ガンダムビルドダイバーズRE:Riiiiiiiiiise   作:Haturu

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The Final Answerers 《最終回答者たち》③

現在、アルがヒトツメたちに侵攻させている場所の条件は二つ。

 

かつてビルドダイバーズが訪れた居住区であり、ダイバーを召喚可能な遺跡が周辺にあること。

 

セグリ、フレディの村に続き、戦闘が激化した森林近くの村では、エルドラGMに乗った数人のレジスタンスが懸命な抵抗を見せていた。

 

「クソッ!これ以上は……!」

 

部隊員の一人が、切迫した状況に小さく毒づく。

 

無理もない。数で勝るヒトツメと、レジスタンス達に機体スペックの差は無く、練度の方も大差はない。

だが、彼にはヒトツメにない覚悟があった。

 

「……俺が奴らを引きつける。その隙に、お前たちは住人の避難を進めてくれ」

 

「た、隊長?!ですが……!」

 

部下の言葉に被せるように、隊長が言った。

 

「部下すら守れない木偶の坊の……最後の罪滅ぼしさ……生きて帰れよ!お前ら!!」

 

その言葉を皮切りに、前線を張っていた隊長機が突如として突進を仕掛けた。

 

「こっちだ!ヒトツメ共!!」

 

隊長は、手に握ったショートソードを無作為にヒトツメに投げつけ、高らかに叫ぶ。

 

「ギィ……」

 

ヒトツメは低く唸り、紫の眼を数機のエルドラGMから、森の奥へと走り去る隊長機へと動かす。

 

運がいいことに、ヒトツメたちに与えられた指令は、『弱者掃討』であった。

 

武器すらも失い、誇りだけを携えた男に、ヒトツメたちは無慈悲な追撃を仕掛ける。

 

ビーム、実弾、ミサイル……ありとあらゆる弾幕の嵐が、隊長機を襲った。

 

「はっ……!当たるものかよ!」

 

しかし、隊長は気丈な振る舞いを崩さず、強気な言葉を吐く。

 

部隊を任されるだけあって、彼の操縦能力は極めて高い。その上、木々などの遮蔽物の多い地形は、逃走する側からしてみればこれ以上ないほどに有利だ。

 

しかし、それはあくまでも逃げにおいてだ。いつかは終わりが来てしまう。

 

「チッ……!」

 

隊長は、木々の密度が少しずつ小さくなっていくことに気づいた。森から抜けかかっているのだ。

 

迂回すれば、それは回避できるかもしれない。だが、敵を引き付け時間を稼ぐという本懐は成し遂げられなくなってしまう。

 

「ここまでか……!」

 

隊長の言葉には、二つの意味が込められていた。

 

意味するのは、遮蔽物に使える木と、自分の命の終わり。だが、隊長は立ち止まることなく前へと進んだ。

 

黄砂の大地をエルドラGMが蹴り、その後を一歩遅れて森から抜け出したヒトツメが追う。

 

そこからは一瞬だった。

 

まず、頭を撃ち抜かれモニターの一部が使用不可になった。

 

次に、足に被弾し身動きが取れなくなった。

 

どこまでも合理的な、狩りとも言うべきヒトツメたちの行動。その獲物である隊長は、既に貪られるのを待つだけとなっていた。

 

森からぞろぞろと列をなして出てきたヒトツメたちが、隊長機を囲む。真っ先に動いたのは、隊長機の正面に立つ、リーダー機らしきヒトツメだった。

 

そのヒトツメ──正式名称エルドラアーミーのビームライフルが、命を奪うための一撃を放たんと力を蓄える。

 

狙いは自分、エルドラGMのコックピット。

 

──時間は稼いだ。あいつらなら上手くやるだろう。

 

向けられた銃口に、隊長は笑みを浮かべた。

 

それが何の感情の発露だったのか、彼が理解する前に──ヒトツメがトリガーを引く。

 

ビームは、真っ直ぐに進んだ。

 

空気を裂き、コックピットに辿り着く、その瞬間。

 

不可思議な音が、隊長の耳に入った。

 

ザッ、ザザッ。

 

木々が揺れる。風切り音が鳴る。

 

その音は、森の奥から発せられていた。

 

隊長がその事を理解した瞬間、上空から飛来した二枚のビームシールドが致命の一撃を防いだ。

 

