俺とみんなの過去と現在   作:曽良紫堂

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花岳恋2の続き的な?


夜塔快1

「お〜痛てぇ。お前ちょっと加減しろよ」

「うるさい!バカが!」

 

 俺が軽く痛む箇所を(さす)りながらそう言うと、起き抜けに飛び蹴りを食らわせてきたチビが、がるると迫力のない威嚇をしてくるのだった。

 

 

――――――

 

 

 新進気鋭の人気俳優の俺こと夜塔快(やとうかい)は、共演者が捕まったとかで急にスケジュールが空いて出来た暇を潰す為に、古い友人の幡中羽金(はたなかはがね)の家をアポ無しで訪ねていた。まあ、訪ねたは良いが家主は不在だったんだが。

 

「は〜い、どちら様で……って快!?」

「おう!美花(みけ)か、羽金(はがね)は居るか? 遊びに来たって伝えてくれ」

 

 チャイムを鳴らすとインターホンに出てきたのはこれまた古い友人の星砥美花(ほしとぎみけ)だった。

 コイツも俺と同じような人気商売の業界にいるわけだが、俺の活躍には未だ及ばない。その証拠に今日コイツはオフなんだそうだ。

 もちろん俺は今回のようなイレギュラーがなければ休みなんざ取れない。

 後でこの事について少し(いじ)ってやったら、ちゃんと休みを取れと普通に叱られた。ケッ、マネージャーと同じ事言いやがって……。

 

 なにはともあれ、この部屋の家主でもない美花に促されてリビングまで入ると、コイツ料理を作っている最中だったらしい。

 一緒に飯を食っていくかと聞かれたから当然だと頷くとため息を()かれる。なんだ?失礼な奴だなと思っていると、俺が急に来たからメニューを変えないといけないと美花が言った。

 それなら鍋がいいと俺が提案すれば、美花は再びため息を吐いて冷蔵庫の中を確認してからスマホをいじり始めた。

 

「何やってんだ?」

「鍋するにはお豆腐足んないから羽金に頼んでんの」

「そういや、その羽金はなんで居ないんだ? この部屋の住人でもないお前が居るのに」

(はる)を迎えに行ってもらってるんだよ」

「アイツも来るのか!」

「まあね……よし! 頼めたからこっちは鍋の準備しないと。快も手伝って」

「俺もやるのか……。まあいい。何すればいいんだ?」

「テーブルに食器とか出しといて」

「おう」

 

 客として訪ねたとはいえ飯の準備をしてもらうという手前、言われた通りに手伝うことにする。

 で、必要な食器は何処にあるんだ……?

 

 

――――――

 

 

 豆腐以外の準備が終わると美花が家主の片割れを起こして来いと言った。羽金と一緒に行ったのかと思ってたが寝てたのかアイツ。

 

 配信部屋という名の8畳ほどの防音室に入ると、壁際のソファーで寝ている家主の片割れが居た。寝ているちんまい体躯に金髪の女子は、羽金と同じくらい古い友人の花岳恋(かがくれん)だ。

 間抜けヅラで涎を垂らしながらグースカ寝ているコイツを見た俺は、一つイタズラを思いついてスマホのカメラを起動した。

 

 

――――――

 

 

 それから俺の演技力を無駄に使って、偏屈な天才チビ()の事を少しからかってやったら、コイツ飛び蹴りのあと脛に蹴りを入れてきやがって流石に痛かった。

 力は体格相応の癖に、妙に痛いところを的確に打ってくるから(タチ)が悪い。

 

「どーだ、参ったか! 参ったなら撮った動画消せ! (はよ)(はよ)う!」

「わかったわかった。今消すから騒ぐな」

「騒ぐなじゃねぇ! オマエが悪いんだろうが!」

「あっ。あ~、ほら。お前がギャーギャー騒ぐから手が滑って羽金に送っちまったじゃねえか」

「な!? なにしてんだこのバカッ!! 絶対わざとだろうが!! すぐ取り消せッ!!」

「既読ついたな」

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ッ!!!!」

 

