「……んがッ。ぁ゛~」
意識が覚醒する。
いつの間にか寝ていたようで、俺はリクライニングしたゲーミングチェアに横になっていた。腫れぼったい目を擦りながら時計を見ると、時刻は最後の記憶からきっかり七時間たっている。
三徹は流石に辛かったとか、チェア動かしたのと掛かってる毛布は恋ちゃんがやってくれたんかな?とか、寝ても疲れがイマイチとれてない重い頭で取り留めの無いことを考えながら伸びをする。
すると自身の右側に伸びを阻害する何かがあることに気付いた。
「……? なんだぁ~?」
動きの鈍い頭と体をうごうごと動かして掛かっている毛布を捲ると、ぼやける視界に金色の小さな頭が見える。その可愛らしい頭を撫でるとサラサラとした長い髪の感触がした。
「ん~。んふふ」
滑らかなシルクのようなさわり心地をボヤボヤした意識で楽しんでいると、扉の方から物音がした。
「恋~、羽金~、どこ~?ここ~?」
扉が開いて薄暗い部屋に光が差す。間延びした呼び掛けをしながら扉を開けた人物は逆光になってよく見えないが、部屋全景は見えるようになった。
ここ防音室だったのね。
「あ、居た!っていうか二人で寝てんじゃんか!ズルい!」
「ん~? ふたりぃ~?…………二人!?」
若い少女の大きな声がテンション高く防音室内に響く。少し批難の色を含むその声色を聞きながら体を伸ばしていると、徐々に彼女の発言内容が頭に入ってきた。
そして俺は急激に意識をはっきりさせ、慌てて体を起こす。そこには簡易ベットと化したチェアの上で上半身を起こした俺と、そんな俺にコアラみたいに抱きついて可愛く寝息を立てている恋ちゃんが居た。
この子が天使か? いや、恋ちゃんか。なぁ~んだ、やっぱ天使じゃん。
………………なんで一緒に寝てるのぉ!?
「なんで一緒に寝てるのぉ!?」
「それは私のセリフなんだけどぉ!」
心の声がダイレクトに出力されるくらい混乱している俺に背後の気配から声がかけられた。
振り返るとちょうど少女が防音室内の照明を点けた所で、シルエットだったその姿がハッキリと見えた。
ふんすと鼻を鳴らしながら俺を睨んで仁王立ちしていたのは、恋ちゃんと同じく俺の幼馴染みである金髪の少女。
「もちろん答えてくれるよね? ね?羽金?」
「もちろんでございます……
何が何だか全くわかっていなかったが 、とりあえず俺はミケちゃんをこれ以上刺激しないよう服従の意を示すため、その場で
――――
16歳女子。ちなみに俺と恋ちゃんと同学年。誕生日が俺たちより早いから、少しだけお姉さんな幼馴染み。
いま目の前で、寝ている恋ちゃんを優しく抱きしめながら俺から事情聴取をしている少女のプロフィールはこんな感じ。
俺と幼馴染みということは当然恋ちゃんとも幼馴染みということで 、彼女は恋ちゃんにとって数少ない同性の友人の一人だ。
「――という訳で、俺も気付いたら一緒に寝ていたようです……はい……」
「ふぅ~ん。じゃあ羽金は恋が悪いって言いたいわけね?」
「……っ!いえ!決してそんなつもりはなくて!俺は事実をありのまま言っただけなんです!そこに善悪は関係ないっていうかぁ!」
「………………」
「……えっ?まさかの反応無し!?」
「……ふふっ。冗談だよ、冗談。分かってるって!慌てんなし!さて、ご飯作るからみんなで食べよ?」
そして同じマンションの隣の部屋に暮らしてるご近所さんの少女でもあった。