デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション) 作:シグレサメ
御白 シールド4 マナ5
《富轟王 ゴルギーニ・エン・ゲルス》(タップ状態)《聖なる混沌 クノイチマントラ》、《星姫機 エルナドンナ》×2、《警鐘の聖沌 n4rc0(ナルコ)》
風音 シールド0 マナ4
《DARK MATERIAL COMPLEX》(カウント7、タップ、場を離れない)、《飛翔龍 5000VT》
「うるっさいんだよなぁ今更!お姉ちゃんも!御白も!」
そう言いながらシールドからカードを引き抜いた風音の手から、光ったカードが飛び出してくる。
「シールドトリガー!《忍蛇の聖沌 c0br4(コブラ)》!」
「何故彼がこんな所に!?まだ行方不明のクリーチャー達の幾つかは彼女が持っていたのですか…」
仲間がこんな場所で見つかり驚くカオスマントラを尻目に風音はc0br4の効果を使う。
「登場時に山札の上から2枚を墓地に送り、コスト5以下のクリーチャー、《アーテル・ゴルギーニ》をバトルゾーンに!」
「今度は私の弟!?」
「そうだよぉ。良いサプライズでしょ?アーテル・ゴルギーニの登場時効果はパワーマイナス4000するか、墓地を4枚増やすか、コスト4以下のクリーチャーを呼び出す効果。マイナス4000を2回選択してエルナドンナのパワーをマイナス8000する!」
(クノイチマントラの加算込みでも貫通される!パワー低下だと耐性も効きません!)
「エルナドンナを何もせずに破壊します!でも、まだ終わっていませんよ!私は風音さんを連れ戻すまで、負けられないんです!ターンエンド!!」
「昔の私は助けが欲しかった。でも今は違う。余計なお世話なんだよ?誰もが平等に才能を与え合う世界になるまでもう少し。私は自分で私の必要な世界に辿り着いた。なんの問題もないのぉ!だから…余計なお世話なんだよぉ…?」
御白の代わりに遥風が語りかける。
「余計なお世話だとしても、そのまま貴方が人間の道を踏み外したら、またいつか寂しくなる。自分の思い通りにしか進まない世界が気に食わなくなったら、次は貴方は何するの!?」
「うるさい!私は1人で十分だって……!言ってるんだよ!!お姉ちゃん……!!」
COMPLEXがゴゴゴと轟音を鳴らしながら動き出す。場から離れていたドランが風音の近くに寄っていた遥風を抱えて後ろに戻り、御白はエン・ゲルスとクノイチマントラ達が庇うように立つ。
「風音!」
「消えなよぉ…光屋御白、須谷、遥風ぁ!」
「消えません!遥風さんと同じです!そんな貴方を1人にさせられないですから!」
COMPLEXカウント8
「私のターン!最後のカードをCOMPLEXの下に置いて、COMPLEXをアンタップ!!」
COMPLEXの壺から異形の機械が現れて、御白達を睨みつける。
「《追憶人形ラビリピト》を召喚し、クリーチャーが7体以上あるので1コスト!《飛翔龍 5000VT》!」
「クノイチマントラでパワーが底上げされてます!だから問題な…まさか!」
「ラビリピトはコスト8以上のクリーチャーが召喚された時に相手の手札を全て捨てる。あるんでしょう?シノビが」
ラビリピトのフォークの一突きに御白の手から《聖カオスマントラ》をはじめとしたカードが墓地に落ちる。
「だよねぇ。油断ならないよねぇ」
(カオスマントラさんが墓地に…シールドから返さないと…!)
