サリィの世界
6月―。
ついに…
ビビッ島南地区ガンプラバトル大会
の日が来た―。
◇
朝―。
水の神への礼拝を済ませ…
シャワーを浴びて…
朝食を食べ終わったところで、ケイから電話がかかってきた。
クレアは、スマートフォンの通話ボタンを押し
「もしもし。」
と、電話に出る。
『おはよう、クレア。
準備できてる?』
と訊くケイに
「もう少しけん。」
と答えるクレア―。
準備を済ませ、外に出ると、下ではケイとシンが自転車に乗って待っていた。
下に降りて駐輪場に行き、自転車を取りに行く。
「待たせたけん☆」
と、自転車に乗ってケイとシンの前に来るクレア。
「よし、行くぜ☆」
と、シンを先頭に、ケイ、クレアの並びで…
大会会場である
ブルービーチ市立体育館
へと向かった―。
◇
ブルービーチ市立体育館の入口前に到着すると、すでに【ブルーノア】のメンバーが集結していた。
駐輪場に自転車を停め、みんなのもとに向かう。
「遅れて、ごめんじゃけん。」
と謝るクレア。
「大丈夫だよ。」
と言うチュージ。
そして
「よし!!
全員、そろったことだし…
行くぞ!!」
と、チュージを先頭に、【ブルーノア】のメンバー達は体育館に入っていく―。
◇
やがて、開会式の時間となった…
…と同時に、館内の照明が消え、真っ暗になった。
急に真っ暗になったため、騒然となる館内。
まもなく…
体育館のステージに照明がついた。
ステージ上には
赤いスーツ姿の男
が、
黒く刈り込んだ丸い頭。
蓄えた口髭は丁寧に揃えられている。
左目は黒い眼帯に覆われているが、健在な右目は愛敬が感じられる碧眼だが、しかし、その目の輝きは力強さを感じさせる。
(あの人…
この前の代表決定戦の時にも来ていた人じゃけん…。)
と、ステージ上の男を見据えるクレア。
ステージ上の男は、物憂げに目を伏せながら、低く、しかし、よく通る声で話し始めた。
「みなさん…
いよいよ、この日が…
ビビッ島南地区ガンプラバトル大会
の日がやってまいりました…!!」
と男が言うと、館内の照明がつき、参加者達の怒涛のような大歓声がわきおこった。
「しかも!!
今回は!!
なんと!!
悠久の地八戦神のサリィ様
のご好意により
『悠久の地』のサリィ様の世界
で行われるのです!!」
という男の発言に、参加者達はどよめいた。
「本日はサリィ様にお来しいただいております。
それではサリィ様。
どうぞ、こちらへ。」
と男に呼ばれ、ステージ上に現れるサリィ。
悠久の地八戦神の一人・サリィ。
黒い猫耳が付いたベージュ色のショートヘアに、青い瞳。
お腹まわりを露出させた黒いジャケットを着て、両手には鋭い爪がついた手甲をつけている。
黒いショートパンツを穿き、お尻には猫の尻尾がはえている。
その姿は神というよりも、猫のコスプレをした少女にしか見えない…。
「こんにちは、みなさん。
今日は、私の世界で思う存分、戦ってください。」
と、挨拶をするサリィ。
そして
「それでは、『下界』と私の世界を繋ぎますので…。」
と言って、ステージの右端に消えた。
数秒後―
「繋がりましたので、みなさん、出入口から私の世界にお来しください。」
という、サリィの声が館内に響いた。
その声を聞いたステージ上の中央に男が
「それでは、今年のビビッ島南地区ガンプラバトル大会ッ!!」
と叫んで赤いスーツの上着を脱ぎ捨ててピンク色のワイシャツ姿となり、両腕を突き上げる。
高く掲げられた左手には、左目を覆っていた眼帯が握りしめられ…
高く掲げられた右手には、どこからともなく取り出したマイクを、小指を立てて握っている―。
「レディ…ゴォォォォォッ!!」
と男は叫ぶと、脱ぎ捨てた赤いスーツを拾い、座っていた椅子も持って、ステージの左端に走り去っていった…。
◇
体育館の出入口をくぐると…
「えっ?
ドア?」
と、目の前にあるドアを見て、驚くケイ。
そのドアを開け、中に入るチュージ。
ドアをくぐると…
「えっ?
