船は、七尾島のナン港に入港した。
船から降りたクレアはバスに乗り、ナガノ駅に向かう―。
ナガノ駅に到着し、駅前のバスターミナルで待つこと数分―。
「あっ…☆」
と、歩いてくるスーツ姿の兄・ユウキを見つけた。
「お兄ちゃ〜ん!!」
と、ユウキの方に走るクレア。
「クレア☆」
と、走ってきたクレアを抱きとめるユウキ。
クレアの兄・ユウキ―。
クレアよりも7歳年上で、12歳の時に、小学校のガンプラバトル大会で優勝した。
それが、クレアがガンプラバトルを始めたきっかけとなった。
しかし、ユウキは中学でガンプラバトルから引退。
高校卒業後、地元のIT企業に就職した。
両親の死後、両親の遺産と自身の収入をもって、ビビッ島で暮らすクレアの生活を支えている―。
車に乗って、ユウキの家に向かう。
「そういえば、お兄ちゃんは今、どこに住んどるんけん?」
と訊くクレアに
「驚くなよ☆
タワーマンションの12階
じゃけん☆」
と言うユウキ。
それを聞いて
「おぅ★」
と驚くクレア…。
「ところで、お兄ちゃん…。」
と切り出すクレア。
「何じゃけん?」
と訊くユウキに
「彼女…おるけん?」
と訊くクレア。
「おるけん☆」
と答えるユウキ。
「今…家に…?」
と訊くクレアに
「あぁ…
おるけん…。
こんな日に会わせるのは、どうかとは思うけんど…
でも、クレアとは、いつでも会えるわけではないから、ちゃんと紹介したいけん。」
と言うユウキ。
やはり、以前、ユウキに電話をかけた時に出た女は、ユウキの彼女だったのだ。
その時の感じの悪さから、クレアは正直、会いたくなかった…。
・
やがて、ユウキが運転する車は、ユウキが住むタワーマンションに到着した。
駐車場に車を停め…
車から降りたクレアは
「うわぁ…★」
と、ユウキが住むタワーマンションを見上げた。
家賃は安くないと直感した。
それでいて、自分に仕送りまでしてくれている…。
(どんだけ稼いでいるんさ?)
と、クレアはユウキの凄さを実感した…。
ユウキと一緒にエントランスを通り…
エレベーターに乗って、ユウキが住む12階に向かう―。
1266号室―。
ユウキと…
ユウキの彼女が住む部屋だ…。
ドアを開けるユウキ。
「ミク、ただいま。」
と、部屋に上がるユウキ。
「ただいま…。」
と、クレアも上がる。
「ユウキ、おかえり☆」
と、笑顔でユウキを出迎える、ユウキの彼女・ミク。
おかっぱ頭の、身長は170はあろう、背の高い、G国人女性だった。
笑顔でユウキを出迎えたミクだったが、クレアの姿を見るなり
「アンタ、誰や?」
と、怪訝な顔をする。
「紹介するけん。
僕の妹のクレアじゃけん。」
と、ミクにクレアを紹介するユウキ。
「はじめまして…。
ユウキの妹のクレアじゃけん…。」
と、嫌々お辞儀するクレア。
「あぁ…。
アンタが、前にユウキが言ってた、ユウキの妹かいな…★」
と、なんだか、クレアが来たことに、迷惑そうな顔をするミク。
(イヤな女じゃけん…。
お兄ちゃんも、何でこんな女とつきあっとるけん…?)
と、顔をしかめるクレア…。
ユウキの唯一にして最大の欠点が
女を見る目の無さ
だ。
じつはユウキは、これまで
人間性に問題があるような女性とばかり付き合って、失敗してきている。
いわば、ユウキは
典型的な、女性を見かけだけで判断している男
なのだ…。
(それに…
こんな
田舎者
の、どこがいいけん?)
と、ミクと同棲しているユウキに怒りを募らせるクレア…。
ミクの言葉遣いから
G国本土の西部出身
だということがわかるが、G国本土の西部出身者は、G国本土はもちろん、ビビッ島でも
田舎者
と蔑まれている…。
「で、妹連れて来たんはいいけど…
とこに放り込むんや?」
と、ユウキに訊くミク。
「そりゃ…
僕の部屋で…。」
とユウキが言うと
「は?
