ガンダムビルドダイバーズRE:Riiiiiiiiiise   作:Haturu

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道すがら、思い描く②

「着いたぞ」

 

前方を走っていたムランの輸送車がブレーキを踏んだ。ガンプラに乗って空を飛んでいた私達も、それに合わせて地上へ降りる。

 

「……ここが?ただの湿地林にしか見えないが」

 

シンラの発言は的確だった。

 

目の前に広がるのは、底が見えないほど黒ずんだ泥の川と、無数のマングローブ。

 

━━いや、エルドラにマングローブがそのまま自生してはいないだろうから、マングローブモドキと言った方がいいだろう。

 

ともかく、そんな特徴的な木が、泥川に沿って鬱蒼と根を生やしていた。だが、目的地の目印になりそうなものは見つからない。

 

私やフレディが困惑する中、シンラの質問をムランは半分だけ肯定した。

 

「私も最初はそう思ったさ。クアドルン、頼む」

 

『あぁ』

 

クアドルンがゆっくりと荷台を降り、川に向かって歩く。

 

何をする気なのかと黙って見守っていると、彼は前脚で泥川を漁り始めた。数秒の後、バシャバシャとした水音の中にカチリ、と機械音が混じったその瞬間、水面が割れ、地響きと共に鋼鉄の円盤が姿を現す。

 

「うそ……」

 

あんぐりと口を開け、呆然としてる私をみて、ムランは珍しく、クスッと笑った。

 

「この場所が、我ら遠征隊が辿り着いた最終地点……アルス・ヘイヴンズだ」

 

* * *

 

アルス・ヘイヴンズ。ヒトツメ達の避難所。

 

ムラン達遠征隊によって名付けられた地下基地は、その謙虚な名前に反する桁外れな規模を有していた。

 

まず私たちを出迎えたのは、天井の高さが20メートルはありそうなほど巨大なモニタールーム。

そこの窓ガラスからは、全長が数キロ以上続き、全貌が把握できないほど巨大なヒトツメ生産工場が見える。

 

不動を貫くコンベアに鎮座するヒトツメの機体達は、新品同然の輝きを発しているが、目に光は灯されておらず、動く気配もない。

 

しかし、ガラス一枚を隔てた先に数百、もしかしたら数千の敵機が存在を主張しているのだ。その圧力は、私の足を震わせるには充分すぎた。

 

『心配するな、動きはせん』

 

「さ、さいですか……」

 

私の情け無い様子を見た筈のクアドルンが、表情を変えずに言った。

聖獣様が言い切ったのだから、奴らヒトツメが動く心配は万に一つもない……はずだ。

 

「動かせるか」

 

「あぁ、問題ない。おそらくコレとアレが……」

 

ムランとシンラの二人は、先ほどから頭を揃えてモニターと睨めっこをしている。 身長の足りないシンラをムランが抱き抱え、キーボードを叩かせている様な形で。

シュールな絵面だが、本人達はいたって真面目である。

 

「電源、きました!」

 

モニタールーム右舷のこれまた巨大な鉄製のドアの前に立つフレディが、部屋中に響き渡る声でそう叫んだ。

 

「よし!フレディ、スイッチを!」

 

「はい!」

 

ムランの声に同調したフレディが、思いきりジャンプし、彼の身長よりも高い位置にあるスイッチを押した。

意外なことにドアは何の軋みも起こさず、スルスルと横へスライドしていく。

 

「す……凄い」

 

本日二度目の感嘆の声を発してはしまったが、扉の先にあった物はその反応に値する物だった。

 

部屋の中に佇んでいたのは、空色をした立派なスペースシャトル。

 

あまりの衝撃に、私の足が無意識に部屋の中に向かう。

真っ暗闇の部屋の中央は、光量の凄まじいライトによって照らされており、空色の装甲板は光を受けてシャトルの威光をより強めている。

 

シャトルの近くに寄って手を触れてみると、鉄の板とは思えない程なめらかな手触りをしていた。

それだけではない。装甲板の一つ一つが、精巧に作られた陶芸品のような美しさを醸し出しており、機械特有の力強さと上手く融合している。

 