 本当は送らずにちゃんと消してやったのに、また騙されて頭を抱えて唸るチビ()を見ながらクスクス笑っていると開いていた防音室の扉の向こうから人影がやって来た。

 

「ちょっと何してんのアンタたち」

「ミ〜ケ〜、快のバカが〜」

「またぁ〜? もうちょっと快! アンタまた(れん)に何したのよ!」

 

 顔を覗かせた美花に半泣きの(れん)が泣きついて俺を指差す。すると(あき)れ顔になった美花が俺を怒る。

 

「ふはっ、クックック。恋、冗談だ。誰にも何にも送ってねぇし、ちゃんと消したって」

 

 俺が笑いながらそう言って、恋に向かってスマホの画面をひらひら揺らす。それを目で追って俺と羽金とのメッセージ履歴を読んだ恋は、またからかわれたと理解して即座に怒り出した。

 コイツは普段は頭が切れるのに、羽金に係る事だとトンと頭が悪くなる。そんなんだから羽金の事が好きなのが周りにバレバレになったんだぞ?

 

 そして俺が大笑いをして美花が(あき)れ、(いか)れる恋が俺をまた蹴ろうとしていると玄関の方から物音がした。

 

「お〜い美花ちゃん、お豆腐と(はる)ちゃん買ってきたよ〜!」

「羽金くん! それだと私も買われてきたみたいになっちゃう!」

「あっゴメン。晴ちゃんは売れてないもんね……」

「違うよ!? そうじゃない! そこ謝るところじゃない! というか私はこれから人気が出て売れるの!」

「そうだね、そうだと……良いね……(ほろり)」

「そんな悲劇を見ちゃってから励ますみたいな泣き真似までしないでよぉ! もぉ〜ッ! この人ホントに失礼だよぉ〜!!」

 

 騒がしく漫才をしている男女が玄関から入って来る。

 買い物袋片手にヘラヘラ笑っているこの部屋の家主と制服を着た女子。これまたどっちも古い友人の幡中羽金(はたなかはがね)天領晴海(てんりょうはるみ)の2人だった。

 

 

――――――

 

 

 俺から羽金への第一印象は『趣味の悪いヤツ』だった。もちろん悪い意味でだ。

 幼稚園での初対面の時、能面のような無表情で全方位に妙な威圧感を放ってた(れん)に対して、分かりやすくデレデレと鼻の下伸ばしてたからな。今でこそ随分とマシになったが、あの頃の(れん)には周りのヤツらも心底ビクついてたってのに。

 そんな昔から(れん)(かかわ)る事で奇行ばっかりしてたせいでシンプルに人望がないんだ。二人一緒に腫れ物扱いとも言っていい。

 だけど、別にそれが羽金の良し悪しを左右することはない。事実、アイツは情に厚くて、よく人を助ける。困っている者なら誰でもだ。

 (はる)の騒動も羽金が動いて丸く収まったし、美花(みけ)の時もそう。(れん)なんて最たるもんだろう。コイツは羽金に迷惑かけ過ぎだ。

 

 そして、昔から広く浅く人付き合いをする俺にとって、羽金は珍しく深く長く付き合っている友人だ。

 付き合いの長さという点では恋や美花、晴も似たようなものなんだが、つまる所コイツらとは羽金を介した関係でしかない。

 俺が各個人を遊びに誘うかと言われれば、……ないな。

 

 もちろんその場に居れば話すし、遊んだり、からかいもする。だが、それは羽金という共通の友人があっての事だ。羽金という要素がなければ瞬く間に疎遠となるだろう。

 

 相手がどう思っているかは知らないが少なくとも俺はそう思っている。

 

 ここまで色々言ったが結局何が言いたいかと言えば、俺はわりと薄情者であり、羽金は俺とは正反対の得難い友人だってことだ。

 

 まあ、それでもやっぱり(れん)の事に関してだけはどうかと思ってるぜ?

 

 




なんとか書けたので更新。
続きは書けるのか……
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