デュエル・マスターズOverRevolution(オーバーレボリューション) 作:シグレサメ
私の生まれた神谷神社は、時代に取り残された古めかしい神社だった。
今時神社に来てお参りしてくれる人なんて、神社の維持費を賄えるような何かがあるなんて言えなかった。
クリーチャーのことを知ったのは2月頃、神谷神社の古い倉庫の中にそれは残されていた。正確にはクリーチャーではなく、昔の動物、神具だったりを…というものであったが、神谷神社の奥に隠されていた「彼」を引っ張り出すには十分なものであった。なぜ隠されていたのかは分からないが、あったものを使わないのも不自然だった。
デスフェニックスと一緒に戦い始めたのは1ヶ月ほど前、神谷神社に訪れる客も増え、神谷神社の人気は戻って行った。
目の前の少女が何故立ち向かってくるのか、それは分からない。だが、私も立ち向かわなきゃ、私の大事なものを守れない。それだけ。
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Side:火奈
「あたしのターン!」
赤くひび割れたカードから新たなカードが現れ、あたしの新たな切り札の形となる。
「ひな、凄い…ボクには…できないな…」
「行くよ、《覇炎龍 ボルシャック・ライダー》!」
「だが、そいつのコストは7、どうやって出すというのだ!」
「答えは簡単、出せるコストに変えちゃう!《クック・轟(スクラン)・ブルッチ》をコッピの効果も合わせて3コストで召喚!この子の登場時効果で、次にアーマードの使用コストは6下がる!」
「そんなめちゃくちゃな軽減…!」
「覇炎龍 ボルシャック・ライダーを召喚!」
カイザーさんが大きな爬虫類型のドラゴン(後で聞いたけどボルシャック・レイダーって言うらしい)に跨り現れる。背中には大きなマントをたなびかせ、まさに覇王のような立ち姿に、あたしは見惚れた。
「かっこいい…!」
「火奈、お前の気持ちが俺に変化をもたらしたらしい…。無謀なところは変わらぬが、胸を張って進め、相棒よ!」
「うん!」
ボルシャック・ライダーがシールドに向かって走り出す。
「覇炎龍 ボルシャック・ライダーでシールドに攻撃!Wブレイク!」
「切り札面しておいて、ただのWブレイカーか…!?」
「いいや、ここからだよ!ボルシャック・ライダーの攻撃がシールドに当たる時、ブレイクする枚数分、つまり2回!アーマード・メクレイド5をするよ!1回目!《ボルシャック・テイル・ドラゴン》!2回目!《ボルシャック・アークゼオス》!さらにアークゼオスの登場時効果でメクレイド!《クック・轟・ブルッチ》!」
ライダーが2つの炎の塊を取り出し、その中から2体のドラゴンが、さらにアークゼオスから轟ブルッチがと、連鎖するようにクリーチャーが現れる。カイザーの新しい力、皆と並んで戦う力…!