何なの、この部屋?」
と驚くケイ。
そこは、中央にテーブルとソファが置かれた、広い部屋だった。
左の方には、ドアが3つある。
ふいに、部屋の正面奥に設置されている液晶ディスプレイが起動し、画面にサリィの顔が映し出された。
『私の世界にようこそ。』
と言うサリィ。
続けて
『じゃ、ルールを説明するね。
大会ルールに準拠して、トーナメント戦を行うよ。
じゃ、優勝目指して、がんばってね。』
とサリィが言い終わると、画面が消えた。
「あの…
何がなんだか、さっぱりわからないんですけど…。」
と、戸惑うケイ。
「ん?
ケイは『悠久の地』に来るのは初めてなのか?」
と訊くチュージに
「はい…。」
と答えるケイ。
「
と言うショウ。
「ショウも?」
と言うクレア。
「あぁ。
『悠久の地』とやらには、興味が無かったからケンな…。」
と言うショウ。
「なら、説明してやっか☆
ここはな『悠久の地』と呼ばれる
異世界
だ☆」
と言うチュージ。
「異世界…?」
と言われても、まったく合点のいかないケイとショウ。
「あぁ。
信じられないかもしれんが、ここはマンガやアニメに出てくるような
異世界
なんだ。」
と言うチュージ。
「何を根拠に?」
と訊くケイに
「根拠ぉ?
体育館の出入口から、この部屋に来たのが、何より証拠じゃないか★」
と言うチュージ。
たしかにチュージの言う通り、体育館の出入口を通ったのに、外に出ることなく、この、謎の部屋に来たのだ。
だから、ケイは納得はいかないが、信じることにした…。
「で、どこでガンプラバトルをするんですか?」
と訊くケイに
「あの部屋の中に、コクピットルームがある。
ドアが3つってことは、あそこに3人づつ入れってことだな☆」
と、左の方にある、3つのドアを指差すチュージ。
「ところで、私達の対戦相手は誰なんけん?」
と訊くクレア。
「あん?
ちょっと待ってろ…。」
と、手に持つカバンの中から、対戦表を出すチュージ。
「おぅ★
オレ達の初戦の相手は
太平洋学園高等部
だ。」
と言うチュージ。
「太平洋学園とは…。
初戦から難敵だな…。」
と言うヒロ。
「泣き言を言っても、対戦相手は変わらんのだ。
どんな結果になろうとも、全力で戦うぞ!!
もっとも、こっちにゃ『ニュータイプ』のケイがいるんだから、負けることはないがな☆」
と笑うチュージ。
「先生…
ケイに依存しすぎじゃけん…★」
と、あきれるクレア。
「いいのよ、クレア。
私も、もう自信がついたから☆」
と言うケイ。
「それで先生。
試合には、誰が出るんですか?」
と訊くケイに
「全員だ☆」
と答えるチュージ。
「ぜ…全員って…
どういうことですか!?」
と驚くケイ。
「『悠久の地』には、参加人数の制限が無いんだ☆」
と言うチュージ。
そして、腕時計を見て
「そろそろ、時間だな…。
部屋に入って、準備しろ!!」
と言う。
「部屋割りは、どうするんですか?」
と訊くタツヤ。
「クレアとケイとショウは左端の部屋で…
真ん中はオレ、ヒロ、カツ
右の部屋はシン、ミッツ、タツヤだな。」
と言うチュージ。
メンバー達は、それぞれの部屋に分かれていく―。
◇
部屋の中には、中央にテーブルとソファが置かれ、右には3つのベッド。
正面奥には、3つのドアがあった。
ただ、壁が黒いので、雰囲気が重苦しい…。
「あのドアがコクピットルームじゃけん。」
と、正面奥のドアについて教えるクレア。
「もうすぐ、試合開始時間じゃけん。
行くけんっ!!」
と、荷物を床に置き
左にクレア
真ん中にケイ
右にショウ
が入った―。
◇
『GUN-PLA Battel, Stand up.』
システムが起動し始めた。
『Please set your GP base.』
GPベースを、スロットにセットする。
『Please set your GUN-PLA.』
ガンプラを、カタパルトデッキにセットする。
コクピットルーム内に、ホログラフィーで再現された球体操縦桿と正面と左右のカメラモニターや、残弾数や各部のダメージ表示を示すメモリなどが映るモニターが現れる。
球体操縦桿を握り、そして―
『Battel start!!』
バトルスタートの合図が鳴り響く―!!
「クレアっ!!
マリンハイザック・リィンフォース、出るけんっ!!」
「ケイ!!
シグー、出ます!!」
「ショウッ!!
アンターレス、ゴーッ!!」
クレア、ケイ、ショウのガンプラが、バトルステージに向けて発進した―。