一月の努力が実を結んで、晴れて名無しの不思議少女だった花岳恋ちゃんの名前を知った俺は、それから彼女と急速に仲良くなっていった。
幼稚園の教室では常に一緒で、たまには園庭で散歩したりもする。まあ、こうして箇条書きして見ると恋ちゃんが随分アクティブになったように見えるが、実態はほぼ介護だった。
教室で一緒といっても相変わらず虚空を見て微動だにしない事が多いし、散歩中もなにを考えてるのか知らないが、ぼんやりして注意が散漫な恋ちゃんの手を引いて転ばないように細心の注意を払わなければいけない。
先生達も自分たちには反応を返さない恋ちゃんにもうあんまり関わりたくないようで、俺が彼女の面倒をみてくれるならそれでいいと不干渉の構えだった。
とまあ、完全に見捨てられた感のある俺たちなのだけど、お散歩が増えただけで俺としてはいつもとやってることが変わんないし、恋ちゃんから可愛いを摂取できてハッピーだったし、合法的に柔らかいお手々を繋いで歩けて楽しいので何も不満はなかった。
むしろ一人占めできて、この状況お得だなとすら思っていた。
なお、初めて会話した日からポツポツと会話が出来るようになったけども、大半は聞き流されてるし、あの日のようにハッキリはきはきと話す恋ちゃんは結構レアだった。
――――
俺の入った幼稚園は一応お勉強の時間というものがあった訳だけど、一応あるというだけで回数は多くない。週に2~3時間あるか無いかといった所で内容も簡単な文字の読み書きや外国語の幼児入門編、一桁の足し算くらいなもんであった。他の時間は大半が子供時代の一番重要なお仕事である遊びの時間だ。
当然、最近意志疎通が出来るようになった恋ちゃんもお勉強に参加するのだけど、何せ今までの彼女は全く動かず、お人形さんもかくやと言ったところであったため、俺も含め園の誰も彼女の実力の程というものを全く知らなかった。
故に、既に幾度もお勉強の時間に参加して学びを得ていた俺は、恋ちゃんへ自分が得た知識を披露しようと息巻きながらプリントに目を通す。確か俺の記憶では、そのプリントには計算問題が載っていて、分かる問題も多かったから自信を持って回答を書き込みつつ、悩んでいたなら教えてあげようと隣に座る恋ちゃんを見やった。
「お前これ分かる?分かんないところあったら教えてあげるけど」
「…………うん」
やっぱりぼんやり宙を見ていた彼女の肩を叩いて計算で分からないところはあるかと聞くと、目線を下げてサッとプリントを流し見た恋ちゃんが鉛筆を掴んでサラサラと答えを書いていった。
ただの一瞬も詰まること無く、物の数秒で全て書かれたそれに俺が唖然としてると、歩きながら皆の出来を見ていた先生がやって来て、答えが全部書かれているのに気付き採点する。
結果は満点で先生は良くできましたと誉めてから他の園児のところへ行ったけど、俺は恋ちゃんの回答時間を間近で見ていたために信じられない思いだった。
結局その日は教えるつもりが逆に分からないところを教えられるという情けない結果に終わる。
別の日のお勉強は外国語であり、皆して先生の手本に続いて林檎だのミカンだのの単語を唱和し、挨拶や会話の慣用句を学ぶ。それが終わればお隣の子と学んだ事を実践してみましょうということで、みな各々隣の子とペアを組んで辿々しく話し始めた。
「じゃあ、俺たちもやろうか。えーとは、ハロー?」
「Hello. The weather is nice today. I'd love it if you could hold my hand and take me for a walk again, but why don't we skip this boring thing and go for a walk?」*1
「……はい?」
俺も流れに乗ってお隣の恋ちゃんに向き合ってハロー!なんて話しかければ、眠たい目をした彼女から怒涛のように流暢な言葉を浴びせられ目を丸くする羽目になる。
まあ、一事が万事こんな感じでその度に俺は驚きで呆然とする事となり、恋ちゃんも恋ちゃんで徐々に俺を驚かすことに楽しみを見いだしているようだった。
そして、お勉強の時間の度にこんなことがあっても先生たちは俺たちに全然注目してなかったので、恋ちゃんの天才性には全く気付かれなかったのである。
英文はgoogle翻訳で翻訳したので多分合ってると思います。