ガンダムビルドダイバーズRE:Riiiiiiiiiise   作:Haturu

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VSゼルトザーム①

『体を鏡砂に変えるのです』

 

『メインプログラムをコンバートします』

 

『エルドラウィンダムを用意しました。体を鏡砂に変えて詰めます。さぁ、エルドラへ帰りましょう。スルト』

 

きっとうまく行く。

 

今までもそうだったから。

 

アルは優秀だ。私なんかよりもずっと、ずっと。

 

「よくやった。スルト」

 

何ヶ月ぶりに聞いた他者の言葉。

私を拾った、レジスタンスとやらのリーダのあの言葉。

 

嬉しかった。

 

「よっ新人!性が出てるな!」

 

嬉しい。もっと……もっと言われたい。

 

『ならば、ガンプラを作るのです』

 

「凄いな!スルト!」

 

もっとだ。

 

『次はヒトツメを減らしましょう』

 

「遠征隊の派遣か……なるほどいい案だ」

 

もっと、もっと。

 

『フレディを殺しなさい』

 

━━あれ。

 

「スルト様!」 「スルト殿!」 「リーダー!」

 

心地いい。いいんだ。これで。

 

アルもそう言っている。間違っているはずが━━。

 

* * *

 

「リーダー!しっかりしてくださいよ!」

 

「んな……あ、あぁ」

 

まどろみから目覚めたスルトは、自分が今まで寝ていたと気づくのに数秒の時を要した。

 

ここは衛星基地でもなければ、氷河の上でもなく、セグリのレジスタンス本拠地最上階、執務室だ。

 

「ノザトか……どうした?」

 

「どうした?じゃないっすよ!穏健派の動向!報告中じゃないですか!」

 

「あ、あぁ……そうだったな、すまない」

 

「全く……続けますよー、密偵からの報告によると、穏健派は……」

 

遠征隊襲撃後、スルト達強硬派は一旦セグリに帰投した。

予想外のハプニングもあったが、最低限の成果は得られた。こちらの損害はゼロに対して、相手方は、MSを全損し、聖獣の羽をもがれたのだから。

 

ここまで痛みつければ、多少身勝手な交渉を突きつけても反論できまい、そう考えての一時撤退だったのだが、話は予想外の方向へ転がっていた。

 

「うーんと、報告は以上っす。んで、心配なのが……」

 

「分かっている。ムラン達の動向がわからんのだろう」

 

「……ええ、すんません、俺が知っている限りは……」

 

「いい、気にするな」

 

━━スルトにとって予想外だったのは、ノザトやそれ以外のスパイが『アルス•ヘイヴンズ』の所在地を掴めていなかったことにある。

 

実は、ムランとクアドルンは『アルス•ヘイヴンズ』発見時に遠征隊を近隣の村に待機させていた。だからこそ、スルトは最大の読み違いをしてしまったのだ。

 

(白金の塔に行った……?いや、鍵はこちらが押さえている、だがもし、私の知らない宇宙の上がり方があったのなら……)

 

「それと……遠方の村から伝令が一つ」

 

「なんだ?」

 

「"変な形の雲を見た"らしいっす。なんでも、地面から生えてきたような……まぁこれはただの与太話……」

 

━━バァン!

 

執務室に、鈍い音がこだました。

 

スルトが机を叩きながら、勢いよく立ち上がったのだ。その衝撃で机の上にの小物はバランスを崩し、目の前にいたノザトも目を丸くしている。

 

「え、ちょっ」

 

困惑したノザトを無視して、スルトは机から菱形の物体を取り出した。小ぶりな短剣ほどのサイズのそれは、まごうことなき白金の塔の鍵である。

 

「ノザト。私は二、三日空ける。その間の指示権はお前とユナクに渡す」

 

「はぁ?!ちょ、待ってくださいよ!」

 

「任せたぞ」

 

そう言うや否や、スルトは駆け足で執務室から出ていった。

 

「リーダー?!リーダー!!」

 

ノザトの叫び声は、スルトの耳に届いていない。

 

『白金の塔に向かうのです』

 

彼の頭の中で無機質なアルの声が何重にも響いていた。

 

* * *

 

衛星基地の周りはデブリの浮かぶ暗礁地域になっている。宇宙らしいセオリー通りのフィールドだが、デブリの中にはガンプラらしき腕やら脚やらが紛れており、遮蔽として使えそうなものは殆ど無い。

