ガンダムビルドダイバーズRE:Riiiiiiiiiise   作:Haturu

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フレディ奪還作戦②

殴る。蹴る。切る。潰す。そうするたびに一つ、また一つと荒野に黒煙が増えていく。

 

「クソッ……スルトの奴め……!一体何機つくったんだ……!」

 

黒煙の数は既に50を超えている。

もちろん、黒煙を発生させているのは壊れたエルドラGMだ。

エルドラGMは、一機、一機のパワーはシンラのGラグナに遠く及ばない。

性能差は歴然、なのだが。

 

「三番隊、修復完了!援護に入ります!」

 

「了解した!十五番隊、一斉砲撃!!」

 

自分より数の勝る敵との戦闘のセオリーとして、敵に足手纏いを作るというものがある。

 

それに倣い、シンラは一機ずつ確実に、無視はできないが、撃墜には至らない絶妙なダメージを与えていた。

しかし、訓練されたレジスタンスのチームワークはシンラの浅知恵を軽く凌駕している。

 

曲芸師の様に飛んで跳ねてを繰り返しながら戦うシンラ。

 

一方、無限かに思える物量で、統率された動きを見せるレジスタンス達。

 

どちらが先に潰れるかは、火を見るよりも明らかだ。

 

(まだなのか……!タツカ……!!)

 

激化していく戦闘の最中、懇願する様な目線をシンラはセグリへと向けた。

 

* * *

 

僕を見上げる人々が眼前に広がった。人々は頭をそろえてこちらを凝視している。

兵士は僕の隣に立ち、声を張り上げた。

 

「セグリ破壊計画、それに伴うヒトツメの誘致!!かつての動乱を終わらせた英雄といえども、これらの罪はあまりにも大きい!!」

 

兵士は人呼吸置いた後、さらに喉から声を絞り上げる。

 

ーーよって我らレジスタンスの名の下に……大罪人フレディの死刑を執行する!!

 

人々はただ茫然と、その様子を眺めていた。

目の前で起こっていることが、夢であるかの様な風貌で。

 

この光景は言うまでもなく現実だ。

だが、背後から聞こえる爆発音と、支持していたレジスタンスの突然の凶行は、民衆の思考をフリーズさせた。

 

少数だが、中には異常に気付き叫ぶ者もいた。

 

何をしているんだ!

早く止めろ!

彼は私達を救ってくれたんだぞ!

 

その声は確実に、多くの人の耳に入っている。

 

しかし。

 

ーーーー隣の人は黙っている。前も、後ろもだ。

なら、間違っているのは叫んでいるやつじゃないのか?

 

その様にして出来上がった民意が、大衆を物言わぬ人形に作り替えた。

 

その様子を見て、かの英雄はどう思ったのだろうか。

 

恩知らずな大衆に絶望しただろうか。

 

助けが来ないのを悟って人生を振り返っているのだろうか。

 

惑星を超えて、繋がった絆を最後まで信じていたのか。

 

どちらにせよ、これが最後だ。

レジスタンスが槍を構え、フレディの首元目掛け、一思いに、突く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるかぁぁぁぁ!!」

 

レジスタンスの拠点の壁を壊しながら、絶叫と共にエルドラGMが現れた。

 

搭乗者はタツカ。フレディ処刑に気づいた彼女は、全速力で格納庫まで走り抜き、調整中だった一機を強奪したのだ。

 

飛び散る瓦礫がいくつか処刑台の柱に激突した。

それによって処刑台はガラガラと音を立てて崩れ落ち、上に乗っていたレジスタンス達は空中へ投げ出される。

 

「……間に合えっ!!」

 

ブーストを噴かしたエルドラGMは一陣の風となって処刑台へと迫った。右手を伸ばすが、それでも距離が届かないと判断すると、その身すらも投げ出し、縛られていたフレディらしきエルドラ人を地面に衝突するギリギリでキャッチする。

 

倒れ込んだガンプラを見て、処刑台に乗っていたレジスタンスは腰を抜かし、民衆達もまた、悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らした様に走り回った後、裏路地や家の中に退避した。

 

「フレディさん!フレディさんっ!!」

 

私はフレディをコックピットに乗せ、横たわらせた。

懸命に呼びかけるが、彼の瞳は閉じられたままだ。

 

「うっ……」

 

