影の大王によってデルトラに飛ばされたヴァージニアは、リーフ、バルダ、ジャスミンと共に、
七つの宝石を取り戻すため、元の世界に帰るため、友人を助けるために冒険した。
四人は橋で巨人のなぞなぞを解いた後、魔女テーガンが支配する地域に突入し、
影の憲兵団に捕まっていたララド族の男マナスを助ける。
ヴァージニア達は魔女テーガンの子供、ジッドとジニに捕まるが、何とか脱出する。
その後、四人はララド族の街ララディンで休息を取り、怪物ソルディーンを退ける。
そして魔女テーガンを倒して呪いを解き、ルビーを取り戻すのだった。
第15話 謎の黒い影
足が痛くて疲れ果てたヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミンは、
伝説のネズミの街を目指して西へ移動した。
目的地については、そこが遠い昔に人々から見捨てられた邪悪な場所である事以外、
ほとんど何も知らなかった。
しかし、デルトラのベルトの宝石のうちの一つがそこに隠されていると四人は確信していた。
四人は一日中、着実に歩き続け、輝く太陽が地平線に沈むにつれ、一休みしたくなった。
しかし、四人が歩いた道は、荷馬車の轍で深く刻まれた、
茨の茂みが根を張り、広がる平原を縫うように続いていた。
茨は途切れる事なく道に並び、見渡す限り続いていた。
リーフは溜息をつき、慰めを求めてシャツの下に隠したベルトに触れた。
ベルトには今、二つの宝石が埋め込まれていた。
黄金のトパーズと深紅のルビー。
どちらも大きな困難を乗り越えて勝ち取ったもので、その過程で偉大な事を成し遂げたのだ。
四人がここ二週間滞在していたララディンの人々は、
四人が失われた宝石を探す旅に出ている事を知らなかった。
ルビー探しを共にしたララド族の男、マナスは、固く黙っていた。
しかし、四人が邪悪な影の大王から力を得た邪悪な魔女テーガンを倒した事は、
秘密でも何でもなかった。
魔女テーガンの13人の子供のうち、二人を倒した事も、秘密でも何でもなかった。
ついに魔女テーガンの呪いが解けたララド族の人々は、
四人の功績を称え、喜びの歌を何度も歌った。
マナスと、隠れ村の幸福、安全、美味しい食事、
そして暖かく柔らかなベッドを離れるのは辛かった。
しかし、まだ五つの宝石が残っており、それらがベルトに戻ってくるまで、
デルトラを支配する影の大王の圧政は打ち破れなかった。
四人は先へ進まなければならなかった。
「この棘は果てしなく続くのよ」
ジャスミンが不満を漏らし、リーフの思考を遮った。
リーフは振り返ってジャスミンを見た。
いつものように、フィリという名の小さな毛皮の生き物がジャスミンの肩に寄り添い、
ジャスミンの豊かな黒髪の間から瞬きをしていた。
ジャスミンの視界から決して離れないカラスのクリーは、
近くの棘の上を舞い上がり、虫を捕まえていた。
少なくとも、クリーは腹を満たしていた。
「この先に何かあるぞ!」
バルダが叫ぶと、道端の白い光を指差した。
好奇心と希望を胸に、四人はその場所へと急いだ。
そこには、棘の間から突き出た奇妙な道標があった。
「どういう意味?」
「何かのお店への道を示しているようだ」
「お店って何?」
「えぇっ、ジャスミン、お店を知らないんですの!?」
ヴァージニアは驚いた。
ジャスミンが沈黙の森で人生を過ごし、
自分が当たり前だと思っていたものの多くを見た事のなかった事を思い出した。
「店というのは商品を売買する場所だ。
デルの街では、最近は店が貧しくなって、閉まっているところも多い。
でも、影の大王が現れる前は、かつてはたくさんの店があって、
人々に食べ物や飲み物、服、その他、色々なものを売っていたんだ」
ジャスミンは頭を傾けてバルダを見た。
リーフは、今でも自分が理解していない事に気づいた。
ジャスミンにとって、食べ物は木から育ち、飲み物は小川を流れる。
他のものは見つけたり作ったりするものだ。