 

それでいて視界を遮ってくるのだから、かなりのわずらわしさがある。

 

「タツカ。分かっているな?あの必殺技はダイバー単体にしか効果がない。だから……」

 

「コックピットを引っぺがした後に、私がコマンドを入力する。ですよね?」

 

「あぁ。そうだ。」

 

シンラの相槌を耳に入れながらも、私はこの戦法が上手くいく確信が持てなかった。

 

"データの書き換え"ができる必殺技と聞けば聞こえはいい。実際私はチートそのものだと思った。だが、この必殺技、正式名称『パルマフィオキーナ:ブレイクブースト』はガンプラに使用しても全く効果がないそうだ。

 

つまり対象者がガンプラに搭乗している場合、前述の通りコックピットをなんとか引き剥がして、その中身に使用しなければならないと言うことだ。

 

それに加えてここは宇宙。つまりは無重力、無酸素空間。コックピットをぶち壊そうものなら中身のパイロットは数十秒もしない内に死に至る。

 

内部分裂したレジスタンスを再び統合するためには、タブレットに残された証拠と、洗脳を解いたスルト本人の自首が必要。それがシンラの見解だった。もし私が失敗して、スルトの息が止まるようなことが起きたら、レジスタンスの崩壊は確定し、ヒトツメもまた暴れ出すかもしれない。

 

失敗はできない。私がプレッシャーに耐えかね息を吐いたその時。

 

「来たぞ!」

 

シンラの言葉と共に機体が動き、モニターがそれを追従する。

 

屑鉄の奥から、一筋の光が姿を現した。光は明滅しながらも真っ直ぐにこちらに向かってくる。

 

識別システムが光の正体を明かそうと演算を続けるが、私もシンラも、その光がスルトの乗ったゼルトザームであることを直感していた。

 

「シンラアアアァァァ!!」

 

金切り音を思わせる、戦闘開始のゴング代わりのその絶叫。紛れもなく、スルトの声だった。

 

「行くぞタツカ!」

 

「はい!!」

 

加速する機体に引っ張られるように、思考にもギアが入る。

 

先程まではただの光点だった敵機も、近づくにつれ形を成していった。

 

異形の右腕に身の丈ほどのある巨大な槍を握り、破壊力の詰まった切っ先をこちらに向けている。予想通り、スルトの乗ったゼルトザームだ。

 

「死ねエエエェェェ!!」

 

怨嗟渦巻く絶叫を上げながら、スルトはドス黒い流星となり、此方への突撃を開始した。

 

「……シッ!」

 

シンラが、スルトとは対象的な短い気迫と共に槍の切っ先に右手を伸ばす。

 

━━あぶない!

 

私が叫ぼうとした、その時だった。

 

シンラは凄まじい反応速度で槍を掴み、体を反転させながらゼルトザームに向けて渾身のサマーソルトを放った。

 

「ぐっ……!」

 

ゼルトザームは勢いを殺しきれずに大きめのデブリに激突。振り向きざまに確認すると、アンテナにヒビが入っている。

 

「よくもぉぉ!!」

 

ゼルトザームが、背部に懸架されたランチャーの砲身と脚部ビームガンを展開した。遠距離攻撃なのは明白。

 

「ファンネル!」

 

私が叫ぶのとほぼ同時に、ゼルトザーム各部の銃口からからとてつもない光量が溢れ出した。

コンマ一秒後、視界がホワイトアウトしてしまうほどの熱線が放たれる。

 

熱線はデブリを塵芥にしながら進む。なんと恐ろしい威力であろうか。

 

だが、負けるわけにはいかない。

 

私は二つのR(ライフル)ファンネルと、背部レールガンを展開し、ためらわずに引き金を引いた。

 

互いの一斉放火はすぐさま衝突し、押し合いの形になる。数秒の拮抗の後、ゼルトザームが勝利を確信したかのようにツインアイを点滅させた。

 

迫り来るビーム。私の視界は爆発に飲み込まれた。

 

「ハ……ハハハ!!」

 

スルトの高笑いが、残骸浮かぶ宇宙の荒野に響く。しかしながら、そのボリュームは、すぐさま絞られることになる。

 

「しぶとい奴め……!」

 

ゼルトザーム二つ目が、こちらをギロリとと睨んだ。

 

「《ソードファンネル•バリア》。勝ちを確信するには、少し早かったな、スルト。」

 

