デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション)   作:シグレサメ

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御白と風音のデュエマは僅差で御白が勝利したものの、COMPLEXが風音を見限ったことで形成が逆転、御白もCOMPLEXの中に取り込まれてしまう。夕哉はCOMPLEXが化けた御白を偽物と看破して、デュエマで今一度COMPLEXの野望を打ち砕くと宣言するのだった。


暗くも眩いこの世界・前

 

真っ暗な世界。ひたすらに真っ暗で、そこには希望も、絶望も、何も入り込むような余地がない。

 

「お姉ぇ…ちゃん…?」

 

そう言って私が顔を上げると、何もない黒塗りの世界が目に刺さる。暗くて、今にも消えそうで。自分の中に何も無くなっちゃったみたいで。

 

「ここは……?」

……何もしたくない…。何もする気が起きない…。その場に座り込んだ私はどんどん身体が鉛のように重くなっていく。

 

心が重くなっていく。心の奥底に何か言葉がのしかかっていく。どこかで聴いたような、そんな言葉。

 

「そうだ…。ここは…。皆の感情を吸い取って…」

重たい感情、沢山のマイナスな心が私を押しつぶす。才縁高校の皆から吸い取った怨嗟や恨みの感情が、この空間には溢れている。だからこんなに重たいのか。かと言って別にそれがどうこう言えるものではないけれど…。

 

「やっぱり風音はいらないね」

「なんでこんなことも出来ないの?」

「須谷の家だから引っ張ってきた俺が嫌になる、何に役立つんだお前は?」

[もう要らないと言うことだ、ここにいるということはな」

 

耳につんざくその言葉が、耳を塞いでも響き続ける。

「COMP、LEX……!!」

[そうだ、お前はもうここから出ることができない。ここでゆっくり休んでいれば良い]

「嫌だ、私は私の世界をぉ…!」

[私の世界だ。クリーチャーが、私の眷属が全てを支配する世界だ]

「……良い加減にしてよぉ!私の望む世界を叶えるって!!」

[逆に聞くが、お前ごときの願いが叶うとでも思っていたのか?例えばこんな風にすれば…]

 

COMPLEXが手を一度動かすと、私から力が抜けていくのを感じる。

「嘘、嫌、そんな……!」

[これでお前の才能は私のものだ。冷静に考えてもみろ。私の力で心の明け渡しを行うなら、お前の力を握っているのは私だからな]

「……はぁ、はぁ…!待って、COMPLEX……!」

 

そう言っても、COMPLEXは嘲笑うように消えていく。

「待って、待ってよ、それがなきゃ!私じゃ、無くなっちゃう!……え?嘘、私、本当に…何も無くなって……」

本当に、動けなくなる。体を丸め、頭の中に響く声に耳を塞ぐ。自分の何もかもが崩れ去って、何も考えられなくなる。

「もう、何も…ない……」

もうこうなったら、私から才能を取ったら、何も意味がないから……。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

始まったCOMPLEXと夕哉のデュエマは、COMPLEXが最初に自身を設置したところから始まる。COMPLEXは御白の身体を使ってデュエマをしており、荘厳に、そして不敵に夕哉達を伺っていた。

 

「1マナで、DARK MATERIAL COMPLEXを召喚」

「マナチャージ、ターンエンド」

 

COMPLEXカウント 1

「《パトファール-P4》を召喚。出た時にこのクリーチャーは次のターンの初めまで場を離れなくなる、ターンエンド」

「御白のカード!?」

「使えるものは使う、そうやって私は幾つもの世界を滅ぼしてきた」

 

夕哉は手札を見ながら、ゲームプランを立てる。

(……DARK MATERIAL COMPLEX。このカードは、ターン開始時または場からクリーチャーが離れるたびにカウントが増えて、8になると動き出す。となると革命チェンジでゲームを動かすのはリスキー、御白の革命チェンジ戦法が使われる分、COMPLEXのカウントは普通よりも早くなると思う。それならジャガイストの動きで、一気にゲームを取り切るしかない…!)

