ガンダムビルドダイバーズRE:Riiiiiiiiiise   作:Haturu

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フレディ奪還作戦①

「あれがセグリか……」

 

シンラは広陵から、かの水上都市を眺めていた。

距離は数キロほど離れてはいるが、MS形態なら双眼鏡無しでも十分に偵察することができる。

 

不自然に盛り上がった山のような地形。そこに置かれた石造りの建造物。中でも、都市の中央にそびえ立つ古城は他とは一線を画す存在感を放っている。

 

レジスタンスのような兵士たちの本拠地よりもどちらかと言えば神を祀る神殿のような出で立ちだ。

それによく目を凝らすと、うっすらと膜のようなものに街全体が覆われている。

 

あれは"バリア"だ。アレのせいで、わざわざレジスタンスを使ってタツカを潜入させる羽目になった。

 

「予想してはいたが……ここまでとは」

 

シンラはセグリのマップを手に入れた時、一つの疑問が浮かんでいた。

それはセグリがあまりにも発展しているということだ。

 

話に聞いたアルス事件が約3年前。セグリはその戦いで消滅したと言うのだから、エルドラの民は僅か三年で眼前に広がる巨大都市を再建したことになる。

 

ありえない復興速度だ。戦後で人手も足りず、道具すらままならない状況だったはず。それに現代の重機でも、都市一つを再生させるのはもっと膨大な年数が掛かるはずだ。

そうなると、予想できるのは……

 

「いっぱいいるんだろうな……ガンプラ……」

 

誰に言うわけでもなく、声にならないほど小さな声でつぶやく。

 

ガンプラの大量生産。話の辻褄を合わせるにはその可能性が一番高い。

ガンプラ……もといモビルスーツは何も戦闘だけ

に使用されるわけではない。

重機としてもその力を存分に振るうことができる。

 

村長の話では、レジスタンスがガンプラの開発に成功したために、組織内のパワーバランスが崩壊したらしい。

だが、ただ製造しただけではそこまでの惨事にはならないだろう。作った後に実績を残して、ようやくその実用性が認められる。研究とは得てしてそういうものだ。

 

つまりヒトツメの戦闘にせよ、セグリの復興にせよ、人々の目に止まるような活躍をしたのは間違いない。

ならばレジスタンスの本拠地にあるガンプラは一つや二つではないはず。

事実、シンラが拘束したレジスタンスは「第八部隊」と口走っていた。

一体、何個の部隊が何体のガンプラを所持しているのだろうか。

 

「……なるべく少ないといいな」

 

その時、シンラの体から、作戦開始十分前を知らせるアラームが鳴り響く。

 

例え何機のガンプラがいようとも、やるしかない。シンラはそう腹を括り、作戦開始前の最終チェックを始めた。

 

作戦自体はシンプルだ。シンラが外で暴れている間に、タツカがフレディを救出し、脱出する。

内部のタツカに干渉は出来ないので、シンラに出来るのは、なるべく派手に暴れ一人でも多くレジスタンスを外に引きつけることだけ。

 

次に装備の確認に移る。

シンラはレジスタンスを倒した後、あの遺跡の石板を解析し、プログラムを自身の体に移植することに成功していた。

 

つまり「エルドリウム鏡砂」なる不可思議なアイテムさえあれば、いつでもMS状態になれるようになったのだ。

 

逃げるついでに、レジスタンスが輸送していたトラックから鏡砂を強奪し、完全に装甲を回復することができた。

余った分で最低限の武装と、ある"奥の手"を用意したことで、多機能バックパックまでは作ることが出来なかったが、そこは仕方ない。

 

そこまで確認したところで、作戦開始時間が残り30秒となる。

 

「さて……大立ち回りといこう」

 

奥の手のセッティングを終えたシンラが地面を蹴り、大きく加速した。

 

* * *

 

カリコとザブン。私が牢屋で出会った二人のレジスタンスは、なんとフレディの側近だった。

彼らはあの村からセグリへの移動中、何者かに拉致され気がついたらここに居たらしい。

 

「つい昨日まではフレディも一緒に捕まってたんだ……けどよ、今朝起きたら消えちまってて……」

 

カリコが俯きながら言った。自責の念、無力感……たくさんの感情がその言葉に詰まっているように感じた。

 

「移送されたんでしょうか……?」

 

「けどよぉ……そんなことなんでする必要があるんだ?」

 

疑問を示したのはザブンと名乗ったレジスタンスだ。ガッチリした体格と、低めの声がカリコとは正反対である。

 

「なんでって、そりゃわかんねぇけど……」

 

カリコの声を遮るかのように、どこからともなく警報が鳴った。

 

ーー脱獄がバレたか。

そう思ったが、警報とは別に、 聞こえてきた声がそれを否定した。

 

ーーセグリ近辺にに未確認型のヒトツメ接近!繰り返す、セグリ近辺にーー

 

「な、なんだ?!」

 

「落ち着いてください、これも作戦の内です」

 

この中で唯一、作戦の概要を知っている私は未確認型と呼ばれたヒトツメの正体を知っている。

間違いなく、囮になってくれているシンラだ。

 

「カリコさん、ザブンさん、私はこれからこの通路を通ってフレディさんを探しに行きます。

二人はこの混乱に紛れてセグリから脱出してください」

 

「け、けどよ……」

 

カリコもザブンも、わたしの発言に言いたいことは山ほどあるに違いない。フレディ救出を出会って数分の私に任せるよりも、自分達で助けに行きたいに決まってる。

だが、長いこと鎖に繋がれていた二人の体には、見た目以上に疲労が溜まっているはずだ。

 

「……信用していいんだな?」

 

私に覚悟を問うかのように、ザブンは言った。

 