無数に散らされたビームが、黄色の大地を焼く。

 

次の瞬間、シールドを投げたであろうガンプラが、隊長機の前に音もなく着地した。

 

続いて、球体に足と武装、それとリボンを生やしたかのような装甲に身を包んだ奇怪なシルエットをした機体が、前者とは対照的な重い着地音を響かせる。

 

「あ……」

 

助けられた今更になって、隊長は目を背けていたはずの死の恐怖を覚えた。言うべきはずの言葉が、喉の奥から出てこない。

 

「怪我はないか」

 

ビルドダイバーズの一員にして、唯一のELダイバーであるメイが、隊長機に通信を繋いだ。

 

はやる心音を何とかいなして、隊長が口を開く。

 

「あ、あぁ。だが、機体がもう……」

 

「そうか……だが心配するな、私はお前"も"生きて返す」

 

歴戦の戦士であるメイの言葉は、冷ややかな自信に満ち溢れていた。だが、敵機の数は20を優に上回る。

 

「無茶だ……この数を一人で相手にするなんて……」

 

あるいはメイだけならばこの状況を覆せるかもしれない。だが、今の彼女には動けなくなったエルドラGMという非力な防衛対象がいるのだ。戦力不足は否めない。

 

そんな隊長の不安を、メイは意外な形で覆した。

 

「一人ではない。ここに、もう一人乗っているからな」

 

メイが、ウォドムポッドを撫でながら言ったその言葉の意味を、隊長は理解できなかった。

 

半ば反射的に、その真意を問う言葉が漏れる。

 

「どういう……」

 

その瞬間、通信に割り込んできた者がいた。

 

ウィンドウに肩から上の姿が映し出されるが、その姿に見覚えはない。

 

固められた紺色の髪。その下にある無表情を絵に描いたような顔つきは恐らく少年のものだろうが、瞬き一つしない彫刻のようなその顔は、少女としても通用しそうな雰囲気を醸し出している。

 

唯一分かることといえば、彼がウォドムポッドのパイロットだと言うことだけ。

 

隊長の記憶では、この機体はあくまで本体であるメイの隠れ蓑だということになっている。パイロットが乗っているなどと想像だにもしなかった。

 

「……」

 

無表情の少年が、僅かに体を揺らした。首に何かぶら下げているのか、ちりっ……と金属質の音が鳴る。

 

「な、なにを……?」

 

意図の読めない少年の行動を、隊長が訝しむ。

 

「すまない。少し恥ずかしがりやなんだ。大目に見てやってほしい」

 

「あ、あぁ……」

 

困惑はいまだ解消されないが、隊長はとりあえず、メイの説明で納得することにした。

 

「ギィギィ!!」

 

警戒し、沈黙を保っていたヒトツメが痺れを切らしたのか、怒り心頭とも言うべき奇声を発した。

 

その声が、第二ラウンドのゴング代わりとなる。メイとウォドムが腰を落とし、隊長機を囲むような陣形を取りながら戦闘体勢に移行した。

 

「……来るぞ!」

 

「……!!」

 

メイの言葉に、ウォドムポッドに乗った、"一つ目の首飾り"を下げた少年が無言の気合いを返す。

 

待ちの姿勢を取るメイ達。一方、ヒトツメはジリジリと距離を詰め、包囲網の面積を狭めていく。

 

隊長の額に、冷や汗が浮かぶ。ほんの数秒にも満たないはずのその時間は、幾重にも引き延ばされたかのように思えた。

 

先に動いたのは──ビルドダイバーズ。

 

一息にして、メイは接近しすぎた敵機の懐に入った。

腕を振り払いイニシアチブを取り戻そうとするヒトツメ。だが、メイの機体は蛇のごとくしなり、腕を器用に回避しながら、瞬時に羽交い締めの体勢に入る。

 

「セアッ!」

 

ゴキッ、と恐ろしく生々しい音が、戦場に響いた。首を文字通り折られたヒトツメが、膝から崩れ落ち、沈黙する。

 

それに対するヒトツメたちの行動は冷たかった。仲間の無惨な姿に目もくれず、弱った隊長機と、それを守護するウォドムポッドに切りかかる。

 

「……ッ!!」

 

ウォドムポッドは隊長機に覆い被さるように足を開き、身を挺してヒトツメたちの猛攻から彼を守った。

 

