで来たのお姉ちゃん?」
「風音、これ以上は私も看過できない。私は姉としてあなたを引き止めないといけない」
「お姉ちゃんが偉そうにねぇ。クリーチャーを人から借りなきゃここまで来れなかったのによくいうよねぇ」
「そんなこと言わないでください!遥風さんはずっと風音さんのことを心配していました!だから…」
「でも仕事を、自分を優先した。逃げ出すみたいにね。私が叔父さんに受けたことも知らないんでしょ?」
そんなこと言っていけないと言おうとする私をを遮って、遥風さんが風音さんに向き合います。
「恥ずかしいけど、学校であなたと会う前、夕哉さんからの連絡でそれを知った。それは言い訳のしようもないし、こんなになるまで風音を放っておいた責任もある。だからこそ、私は風音に会いに来たの」
「……はぁ?」
「風音を止めないと、色んな人がCOMPLEXの被害に遭う。才能を取られる人が大勢出る。それを実の妹がやってるんだから、止めなきゃいけない」
退屈そうに遥風さんの言うことを聞いていた風音さんは一度大きくあくびをして、
「話にならないよ。そのために御白ちゃんに頼るってことぉ?結局それじゃあなたは外野から見てるだけじゃん」
「そんなことありません!遥風さんが話すための時間を私が稼ぐんです!私がデュエマで勝つことで!」
「ふーん。成程、じゃあ1戦しようか。まぁ御白ちゃんに負ける気はしないけどね」
「こちらこそです、絶対に風音さんを止めます!」
「「デュエマ、スタート!」」
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風音がCOMPLEXに命じて闇の結界でその丘を包もうとする。それを見た御白がすぐに遥風の手を掴み結界の中に引き入れると、風音は舌打ちをしながらもオーラの中に迎え入れた。
「マナチャージ、ターンエンドです」
「マナチャージ、《DARK MATERIAL COMPLEX(クラヤミノコンゲン コンプレックス)》を1マナで召喚」
「それが、COMPLEXのカード…」
「効果は皇心から聞いてるでしょ?クリーチャーが場から離れるかターンの初めが来るたびに1つずつ溜まっていって、8になったら爆発。わかりやすくていいよねぇ」
「……本当に、それに頼る以外の道はなかったんですか」
「ないねぇ、絶対に」
「確認します。夕哉くんが言ってた、佐竹さんに色々酷い目に遭ってたかもしれないというのは本当ですか?」
「本当だよぉ、やっぱり叔父さんを操り人形にして連れてきたのは間違いだったなぁ」
「そんなことありません、お陰で少し風音さんのことが分かります」
「ふふ、やっぱり御白ちゃんは面白いよねぇ」
「私のターン!《星姫機 エルナドンナ》を2マナで召喚です、ターンエンド!」
COMPLEXカウント 1
「私のターン開始時、COMPLEXのカウントが1つ進む。マナチャージしてターンエンド」
「私のターン!《アシステスト・アルデッド》を召喚!登場時効果でメカがいるので1ドロー!エルナドンナでシールドを攻撃する時革命チェンジ!行きますよドランさん!」
「はい、御白さんの、デュエマ部の勝利のために!」
「革命!」「チェンジ!」
御白 シールド4
「《ドラン・ゴル・ゲルス》の登場時効果でシールドを1枚ブレイクして、手札からエルナドンナをバトルゾーンに、シールドをブレイクします!」
「革命チェンジしたことでエルナドンナが一度場を離れてるから、COMPLEXのカウントが進むよぉ」
ドランが足の車輪を回転させながら、風音のシールドに回し蹴りを放つ。
COMPLEXカウント 2
風音 シールド4
「シールドトリガー、《不埒な再侵入(プラチナ・ハッキング)》。ドラン・ゴル・ゲルスを破壊」
「エルナドンナの効果発動、シールドを1枚手札に加えることで、他のクリーチャーへの除去を無効化します!」
御白 シールド3
「へぇ、次は気をつけよぉ」
(除去の被害を最小限に抑える除去耐性持ちでリレーしてくる成長革命チェンジかぁ。厄介なの持ってくるなぁ)
「ターンエンドです!風音さん、なんでそんなに才能を集めるんですか?才能を奪うこと自体も許せませんが、なんでそんなことをするのか知りたいのも本音です!」
「そりゃあさ、自分が強化されて他が弱体化するならこれ以上ないことじゃん、味方を強化する光と敵を妨害する闇を使うあなたと一緒だよぉ」
「そんなことありません、人を実際に踏み躙ってはいけないです!」
「踏み躙ってきたのは叔父さん達のほうじゃん。なんであの人たちはやってよくて、私はやっちゃいけないの?」
「風音、被害者の反撃も、正当防衛を超えてしまえばただの凶悪な加害者になるの、わかっているはずよね」
「分かってるよぉ、お姉ちゃん。でもさ、そんな世の中おかしいじゃん。だからその不条理な世界ごと変える。そうすれば皆幸せになるよ?」