私が周囲に展開していたファンネルを収納したその瞬間、シンラがまるで自身の手柄のように呟いた。

 

「ようやく……ようやくここまで来たんだ!なのに……!!」

 

「それはどう言う意味だい?スルト……いや、"アル"」

 

「…………っ!!」

 

スピーカー越しの鋭い呼吸。動揺がこちらにも伝わってくる。

 

「見たのか……!アレを……!」

 

「おいおい、君が残していったものだろう……そんなに大切なら、隠しておけばいいものを」

 

シンラの言う通りだ。アレほど重要な証拠をモニタールームに投げ出す理由はない。

 

━━あるとすればそれは、おそらく……

 

「私は……私はっ…………!!」

 

スルトの嗚咽に呼応したかのようにゼルトザームが体を捩らせた。

 

それを見たシンラが発言する。

 

「チャンスだ、スルトを空気のある所に誘導して"処置"する。しくじるなよ」

 

「……はい」

 

あまりにも冷静なその口ぶりに、私はただ頷くことしか出来なかった。

 

日記の内容からはシンラとスルトの間柄がただのゲーム仲間ではないと示している。

 

王と臣下、親と子。明確な上下関係があるのは明らかだ。

 

だから、苦しんでいるスルトに対して無反応なのだろうか?

 

「あああぁぁぁ!!」

 

スルトの発狂と共にゼルトザームが動く。

 

今は戦闘中だ。

 

雑念を振り払い、私は操縦桿を握り直した。

 

 

* * *

 

━━スルトと衝突する五分前、衛星基地内部。

 

「……あれ?タツカさん?」

 

フレディはエルドラGMに乗りながら、衛星基地内部に侵入していた。

 

だが、後続に来るはずのタツカ達が来ない。

不思議に思いながらも、フレディは基地内部を進む。

 

(何かあったのかな……でも、回線は繋がってるし……)

 

何か話し合いをしている?いや、あの二人なら言い合いの可能性の方が高い。

 

もしタツカ達がヒトツメと接敵し、戦闘状態になっているとしたら、心配ないだろう。

 

あの二人がそう簡単にやられるとは思えないし、仮に二人が苦戦する程の敵が現れたのなら足手纏いになるだけだ。作戦会議の時も、なるべく戦わないようにと忠告されている。

 

「……進もう!」

 

数秒の沈黙の後、フレディはそう決心した。

 

宇宙空間を経由してから侵入した衛星基地の通路は、横幅も広ければ天井も高い。

 

明らかなMSサイズに調整されており、驚くほど端正に整備されている。モニタールームのある通路の方とはえらい違いだ。

 

「ってことは……」

 

何かがあるんだろうな。フレディが心の中でそう呟く。

 

鏡のように磨かれた純白の廊下は果てしなく長い。最初は警戒して一歩一歩進んでいたフレディだったが、数分もしないうちにスラスターを噴かした高速移動を使用する。

 

その甲斐あってか、十分と経たないうちに終着点が見えた。フレディがえいやっと、操縦桿を更に傾ける。

 

「……これは部、屋?」

 

フレディが自信なさげに呟く。

そこは、明かり一つない、真っ暗闇の空間だった。そして、天井と地の底を感じない。見えないのではなく、あるかどうかわからないのだ。

 

ほぼ円状の細長い空間は、白金の塔を再起させるが、あちらとは全く雰囲気が異なる。本当に虚無そのものなのか、フレディは不安になった。モニターを凝視し、ほっと息をつく。僅かな光を見つけたのだ。

 

スイッチのような何かだとフレディはなんの根拠もなしに近づいた。

 

「……あれ?」

 

『121:32:09』

 

光の正体は、意味の分からない数字の集合体だった。だが、その数字は一秒、また一秒と変化していく。

 

「これは……時間……?でも、なんの……」

 

エルドラGMの腕を動かし、宙に浮かぶタイマーに触れようとする。

 

そこでフレディはようやく気づいた。今まで壁と認識していたものが、異形の形をしていたことに。

 

暗がりに隠蔽された、巨大な腕や頭。無限に近い数の沈黙したヒトツメに囲まれ、フレディは確信した。ここは、ただの部屋じゃない。

 

──ここは巣だ。ヒトツメ達を匿い、育てるための"巣"。

 

 

 

 




訂正、道すがら思い描く①
✖️ この"二週間"の内に得た知識と技量だけで〜〜→◯この"一週間"

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