「お、おい!俺のことはいいから、攻撃を─」

 

隊長が叫んだその瞬間。

 

ウィンドウに表示されたままだった少年の瞳が細められ……口元に不器用な笑みが浮かんだ。

 

──どうして。そこまで。

 

ウォドムのHPが急激に減少していることは、少年の後ろに映るコックピットの色の変化をみれば分かる。

 

10数機分の打撃音は、先ほどのメイの首折り攻撃の比ではなかった。音そのものが攻撃判定を生み出しているかと錯覚するほど、痛々しい金属音が隊長の耳を貫く。

 

その時、隊長は少年の笑みに僅かに懺悔のような色合いが含まれていることを察した。

 

同時に、隊長の脳内に雷鳴のような衝撃が走り、断片として蓄えられていた記憶から一つの結論を導いた。

 

まさか、この少年は──

 

「すまない、待たせた!」

 

豪雨のように鳴り響いていた金属質の打撃音が、ほんの一瞬止んだ。メイの神速のハイキックが、攻撃していたヒトツメたちを吹き飛ばしたのだ。

 

「……!!」

 

少年の笑みが消え、代わりに熱意の色が浮かぶ。

 

四方八方から攻撃が飛び交う乱戦の中、メイと少年の両機は息もつかぬ足捌きでヒトツメたちをこれでもかと蹴り飛ばしていった。

 

親と、子。

 

どこか似た雰囲気を漂わせ戦う二人に、隊長は何故か、そんな印象を抱いた。

 

* * *

 

フレディが月の雷を跳ね返そうと奮闘する最中、村の防衛中だったストラたちをヒトツメが襲った。

 

数にして、僅か3機。

 

だが、問題なのは機体スペックだった。

 

連隊を組み、"飛行"してきたその機体の名はエルドラウィンダム。ここ数年、確認すらされなかったヒトツメの中でも頭ひとつ抜けた上位量産機だ。

 

ただでさえ満身創痍だった3人に向けられたその追い討ちは、彼らの心を折るのに充分な量だった。

 

ウィンダムの飛行能力は、この防衛戦において予想以上の脅威だった。というのも、ストラ達は3年前のビルドダイバーズの防衛方法をそのまま流用していたのだ。それは、対空の備えがない事を意味する。

 

一機でも逃せば、村は壊滅する。

 

そんな不利な状況でも3人は諦めることなく戦い、なんとか2機を行動不能にまで追い詰め──最初に、カリコの機体が限界を迎え、庇おうとしたザブンの機体も、最後の一機によって切り裂かれた。

 

 

「うわああああ!!」

 

前方に転がる下半身を失った二つのエルドラGMをさして、ストラが叫ぶ。

 

「俺たちは……気に……すんな……!」

 

「逃げ……ろ……早く……!」

 

ノイズ混じりの二人の無線が、ストラのコックピットに流れた。両方とも、激しいノイズの中でも分かるほど、浅い呼吸を痛々しく繰り返している。

 

そして、ストラは限界まで見開かれた肉眼でその光景を捉えた。

 

見るも無惨な姿になったザブン機が、唯一無事な左腕でサムズアップを浮かべたのを。

 

その儚いメッセージを、エルドラウィンダムが物理的に踏みつけ、壊すのを。

 

「貴様ァァァッ!!」

 

ストラは喉が張り裂けそうになるのを意識しないままに叫んでいた。

 

奴らには明確な意思がある。傷つけるという行為が何たるかを理解し、それを望んでいる。

 

ストラはこの3年間、ヒトツメにも個体差があるとフレディから学んでいた。

 

レジスタンスで保護したヒトツメたちは、臆病だったり、粗雑だったり──暴力を求めていた場合もあったそうだ。

 

つまり、今目の前にいるヒトツメは。

 

ザブンを踏みつけ、恍惚の喘ぎじみた機械音を漏らすあのエルドラウィンダムは。

 

──戦闘を、破壊を、楽しんでいるのだ。

 

ウィンダムがザブン機に更なる追撃を仕掛けようとしたその時、小さなシルエットがウィンダムの体に衝突した。

 

小突かれたウィンダムは微かによろめいたものの、倒れることなく瞬時に体勢を持ち直す。

 

「きゅいいいい!」

 

「モ、モノ?!」

 