アンタ
ワタシ以外の女を部屋に連れ込む気か?」
とキレるミク。
「何言ってんだよ?
クレアは、僕の妹」
と言うユウキに
「ユウキにとっては妹かもしれへんけどなぁ、ワタシにとっては他人なんやッ!!」
と言い放つミク。
「そ…そりゃ…そうだけど…。」
と、ミクの剣幕にたじろぐユウキ…。
そんなユウキを見て、あきれかえるクレア…。
ユウキとミクは、おそらく、ユウキの職場で出会ったのだろうが、それにしても、こんな女と同棲しているユウキの気が知れなかった。
女を見る目が無いにもほどがある。
「お兄ちゃん。
私は、友達の家にでも泊まりに行くけん…。
墓参りに行く時は、連絡してほしいけん…。」
と言うクレア。
「そ…そうか…。
すまないな…。」
と言うユウキに、愕然とするクレア…。
あろうことか、ユウキはミクの肩を持ったのだ…。
「おじゃましました…。」
と、玄関に向かうクレア。
「物分りのええ妹やな☆」
と嘲笑うミクに
「そ…そうかな…★」
と、愛想笑いするユウキ…。
そんな、2人の会話を背中で聞き…
涙を流して…
クレアは出ていった…。
◇
ユウキの部屋から出てきたのはいいのだが…
(泊めてくれる人…
いるかな…?)
と悩むクレア…。
(とりあえず、中学時代の友達の家に、事情を話して泊めてもらうけん…。)
と、中学時代の友達の家に連絡をとろうと、カバンからスマートフォンを出し…
(ん…?)
と、クレアの前を、1台のサイドカーが通り過ぎたのだが…
Uターンして戻ってきた。
(何じゃけん?)
と見ていると…
右側の座席に座っていた少年が降りてきて、ヘルメットをはずし
「もしかして…
クレアじゃけん?」
と話しかけてきた。
「あぁっ!?」
と、少年の顔を見て、驚くクレア。
「ヤン☆」
と言うクレア。
「やっぱり、クレアおねえちゃんじゃけん☆」
と喜ぶヤン。
「ひさしぶりじゃけん☆」
と挨拶するクレア。
「ひさしぶり、クレア☆」
と、サイドカーから降りてヘルメットをはずす、ヤンの姉のミン。
「ミン
と、ミンに挨拶するクレア。
「ところで、こんな場所で何をしとるけん?」
と訊くヤン。
「じつは…」
と、顔を曇らせて、事情を話すクレア―。
「そういうことなら、ウチに来るけん☆」
と言うミン。
「ええんじゃけん?」
と訊くクレアに
「私は、困っている人を見捨てる薄情者じゃないけん☆」
と言うミン。
しかし、来いと言われても、そんな簡単に好意に甘えていいものかと、クレアは躊躇した。
だが、他に頼れる人もいないので、ここは遠慮なく、好意に甘えることにした。
しかし…
「クレアは、ここに座るけん☆」
と、ミンはクレアに、サイドカーの座席に座るように言うが、サイドカーの座席に座る時も、ヘルメットは必要だ。
だが、ヘルメットは2つしかないし、そもそも、サイドカーには2人しか乗れない。
「僕は走って帰るけん☆」
と、クレアにヘルメットを渡すヤン。
「ぁいやっ!?」
と、驚くクレア。
「いいけん、いいけん☆」
と笑うミン。
実際、ここでヤンが降りてくれないと、クレアはサイドカーに乗れない。
後ろ髪を引かれる思いで、クレアはヘルメットをかぶり、サイドカーの座席に座る。
「気をつけるけん☆」
と言うヤン。
「ヤンもな☆」
とヘルメットをかぶり、サイドカーに乗ったミンはサイドカーを発進させた―。
◇
クレアの幼馴染のヤンと、ヤンの姉のミン―。
クレアが七尾島に住んでいた頃、近所に住んでいた人達だ。
しかし、クレアが8歳の時に、七尾島中部に引っ越していった。
だから、クレアとヤン、ミンは8年ぶりの再会だった―。
◇
走ること数分―。
たどり着いたのは、街はずれのアパートだった。
「ここで、私とヤンは暮らしてるけん☆」
と言うミン。
街はずれのアパートに、クレアは自分が住んでいるアパートとの既視感をおぼえた―。