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17世紀末、中国西部の成都にて、劉 天山が創設した武術である。
華美を排し、一撃必殺を旨とする実戦向けの武術であったが、当時の明王朝では採用されず、成都の自警団が採用し、細々と現代にまで継承されてきた。
現在でも、一部の愛好家が嗜む程度の、典型的な大成しなかった武術である。
(民明書房刊【大成しなかった武術】より)
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「いつから、そんなのをやってたんけん?」
と訊くクレアに
「うん☆
まだ、始めて3年ほどじゃけん☆」
と言うヤン。
「で、
と、ヤンはどこにあったのか、発泡スチロールの板を2枚、ちゃぶ台の上に重ねて置く。
「静から動…
拳に捻りをくわえて突く…!!」
と、ヤンは発泡スチロールの板を
拳に捻りをくわえて
殴った。
すると…
2枚重ねて置いた発泡スチロールの板の下側の板が砕け散った
のだ―!!
「これが
と、自慢げな笑顔を見せるヤン。
「ど…どういうことじゃけんッ!?」
と、驚くクレア。
「空手でいうところの
裏当て
じゃけん☆」
と言うヤン。
「裏当て?」
と、首を傾げるクレア。
空手の知識が無いため、『裏当て』と言われてもわからないのだ。
「『裏当て』っていうのは
突きの衝撃が突き抜ける技
じゃけん☆
天山流では、それを
と呼んどるけん☆」
と教えるヤン。
「突きの衝撃が突き抜ける…!?」
と、驚くクレア。
「うん☆
拳で破壊するんじゃなくて
打撃の衝撃で体の内側を破壊する
んけん☆
だから、フェイズシフト装甲でも防げんけん☆
僕も、まさか、ガンプラバトルで
と言うヤン。
「ヤン…
それ…
教えてほしいけん…!!」
と頼むクレア。
「いいけん☆
でも、クレアはGPベースが無いけん…。」
と言うヤン。
「なら、せめて、データだけでも欲しいけん…!!」
というクレアからの頼みを快諾するヤン。
ヤンは、GPベース内の
ガンプラアクションパターン
を、クレアのスマートフォンに送信した。
「ありがとう☆」
と、礼を言うクレア。
ヤンのガンプラアクションパターンを、自分のGPベースにインストールすれば
クレアの
というわけだ―。
その直後
「ただいま〜☆
大家さんから
隣の部屋を使ってもいい
っていう許可もらってきたけん☆」
と、帰ってきたミン。
ヤンとミンが住むアパートは1DKなので、3人が寝るには窮屈だ。
そこで、ミンが大家に交渉して、空いている105号室を貸してもらうことにしたのだ―。
「客であるクレアを1人だけにするのは気がひけるけんどね…。」
と、クレアに詫びるミン。
「いえいえ。
こっちは邪魔しているのに、部屋まで貸していただいて、もうしわけないけん。」
と、頭を下げるクレア―。
その後、3人で夕食を食べた。
クレアにとって、多人数での夕食はひさしぶりだった―。
・
夕食後、105号室に布団を運び込む。
「本当にいいんけん?」
と、布団を床に置くヤン。
「いいけん。
1人で寝るのには慣れとるけん。」
と言うクレア。
「何事も無いと思うけど、何かあったら、隣だから、すぐに助けに行くけん。」
と言うヤン。
「それは心強いけん☆」
と答えるクレア。
実際、クレアもビビッ島で1人暮らしを始めた当初は、まわりに知り合いがいないため、何か起きても助けてくれる保証が無かったため、夜寝るのが怖かったのだ…。
・
風呂から出て
(そういえば、ミッドカップの結果は、どうなったけん?)
と、クレアはスマートフォンの受信メールを確認する。
(ぁいやぁっ★)
【ブルーノア】のメンバー達から、大量のメールが来ていた。
とりあえず、一番最初の、ケイからのメールを見る。
―
クレア、元気?