そして、見つけられなかったり作れなかったりするものは、我慢するしかないのだ。
四人は疲れを忘れようと、低い声で話しながら、道をゆっくりと進んだ。
しかし、すぐに辺りは暗くなりすぎて何も見えなくなり、
松明に火を灯して道を照らさなければならなかった。
バルダは揺らめく炎を低くかざしたが、空からならまだ見える事を皆は知っていた。
四人の進路がこれほど簡単に見つかるというのは、不快な考えだった。
影の大王のスパイ達は今頃、上空を巡回しているかもしれない。
それに、四人はまだテーガンの領土の端まで到達していない。
テーガンを倒したとはいえ、長きに渡り悪が蔓延してきた場所では、
至るところに危険が潜んでいる事を四人はよく知っていた。
松明に火を灯してから約1時間後、ジャスミンは立ち止まり、後ろを振り返った。
「追ってきてるわ」
「えっ?」
「一人だけじゃないわ、大勢よ」
リーフ、バルダ、ヴァージニア自身は何も聞こえなかったが、
どうして分かったのか尋ねる事はしなかった。
ジャスミンの感覚が自分達よりも遥かに鋭いと知っていたからだ。
店がどこにあるかは知らないかもしれないし、
読み書きも少ししかできないかもしれないが、それ以外の点では彼女の知識は膨大だった。
「奴らは私達が先にいる事を知ってるの。私達が止まれば奴らも止まり、私達が動けば動くのよ」
「まるでローグライクゲームみたいですわね……」
リーフは静かに服をまくり上げ、腰のベルトのルビーを見下ろした。
松明の揺らめく光に照らされ、深紅の宝石が鈍いピンク色に色褪せているのを見て、
心臓がドキドキと高鳴った。
ヴァージニア、バルダ、ジャスミンもその石を見つめていた。
リーフと同じように、ルビーは身に着けている者に危険が迫ると色褪せる事を知っていた。
「もしかして、あいつらは影の憲兵団ではなくて? クリーなら分かるんじゃありませんの?
暗闇でも目が見えそうですし」
「クリーはフクロウじゃないわ! 私達と同じように、クリーは暗闇で何も見えないのよ」
ジャスミンはしゃがみ込み、地面に耳を当て、眉をひそめて耳を澄ませた。
「少なくとも影の憲兵団じゃないわ。それに、動きが静かすぎるし、足並みも揃ってないわ」
「盗賊団かもしれない。眠ったり休んだりしている隙に待ち伏せしようとしている。
引き返して戦わなければ」
リーフは既に剣の柄に手を当てていた。
ララド族の歌が耳に響いていた。
ヴァージニア、リーフ、バルダ、そしてジャスミンが立ち向かい、倒した怪物達に比べれば、
ぼろぼろの盗賊団など何の役にも立たない。
「リーフ、茨に覆われた道の真ん中で戦うのはもったいない」
バルダは厳しい表情で言った。
「敵を倒して隠れられる場所なんてどこにもない。
もっと良い場所を探しに、先に進まなければならない」
「仕方ないな」
四人は再び歩き始め、今度は速度を上げた。
リーフは何度も後ろを振り返ったが、背後の影には何も見えなかった。
四人は道端に幽霊のように立ちはだかる枯れ木に出会った。
その白い幹は茨の茂みから伸びていた。
そこを通り過ぎて間もなく、リーフは空気の変化を感じた。
首筋がチクチクし始めた。
「速くなってるわ」
ジャスミンは息を切らして言った。
その時、四人は音を聞いた。
血も凍るような、長く低い遠吠えだった。
フィリはジャスミンの肩にしがみつき、小さく怯えた声を上げた。
リーフは小さな体中の毛が逆立っているのに気づいた。
遠吠えが一つ、そしてまた一つ。
「狼よ!」
ジャスミンは息を切らして叫んだ。
「逃げられないわ。もうすぐこっちに迫ってくるのよ!」
ジャスミンはリュックサックからさらに三本の松明を取り出し、
既に持っていた松明の炎に突き刺した。
「奴らは火を恐れるでしょうね」
ジャスミンは燃え始めた松明をリーフ、バルダ、ヴァージニアの手に押し込んだ。
「やらなきゃいけませんわ。背中を見せちゃいけませんわね」