「COMPLEXでゴルギーニ・エン・ゲルスに攻撃、COMPLEXの中からアーテル・ゴルギーニを出して、エルナドンナをパワーマイナス8000。場からクリーチャーが離れたから再びCOMPLEXはアンタップする」
「エン・ゲルスさんはシールドがそのターンどちらかから離れない限り場から離れることはありません!」
「好都合。COMPLEXで再びエン・ゲルスに攻撃。アーテルの3枚目をバトルゾーンに出し、クノイチマントラを破壊、再びアンタップ」
次々と壊滅していくバトルゾーンにエン・ゲルスは苦悶の表情を浮かべる。
「COMPLEXが、こんなに力をつけているなんて…」
「まだですエン・ゲルスさん、まだ…希望は…!」
「御白、分かる?これが持つものと持たないものの差。可哀想だよねぇ、ずっとこんな風に踏み躙られるのは。COMPLEXでエン・ゲルスへ。《闇参謀 グラン・ギニョール》を出して、ナルコを手札に、再びアンタップ。そしてコブラでシールドをブレイク」
御白 シールド3
「シールドトリガー無し…!」
「COMPLEXでエン・ゲルスに攻撃。コブラを出して墓地から《同期の妖精》をバトルゾーンに。もう除去耐性は無いよねぇ?」
「エン・ゲルスは破壊されます…!」
「ハハハハハハ!無様だねぇ!御白、ちゃん!!」
COMPLEXが風音を包み込むように立つ。大量の自分の傀儡を従えながら。場に何も無くなった御白を嘲笑するかのように。
「酷い……」
そう息を漏らした遥風に、風音はあっけらかんと答える。
「そうだよねぇ。だから言ったでしょ?こうならないようにするって。だから、もう何も気にすることはないんだよぉ。だから…」
「今、貴方は佐竹さんみたいになっているのよ!?」
「……は?」
遥風のその言葉に風音は苛立ちを見せる。自分の触れられたくなかった、絶対に一緒くたにされたくなかったものの名前を聞いて、遥風に怒りを向ける。
「お姉ちゃんに…何が分かるっていうのぉ!?こんなことをするのは今だけ!御白を諦めさせるため!これ以上は誰も傷つけない!私がこの不条理な世界を治すの!!」
「…風音。警察に入ってから今まで、そんな風に沢山の人を見てきた。自分のことを正しいと信じ込んで、行い全てを正当化する。貴方の今の行いは、それと同じよ!それを盾にして、いずれ自分が何をしようとそれを正しいと推し進める!!」
「………」
「だから、戻ってきて。私にはこれしか言えない。私達は自分の方法で、少しずつ自分を見直して、償っていくしかないの」
「……COMPLEX、御白のシールドを全てブレイクして。そして遥風を、黙らせて」
カードに戻っていたエン・ゲルスがCOMPLEXの攻撃を受け止める。しかし先程のダメージと合わせてか、崩れ落ちるが遥風の上には絶対に倒れず、彼女を守り切った。
「エン・ゲルス!御白さん!大丈夫ですか!?」
「大丈夫です、こんな傷、すぐに治ります…」
「私も大丈夫です、遥風さん。お陰で少し休めました。さて、貴方の決闘相手は私です、貴方は無力な人を力で押さえつける、してはいけないことをしたんですから!」
「……そう。もういいや、終わらせる」
御白 シールド0
「シールドトリガー、《トライシェルビ-P(パッセージ)6》!効果でメカ・メクレイド5を行います!ドランさんお願いします!呪文、《豪龍の記憶》!山札の上から1枚をシールド化して、私の次のターンまで、シールドトリガーを与えます!」
(もう勝ち筋はここのシールドにあのカードが入っていることだけ!もう分の悪い賭けです。せめて、シールドを割らせるには…)
御白は、まだ勝負を諦めていない。
「私の墓地には、さっきのハンデスで《超新星 DOOM・ドラゲリオン》が落ちています!」
「……は?」
「墓地進化のカードです。デッキに2枚、いざという時のための押し込みで入れているんです」
「へぇ。3体のアーテル・ゴルギーニでブロックすれば終わりじゃん。手札にあるかもしれないからこのターンで決着をつけさせようってことぉ?浅はかだねぇ」
「そして私のデッキには、シールドトリガーが沢山入っています。このシールドがトライシェルビだった場合、またシールドを仕込まれる可能性がありますよ?」
「そうだねぇ。5000VTのロックにも限りがあるし、グランギニョールで手札に戻して出し直すしかないかなぁ」
「凄いですね。そこまで考えてるなんて。本当はシールドを割らせたいと思ったんですけど」
「お見通しだよぉ。そういうのも手に入れたんだから」
「……私、生まれは恵まれてると思うんですけど、その分どうしても、誰かに頼って生きてきたんです。自分で考えて、前に進むなんてしてこなかったんです、だから今からでも、そうやって進みたいんです」
「……ふーん」
御白の額には汗が伝う。このまま彼女がターンを終えてしまえば、御白の勝ちの目は、無くなる。
「凄いですね、本当に沢山の才能があって。どれが誰からのものなのか分かるんですか?」
「あー、思い出せないかなぁ。さて、そろそろ私にシールドを割らせるように誘導するのは終わり?」
「はい、才能ない人間が言えることなんてそんなにありません。だから、せめて『あの人が逃げる時間を作れるくらいは』と思ったんです」
御白が丘の下を見ると、遥風を抱えたエン・ゲルスが下に下にと逃げていくのを確認する。それに安堵の笑みを浮かべる御白を見て、風音は反射的にCOMPLEXをタップしていた。自分が御白に何かをされることなんてないという、驕りが産んだ結果だった。
「グランギニョールを呼び出し、トライシェルビを手札に!シールドをブレイク!!その程度の小細工なんかで、私を止めるなんて……!許しはしない!!」
御白 シールド0
(決着を焦った!でもここであのカードを引かなきゃ…負け…!でも、でも…!)
「シールドトリガー……!」
カードを捲る。その瞬間、眩い光が御白の元にやってくる。今度は敵ではなく、味方として。
「聖(セント)、カオスマントラ!!登場時能力で、相手のクリーチャー全てをタップします!!」
「……ターン、エンド……」
「行きます、私のターン!カオスマントラで、ダイレクトアタック!!」
COMPLEX達が次々とタップしていく。その光にアーテル・ゴルギーニは安心したように眠り、他のクリーチャー達も解放されたかのように倒れていく。そして何より風音は、
(こんな、負け方…。私が、間違ってたから…?私が、いらなかったから…?)