このメールを見て驚きなさい♪
ミッドカップ、3位だったんだよ♪
―
「あいやっ!?」
と、【ブルーノア】の3位入賞に驚くクレア。
チュージからのメールによると、【ブルーノア】は準決勝で【
『ニュータイプ』であるケイはもちろん、シンやショウの活躍がめざましかったという。
ヒロからは、自身が編集した動画を送信してきていた。
観てみると、チュージのメールにあった通り、シンやショウがめざましい活躍をしていた。
(みんな…
強くなっとるけん…☆)
と、胸の奥が熱くなる…
…と同時に、焦りのような感覚もおぼえる。
(私も…
負けていられんけん…!!)
と、クレアは自身を奮い立たせるのだった―。
・
就寝して…
深夜に、ふと、目が覚めると…
女性の嬌声
がする…。
それも、近くから…。
104号室はヤンとミンの部屋なので、おそらく106号室に住んでいる人だろう…。
(勘弁してほしいけん…。)
と、うんざりするクレア…。
しかし…
(はて…?)
と、疑問に思うクレア。
気のせいか
のだ。
(まさか…
ヤンとミン姉ぇが…!?
…って、いやいや★
そんなバカな話、あるわけないけん…。)
と、夏の夜の暑さと、聞こえてくる嬌声に悩まされながらも、眠りについたのだった…。
◇
翌朝―。
(昨日の夜は、散々だったけん…★)
と、最悪な目覚めのクレア…。
(ん?)
と、外からヤンの声が聞こえる。
(何しとるけん、あの男…?)
と、外に出るクレア。
外では、ヤンが一人稽古をしていた。
(・・・・・・。)
一人稽古に励むヤンを見つめるクレア。
「あれ?
クレア?
おはようじゃけぇ☆」
と、クレアに気づくヤン。
「おはようじゃけぇ。」
と挨拶するクレア。
「昨日の夜はごめんじゃけぇ★」
と言うヤン。
(昨日の夜?)
と、首を傾げるクレア。
昨日の夜といえば…
例の嬌声だが…
なぜ、そのことについて、ヤンが謝るのだろうか?
「何で、ヤンが謝るけん?」
と訊くクレア。
「えっ…?
あっ!!
な…
なんでもないけんっ★」
と
なぜか慌てる
ヤン…。
(何でヤンは、あんなにも慌てとるんじょ?)
と、クレアは首をかしげた…。
外に出たついでだ。
「ジョギングに行ってくるけん。」
と言うクレア。
「うん。
気をつけるんじょ。」
と、走り出したクレアを見送るヤン―。
数十分後―。
クレアは105号室に入ると、いつものように、朝の水の神への礼拝とシャワーを浴びるため、浴室に入る―。
浴室から出てくるのと同時に…
「クレア。
朝ご飯じゃけん☆」
と、ヤンが入ってき
「ひやぁッ!!」
と、悲鳴をあげるクレア。
「ごごごごめんっ!!」
と、慌てて外に飛び出すヤン…。
104号室での朝食時、その話を聞いたミンは大笑いした…。
「笑い事じゃないけん…ッ!!」
と怒るクレア。
その時、クレアのスマートフォンが鳴った。
「ごめんじゃけん。」
と電話に出る。
電話は、ユウキからだった。
墓参りに行く時間だ。
「なら、あとで送るけん☆」
と言うミン。
「ありがとうじゃけぇ☆」
と、礼を言うクレア。
朝食後、105号室に戻ったクレアは、リューコに着替える。
そして、外で待っていたミンが運転するサイドカーに乗る―。
・
ユウキが住むタワーマンション前で、ミンと別れるクレア。
(あっ…。)
と、エントランス前に、緑のリューコを着たユウキの姿を見つけるクレア。
「おはようじゃけぇ、お兄ちゃん。
あれ?
お兄ちゃんの彼女さんは?」
と訊くクレア。
「リューコを着た僕とは一緒に歩けないんだってさ★」
と、肩をすくめるユウキ。
(それって、つまり、バカにされてるってことじゃけん…★)
と、ユウキにあきれると同時に、七尾人の風習に理解を示さないミクに嫌悪感を抱くクレア…。
その後、クレアはユウキが運転する車に乗り、両親が眠る墓地に向かった―。