俺とみんなの過去と現在   作:曽良紫堂

7 / 15
星砥美花

「じゃあ羽金お願いね~!」

「ういーっす……」

 

 私は(れん)を横抱きにしたまま、お使いを頼んだ羽金を送り出す。とぼとぼとリビングを出ていく彼を見送ってから腕の中で寝てる振りをしてるちんまい子に話しかけた。

 

「三徹なんて無茶しちゃダメだよ、恋。いくら()()()が居ないからってさぁ。体に悪いよ? しかもそれに羽金も付き合わせてさぁ」

「……うん、ごめん。ちょっと集中し過ぎた」

「も~!気をつけてよね!」

 

 少し小言っぽく注意すると、恋は閉じていた瞳をうっすら開けて気まずそうに目を逸らした。

 

 

 分かってたけど、恋ったらやっぱ全然寝てないな?ちょい顔色が青ざめてるし。

 空いた時間に配信覗いてた感じ、ちゃんとご飯も食べてないみたいだったし、こりゃ弱るのも仕方ないわ。まったく!羽金もちゃんと止めてくれないと恋が体壊して早死にしちゃうよ?

 

 

「わかったって。っていうか、私が起きてたのいつ気付いたの?」

 

 

 目だけじゃなくて話も逸らすじゃん。もうちょい反省して欲しいとこだけど、これ以上は野暮かな。私もしばらく暇になるし、また無茶しないように注意して見てればいいか。

 で、なんだっけ?いつから気付いてたかだっけ?

 

 そんなの当然。

 

 

「最初からだよ? まあそんなこといいからちゃんと寝なさい。その間にご飯作っとくから」

 

 

 とっても疲れてる自覚がない恋の演技じゃ、寝ぼけた羽金は騙せても私は騙せないんだよ。というか羽金だって普通だったら気付くね。間違いない。

 

 

 いつもより動きが鈍い恋をソファーに寝かせて頭を撫でてあげると、ようやく完全に脳の活動が落ち着いてきたのかトロンとした目をし出した。この様子なら今度はちゃんと寝れるだろうと安心する。

 

「……じゃあお言葉に甘えまして。お休み、美花」

「おやすみ~」

 

 そう言うと恋はすぐに静かな寝息をたて始めた。

 しばらく若干の幼さを残したカワイイ寝顔を眺めて癒されると、私は恋を残してキッチンへ向かう。冷蔵庫の中身を確認するとちゃんと食材が入っていて安心した。何も無いなんてことになれば、羽金に追加のお使いを頼まなければいけないところだった。

 

 

 よしよし!羽金ったらちゃんと食材補充してる。前に中身を空にしてから全然買ってこなかったの怒ったのが効いてるみたい。

 

 

 自分の家の冷蔵庫の悲惨な中身を棚に上げてそんなことを考えながら、在庫から作れそうな四人分のメニューを考える。とりあえず栄養バランスを考えて煮物やお惣菜を作る事を決めると野菜を切り始めた。

 

 

―――― 

 

 私、星砥(ほしとぎ)美花(みけ)は幡中羽金、花岳恋の幼馴染みだ。

 

 その出会いは小学校。入学して直ぐだった。

 

 入学してクラスの教室に入ると、とっても目立つ金髪の子が居た。それが恋で、その恋がずっと話していたのが羽金だった。

 

 人形見たいで目を引く容姿に華奢な体躯、それにカワイイ声まで付いてればクラス中の注目を集めるのは当然で、男女問わずやんちゃな子たちは積極的に羽金と話している恋に割って入っていった。誰も彼も彼女と話したくてしょうがないみたいで、マシンガンみたいに質問を浴びせる。

 羽金はその子たちから恋を庇いつつ、やんわりと注意していたけど、それがその子達の反感を買って徐々に口論になっていった。 一方的に怒鳴られていた羽金は、それでも穏やかに皆を落ち着けようとする。

 

 私はその時、そろそろ手が出そうだなと思って止めに入ろうと近づいてたのだけど、出だしが一歩遅かった。

 私が止めに入るよりも前に完全に怒った子が羽金の胸ぐらを掴んで投げたんだ。

 

 うおっとか気の抜けた声を出しながら投げられた羽金は床に投げ出されて倒れる。関わらないように遠巻きにしてた子達が悲鳴を上げたけど、割って入った子たちは余計ヒートアップしていった。

 起き上がろうとした羽金に罵声を浴びせて、投げた子は蹴りまで入れようとしてたから私は止めろと叫んだ。でも興奮した子たちは止まらず羽金が蹴られた。

 

 そこからは大変だった。

 

 キレた恋が全員を罵倒し、慌てて羽金が止めるも時既に遅し。怒りの矛先は恋にも向いてしまった。教室中が怒号と悲鳴で溢れ、羽金と私が恋を庇って暴れる子達と対立する。

 

 結局、そんな騒乱の中で慌てて先生を呼びに行ってくれた子が、担任を連れて帰ってくるまで騒動は続いた。

 

 

 最終的に先生によって喧嘩は仲裁されて、暴れた子たちと罵倒した恋は叱られる事となった。恋は不満そうにしてたけど、羽金は苦笑いしていた。

 それから教室では暴れた子達のグループと遠巻きに見てた子達のグループができて、恋と羽金は(あぶ)れてしまう。誰も話しかけたりしないからポツンと浮いた二人は、無視されても全く気にした様子はなかった。

 私といえば、どっちのグループにも馴染めず居心地の悪い思いをしていたから、同じように居心地悪そうにしてた先生を呼びに行った子を誘って恋たちに話しかけたのだった。

 

 

――――

 

 それから色々あって仲良くなったけど、これが最初の出会い。私のかけ替えの無い親友たちとの出会いだった。

 

 

 

 …………今改めて考えると結構最悪だなって思う。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。