これから使ってしまうのが、もったいないと感じるぐらいだ。

 

「まさか、エルドラにスペースシャトルがあるとは……」

 

部屋の向こうから聞こえたのはシンラの声。彼もまた、驚きが隠せないようだ。その証拠に普段よりも声の抑揚が大きくなっている。

 

「コレが、今の我々に残された、月に行く唯一の手段だ」

 

ムランのその言葉を境に、シャトル前方から突風がなだれ込んできた。

 

警報音と共に部屋が唸りをあげ、揺れる。

数秒の混乱の後、シャトルを照らすスポットライしか光源のなかった部屋に、温かみのある光が差し込んできた。

 

日光だ。窓ガラスの外には先程通った湿地林が見える。

 

床が迫り上がったのだろう。地下にいたはずの私達はいつのまにか地上に上がっていた。

 

内装に変化はない……と思ったのだが、シャトルの前方に、どこか見慣れた装置が現れていた。カタパルト……いや。

 

「マスドライバーまであるとはな。まさしく至れり尽くせりだ」

 

いつのまにか部屋に入っていたシンラが呟いた。

 

マスドライバー。

 

確か宇宙に大量の物資を輸送するために考案された代物だ。と言っても、カタパルトと対して原理は変わらない。

 

荷物、この場合はシャトルだがそれらを大砲のような要領で打ち出し、加速させる。

 

この知識は現実準拠のものだが、エルドラにあるのも似たような使用用途だろう。

 

GBNにも何個かマスドライバー施設があったはずだ。

確か、コレと似た空色のシャトルを使って、BUILD DIVERSは難攻不落と呼ばれたロータスチャレンジを━━

 

私がそんな何かに結びつきそうな、かと言ってする必要もない思考をぼんやりと繰り返していると、突然耳元で爆発じみた轟音が鳴り響いた。

 

「うぎゃあっ!!な、何するんですか!!」

 

耳を抑えながら、足元に居た爆音を発したであろうシンラに向かって叫ぶ。

 

彼の手元はプスプスと音を立て、煙を上げていた。

 

煙が出るほどの力でする拍手とは一体、などと考えていると矢継ぎ早に彼の罵声が部屋に響く。

 

「ミーティングをするとムランが何度も言っているだろう!行くぞ!」

 

シンラが指差した先には呆れ半分なムランの顔と、オロオロとしたフレディの顔の二つがあった。

 

「す、すいません!今行きます!」

 

 

 

数十分後。

 

私達はシャトル内のコックピットに座っていた。

 

ミーティングで主に話されたのは、シャトルの打ち上げ手順、作戦メンバーと衛星基地の地図の確認の三つだ。

 

メンバーはムランとクアドルンを除いた私、フレディ、シンラの3人。

 

ガンプラはGラグナロク(シンラ)と、エルドラGMの二機。

 

クアドルンがここに残るのは、単純にシャトルにスペースがなかったからだ。

 

操縦席も二つしかなく、ガンプラに乗る私と、衛星基地に訪れたことがあるフレディが選ばれ、消去法でムランが残ることになった。

 

シャトルにはガンプラ3機分のカーゴが内蔵されているので、一つ余ってしまうことになったが、クアドルンを詰め込むのは不可能だし、地下のヒトツメを持っていっても乗る人がいない。

 

これでは戦力が心許ない気もするが、ムラン曰く、心配ないとのこと。

 

実は月の調査は以前にも行われていたそうで、時期はスルトがレジスタンスに入隊する前。

 

当時、単独で大気圏を突破できたクアドルンが、シドー・マサキを連れて衛星基地を調査したが、多少未確認型のヒトツメが現れた程度でこれといった変化はなかったそうだ。

それに加えて、クアドルン達が前回の調査の際にわずかに残ったヒトツメの生産設備を突き止め、完全に破壊してくれたので戦闘が起こる可能性は著しく低い。

 