「俺のターン!呪文、《フェアリー・Re:ライフ》!山札の上から1枚をマナゾーンに!」

 

夕哉がカードをプレイしている間、ジャシンがCOMPLEXに疑問を投げかける。

「貴様、須谷風音の世界を否定して、自分の世界を作るのか?それはどんな世界だ?」

[私の望む世界はすべての人間が私の養分となる世界。全て人を妬み、嫉み、滅ぼしあう世界だ]

「成程な。余の目指す世界は人間ども全てが余に恐怖し、支配されること。貴様の理想とはそりが合わないな。夕哉、こやつを滅ぼしても良いぞ」

「逆にそりが合ったら協力してたの?やめてよ…。まぁ取り敢えず倒して良いと思ったなら遠慮なく!まずはターンエンド!」

 

COMPLEXカウント 2

[好き勝手言って、私がお前を滅ぼすのだと分かっていないようだな。]

「3マナで《アシステスト・アルデッド》をバトルゾーンに。1枚ドローして、パトファールでシールドを攻撃する時革命チェンジ!《ドラン・ゴル・ゲルス》!シールドを1枚ブレイクし、手札からパトファールをバトルゾーンに。パトファールの効果でドランは場を離れない」

 

黒く塗りつぶされたドランが、苦しみながらも夕哉のシールドに向かっていく、COMPLEXが一度手を動かすと、ドランの身体も無理やり動き、夕哉のシールドに蹴りを放った。

 

COMPLEXカウント 3

COMPLEX シールド4

夕哉 シールド4

「シールドトリガーは無いよ」

「ターンエンドだ」

 

「俺のターン!ここから全力で行く!4マナで呪文、《「力が欲しいか?」》を唱えて、アビス・メクレイド5を行う!来い!《邪幽 ジャガイスト》!」

[アビスのクリーチャーも、かなり復活したようだな…]

「お陰様でな。貴様を楽に葬り去れるくらいには復活しておる」

 

COMPLEXとジャシンの問答を尻目に、夕哉は手札を2枚捨てる。

「ジャガイストの効果で手札を2枚捨ててアビス・メクレイド5を起動!行くよ、《ア:エヌ:マクア》!さらにジャガイストの効果で連鎖させて、墓地から《信眼!ジェンゲガーvs.シェケダン》をバトルゾーンに!マクアでマナ回収し、《秩序の意思》を手札に!さらにジェンゲガーシェケダンの登場時効果でシールドを回収!そのシールドを捨てて、S(ストライク)・バック!呪文、秩序の意思!」

 

[対策はされていると言う訳か…]

COMPLEXの周りに魔法陣が現れ、彼を縛り付ける。どうにか脱出を図るものの、彼はカードの下にそのまま封印されてしまった。

 

夕哉 シールド3

「秩序の意思の効果で同じ文明の種族:コマンドが出るまでCOMPLEXは封印され、効果を失う!さらにジェンゲガーシェケダンのシールドが離れた時の効果で、墓地から《アビスベル=覇=ロード》を手札に加える!」

「ほう、中々良い対策でないか」

「御白のデッキには結構コマンド入ってるから完璧な対策とは言えないけどね。でも今ならクリーチャーを気兼ねなく場から離せる!マクアのマッハファイターでアルデッドを攻撃!さらにジェンゲガーシェケダンはジャガイストの効果でプレイヤーを攻撃できる!行くよジャシン!《アビスベル=覇=ロード》に!革命!」

「チェンジだ!」

 

シェケダンが主人を取り戻すため、ジェンゲガーを投げ上げる。そしてジェンゲガーに覇ロードがバイクを寄せて、ハイタッチして空から降り立つ。

「覇ロードでWブレイク!!」

 

COMPLEX シールド2

「シールドトリガー、《聖沌大忍者 クーソクゼーシキ》。トリガー+で山札上2枚をシールドと手札にカードを振り分け、メカにシールドトリガーを与える」

 

COMPLEX シールド3

「ターンエンド!覇ロードの効果で墓地から《謀遠 テレスコ=テレス》を墓地からバトルゾーンに!」

 

「私のターン」

「ターン開始時、テレスコで手札を捨てさせる!」

「封印されていなければ、このターンに起動でき、お前も楽になれたものを…。《警鐘の聖沌 n4rc0(ナルコ)》を召喚、手札に《富轟王 ゴルギーニ・エン・ゲルス》を加える。ドラン・ゴル・ゲルスで攻撃する時革命チェンジ、ゴルギーニ・エン・ゲルス。更にコマンドが出たことで私の封印が解かれる」

 

COMPLEXカウント 3

[さぁ封印を解いたぞ、どうする黒井夕哉?]