現れたシルエットの正体は、先刻、撤退を命令したはずのガードアイ、モノだった。触手をうねらせ、ザブン機の前でウィンダムを睨んでいる。

 

──同胞よ。何故そいつらの味方をする。

 

ヒトツメにしかわからない機械言語で、体当たりされたヒトツメがモノに問うた。

 

──そんなの決まってる。

 

モノは久方ぶりに使ったその言語で、できる限りの思いを込めた。

 

──彼らが僕の、大切な人たちだからだ。

 

モノは微かに、目の前のヒトツメが絆される可能性を望んだ。

 

が。

 

──そうか。なら死ね。

 

返ってきた言葉は、これ以上ない悪意に満ちていた。

 

言葉を発するのと同時に、ウィンダムは腰からビームサーベルを抜き放ち、躊躇なくモノ目掛け振り下ろした。

 

間一髪、モノは横へステップを踏み、サーベルの切っ先から逃れる。

 

しかし、伸ばしていた触手まではしまえず、サーベルが束になっていたモノの触手を最も容易く切り飛ばす。

 

鮮血代わりのスパークが溢れ、モノが低く呻き声を発する。

 

「きゅ………!」

 

体勢を崩したモノは、ゴロゴロと地面にもんどり打って転がった。立ちあがろうと無事な触手を動かすが、それよりも先にウィンダムがモノの体を蹴り上げる。

 

モノの体から、無数の破片が宙に散った。

 

「止めろ……」

 

ストラの抑えきれなくなった理性が、言葉として漏れた。

 

重力に引かれたモノはそのまま地面に叩きつけられ、ガラス質のひび割れた音を立てながら二度三度バウンドし、静止。

 

「やめてくれっ……」

 

ストラの言葉など届いている筈もなく、ウィンダムはゆっくりとモノに近づいた。

 

ウィンダムは左腕のシールドをパージし、空いた手でモノを掴んだかと思うと、ストラ達へと見せしめるかのようにモノの体を空にかざした。右手に握ったビームサーベルを、ストラにちらつかせるかのように向ける。

 

「モノ!!」

 

モノの眼は、不規則に明滅していた。今にも消えててしまいそうなほどにその光は淡く、弱い。

 

もうなりふりなど構ってはいられない。

 

ストラはその身一つでエルドラGMのコックピットから飛び出そうとした。

 

その時だった。

 

バッ、と音をたて、項垂れていたモノの触手が上へと持ち上げられた。

 

それは、反撃の拳ではなかった。目線はストラをまっすぐと射抜き、何かを伝えようと懸命に腕を動かしている。

 

ストラは、普段理解できなかったモノの発言の意図を、この瞬間だけ魂で捉えた。

 

──来ちゃだめだ。

 

モノは──そう言っているのだ。

 

それだけではない。

 

──さよなら。

 

その瞬間、モノは確かに……笑っていた。

 

「やめろおおおおおおおっっっ!!」

 

ストラの絶叫が、空気を震わせた。

 

ウィンダムはそれを満足そうに聞くと──サーベルを逆手に持ち、光の切っ先をモノの目に当てがわんとする。

 

ジュッ。

 

金属を灼く、ビーム特有のサウンドが、ストラの耳に入った

 

 

 

 

 

 

 

──よりも、コンマ数秒前。

 

遥か遠くの空、猛々しく雄叫びを上げる一人の漢がいた。

 

「《キングモード》ォォォ─────!!」

 

瞬間、ウィンダムのサーベルだけが、勢いよく空へと跳ねる。

 

金属を灼いたかのようなビーム特有のサウンドは、そこから発生したものだった。

 

衝撃で地面に落ちそうになったモノを、地を這うように高速で動く何者かが優しく包んだ。

 

凄まじい速度を保ったまま着地したそのガンプラは、地面をこれでもかと削りストラ達の前で背を向けて止まる。

 

「あっ……あああ!」

 

ストラの喉から、嗚咽が漏れる。爆発寸前だったはずの怒りは、その背を認識した瞬間に安堵と感激に変わっていた。

 

「ストラ……大丈夫か?!」

 

「カザミ……!キャプテン……!!」

 

名称と尊称の二つを、ストラは嗚咽と共に吐き出した。ガンダムイージスナイト/カザミは、通信窓の奥でホッと胸を撫で下ろす仕草を見せる。

 

