8月中旬―。
クレア、ショウ、ケイ、シンの4人は、ガンプラバトルをするため、ブルービーチ駅前にあるガンプラバトルアリーナ【ミッド】に来ていた。
そこで、【ミッド】の入り口横の壁に貼られた
ミッドカップ開催のポスター
に書かれた開催日時を見たクレアは
「ぬかった…★」
と、うなる…。
「どうしたの?」
と訊いてくるケイに
「この日は
オヴォンの日
だから
七尾島に帰らなきゃならない
けん…。」
と言うクレア。
「おぼんのひ…
って、何?」
と訊くケイ。
「オヴォンというのは
祖先の霊を祀るの日
の事じゃけん。
七尾島では、オヴォンの期間中、先祖の霊がこの世とあの世を行き来するための乗り物として
『
という、ナスで作った馬の供物を用意するけん。」
と言うクレア。
しかし、それを聞いたショウは
「ハッハッハッ★
西に住む人間は、いまだにそんな古臭いことをしとるんケン?」
と嘲笑う。
「フンッ★
そんなこと言ってるから、東の人間は野蛮人だって言われるけん★」
と言い返すクレア。
「何をッ★
この時代遅れがッ★」
「野蛮人めッ★」
と、不毛な言い争いを始めたショウとクレアを
「やめなさい!!」
と止めるケイ。
「おい、クレア。
まさか、ミッドカップに出ないつもりか?」
と訊くシン。
「さっき言ったけん。
オヴォンの日は七尾島に帰るから、ミッドカップには出られんけん。」
と言うクレア。
「そのオヴォンとやらは、そんなに大事な事なのか?」
と訊くシンに
「G国人には、わからないことじゃけん。」
と言ってのけるクレア。
「心配するな、シン☆
こんな時代錯誤なヤツいなくても、
と言うショウを
「いいかげんにしなさい!!」
と諌めるケイ。
「ミッツも出れないと思うけん。」
と言うクレア。
ミッツも、クレアと同じ、七尾島西部出身の七尾人だ。
「とりあえず、クレアとミッツがミッドカップに出られないということを、チュージ先生に言っておかないとね…。」
と言うケイ。
「ミッツはともかく、クレアが出れないと聞いたら、先生、腰抜かすかもな★」
と言うシン―。
◇
ミッドカップ開催日の朝―。
身仕度をととのえたクレアは、家を出る。
下に降りると…
「おはよう、クレア。」
と、自転車に乗ったケイとシンがいた。
「おはよう。
しかし…
ケイも物好きけんねぇ…★」
と、あきれるクレア。
ケイは、七尾島に帰るクレアを見送りに来たのだ。
一緒にいるシンは、あからさまに嫌そうな顔をしている。
どうやら、シンはケイによって、無理矢理連れてこられたようだ。
「ところでクレア…。
何なの、その恰好?」
と訊くケイ。
「これは、七尾人の正装の
リューコ
じゃけん☆」
と言うクレア。
七尾人の民族衣装リューコ
七尾人が、祭りや行事の時に、正装として着る服だ―。
◇
クレア、ケイ、シンの3人は、自転車に乗って、ブルービーチ港へ向かう。
そこから、七尾島行きの船が出るのだ―。
ブルービーチ港へ向かう途中…
「まったく…★
ミッツがミッドカップに出るなんて、思わなかったけん★」
と愚痴るクレア…。
ミッツも、クレアと同じ、七尾島西部出身の七尾人なので、ミッドカップには出ないと思っていたのだが、意外や意外、ミッドカップに出るという。
ミッツいわく
『あんなめんどくせぇこと、まだやってる人いるのかよ★』
ショウも、七尾島の東側では、オヴォンという行事は廃れていると言っていた。
どうやら、オヴォンという行事は、今や七尾島の西側でのみ行われているようだが、ミッツの言うように、西側でも少しずつ廃れ始めているようだ…。
自転車を走らせること10数分…
ブルービーチ港に到着した。
「あっ。」
