俺とみんなの過去と現在   作:曽良紫堂

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晴海の続きというか、一方その頃みたいな


花岳恋2

「……ちゃん……レンちゃ~ん……」

 

 微睡む意識に声が届く。その声の主は私を呼んでいるようだった。

 

 

 ……はがねぇ?

 ……っていうかなにぃ~?

 

 

 眠気で思考が上手く纏まらないし、しょぼしょぼする目も開けられない。その間にも羽金の声はかけられ続けている。

 

「レンちゃ~ん、ご飯だよ~。起きて~」

「う~……ん……、ごはん……?」

 

 視界を閉じた自分の耳朶(じだ)を打つ、ほんのり硬い気のする羽金の声に、ほんの少しだけ頭が起きた私は返事をした。

 いつもなら私の頭を撫でてくれるはずなんだけど、一向にその様子がない。あと、まだすごく眠い。

 

「そうだよ。大体できたから、美花(みけ)ちゃんが起こして来てって」

「……んゅ…………まだ……ねむいぃ……」

 

 眠気に逆らえず、美花が掛けてくれたであろう毛布にくるまり丸くなる。羽金が起きてと言っているけど、今の私に起きられるほどの気力はない。……とっても眠いんだ。

 

「そうだね、まだ眠いよね。でもご飯だから起きないと」

「……むりぃ~。はがねぇ~……お~こ~し~てぇ~」

 

 それでも羽金が起こそうとしてくるから、私は起こして貰うために、愚図りながら声のする方へと両手を伸ばす。だけどその手は宙ぶらりんだ。起こすなら早く私の手を取って抱き起こして欲しいのに……。

 

「仕方ないなぁ。じゃあ、俺の事どう思ってるか聞かせてくれたら寝てもいいよ」

 

 何もしてくれない羽金がそんな事を言ってくる。

 

 

 私が羽金をどう思ってるかって……?変なことを聞くなぁ……そんなの決まってる。

 

「はがね……すきぃ……」

 

 もう寝てもいい?眠すぎてしょうがないよ。

 

 

 眠気にぐわんぐわんする意識で思わず好意を口走ると、誰かのくつくつと笑う声が聞こえてきた。

  

「ククッ。コイツマジかよ。寝ぼけすぎだろ」

「…………?はがねぇ……?」

 

 明らかに声色と口調の違う声が聞こえてようやく違和感を持った私が目を開くと、目の前にはスマホ片手にニヤニヤ笑ってる夜塔(やとう)(かい)のバカがいた。

 その顔を見た瞬間、一発で意識が覚醒して横になってたソファーから跳ね起き、私は羽金を探して周囲を見回す。けれども、がらんとした部屋にはバカ(かい)一人しかいない。

 あたふたする私を見てバカ笑いをしているバカ(かい)に、私はこめかみに青筋を立てながら怒鳴った。

 

「…………ッ!お前ぇ~!何でッ!?羽金は?」

「あははははっ!お前の()い人はまだ帰ってねぇよ!俺が羽金の声真似したらまんまと騙されてやがる!」

「笑うなッ!!それと動画撮ってんじゃないよ!!!」

 

 さっきまで聞こえてた声は全部バカ(かい)の声真似だとわかって苦い顔をする。

 人の起きがけに騙してきたコイツが非常に腹立たしいし、少しの違和感しか感じさせないくらい声真似が似ていたのがまた余計に腹立たしい。

 

「無駄に器用な真似しやがって。今度から俳優なんかやめて物真似芸人になっちゃえよ!」

「吠えるな吠えるな。わかってんのか?お前が寝ぼけて愛を囁く動画は俺が握ってんだぞ?」

「……ッ。何が目的だよ!金か?技術か?それとも私とか言わないだろうな!?」

 

 苛つきながら快に悪態をつくと、コイツはさっき撮った私の寝起き動画をスマホで流しながら脅迫してくる。ホント何がしたいんだコイツと思いながら目的を聞くと、急にバカ笑いを止めてスンと真剣な顔をする。

 

「……そうだ。俺の目的はお前だよ、恋」

 

 少しタメを作ってから放たれた一言は酷く真剣に聞こえた。

 

「だ、ダメだ。……わ、私には羽金がいるんだ」

「そんなの関係ねぇ!俺と羽金の邪魔になるお前には死んでもらうッ!っと」

 

 動揺したように振る舞っていると、快は態度を豹変させながら私の脇に手を差し込んで、ひょいっと持ち上げて立たせる。やっぱりコイツはふざけてるだけだった。

 しかもふざけてるだけなのに演技力もあるのが小賢しくて癪だ。コイツと比べたら、まるで私が大根役者みたいじゃないか。実際そうだけど……。

 

 

 というかお前が羽金を狙ってる設定なのかよ!

 

 

「そっちかよッ!!!私を狙ってる設定じゃないのかよッ!!!」

「ぶぁはっはっはっ!誰がお前みたいなちんちくりんの変人にコナかけるかよ!冗談でもお断りだね!羽金の方がまだマシだわ!」

「テメェ!仮にも乙女に対して言っていいことと悪いことがあんだろ!この無礼者がぁ!」

 

 私が怒りを込めて叫ぶと、バカ(かい)はまたバカ笑いしながら失礼な事を言ってくる。いくら勝手知ったる仲の幼馴染とはいえ、ムカつくことはムカつくので、私はバカ(かい)に飛び掛かって蹴りを入れるのだった。

 

 

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