「封印も1ターンしか持たないか…。相手の1度目の攻撃はジャシンが吸い寄せる!その上でテレスコでブロック!」

 

ドランが苦しみながらエン・ゲルスにバトンを渡す。その剣がジャシンにぶつかりそうになるが、すんでのところでテレスコが割って入り、剣を受け止めて破壊される。

「ちっ、余はエン・ゲルスにはパワー500差で負ける。ブロッカーを差し出させるとはな、人を苛立たせるのが上手いものだ」

 

COMPLEXカウント 4

「さらにパトファールで攻撃する時ドラン・ゴル・ゲルスに革命チェンジ。シールドをブレイクせずにパトファールをバトルゾーンに。パトファールの効果でエン・ゲルスを場から離れなくする」

「ジャガイストでブロック!」

「メガ・ラスト・バースト、《豪龍の記憶》でシールドを追加して、そのシールドにシールドトリガーを与える。先程はこれにやられたが、今はこれも私のものだ」

 

COMPLEX シールド4

COMPLEXカウント 5

「ターンエンド、さぁどうする黒井夕哉」

(カウントはあと3つ、次のターンに1つ増えるからあと2枚離れたらあれが動き出す!さらに次のターン、エン・ゲルスの終極宣言も控えてる、パトファールの効果によって場から離すプランも取れない、だったら…!)

 

「このターンで終わらせる!」

[ほぉ、やってみるといい。特に才能のないお前に、それができるのか?]

「才能のあるなしじゃない、今俺にしかできないから、たとえ無理だとしてもやる!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

体が動かなくなって、どれだけ経っただろう。重たい鉛はもう真っ暗闇の中に沈み込み、どんどん意識が微睡んでいく。このまま全部を手放せば、楽になれるのかな。そう思って私は、意識の電源を落とそうとする。いつしか私を罵倒する声は聞こえなくなった。でもそんなのは関係ない。だって私はもう何もない、無くなった。そんな存在なんだから…。

 

「風音さーーーん!!何処ですかーーー!?」

「御白さん、身体は外ですが体力を使いすぎないように…」

「分かってますけど、風音さんを見つけないと!」

 

何かが聞こえてくる。よく聞こえない。いや、返事する気が起きない。周りが真っ暗で何も見えないから、恐らく何処かのCOMPLEXに取り込まれた人間の心の反響なんだろうな。

 

「風音さん!見つけましたよ!ドランさん、光を当ててください!」

「これはかなり酷いですね…。COMPLEXと直接ぶつかったか、かなり時間が経っているかで闇のマナの侵食が進んでいますが…。取り敢えず処置してみます」

 

何か温かい光が、私の頬に当たる。少しだけ熱を取り戻した私の身体は、意思に反してぴくりと動いて、声の主の喜びの声が聞こえてくる。

 

「ドランさん!これなら行けます!もっとお願いします!」

「はい、やってみましょう」

 

光が体中を駆け巡っていく。暫くぶりに温かいご飯を食べたような、そんな感覚。それに私は、ゆっくりと目を覚まし、声の主が光屋御白であることに、ようやく気づいた。

 

「光屋、御白……?」

「御白ちゃんで大丈夫ですよ、風音さん。おはようございます!」

「お、おはようございます…?」

 

光屋御白は背中に背負っていた鞄を下ろして、黒い床の上に広げようとする。そうしようとして少し留まって、

「あ、流石に直置きはお行儀が悪いですね…」

と言って、レジャーシートを広げる。呆気に取られていた私に光屋御白は、

「まぁ、取り敢えず座ってください」

とレジャーシートに座るよう促してくる。取り敢えず座ると光屋御白は自分も一礼してからレジャーシートに座って、幾つかのお菓子を広げ出した。ドラン・ゴル・ゲルスは光屋御白のことを見守りながら、私達2人を覆うだけの光を作っていた。

 