とクレアが海の方を見れば、防波堤の向こうに、入港してくる船が見えた。
「着いてきてくれて、ありがとうけん☆」
と、頭を下げるクレア。
「気をつけてね。」
と言うケイ。
「ケイとシン君も、試合、がんばるけんな☆」
とクレアは、この後、ミッドカップに出場するケイとシンを激励する。
「ありがとう☆」
「目標はベスト8だ☆」
とケイとシンは言って、帰っていった。
ケイとシンの姿が見えなくなってから、クレアは改札で切符を買い、乗船する。
そして10数分後、船は七尾島に向かって出港した―。
・
船は、ビビッ島を南北に分断するブルービーチ海峡を南下する。
ブルービーチ海峡の幅は約30キロ。
そこを2時間で航行する。
船内は
そんな、リューコを着た七尾人を、
「ママー。
ヘンな服着てる人がいるよ☆」
と、
そんな子供に、母親が
「近づいちゃダメよ★」
と、子供の手を引く。
とても小さく、狭い世界の中で…
クレアは七尾人とG国人との間にある溝の深さを知った…。
・
気分転換に、外に出ようとしたら…
(ゑっ!?)
なんと、船内の娯楽スペースにガンプラバトルステージがあった。
さすがに試合用の物ではなく、有料の1対1で行う小型のステージで、試合時間も10分間という物だった。
対戦表に子供の顔写真が表示されていることから、今は子供が使用しているようだ。
ステージでは、平原のバトルフィールドで、ピンク色に塗られたガンダムマークⅡと、黒く塗られたマラサイが対戦していた。
ガンダムマークⅡは綺麗に色が塗られているが、マラサイは、かなり雑に塗られており、所々、塗り忘れている場所もある。
どうやら、ガンダムマークⅡは親が塗ったのだろうが、マラサイは使っている本人が塗ったのだろう。
よく見れば、ゲート跡も処理されていない。
どうやら、マラサイを使っているのは、かなり低年齢の子供ようだ。
だが、試合の方は、ガンダムマークⅡがマラサイに圧されている。
スムーズな動きでガンダムマークⅡにダメージをあたえていくマラサイを使っている子供は、かなりの手練のようだ。
対戦は7分で終了した。
ガンダムマークⅡは、マラサイに手も足も出ず敗れさった。
ガンダムマークⅡ側のコクピットルームからは、7〜8歳くらいの子供が、負けた悔しさで泣きながら出てきたが…
なんと!!
マラサイ側のコクピットルームからは、子供と一緒に、父親も出てきた。
しかも、子供は、どう見ても4〜5歳くらい。
ガンプラバトルができるような歳ではない。
おそらく、マラサイを使っていた親子は、対戦表に子供の顔写真を表示させ、実際には父親が戦っていたのだろう。
これでは、ガンダムマークⅡを使っていた子供が勝てるわけがない。
外からコクピットルーム内が見えないのをいいことに、平気で卑劣なことをした親子に、見物人達も憤っていた。
そんな、卑劣な親子に
「次は私と対戦してほしいけん。」
と、クレアは対戦を申し込んだ。
「何を言っているんだい?
君は、こんな小さな子供と対戦するというのかい?」
と、クレアの申し出を断る父親。
だが、クレアは引くことなく
「はい。
私は、その子と対戦したいけん☆
そんな小さな子でも、あれだけの動きができるけん☆
あんなの見たら、対戦してみたくなるけん☆」
と、父親の方を見て言う。
(…!?)
にわかに、少年の父親の表情がこわばった。
「パパ、やろう☆」
と言う子供。
「そ…そうか…★
どうやら、ボブもやる気みたいだし…★」
と、焦るボブの父親。
「私の名はクレア。
よろしく、ボブ君☆」
「うん☆」
と握手するクレアとボブ。
「でも、その前に…」
と、クレアは、先ほど、ボブの父親に敗れた少年のところに向かった―。