「トムの店までずっと後ろ向きに歩くのか?」
リーフは松明を握りしめながら、弱々しく冗談を言った。
しかし、ジャスミンは微笑まず、バルダとヴァージニアも微笑まなかった。
ヴァージニアは遠くで白く光る枯れ木を見つめていた。
「あの木を通り過ぎるまで、彼らは動き出さなかった。
奴らは、俺達が登って逃げるのを阻止しようとしていた。明らかに普通の狼じゃない」
「気を付けて」
ジャスミンは既に短剣を手にしていた。
ヴァージニア、リーフ、バルダは武器を抜いた。
三人は並んで立ち、松明を高く掲げて待ち構えていた。
そして、再び血も凍るような遠吠えが合唱すると同時に、暗闇の中から、
黄色い光の点が海のように動いているように見えたものが湧き上がった。
狼達の目だ。
ジャスミンは松明を目の前に左右に振り回した。
リーフとバルダも同じように振り回したので、彼らの前を走る道は動く炎の線で遮られた。
狼達は速度を落としたが、それでも唸り声を上げながら前進し続けた。
光に近づくにつれ、リーフは彼らが普通の狼ではない事が分かった。
彼らは巨大で、茶色と黄色の縞模様の、もじゃもじゃの毛皮に覆われていた。
唸り声を上げる顎から唇が引きつり、開いたまま唾液を垂らす口の中は赤ではなく黒かった。
その狼は11匹いた。
何故か、その数字はリーフにとって何か意味があったが、その理由は分からなかった。
いずれにせよ、そんな事を気にしている暇はなかった。
ヴァージニア、バルダ、ジャスミンを連れて、
リーフは松明を動かし続けながら後ずさりを始めた。
しかし、ヴァージニア達が一歩進むごとに、狼達も一歩ずつ進んでいった。
リーフはつまらない冗談を思い出した。
「トムの店までずっと後ろ向きに歩かなきゃいけないのか?」
「いえ、あいつらがわたくし達を追い込んでますのよ」
「……そうか。ヴァージニア、バルダ、ジャスミン! これは狼じゃない! 奴らは……」
しかし、リーフは言い終えなかった。
というのは、その瞬間、四人がさらに一歩後ずさりすると、大きな網の罠にかかったからだ。
ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミンは網に引っ掛かり、
身動きも取れないほどきつく縛られ、空中で吐き気を催すほどに揺れていた。
足から叩き落とされ、松明と武器は手から吹き飛んでいた。
クリーが絶望の叫び声を上げながら、四人の周囲に急降下した。
網は線路脇に生えている木にぶら下がっていた。
四人が見た他の木とは違い、それは生きていた。
網を支える枝は太く強固で、折れそうにないほど強かった。
下では、狼の遠吠えが勝利の雄叫びに変わっていた。
その後ろには、フードを被った女性が立っていた。
リーフが下を見ると、落ちた松明の光の中で、獣達の体が膨らみ、
人間のような姿に変わっていくのが見えた。
瞬く間に、11体の醜悪なニヤニヤ笑いを浮かべた怪物が、木の下の線路を跳ね回っていた。
大きいものもいれば、小さいものもいた。
毛に覆われているものもあれば、完全に毛のないものもあった。
緑色、茶色、黄色、病的な白色、そしてぬるぬるした赤色のものもあった。
一匹は六本のずんぐりとした脚を持っていた。
しかし、リーフは彼らが誰なのかを知っていた。
彼らはジニとジッドの敵を討つために集まった、魔女テーガンの子供達だった。
うなり声と鼻を鳴らしながら、怪物達は茨の茂みを根こそぎ引き抜き、
揺れる網の下に積み上げていた。
他の怪物は松明を手に取り、踊りながら歌っていた。
「あいつら、俺達を焼き殺そうとしてる!」
「わ、わたくしの奇跡……攻撃には使えませんわよ……」
バルダは空しくもがきながら呻いた。
「ジャスミン、お前の二本目の短剣が届くか?」
「もし届くとしたら、まだここにぶら下がってると思う?」
ジャスミンは激怒して囁き返した。
下の怪物達は歓声を上げながら、松明を茨の山に投げつけていた。