「ギルィ!!」

 

その一瞬の安堵さえ、ヒトツメは許さなかった。駆動音がけたたましく鳴る。カザミの視界では、あの悪意に満ちた鋼鉄の巨人が近づいているだろう。

 

「ストラ!モノを頼む!!」

 

抱えていたモノをストラの機体の前に横たわらせ、イージスナイトが数歩前へ踏み込んだ。瞬間、バチィッと雷が弾けたかのような炸裂音が峡谷にこだまする。

 

「オメェらがガンプラを恨む気持ちは……分かってるつもりだ……嫌に決まってるよな……勝手に乗せられて、嫌われて、傷つけられてよ……」

 

カザミは、あろうことか敵であるウィンダムに語りかけていた。だがストラは、その言葉を聞いて一瞬の反発と深い納得を覚えた。

 

あれほど執拗にモノを苦しめた敵が、そんな心じみた物を持っているものかという反発。

 

同時に、あの嗜虐的な行動が怨恨という負の感情によって出力されていたことへの納得を。

 

「でもよ……ダメなんだよ……!自分が傷ついたからって、焦ったからって、誰かを蔑ろにしちまったら……!!……俺だって引き返せたんだ、オマエらだって……!」

 

「ギィ?」

 

意外なことに、ヒトツメはカザミの言葉に疑問系で返した。発音で言えば──「はぁ?」と言ったような。

 

「……言葉、分かんないんだっけ?」

 

「カザミ!前見て!前!」

 

律儀にガンプラの首を動かしたカザミに、ストラは悲鳴じみた叫びを放つ。これ幸いと、ウィンダムが出力を上げ、さらに踏み込んだ。

 

だが、その行動は、あまりにもカザミを──ガンダムイージスナイトの力を軽んじていた。

 

「ラアァッ!!」

 

イージスナイトの盾が、サーベルの刃を"受け流した"。

 

同時に、イージスは一瞬の動作でウィンダムのサーベルを奪い取り、

 

ウィンダムはつまづいたかのように体勢を崩す。ズザアアァァ、と地面を滑ったウィンダムは、ストラの真横を通り抜けていった。

 

「いいぜ、お前がその気だってんなら……言葉じゃなく拳で語ろうじゃねえか!!」

 

カザミが叫ぶ。イージスナイトが、両の拳を握りしめファイティングポーズを取る。

 

「ギィ……」

 

よろめきながら立ち上がったウィンダムは、一瞬の逡巡の後、両の手をカザミのように構えていた。

 

* * *

 

セグリ内レジスタンス本部頂上、聖獣の間。

 

時間は、パルの戦闘開始前まで遡る。

 

「ムランさん!フレディに担架と救護班を!」

 

「あぁ!すぐに!」

 

待機していたムランが、扉の奥の闇に消えた。聖獣の間でヒロトと二人きりになったフレディは、膨大な量の情報をなんとか言葉に載せようと懸命に頭を動かす。

 

「ヒロトさん……!」

 

「フレディ、今は休んで──」

 

「ちがうんです!今、エルドラを襲っているのは……」

 

「大丈夫。俺たちはもう全部聞いてるんだ。宇宙には二人が救援が行ってくれている」

 

会話はそこで終了した。慌ただしくやってきたムランと、彼が引き連れてきた救護班にフレディが担がれたからだ。

 

担架に乗せられ運ばれる中、フレディはヒロトとの会話を何度も反復した。

 

ヒロトは確かに"二人"の救援と言った。全てを"聞いた"とも。

 

だが、ビルドダイバーズは全員がセグリに集結している。仮に宇宙へ上がる二人のうちの一人がティルティウムを駆るマサキだったとしても、もう一人が分からない。

 

それに、よく考えてみればヒロトたちがエルドラへ来れた理由も不明だ。

 

彼らを召喚可能なのは、広大なエルドラ中を探してもフレディとクアドルンだけなのだから。

 

なら、一体、誰が──?

 

* * *

 

「マスドライバー接続完了。マサキさん、そっちはどうですか?」

 

「呼び捨てで構わない。何せこれから互いに命を預けるんだからな……ティルティウム、接続完了」

 

「──分かったよ、マサキ。しっかり掴まっててくれ」

 

「システムオールグリーン。"ファイナルフェイズ"、点火開始!!」

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