「これ、秘密のお出かけ用セットなんです。デュエマが終わったら夕哉くん達との打ち上げに持っていこうと思ってたんですけど、ドランさんによるとそれだけが吸い込まれて私は意識だけここにあるみたいです。ハッ!じゃあ今ここのお菓子をいくら食べても太らないってことですか!?」

「………?ねぇ、光屋御白。何、してるの?」

「はい、折角なので風音さんとデュエマだったり、お菓子食べたり色々したいなって。あ、COMPLEXのデッキ以外持ってきてないなら私が貸し出しますよ!」

「そうじゃなくて!!私達、ここから出られないんだよぉ?怖く、ないのぉ?」

「……怖いですよ。ここにくる前ドランさんと脱出を試みましたが全部失敗しました。変な声も聞こえてきます。悪意のある声を向けられるのは、とても辛いです。でも、夕哉くん達が絶対に助けてくれます。それより先に私たちの心が折れたら、本当にダメだと思うんです。だからデュエマするんです、遊ぶんです。人の一番の原動力は、才能でもなんでもなく、前を向く心だと思いますから」

 

考えてもみなかった。全部やらされて、自分のやりたいことなんてなかった。デュエマも、COMPLEXの力を使う方法としか見ていなかった。そんな自分に光屋御白は、光屋、御白は…。

「取り敢えず何からやります?デュエマじゃなくても結構ですよ、トランプとか、他のゲームでも…」

「うぅん。デュエマがしたい」

「そうですか、じゃあ私は光単の少し前のドランさんを使ってみますかねぇ、折角ですし知らないデッキの方が良いですよね!」

「私、何もあなたに返せないよ」

 

自分でも知らないうちにポツリと呟いた。光屋御白はこちらの方を向いてぽかんとしていたけど、自分も自分で何を言っているのだろうと思った。でも、

「私、そうだ、私……」

「……どうしましたか?」

「私、才能が欲しかったんじゃないんだ。お姉ちゃんや皇心に迷惑かけたくなくて、何かしてもらったら恩返ししなきゃって思って、ずっと頑張ってたんだ……」

「何も欲しくなんてありませんよ。強いていうなら、風音さんと楽しい時間を過ごしたいです」

「楽しい時間……」

 

御白ちゃんはデッキをシャッフルしながら答えを考えて、カードを並べながらこう言った。

「持論ですが、才能や色んな隔たりがあっても無くても、人が対等になれる方法があります。少し相手のことを想って、楽しむことです。さっきも話しましたが、私は自分の楽しみしか考えていませんでしたけど、夕哉くんに教えてもらったんですよ?楽しみは1人じゃ無くて、人と作っていくものだと思います」

「……黒井夕哉のことが、大事なんだね」

「はい、私の恩人です!」

 

そう言って屈託のない笑顔を見せる御白ちゃんに私はまたこう思う。

「お姉ちゃんに、皇心に、そう言えてたら良かったのかなぁ」

「言えますよ、今からでも」

「………本当?」

「はい!でもまずはデュエマしましょう!元気がなければ外にも出れませんからね!お菓子何が良いですか?ちなみに2重スリーブついてるのでポテチ開いちゃっても大丈夫ですよ?」

「ふふ、ははは!」

 

何となく笑いが込み上げてきて、今まで思ってたことが馬鹿らしくなる。そうだ、それで良かったんだ。結局のところ私は一人間でしかなかった。本当の平等な世界を作ろうとしたら、いずれ何処かで破綻して、限界を迎えてたんだ。

「そっか、こんな簡単だったんだ…」

 

私はそう呟いて、御白ちゃんの差し出したデッキを手に取った。

 

「さぁやりましょう風音さん!」

「うん、御白ちゃん」

 

「「デュエマ、スタート!」」

 




夕哉の、今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「秩序の意思」
「Sバックで闇文明のカードを捨てればタダで唱えられる呪文、クリーチャー1体を封印することが可能で、封印されたクリーチャーは何もできなくなるんだ。COMPLEX対策として用意してたんだけど、御白のカードを取り込んでいたCOMPLEXにはあっという間に突破されてしまった…。でも、負けない、負けられない!」
「次回、『暗くも眩いこの世界・後』」
「行くよ、アビスの皆!!」
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