そのように、風音は考えていた。
(私のやってることは、間違い、だったのかな…?もし、私がもっと簡単に、言えてたのかな、皇心に、お姉ちゃんに、御白ちゃんに、『一緒にいよう』って言えたなら…)
意識を手放そうとする。自分の間違いを認めた瞬間、風音の重荷は消えていく。自分を誤魔化していたものを、無くしても良いと思えた。
そう思った瞬間、あの声が頭に響く。
[一時の感情に任せてこの人間如きに負けるとは…。やはりお前は、『いらない人間』だったな]
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「はぁ、はぁ、御白!!」
夕哉が息も絶え絶えに辰登りの丘に着くと、そこには御白1人が立っていた。
「御白!?大丈夫!?COMPLEXは!?」
「……夕哉くん。えぇ、どうにか。ちょっと疲れましたけど…」
「風音は?」
「えぇ、COMPLEXをどうにか倒しましたけど、風音さんは何処かに行ってしまって。今ドランさんに探してもらってます」
「そうなんだ、俺も風音を探すよ」
夕哉は御白に背を向けて、丘を再び降りようとする。そしてその前に御白に、夕哉は問いかける。
「……ねぇ、君は誰?」
「……?どういうことですか」
「春からの付き合いで、まだ半年しか御白のことを知らないけどさ。御白は行方知らずの人間がいた時、ましてや自分のデュエマの相手に何かあった時、自分が動かないなんてできない人間なんだ。どんなに疲れたりしててもさ。御白の身体を乗っ取ってるのか、それとも御白に化けてるのか知らないけど、早く正体を現してよ」
[はぁ、早いところお前も消すべきだったな]
御白が懐から緑の壺を取り出して、地面に置く。ガガガと轟音を立てながら中から化け物が現れ、夕哉の視界を覆い尽くす。
「COMPLEX……!」
[黒井夕哉。いや、アビスベル=ジャシン帝。お前を消さなければ私の望む世界は訪れない]
COMPLEXが流しているのはただの機械の駆動音であるはずだが、夕哉とジャシンの頭に直接言葉が流れ込んでくる。
「こうやって、風音を自分の思い通りに…!」
[奴は自分からあの世界を、あの生き方を望んだ。良い隠れ蓑だったが、支配するには足りなかった]
「御白と、風音は……!?どこに行ったの…!」
[須谷風音は光屋御白との決闘に負け、用済みとしてこの壺の中に封印した。沢山の負の感情が渦巻く、私の力の源にだ。光屋御白は吸い込まれる須谷風音を追いかけていったが、私の力にニンゲンが敵うはずがない。身体は今ここにある。精神は、須谷風音と一緒にこの壺の中だ]
夕哉が丘の下を見ると、ドランとカオスマントラ、そしてエン・ゲルスが横に倒れている。恐らく抵抗をしたものの、人間界でクリーチャーが力を使うのに必須である、契約した人間が不在では敵わなかったのだろう。
「……2人を、返してよ」
[返したところで何の意味がある?お前の待っているニンゲンはもうこの壺の中だ。説明した通り負の感情で溢れたこの中では、ニンゲンはまともな精神を保ってはいられない。もう遅いということだ]
「遅くない!絶対に助ける!」
[光屋御白に負けず劣らず、このニンゲンも話を理解できない馬鹿のようだな]
夕哉は怒りに拳を握りしめた後、一度力を抜く。そしてデッキから1枚のカードを引き抜き、空にかざす。
「……ジャシン、出てきて」
「ほう。小娘がやられれば、お前は正気を失うと思っていたが…」
「終われない、終わらせない!こんな形でなんて!」
「そうか、やはりお前は馬鹿のようだな。COMPLEXの闇の濃さは余のもの程ではないが濃いものだ。闇に飲まれる感覚は知っているだろう?しかも今回は貴様を闇から引き戻すもの、小娘もいないぞ?」
「………」
COMPLEXは夕哉を揶揄うかのように声をかける。
[戦うか決めたのか?多数の負の感情を経て完全体となった、この私に勝てると思うのか?]
「ジャシン、舐められたままは嫌でしょ?だったら勝とうよ、2人で、アビスの皆で!」
「……舐められたままか、成程、それは余のプライドに砂をかけるものだな。そう言ったからには勝つのか?」
「うん、絶対に」
「……フン、面白い」
[決めたようだな、さぁ始めよう。お前が私に勝つのが先か、私が勝ち、光屋御白と須谷風音の精神が燃え尽きるのが先か]
「………ふぅ、行くよ!」
「デュエマ、スタート!」
[デュエマ、スタート]
夕哉の、今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「アーテル・ゴルギーニ」
「出たときにパワーマイナス4000、4枚墓地肥やし、4以下のクリーチャーの蘇生を合計2回まで選ぶことができる強力なクリーチャー。自身を呼び出すだけではなく、他のクリーチャーを身代わりにすることで生き残れるブロッカーとしても強力だよ」
「というわけで次回、『暗くも眩いこの世界・前』」
「お楽しみに!」
「……御白、待ってて」