ガンダムビルドダイバーズRE:Riiiiiiiiiise 作:Haturu
村には土壁造りの家が数多く佇んでいた。
例えるなら、竪穴式住居が近いだろうか。
その中の一つ、周りよりも一回り大きい二階建ての家に私達は招かれた。
「私がこの村の長、トノイと申します」
「シンラだ。先ずは相方の救急処置感謝する。」
「ありがとうございます」
私はシンラに促され、頭を下げる。
皆が正座をしている中、私だけ足の傷の関係で姿勢を崩していたが、その時だけは姿勢を正した。
トノイと名乗った老人はやはりシンラを見て大層驚いた。
移動中のストラの話だと、この世界の人にとってガンプラは救世主と同義らしい。
そうであるならば、小さなガンプラであるシンラの姿は、あちらの世界よりも注目を浴びて当然だろう。怪我をした私を差し置いて人だかりができていたほどだ。
私にとっては"エルドラ"がGBNの中ではないということの方が驚きであったが。
「事情はストラから聞きました……なんでも遺跡の中で目覚めたとか」
「あぁ、ビルドダイバーズと同じ……だったか?」
「ええ、そうです。彼らのことをご存知で?」
「もちろんだ!小説にもなっているからな!」
シンラは声を張り上げて得意げに胸をそらした。
目線が私に向いていたのはおそらくわざとだろう。
トノイは気づかなかったらしく「おぉ、なんと……」と呟き感嘆していた。
「だが、ストラから聞いたのはそこまでだ。何故ヒトツメが居るのかは知らない。僕達が遭遇したのは残党か何かか?」
その問いに、トノイの顔が少しだけ暗くなった。
「それを説明するには少し長くなります……よろしいですかな?」
「あぁ、構わない」
トノイは深く息を吐き、ポツポツと私たちに説明をし始めた。
* * *
シンラさんのいう通り、ビルドダイバーズのお陰で私たちは平和を取り戻しました。
確かに残党は残って居ましたが、それもごく僅か。被害は全くありませんでした。
ですが、2年程経ったある日を境にヒトツメの目撃情報が段々と増え始めたのです。
ヒトツメの復活。その疑惑は日が経つにつれ確信へと変わり、ヒトツメの存在に恐怖する日々が戻ってきてしまいました。
待て、と言ってシンラが手を挙げた。
「ビルドダイバーズはどうした?それに、戦力は彼らだけではないとも聞いているが……」
「ええ、もちろんです。レジスタンスに聖獣様。
ビルドダイバーズ以外にも一人のビルダー様が……皆、私達のために戦ってくれました……3年前は。」
含みのある言い方に即座に反応するシンラ。
「3年前は、か……」
シンラが低い声で呟く。
トノイは頷き、儚むような表情を浮かべた。
「今にして思えば、ヒトツメが復活する前からその兆候はありました……レジスタンス内での一つの意見として……」
「内輪揉めか?」
シンラの質問にトノイはゆっくりと頷いた。
「……最初は、"ビルドダイバーズや聖獣様に頼り切りではよくないのでは?"という小さな疑問でした……」
その時、急にドアの向こうが騒がしくなった。
ズシン、ズシンとした地響きの後、勢いよくドアが開けられる。
「トノイさん!大変だ!"レジスタンス"が来ちまった!」
入ってきたのはストラだ。血相を変え、息も切れ切れである。
「なんと……!間の悪い……!」
村長は急いで立ち上がり私達二人に隠れるよう促した。
「2階に息子の部屋があります…!散らかってはいますが、そこに……!」
「わかった、助かるよ」
私達は急いで2階に身を隠した。
その数秒後、再度、ドアが開けられる。
私達は会話に聞き耳を立てた。
聞こえてきたのは村長の柔らかい口調と、それとは対照的の横暴な野太い声だった。
「遠路はるばるご苦労様で……
「世辞はいい。急いで水と物資を村人に補給させろ」
「…………分かりました、ストラ。」
「……はい」
一人分の足音が家から出ていった。
「村人からヒトツメが現れたと聞いた。どの方角だ?」
「……遺跡の方です」
遺跡、と彼が言うと大袈裟なため息が聞こえてきた。2階まで響くほどなのだから、相当なものだろう。
「"鏡砂の回収任務"だと聞いていたのに……ふざけやがって……クソッ」
ドンっと低い音が鳴った。壁、もしくはドアを叩いたのだろう。
どちらがやったのかは明白だが。
「あの……ヒトツメは……」
「あぁ?出たら壊してやるよ、出たらな……」
それを境に野太い声は少しずつ離れていった。
見つからなくて良かった、と胸を撫で下ろし、安堵した……のだが。
「おい、タツカ!見ろ!」
シンラは小窓から外の様子を伺っていた。
潜伏中だってのにこの人は。
「ちょっとっ!静かにしないと……」
私は小窓から彼を引き剥がそうと息を殺しながら、ゆっくりと忍足で近づいた。
だが、窓の外の光景を見た瞬間、その光景は私の目を釘付けにした。あまりの衝撃から、思わず息を大きく吸ってしまう。
「第八部隊!行くぞ!」
先程の野太い声だ。銀に光る分厚い鎧を着込み、見るからに兵士と言った風貌をしている。
そして、そんな兵士の姿をしたレジスタンスが今まさに乗り込もうとしているのは。
「……ガンプラに乗ってる」