冷静になって考えれば私はただの傍観者だ。

目覚めた時から今まで、ずっと。

ただただ、何も考えず、事件に巻き込まれている。

 

ーーだが、それでも、シンラは私に託したのだ。

 

"誰かのために頑張れる"

 

何故かだか分からないが、突然その言葉が私の頭に浮かんだ。分からないことだらけの中、この言葉は唯一私の行動に確信をくれる。

 

「もちろんです。絶対に、フレディさんを助けてませます」

 

ザブンの瞳に私が映る。

 

「そうか……気をつけろよ」

 

ザブンの瞼がゆっくりと閉じられ、への字だった口が僅かに緩んだ。

 

「はい!」

 

カリコとザブンの二人と別れ、私はレジスタンスの本部へと走った。

 

* * *

 

地下牢獄の通路はレジスタンス本部へと繋がっていた。

途中、私達の脱走に気付いた兵士が牢屋の確認に来たものの、開いていた牢屋の隅に隠れたおかげで見つかる事もなく、無事に本部に辿り着く事が出来た。

 

……出来たのだが。

 

「こ、これ……だよね?」

 

目の前にあるのはとても近代的なデザインの"自動ドア"だった。

西洋的な雰囲気を醸し出していた牢獄にぽつんと貼り付けてあるその灰白色のドアは、下手な画像編集で作った写真のような浮き方をしている。

 

異様な雰囲気を醸し出すそのドアを潜るのには、かなりの度胸が必要だった。

ドアを潜ったその先に広がっていたのは、自動ドアと同じ色をした壁と床。石造りの街に比べ、明らかにオーバーテクノロジーな内装。

これではSF映画の宇宙船の中と言われた方がまだ納得できる。

 

「一体……どうして……」

 

この異様な光景の答えが知りたいが、今は作戦中だ。マップを開きながら人を閉じ込められそうな場所をしらみつぶしに探していく。

 

当然だが、レジスタンスの本拠地というだけあって、内部は兵士達で溢れかえっていた。

しかし、彼らの表情に余裕はなく、皆慌てながら小走りで廊下を進んでいく。

その慌てっぷりは、見るに耐えないほどで、ちょっとした物陰に隠れるだけで私はすんなりと本部を探索することができた。

 

「急げ!一機でも多くガンプラを出すんだ!!」

 

物陰に隠れていると、このような言葉が何度か聞こえてきた。

彼らの口ぶりから察するに、シンラが攻めてきて、大慌てでガンプラを出撃させているのだろう。

 

マップで確認すると、彼らの向かう先には必ず20〜30メートルの巨大な空間があった。

ここが格納庫だろう。通路の何処からでもそこに繋がっていることがその疑惑を確かなものにした。

フレディ救出後の脱出プランとしてガンプラを強奪するパターンもあるかもしれないので、ここの存在は頭の片隅に入れておく。

 

だが、ここまで私に有利な条件が揃ってなお、フレディは一向に見つからなかった。

六つもあった監禁予想箇所が残り一つとなる。

最後の一つは最奥、レジスタンス本部の頂上だ。

 

そこに居ないとなると状況は一気に急変する。

セグリにあるレジスタンスの所有地は此処とあの牢屋だけだ。他は一般人用の家屋でそこにフレディがいるとは思えない。

そんなことを考えながら頂上に辿り着いた。

 

私は勢いよくドアを開けた。レジスタンスは完全に出払っているのだ。無駄にコソコソする必要はない。

部屋の中は豪勢に飾り付けられていた。

セグリを一望できそうな窓の前には少し長めのアンティークな机と椅子。執務室のようだが、人影は……なし。

念を入れて無駄に豪華なダンスや机の下までも隈なく探す。

 

しかし。

 

「居ない……!どうしよう……!」

 

人どころかネズミ一匹居ないその部屋で、私は机を叩きたじろぐ。

 

見落としたのか?フレディはもうセグリの外に連れ出されたのか?

もしくは既に"最悪の状態"なのか?

 

頭が真っ白になった私を現実に引き戻したのは、遥か遠くから聞こえる爆発音だった。

窓から身を乗り出すと、無数のエルドラGMとそれを蹴散らす黒い機体が見えた。

 

そうだ。シンラも戦っているのだ。狼狽えているよりも出来ることをやろう。

 

そうして窓から目を逸らそうとした私をある違和感が襲った。

不思議に思って窓の外を二度見すると、本部の真下に人だかりができていた。違和感の正体はこれだ。

 

ーー避難?いや、違う。何かがおかしい。

 

民衆の目線は、少しだけ上向きになっていた。

一瞬、私を見つめているのかと思ったが、それにしては角度が浅い。

目線の先にあるのは木製の何か。あんな場所にある理由も、民がそれを見つめている理由もわからないが、かろうじて確認できるのは、階段があることと周りを槍を持った兵士たちが取り囲んでいることだけだ。

 

こんなことに時間を割いている場合ではないことは理解している。だが、頭の中で根拠のない警鐘が鳴っているのだ。

あと一つで完成するパズルのピースを無くしてしまったかの様なもどかしい感覚。

 

アレはきっとフレディのことと関係があるはずだ。早く気付かないと手遅れに……

 

「手遅れ……」

 

そう呟いたことが引き金となり、私の心臓がドクンと跳ねた。

 

「……くそっ!」

 

悪態をつきながら、執務室を飛び出す。

 

無駄に高さのある木製の階段……。

襲撃されているのにやけに多い警備……。

今朝どこかに運ばれたフレディ……。

 

関係ないと思っていた点が、驚くほど鮮明な一本線となり繋がる。

 

急げ!フレディが手遅れに……"最悪の状態"になる前に!!

 

アレは!あの……木製の建造物は!

 

ーー処刑台だ!!

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