「そんなの、才能を持っている人と持っていない人の差が広がるだけじゃないの!」
「うん、でもさ、結局は皆私とCOMPLEXに心を明け渡した人に変わらない。それを生かすも殺すも私次第。そうやって私が管理すれば、この世から可哀想な人はいなくなるんじゃない?」
「風音さん、そんなことを…」
風音の考え方を聞いて、御白と遥風は戦慄する。そして御白がすぐに言葉を返す。彼女にこの道を進ませてはいけないと、強く確信を持ちながら。
「それは、ただ自分がどうなるか分からない恐怖に塗れただけの、恐ろしい世界ですよ!!」
「ふーん、そう感じるんだ」
COMPLEXカウント 3
「私のターン。《終止の時計 ザ・ミュート》を3マナでバトルゾーンに。カードを2枚引いて1枚捨てる。捨てるカードは《奇天烈 シャッフ》。ターンエンドだよぉ」
「風音さん!1人で自分勝手に進んだ道は基本的に破滅の道です、大事なことを全部1人で決めてたら、間違えた時に誰も声をかけてくれなくなる!誰も助けてくれなくなりますよ!!」
「自分勝手って言うのは、他に見ている誰かがいる場合の話でしょ?私には沢山の才能がある。沢山の見聞がある。その周りには、人はいない。何も問題ないよ、御白ちゃん」
「大有りです!そんな世界、絶対に寂しいですから!私のターン!アルデッドの効果でメカの使用コストを1軽減!《警鐘の聖沌 n4rc0(ナルコ)》、エルナドンナの2体目を合計3マナで召喚!ナルコの効果で、山札の上から5枚から《富轟皇 ゴルギーニ・エン・ゲルス》を手札に加えます!行きますよドランさん!」
ドランが風音のシールドに向かって走り出すと、空からドランの先祖が幾千年の時の壁を越えてやってくる。
「お願いします、ご先祖様!」
「行きましょう、再びCOMPLEXを倒すために!」
「革命!」「「チェンジ!!」」
ゴルギーニ・エン・ゲルスが地上に降り立ち、眩い光で風音は怯む。そして壺の状態のCOMPLEXだけが、恨めしそうにその天使を見据えていた。
「エン・ゲルスさんで!シールドをWブレイク!!」
COMPLEXカウント 4
風音 シールド2
「トリガーなし…。ふぅん」
「これ以上のリスクは負いません、ターンエンドです!」
風音はカードを引き抜く前に、思い出したかのように言葉を返す。
「さっきの答えを返そっか。私には居場所なんてなかった。世界がCOMPLEXの支配下にあってもなくても、私は1人だよぉ」
「そんなことない!風音がどんなになっても、これからは私があなたのそばにいる!」
「今更だって言ったでしょ。お姉ちゃん」
「今更だとしても、私は風音から離れる気はないの」
「………」
COMPLEXカウント 5
風音は心底うんざりしたようにカードを引く。
「まずは3マナで《電脳の女王(ハックイーン) アリス》。山札の上から3枚を手札、墓地、山札の上に振り分ける。そして場のクリーチャーの数だけ軽減して《飛翔龍(フライングブイ) 5000VT》を召喚。相手のパワー5000以下のエルナドンナ2枚、アルデッド、ナルコを全て手札に戻す、そして次の御白ちゃんのターン、御白ちゃんのパワー5000以下のクリーチャーは場に出ない」
「エルナドンナはシールドをそれぞれで減らすことでお互いに除去を無効化!さらにナルコはアルデッドがウルトラセイバーで身代わりになることで生き残ります!」
御白 シールド1
COMPLEXカウント 6
「4体対象で1体しか場を離れないって…普通そんなに耐えるぅ?あとはミュートで自爆特攻して終わりだったのに。まぁいいや、ミュートでエン・ゲルスに攻撃、パワー3000が11500に負けて墓地に送られるよぉ」
COMPLEXカウント 7
「ターンエンド」
「私のターン!終極宣言を発動します!」
エン・ゲルスの周りに4つの光の塊が回りだし、御白の宣言によってそれは形を変えていく。
「今回使うのは破壊&ドローが1回と、シールド追加&墓地回収が3回です!」
1本の剣と、3枚の盾に変わった光の塊は、剣がアリスに飛んで行きそれを破壊し、盾は御白のすぐ前のシールドに加わる。
御白 シールド4
「COMPLEXのカウントは次の私のターンまで進めないよぉ、8枚にしてアンタップしても無駄なリスクだから。でもそれ幸いと私の他のクリーチャーを破壊されるのはちょっとイラっと来るなぁ」
「私もイラっときてます。貴方は自分で一人ぼっちって言いながら、遥風さんの事を拒んでます」
「昔は欲しかったなぁ。でも今はいらない。そうでなくても生きられる。その方が楽に生きられるって知れたから…」
「私もそう思ってました、でも違いました」
「……どういうこと」