打ち上げの方はMS状態でカーゴに入るシンラがやってくれるそうなので、ミーティングの間、私は基地内部の地図を頭に叩き込むことに専念した。

 

一度訪れたことのあるフレディが引率してくれるので、特段覚える必要はないが、単独行動することがないとも言い切れない。

 

私が地図をそれなりに覚え終わった頃、ミーティングは終わり、私達はシャトルに乗り込んだ。

 

* * *

 

「大気圏突破を確認。自動操縦に移行」

 

淡白なシステム音声が、そう私達に告げた。

途端に、体が無重力特有の浮遊感に包まれる。

 

「「はぁー……」」

 

緊張の糸がぷつりと切れ、私とフレディは同時にため息を吐いた。

 

「凄かったですね……その……加速が!」

 

「うん……あんなに速いとは思わなかったよ……」

 

数分前のシャトル打ち上げの記憶は、意識を保っていたはずなのに殆どない。

 

というのも、シャトルが視界が歪むほどの速さで打ち出された故に、凄まじい衝撃と速度に堪えている内に、いつの間にか大気圏を突破してしまったのだ。

 

「うわっ!おっとと……」

 

椅子の固定ベルトを外した途端、体が浮かび上がり、いうことを聞かなくなってしまう。

すかさず、フレディが手を差し伸べてくれる。

私と違って彼の体使いは一歩先を行っているように感じる。

 

「宇宙慣れしてるね、フレディ」

 

「はい!だってもう三度目ですから!」

 

それもそうだ。現実の宇宙飛行士だって、三回も宇宙に上がればベテランだろう。

 

手足を使っての姿勢制御、いわゆるAMBACを使いこなすフレディに指導を受けていると、カーゴにいるはずのシンラから、モニターを通しての通信が入った。

 

「二人とも、少しいいか?」

 

床を蹴ってモニターに近づき、二人して顔を覗かせる。

 

「何かありましたか?」

 

「フレディ。君に聞きたいことがあるんだが……」

 

モニターの画面が一瞬暗闇になり、何やらアルファベットが並べられた画面へと切り替える。cargo logと見出しにあるので、これは積荷の過去履歴だろう。

つらつらと並べられたアルファベットの中に、かろうじて読めそうな文字を見つける。

 

GUNDAM SELTSAM

 

「ガンダム……せ?セルト……サム……?」

 

「どうやら、これでゼルトザームと呼ぶらしい」

 

「……ゼルトザーム!」

 

見慣れない単語が一息に悍ましい存在へと変わり、その落差から全身に震えが走る。

 

「ログには、数年前に何度か積荷としてこのシャトルに乗ったとある……フレディ……心辺りはあるか?」

 

フレディは少し考え込んだ表情をした後、何か合点がいったのか呟く。

 

「その……ゼルトザームは、神出鬼没なことでレジスタンスに恐れられていました。宇宙だろうが、地上だろうが、何処にでも現れたんです。」

 

となると、このシャトルの本来の使用用途は

強襲用なのだろうか。フレディがこのシャトルの存在を全く知らなかったことから、流石にコレ単身突撃してくることはなかったのだろうが、レジスタンス達の付近にシャトルを不時着させるくらいなら出来そうな気もする。

 

「なるほどな……すまない、何でも確かめたくなる性分なんだ」

 

確かに、幾らゼルトザームがこのシャトルで運ばれていようと、何年も前のことだ。今の私たちにはあまり関係がない。

 

「……そろそろ衛星に着く頃だ。フレディ、タツカ。準備を頼む」

 

ガンプラの状態確認や、ルートの再確認を終えると衛星は、もう目の前にまで迫っていた。

 





ビルドダイバーズが使っていたのとほぼ同型のシャトル。
ゼルトザームを運んでいたそれを、天才モデラーのコーイチが作ったことは誰も知りません。

今回、アルスヘイヴンズなどオリ設定満載です。
原作の不明瞭なシーンをそれっぽく理由づけしてみたはいいのですが、自分の知らない所で設定が食い違っているのではないかとヒヤヒヤしております。

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