外の光景はそうとしか言い表せなかった。
数は3機。足元には、ストラが使っていたタイプよりも大きい、トラックのようなビークル。
レジスタンスはそのまま、私達がこの村に入った時に使った道を大きな足音をたてて去っていった。
地響きにも似た足音が次第に離れていく。
「なるほど……読めたぞ」
シンラが指をパチンと鳴らした。
「何がです?」
「アイツらはガンプラに乗れるようになって……思い上がったのさ。"ビルドダイバーズなんて必要ない"と」
「その通りです」
声のした方へと振り返ると階段を登ってきた村長がそこに居た。彼の顔は、数分前よりもやつれて見える。
「あれが、今のレジスタンスの現状です。ビルドダイバーズに頼らずとも身を守れるように……そう始まったはずの研究はいつしか、ビルドダイバーズは必要ないという風潮へと変わっていきました……」
「ま、待ってくださいよ」
「おい、タツカ……口を挟むなよ」
「だって……あんまりじゃないですか!恩を仇で返してる!」
「確かにそう言われても仕方ないかもしれません……ですが……そこに至る経緯は少し複雑なのです」
ほらな、黙ってろ
シンラは無言で私にそう訴えた。私がひとこと謝りを入れると、村長はまた、話し始めた。
「今、レジスタンスは二つの派閥が争っています。私の息子……フレディが率いる"穏健派"。そして……今ガンプラに乗って遺跡に向かった者のような"強硬派"。リーダーの名は……スルト。」
「!!」「あっ!」
「……?どうかされましたか?」
私達があからさまな反応をするので、村長は困惑した表情を見せた。
すかさずシンラが説明を入れる。
「僕達をここへ送った張本人だ。まさかここで名前を聞くとは思っていなかったが……話がそれたな。悪い、続けてくれ」
「では……」
村長はその場に座って話始めた。
両派閥とも最初はあくまでれし組織内の一部門でした。穏健派は戦意喪失したヒトツメの保護を。
強硬派はヒトツメに対抗できるような戦力の増強を…………それがヒトツメの復活によって関係が悪化、対立し……他の部門を巻き込み、レジスタンスを二分するようになったのです。
この問題には、ビルドダイバーズが関わることが出来ませんでした。
彼ら自身はもちろん穏健派なのですが、強硬派の意見も的を得ており……立場上、どちらかに肩入れをすることなども出来ず……
強硬派がガンプラの開発に成功したのが後押しとなり、最終的に彼らは何かあった時の有事の戦力として扱われることになりました。
ですがこの結果、穏健派にはこれといった戦力がなくなってしまいました。
それどころか、強硬派は穏健派をヒトツメを集め謀反を企てていると決めつけ……彼らを監禁しています……
「聖獣さんはどうした?」
「わかりません……レジスタンスの本拠地にいらっしゃるはずなのですが……」
そういった村長の手は震えていた。
今までの話が全て真実なら、彼の息子のフレディは遠く離れた地で監禁されているということになる。
シンラもそれを理解したのか、いつもより柔らかい声のトーンで話し始めた。
「ありがとう村長。お陰で現状を把握できた。思ったより状況は複雑だが……それも悪い方に……」
村長の気持ちを汲み取ったのかと思いきや、シンラは不安になるような一言を付け加えた。
なんなんだこいつは。
だが、彼の続けた言葉は意外なことに……
「よし、決めたぞ。僕達は穏健派につく。な?タツカ?」
「はい!ってえ?」
「な、何故……」
「僕達はスルトに用がある。あなた方はスルトのいる強硬派に苦しめられている。利害は一致していると思うが?」
「で、ですが……」
「待ってくださいよ!私たちがなんの役に立つっていうんですか!」
私は自分が役立たずであると叫んだ。
だが、それは紛れもない事実である。
穏健派につくのは賛成だ。シンラにとっては、かつての仲間の暴走で事態が悪化しているのだから、責任を感じているのかもしれない。
しかし、私たちに何ができると言うのか。現状、私達はヒトツメから満足に逃げることすらできないのである。
村長もうっすらそう思っていたのか、不安そうな表情を見せた。
だが、シンラは自信満々に言い切った。
「役に立たない……それはガンプラがなければ、の話だろう?」
そう言いながら、彼は床に開きっぱなしで置いてあった本に手をかけ、私たちに見せつけた。
「ここに書かれている石板のような物を遺跡で見た。あんたの息子さん……フレディはこれを使ってビルドダイバーズを召喚したんじゃないのか?」
村長は驚きながらもその通りだと頷いた。
「やはりな……」
「と言うことは……私達も遺跡を使ってガンプラを呼び出せる……?」
「あぁ、恐らくこれは遺跡の説明書のような物だろう……よし、急ぐぞ」
「急ぐ?なんでです?」
私の質問にシンラは肩をすくめて答えた。
「……さっきレジスタンスの会話であっただろ……鏡砂の回収任務だと……村長、車を一台借りたい。頼めるか?」
「ええ、もちろんです」
村長は急ぎ足で家を出て行った。
数分もしないうちに準備を終えてくれ、私たちはビークルに乗り込み、レジスタンスの後を追った。