「私は最初、師匠に教わってデュエマを教えてもらった後、デュエマ熱がありすぎて周りと全然仲良くなれませんでした。それが高校1年生まで続いたんですからお笑いものですけど」
遥風が意外そうに御白を見る。
「御白さんが、そんな風には…」
「最初夕哉くんに会った時、家庭教師が楽になりながらデュエマができるって思って、夕哉くんの気持ちなんて考えていませんでした。でもドランさんに乗っ取られた時、夕哉くんは自分の危険も顧みず助けてくれたんです、その時ようやく気づいたんです。打算とかなしに手を伸ばしてくれる人が、どれだけ貴重で素敵な存在かって。自分もそうなりたいって、夕哉くんに憧れるようになったんです」
風音は再び不機嫌そうに話の続きを煽る。
「……だから?御白ちゃん『には』人が要るって話でしょ?」
「そんなことありません。私はちょっとうるさいお兄さんがいますけど、いなくなれなんて思ったことはありません。友達に限らず人間は助け合って、たまに他愛もない話をして、笑い合って。その先に幸せがあるんです。意志のない操り人形だけの世界なんて、私はまっぴらごめんです」
「……はぁ、御白ちゃんには分かってもらえると思ったんだけどな」
「遥風さんの元に戻ってきてください、風音さん」
「……早くプレイを続けなよ」
「分かりました、《聖なる混沌 クノイチマントラ》を5コストで召喚!次の私のターンまでクノイチマントラ以外のメカはパワーが3000上がります!エン・ゲルスでシールドをWブレイクです!」
風音 シールド0
「うるっさいんだよなぁ今更……!!」
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Side:夕哉
時々思う。御白や緑みたいに凄くデュエマが好きだったりクリーチャーと特別な繋がりがあったり、飛水や火奈みたいにデュエマがとても上手かったり勘が冴えてるわけでも無かった、風音のように言えば『才能がなかった』自分になんでジャシンが相棒になったのか。良い依代だと彼は言っているけれど、本当にそれだけなら他にも沢山候補はいたのだろうと思う。本当にジャシンの一番の使い手が自分だなんて、口が裂けても言えないんだ。
風音と水文明で出会って思ったのは、自分もそうだったかもしれない、人ごとには思えないという予感。直感って言った方が正しいかもしれないけど。もし俺が夕花に起きていることの正体に気づくタイミングが何処かにズレていたら。俺は夕花をこんな風にした相手を探してジャシンの力を使おうとしていたかもしれない。まぁそんなことをしていたら、ジャシンに取り込まれていたんだろうな。
『夕哉、辰登りの丘ででけえ機械の目撃があったらしい!多分ワープした直後のCOMPLEXだ!公輝さんが車を出してくれる!俺たちもすぐに追いかける!先に光屋のサポートを頼むわ!』
「うん、絶対間に合わせる!」
俺は、運良くここにいるだけ。もし御白に出会わずデュエマのやり方を知らずにジャシンと出会っていたら?竜也さんに出会わず対戦相手の向き合い方を知らずにデュエマを続けていたら?もしジャシンの誘いに乗って、好きなようにクリーチャーの力を行使していたら?
いくつものもしもがあって、今の俺はいると思う。だから風音が自分のために動いていると聞いた時に強く否定できなかった。自分がそこに立っていた可能性を否定できなかったから。
俺は辰登りの丘を目指す公輝さんのパトカーを待ちながら、ジャシンを呼び出す。
「ジャシン、出てきて」
「なんだ、夕哉よ」
「ジャシンは、俺以外の人間に出会いたかった?」
「…須谷風音の話か?確かに奴に出会えれば、余の復活はもっと早かっただろうな」
「それもあるけど。でもさ………」
「夕哉くーん!頼んだよー!!」
公輝さんの声が聞こえてくる。ジャシンは俺の考えてることを見透かしたかのようにため息をついた後、いつもよりほんの少しだけ優しい声でこう言った。
「結局のところ、そう決まってしまったのだから仕方あるまい」
「ジャシン?」
「他に適した相棒がいようと、今の余にとって余を使うことができる人間は貴様だけだ、それは変わらない」
「ジャシン……」
「こんなことで悩まれて余が再び封印されたら元も子もないからな、早くあの鉄くずを倒しに行け」
「うん、待ってて皆、COMPLEXを絶対に止めてみせるから!」
御白の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「星姫機(プリマシーン) エルナドンナ!」
「2コストのブロッカーで、他のクリーチャーが離れるときに自分のシールドを加えればそれを無効化することができてしまいます!コストも低いためドランさんなどに革命チェンジしながらさらに低いコストで味方を守れます!2体並べばお互いに守れて便利ですよ!」
「というわけで次回、『境界線に伸ばした手・後』」
「お楽しみに!」