祈雨 シールド3
「一気に3体展開しただと…!」
「アシスター・コッピでシールドブレイク!」
祈雨 シールド2
「シールドトリガー!《ヴィオラの黒像》!ボルシャック・アークゼオス》を破壊!」
「させないよ!ボルシャック・ライダーは味方のファイアーバードにセイバー効果を与えるの!タップしているアシスター・コッピを破壊すればボルシャック・アークゼオスは生き残る!」
「破壊が効かないだと…」
「2体の轟ブルッチの効果であたしのドラゴンは全員スピードアタッカー!テイル・ドラゴンで残りのシールドをブレイク!」
祈雨 シールド0
「トリガーなしだ…クソ!」
「ボルシャック・アークゼオスでダイレクトアタック!」
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倉庫を覆っていたバリアは解け、野次馬が倉庫に雪崩れ込んでくる。
「ひな!ヤバいよ!人がいっぱい来てる!」
「嘘!?早く戻ってカイザー!いやライダー!」
火奈はライダーをカードの中に戻して、祈雨の方に駆け出す。
「神谷さん!早く裏口か何か探して逃げなきゃ!」
「我は、我は…うわぁあああ!」
「待って祈雨ちゃん!待って!」
祈雨はどこかに走り去ってしまう。今は追いかけている場合ではない。
「まずいよひな!早く!」
「どうしよう…緑…!」
突如として大きな音を立てながら倉庫をぶち破り乗用車が走ってくる。
火奈達の前でその車はドリフトしながら停まり、車のドアが勢いよく開く。
「赤坂さん、守木さん、早く乗ってください」
「「須谷(すたに)さん!?」」
「早く、野次馬が来てしまいます」
2人を乗せた瞬間2人のシートベルトも待たないまま須谷遥風(すたにはるか)は車を走らせ、ぶち開けた倉庫の扉から出ていく。
シートベルトを締め、2人は気を取り直す。
「ありがとうございます。あの、どうしてここが分かったんですか?」
「そうだよ、神社からそれなりに遠いのに」
「貴方達が真のデュエルを起こしたのなら追えます、人間界でそれが起きるというのは余程のことだろうと正路さんから連絡がありました。今日は皆さんもおらず、楽な就業日になると思っていたのですが…」
「あ…すたにさん、ごめんなさい…ひなも…何の役にも立てなくて…」
「大丈夫です、あなた達を守るのが仕事なので」
「緑!あたしは無事!緑も無事!あとは飛水を確認すれば大丈夫!」
「でも…」
緑は頭を下に向け、あのカードを見つめていた。
「…どうしたら、また戦ってくれるの?」
「緑、須谷さん。飛水からも連絡来たみたいです、安全だからって」
「それは良かったです、後で回収に向かいます」
一先ず安心した3人。そして緑が先程から気になっていた質問を投げかける。
「ねぇすたにさん。さっきのシャッター、大丈夫なの?」
「…あ。………」
須谷は暫く無言で運転した後、次の信号に足止めされた時にこう言った。
「恐らく必要経費として正路さんが出してくれるでしょう。恐らく」
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「祈雨ちゃん!祈雨ちゃん!」
回田千弥佳(かいだ ちやか)と飛水、さらに天見颯星(あまみ はやせ)の3人は倉庫の近くで神谷祈雨を探していた。
「回田!お前そっち頼む!天見は右側から!早く見つけなきゃ警察や消防も来ちまうぞ!」
「くそ、今だけだからな、青海!」
「お前の話は後だよ!神谷見つけないと洒落にならない!」
離れてそれぞれ探そうとした時に、ボロボロになった神谷祈雨が3人の前に現れる。
「千弥佳ぁ…颯星ぇ…負けちゃった…!」
「ちょっと!?祈雨ちゃん!?」
「大分弱ってる!色んな意味で!」
祈雨の初めて見る姿に飛水はある意味圧倒される。目が離せないまま祈雨を見ていると、ついに彼女と目が合ってしまった。
「あ…」
「えっと…何も見てねぇぞ、俺は…」
「そうか、何も見てないんだね、よし」
祈雨は大きく息を吸って気を取り直す。
「我は大丈夫だ、少々想定外の事態に巻き込まれたが、私は諦めない!諦めてたまるものか!もう、負けないから…!」
微妙に取り繕うことが出来ていない神谷を見ながら、飛水は複雑な気分になるのだった。
「お前、火奈か緑に負けたんだな?」
「あぁ…!我はあの赤髪の女に負けた!」
「だったら、もう二度とクリーチャー世界には…」
飛水の言葉を遮り祈雨が続ける。