しかし、掠れた声での返答はあった。

縄を解き、出血箇所を確認する。どれもかすり傷で、命に別状は無さそうだ。

脈もある。彼は生きている。

 

ーーーーよかった。

 

そう言いそうになるのを堪えて、私はエルドラGMを起立させた。

まだ作戦が成功した訳じゃない。

一向も早く此処から離れなくては。

 

羽織っていたフード付きの外套を脱ぎ、フレディの身体にかける。

幸いなことにここは大通りだ。出口まで真っ直ぐ進むだけでいい。

民衆もレジスタンスも、既に避難は完了している。

 

私は操縦桿を傾けた。

エルドラGMが街中を走り出す。

だが。

 

「させんっ!!」

 

その一声だけで、私は誰が現れたのか瞬時に理解した。

 

背後から機影が飛び出し、前方に着地。

その影の正体は、やはりエルドラGM。

 

敵機は逃さんとばかりに拳を構えた。

それに乗っているのは……。

 

「貴様らを信用した私が馬鹿だった……!!」

 

「どいて下さいっ!隊長さん!」

 

あの声色は間違いなく、私をここに連れてきた隊長だ。

 

「問答無用っ!!」

 

なんの躊躇もなく、敵機は舗装された地面をその巨大な足で瓦礫に変えながら、一息に距離を詰めてきた。

私の目の前で右拳を握りしめて、ストレートの構えを取る。

 

私も敵機も、武装の類は一切装備していない。

レジスタンスは出撃時に垂直カタパルトでの武装準備を採用しているので、今回の様なイレギュラーな発進だと無装備になるのだ。

 

だが敵機から放たれた拳は、両腕でガードしたのにも関わらず、私の機体を後方に十メートルほど吹き飛ばし、私の機体は派手に倒れ込んだ。

 

「……っ!」

 

倒れ込んだ爆音と共に、ウィンドウが両椀部に深刻なダメージが発生したとの通知を示した。が、それ無視しなるべく悟られないよう瞬時に立ち上がる。

 

私は改めて敵機の姿を視認した。

 

先日の戦いで、真っ先に隊長機を潰せたのは幸運だったのだろう。

そう思うほどに、彼の機体から立ち昇る気迫は

凄まじいものだった。

 

「投降しろ。その腕で戦えるとは思えん」

 

(流石にバレてるか……!)

 

心中で悪態をつきながら、一縷の望みにかけて返答する。

 

「……処刑されるって分かってて、投降する人間がいます?」

 

隊長は私に分かるように舌打ちをしながら、ジリジリと距離を詰めてきた。

先程のように一気に距離を詰めてこないのは、私がレジスタンスの本拠地である古城に機体をもたれかかせているからだろう。

 

「悪人がいけしゃあしゃあと……」

 

「私はまだしも……彼は違うでしょう!まだ子供なのに……それを大人が処刑だなんて!!」

 

売り言葉に買い言葉で私は思わず叫んでしまった。

私の後ろで弱々しく倒れ込み、浅い息をしているフレディ。青白くなっているその顔には、まだ幼さが残っている。

そんな彼を見て、私は我慢ならなくなった。

正義の掲げる者が、子供を処刑するという蛮行に。

 

「貴様がどう思っているかは知らんが、そいつは大罪人だ!」

 

「だからって……!無抵抗な子供を一方的に

 

「俺の娘だってそうだった!!」

 

落ち着きのあった低い声が、私の言葉を皮切りに怒声へと変わった。

 

「俺がレジスタンスに入ったのは……!ヒトツメ共をぶっ壊す為だ!!それなのにいざ入ってみたらどうだ!!"ヒトツメに戦う意思はありません、だから仲直りして一緒に暮らしましょう"だと!?」

 

涙声の混ざった叫びが、スピーカー越しに伝わってくる。

 

「もう3年も経つのに……未だに夢に見る……!冷たくなった、娘の、小さな、小さな手の感触……火でぐちゃぐちゃに爛れた妻の泣き顔……!!それを全部、全部ヒトツメがやったんだ!!」

 

私は、何も言えなかった。

その夢が、現実で起こった事だと分かったから。

疑いようがないほどに、彼の言葉に込めらた哀しみは膨大なものだった。

 

「あぁ、そうさ、子供を処刑だなんて間違ってるさ……だが、だがなぁ……正気で戦争ができる

よ……」

 