リーフは既に足元の暖かさと煙の匂いを感じていた。
もうすぐ緑の茂みが乾いて燃え上がるだろうとリーフは分かっていた。
そしてリーフ達は熱に焼かれ、網が燃え尽きれば火の中へ落ちるだろう。
リーフの頬に何か柔らかいものが触れた。
それはフィリだった。
ジャスミンの肩から這い上がり、リーフの耳のすぐ横の網をすり抜けようとしていた。
少なくともフィリは自由になった。
しかしリーフが予想したように、ロープを駆け上がって上の木にぶつかる事はなかった。
その代わりに、フィリは網にしがみつき、必死にかじりついていた。
リーフは、フィリが自分達が通り抜けられるほど大きな穴を作ろうとしている事に気づいた。
勇敢な努力だったが、あの小さな歯があんなに厚くて頑丈な網を噛み砕くのに、
一体どれだけの時間がかかるというのだろうか。
あまりにも長すぎる。
フィリが少しでも隙間を作る前に、下の怪物達がフィリの行動に気づくだろう。
そして追い払うか、殺してしまうだろう。
地面から怒りの叫び声が上がった。
リーフは慌てて下を向いた。
敵はもうフィリの姿を見つけたのだろうか。
いや、彼らは見上げていない。
ただ、互いに睨み合っているだけだった。
「イカボッドに二本の足を!」
一番大きなイカボッドが、ゴツゴツした赤い胸を叩きながら咆哮した。
「二本の足と頭だ」
「駄目だ! 駄目だ!」
二匹の緑の怪物が、茶色い歯をむき出しにして唸り声を上げた。
「不公平だ! フィーとフライがダメだ!」
「奴らは俺達のどこを食べるかで言い争ってるんだ! 信じられるか?」
「そのままにしておきなさい。時間稼ぎになるから」
「肉は分け合おう!」
二匹の小さな怪物が、他の怪物の喧騒をかき消して甲高い声で叫んだ。
「ホットとトットは平等に分け合おうって言うんだ」
テーガンの子供達は唸り声を上げ、ぶつぶつと呟いた。
「あいつらバカじゃないか!」
リーフは突然、ヴァージニア、バルダとジャスミンに話しかけているふりをして叫んだ。
「平等に分け合えないって知らないのか!」
「リーフ、頭おかしいですわよ」
ヴァージニアが小声で言った。
しかしリーフは叫び続けた。
怪物達が静かになり、耳を澄ませているのが分かった。
「僕達が四人なのに、あいつらは11人だ!」
「四人を11人に公平に分けるなんて無理ですわ。あり得ませんわ!」
ジャスミンとヴァージニアと同じように、リーフも自分が危険を冒している事は分かっていた。
怪物達はリーフを見上げながら、同時にフィリも見ている。
しかしリーフは、疑念と怒りがこみ上げてきて、
彼らが互いに視線を合わせ続けるだろうという希望に賭けていた。
そして、ほっとした事に、その賭けは成功した。
怪物達は小集団でぶつぶつ言い始め、互いにずる賢そうに顔を見合わせていた。
「均等に分け合え!」
ホットとトットが叫んだ。
イカボッドは二人に飛びかかり、鋭い音を立てて頭をぶつけた。
彼らは意識を失って地面に倒れた。
火が燃え上がり、パチパチと音を立て始めた。
煙が上空に吹き上がり、リーフは咳き込んだ。
横を見ると、フィリが既に網に小さな穴を開けていた。
今度はそれを大きくしようとしていた。
しかし、もっと時間が必要だった。
「リーフ、あいつらは何か忘れているようだな」
バルダは大声で言った。
「俺達を分けたとしても、分け合う量はやはり平等にならない。
俺はジャスミンより二倍大きいしな。
ジャスミンの3分の1をもらうなんて、とんでもない。本当は、半分に分けるべきだ!」
「そうだな」
リーフはジャスミンの怒りの叫びを無視して、同じように大声で同意した。
「でも、それでは八つにしかならないぞ、バルダ。しかも、九人を養わなきゃいけないんだぞ!」
リーフは視界の隅で、六本足の怪物ザンが考え込むように頷き、
くるりと振り向いて隣のフィーを棍棒で殴り倒すのを見つめた。
双子のフィーへの攻撃に激怒したフライは、ザンの背中に飛び乗り、悲鳴を上げて噛みついた。
