本当はいない船乗り。 作:℃M
「ふふっ。ありがとね、私が変だったから慰めてくれようとしてくれたんでしょう?」
「そんなことはないです。ただ気まずかっただけで……」
「結果的に慰めてもらえたからいいわよ。」
「あっ…その……ありがとうございます。」
大人のお姉さん相手じゃあそんなに考えて言葉はだせんのだよ。
しかも美人さん。
「お礼はこちらが言うべきよ、ありがとね。」
そう言ってこちらに、さきほどより悲しみのない美しい笑顔を向ける。
それに見とれていた自分は
「あっ…どういたしまして。」
なんて言葉しか言えなかった。
…でも、やっぱり悲しい顔だな。
「あの……お姉さん。何か困っていたりしたら話を聞きますよ?」
俺のばっきゃろおお!!そんなこと言ったって話すわけないじゃないかああ!!
「……そうね。親しい人よりも、あまり知らない人のほうが話しやすいし。ちょっと聞いて欲しいわね。」
……さっきまでの俺グッジョブ!
「私ね。変なのよ。」
変?どういうことだ…。
「なんだか、記憶が曖昧でね。ミレーユ…金髪の人がね、笛を吹いたら、私が黄金の竜になっちゃうっていう記憶があるのよ。」
「黄金の竜……ですか」
「うん。それでね、いきなりのことだからパニックなっちゃうのよ。でも体は勝手に、動いていく。」
「違う場所の記憶かもしれないじゃないですか」
「いいえ、その前にこの船で、ムドーを倒しにいく話をしていた記憶もあるのよ。船の操縦士は違ったけどね。」
「違う操縦士……ですか?」
「うん。君みたいな若い子じゃなくて、おじさんって感じの人だった。」
「お、おじさん……」
「ふふふっ。それでね、自分の思い通りには動けない。でも竜になることはわかってる。このままついて行ったら、みんなにばれちゃう。」
「ばれてもいいじゃないですか?」
「ばれて、もしもみんなが私のことを怖がったりしたら、私何をしちゃうかわからないもの。」
「ならしっかりと心がければ…自分の思い通りには動けないのか……」
なんとも難しい……
「……ありがとね。君のおかげで少しは気が楽になったわ。」
「お役にたてたのならば幸いです。」
「あら、もうこんな時間……もうすぐ呼ばれるかもしれないわ。準備してくるわね」
「はい。気をつけてくださいね。」
「ありがと。……あと、「お姉さん」じゃなくて、名前で呼んでくれると嬉しいわ。じゃあね。」
そういって茶髪……バーバラさんは船から降り、広い場所に移動した。
「バーバラさん、か。最近の中二病は凝ってるんだなぁ。」