「だが!我はもう負けない!今まで1勝1敗だ!もう一度勝って!私が!」
「…お前の何がそうさせるんだよ、ちょっとお前怖いぞ」
「怖い…そんな風に思うの?神谷さんは僕を救ってくれた恩人だ、彼女を馬鹿にするのは僕が許さない」
颯星が口を挟み、飛水の前に立ち塞がる。
「今度会う時は俺も戦う。覚悟しておいて」
「おい、待ってくれよ!」
祈雨を担ぎながら、颯星が神谷神社へと向かっていく。後に残されたのは元通り飛水と千弥佳だけだった。
「ねぇ、Prayers、私たちのこと、もう少し聞いていってくれない?」
「…お願いするわ」
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Side:千弥佳
「神谷祈雨ちゃん、祈雨ちゃんのことについては高校からしか知らないから、どうしても推測になる部分はあるけど、私のことは信頼してくれたみたいで色々喋ってくれてるの。それは今でも変わらない」
「祈雨ちゃんは神谷神社を建て直すためにはまず自分についてくる人が必要で、その為には色々できる必要があると思ったみたい。だから中学を返上で、勉強に打ち込んで…」
「それで才縁高校(さいえんこうこう)なんて難関校に入ったのか…」
「うん、それで神社のことを手伝ってくれる人を探していたの。でも才縁高校は比較的プライドの高い人が多かったりして…酷いことも言われてたみたい」
「どうしても周りに恵まれて育った人間と、一人で走ってきた人間じゃ価値観合わないわな。お前はどうしてPrayers?に入ったんだ?」
「酷いこと言われても祈雨ちゃんは毎日協力者を探してて、全く諦めてなかった。そんな様子が目に止まって、私も祈雨ちゃんを手伝おうと思ったの」
「祈雨ちゃんのカードは凄い強さで、クリーチャー世界の扉を任意の場所に開けてしまえるの、まぁどこにも開いたら他の人が入っちゃうから、飛水くんにも言えない秘密の隠し場所があるんだけどさ」
「それでちょくちょく連れ込まれて、お前達も知ってたわけか」
「結果的に体感時間とかから違和感に気づいて、祈雨ちゃんだけが入るようになったんだけどね」
「なぁ、あいつら次に何するかとか聞いてないのか?」
「祈雨ちゃんが絶対に成功させたいって言ってた相談があるの」
わたしは飛水くんに近づいて、耳打ちする。
「おま、近い…!」
「静かに、この情報を渡したらわたしは祈雨ちゃんに間違いなく失望されるから、せめて。ね?」
「…分かった」
伝えた情報を聞いて飛水くんは大きく動揺する。
「お前…そんなの…!?」
「うん、わたしも正直半信半疑だし、見つけられるかもかなり非現実的。でもこれで、祈雨ちゃん達の本気は伝わったと思う」
「あぁ、嫌でもな」
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Side:飛水
「飛水!大丈夫だった!?」
須谷さんの車から降りるや否や、夕哉がこっちに駆け寄ってくる。
「あぁ、色々聞けた。ある意味一番収穫あったかもしれない」
「そっか、でも何より無事でよかった!」
須谷さんが言った言葉は迂闊だった。初めて会った時に光屋を馬鹿にしちまったことに一番怒った人間、人の為にどこまでも走る人間に最大の点火剤を与えてしまったのだから。
「青海さん黒井さん、皆様に伝えてください。Prayersの次の目的はあらゆる病気、怪我を快方に向かわせる薬草だそうです」
「病気や怪我を快方に…?本当にあるんですか…?」
「…? はい、今のところ実在は確認できていませんが、ある程度彼女達は確信を持って探しているようですね」
須谷さんがそう言ったところで俺はようやく気づいた。間違いなく俺が一人で抱えておかなければならなかった言葉。
「そうですか、可能性があるなら、行かなきゃですね」
夕哉の顔は笑っていなかった。張り付いたような。瞳の中に別のものが映り込み、それしか見据えていないような。
火奈と!緑の!今日のカード紹介!
「今日のカードは…」
「「覇炎龍 ボルシャック・ライダー!」」
「スピードアタッカーでパワー9000のWブレイカーだよ」
「シールドに攻撃が通った時、割るシールドの数だけアーマードメクレイド5が発動!爆発的な展開ができちゃう!」
「相手の反撃も味方ファイアーバードにセイバーしてもらうことで生き残ることが出来ちゃうね」
「というわけで次回、『ゴルフやらない?』」
「「お楽しみに!(だよ)!」」