ザンは咆哮を上げ、よろめきながら向きを変え、反対側にいた毛むくじゃらの兄を倒した。
兄は今度は目の前にいた妹に倒れ込み、彼女の角で自分の体を刺した。
そして突然、彼らは皆、叫び声を上げ、噛みつき、殴り合い、茨の茂みに倒れ込み、
火の中に転がり込み、地面を転がりながら、戦い始めた。
戦いは延々と続いた。
フィリが仕事を終え、四人が網から抜け出して上の木に登った頃には、
残っていた怪物はただ一人、イカボッドだけだった。
倒れた子供達の身体に囲まれ、イカボッドは火の傍に立ち、
勝ち誇ったように咆哮し、胸を叩いていた。
今にも見上げれば網は空っぽで、自分が戦って手に入れた食べ物は木の中にあり、
逃げ場がないのが目に浮かぶ。
「不意打ちをするわよ」
ジャスミンは腰から二本目の短剣を抜きフィリが無事肩に跨っている事を確認しながら囁いた。
何も言わずに飛び上がり、イカボッドの背中を両足で叩いた。
バランスを崩したイカボッドは、轟音と共に火の中に落ちた。
気を取り直したバルダ、リーフ、ヴァージニアは、一目散に木を滑り降り、
ジャスミンが武器を掴んでいるところへ駆け寄った。
「どうして待ってたの?」
ジャスミンは武器を突きつけながら問い詰めた。
「急いで!」
クリーが舞い上がる中、彼らは道の轍も暗闇も気にせず、風のように線路を駆け抜けた。
後ろでは、イカボッドが怒りと苦痛に咆哮を上げながら、
火の中から這い出てよろめきながら四人の後を追い始めた。
「追わせない。決着は、私がつける」
その時、フードを被った人物がイカボッドの前に現れた。
その人物はイカボッドを蹴り飛ばすと気絶させ、その人物もその場を立ち去っていくのだった。
息を切らし、胸が痛み、背後から聞こえる遠吠えに耳を澄ませながら、四人は走り続けた。
イカボッドが狼か他の獣に姿を変えれば、簡単に捕まえられる事は皆、分かっていた。
しかし、何も聞こえなかった。
もしかしたら、イカボッドは怪我をすると変身できないのかもしれない、とリーフは思った。
しかし、立ち止まったり、速度を緩めたりする勇気はなかった。
ついに、四人は道が浅い小川を横切る場所に辿り着いた。
「ここがテーガンの領地の境界線に違いない」
バルダは息を切らして言った。
「ほら、向こう側に茨の茂みがないじゃないか。イカボッドは俺達の後を追ってこない」
疲労で震える足で、四人は冷たい水の中を水しぶきを上げながら進んだ。
小川の向こう岸にも道は続いていたが、
その脇には柔らかい緑の草や小さな木々が生い茂り、野の花の姿も見えた。
四人は少しよろめきながら進んだ後、道から逸れて小さな木立の陰に倒れ込んだ。
頭上では葉が囁き、頭の下では柔らかな草が心地よく、
ヴァージニアを除いた三人は眠りについた。
「どうやら貴様は気づいているようだな」
その時、ヴァージニアの後ろから、女性の声が聞こえてきた。
「だっ、誰ですの!?」
ヴァージニアが振り返ると、そこにはフードを被った人物の姿があった。
そのフードには、夜の中で見えなかったが、影の大王の印が描かれていた。
「名乗る名前などない。ヴァージニア、来てもらう」
「なんでわたくしの名前を知ってますの!?」
「問答無用だ!」
「それはこっちのセリフですわ!」
ヴァージニアはメイスを振り回すが、フードを被った人物はひらりと身をかわす。
即座にフードを被った人物が懐からこの世界に存在しないはずの「銃」を抜き、
一発、ヴァージニアに向けて放った。
銃声は不思議な力で掻き消され、ヴァージニアに気づかれる事なく、彼女の意識を失わせた。
そして、フードを被った人物は彼女を背負うと、そのままどこかに去っていった。
そろそろあの人物を出さないかと思って出しました。
元々はヴァージニアがその人物を返り討ちにする予定でしたが、
裏で作業をした結果、こうなりました。
ヴァージニアがどうなるのか、それは木曜日に待ってください。