その弱々しい言葉に呼応したのか、彼の機体のモーターが猛々しい叫びをあげた。

突進だ。本部を人質にしている私に向かって、鉄の巨人が一目散に迫りくる。

 

「しまった……!」

 

完全に彼の言葉の重さに打ちひしがれていた私は、戦いの中にいる事を忘れていた。

 

前方から迫る敵機。後ろにはレジスタンス本拠地。

横に逃げようにも、そこは市街地だ。

 

もうダメか。そう思った瞬間。

 

空が、光った。

 

* * *

 

ーーーーフレディ処刑、数分前。セグリ前方の荒野にて。

 

「…………バケモノめ…………!」

 

それが自分の声だと気づくのに、コンマ数秒かかった。

レジスタンスの一兵である私にとって、ガンプラの開発以降、ヒトツメは"かなわない強敵"から"倒せる敵"になったという実感があったからだ。

 

だがそれが驕りであることに今気づいた。

 

「ハッ……ハッ……」

 

聞こえてくる息切れは、人間のものではない。

私の目の前に立つ、未確認型のヒトツメから発せられたものだ。

黒い装甲に身を包んだそのヒトツメは、先程から独り言を呟きながら、私達を軽くあしらっている。

 

「クソッ……スルトの奴め……!一体何機つくったんだ……!」

 

私はそれを聞いて、身の毛のよだつ恐怖というものを生まれて初めて味わった。

 

喋れるほど知能を持ったヒトツメが存在するなんて聞いたことがない。それに加えて、あのヒトツメの発言の中には、リーダーの名前が含まれていた。

 

ーーーーどこまで知っているんだ、コイツは。

 

共に戦う同胞たちも、同じ考えに至った様だ。整えられたチームワークが乱れるのを感じる。

新型のヒトツメはそれを見逃さない。

 

一瞬の隙をついて、隊列の中に飢えた獣のように飛び込み、反応の遅れた機体から犠牲になっていく。

黒煙の数が、また増えた。

 

この戦いで、死者が出ていないのは奇跡だ。

いや、それすらも奴の作戦なのか。

目の前で、ガンプラから降りた仲間に気を取られた機体が致命の一撃喰らい、撃墜される。

 

狙ってやっているのだとしたら、それは戦術と言うべきものであり、奴の知能の高さを表す何よりの証拠だ。

 

「……っ!!カバーっ!!」

 

聞こえてくる仲間の声にも、戦いが始まった時の気迫はもうない。

 

漠然とした恐怖が仲間内に広がっていくのを感じ、額に汗がにじむ。

その焦りは操作ミスに直結した。私の機体の動きが淀んだことに気づいたヒトツメの頭が、ぐるりとこちらに向く。

 

「やられる……っ!」

 

せめてもの抵抗として、ビームライフルを構えたその時だった。

陽の光を遮る者が現れたのは。

 

影になった地面に気づいたヒトツメは、私への攻撃を中止し、後ろへ跳び抜こうとした。

 

だが、それよりも早く着地した機影が、ヒトツメの左腕を肩からばっさりと切り裂く。

切られた腕は地面に落ち、舞った砂煙に包まれた。

 

「大丈夫か」

 

「……っ!スルト殿?!」

 

スピーカーから聞こえてきたのは、紛れもなく、我らのリーダー、スルトの声だった。

だが、驚いたのはそこではない。

彼の機体が、意外なものだったからだ。

エルドラGMよりも、一回りも二回りも小さなその背中。

藍色に包まれた装甲は陽の光を帯び、輝いている。

 

初めて見るはずの小さな新型機体。だが、私は"この機体"を知っている。

数年前にも、この機体は私の命を救ってくれたからだ。

 

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「無事なのだな」

 

「は、はい!」

 

私の返事に安心したスルトは、そうか。とだけ言った後、オープン回線を開き、声を張り上げた。

 

「よく耐えてくれた!!諸君らの奮闘のお陰で、この機体の最終調整を間に合わせることができた!!」

 

ざわざわと、回線の向こうで人がざわめくのを感じる。

当然だ。ここに居ないものでも、この機体を見たならば、皆同じ様な反応になるだろう。

 

スルトが再び張り上げた声は、私たちの低下しきった士気を、確実に上げた。

 

「スルト、コアガンダム!!新型のヒトツメを……排除するっ!!」




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