他者様のオリキャラを勝手に、しかも名前も勝手に考えてしまって申し訳ございませんが、
ヴァージニアの行動力を上げるためにはこうするしかないと思いました。
「まったく、ここは一体どこなんですの」
その頃、修道服を身に纏った一人の少女が、灰色の衣を身に纏った男達から逃げていた。
少女の名はヴァージニア・ファネス、ヴァチカンからこの世界に落ちてきた修道女だ。
灰色の衣を身に纏った男達とは、影の大王のしもべ、影の憲兵である。
見つかれば間違いなく殺されるだろうとヴァージニアは息を殺しながら茂みに身を隠していた。
しかし生憎、ヴァージニアはあまり隠れるのが得意ではない。
一つ間違えれば、影の憲兵が目をつけるだろうという緊張感が、ヴァージニアを襲っていた。
「いざ、尋常に……」
「勝負!!」
こうなってしまったのはチキュウで鬼族の女性・ワソと21回目の勝負をしようとした時だった。
現在お互いに10勝10敗と互角で、いよいよ決着がつこうとした時、
突然、目玉が見える黒い光と共にワソとヴァージニアは姿を消してしまった。
今、ワソの行方は、ヴァージニアは全く知らなかった。
(ワソ……絶対に見つけますわよ……!)
ライバル(だとヴァージニアが勝手に思い込んでいる)、ワソの生死をどうしても知りたいが、
今はそんな時間ではない。
ヴァージニアは慎重に一歩踏み出し、音を立てないように先に進もうとした。
―ガサ
(しまった……!)
ヴァージニアはうっかり茂みの音を立ててしまった。
影の憲兵はほんの僅かな音にも気づいてしまうだろう、とヴァージニアは思い、
こうなったらもう破れかぶれだと駆け出した。
ヴァージニアは、薄暗い森の中を必死に駆け抜けていた。
彼女の心臓は激しく鼓動し、息が切れそうになる。
背後には、影の憲兵の冷たい視線が迫っていた。
ヴァージニアは木々の間を縫うように走り、時折振り返っては、
影の憲兵がまだ追ってきている事を確認する。
彼女の心の中には、恐怖と希望が交錯していた。
一方、その頃……。
リーフは、戸締りした明かりのついた家々を通り過ぎ、
暗く曲がりくねったデルの裏通りを走って家を目指した。
猫のように速く、静かに走り、ヴァージニアのように、胸の中で心臓がドキドキしていた。
リーフは遅刻しており、急がなければならなかったが、
ほんの少しの音でもバレてしまう事は分かっていた。
日没後の外出は禁じられていた。
それは、影の大王が定めた最も厳しい法律の一つだった。
影の大王がデルを支配した日に施行した、ちょうど16年前の事だった。
それを破った場合は即、死刑だった。
リーフは、街の廃墟となった部分を走る長く狭い通りに滑り込んだ。
湿気と腐敗の臭いがして、足元の石はぬるぬるしていて危険だった。
日没後に外出した事はこれまでもあったが、
こんなに長い時間外出した事はなく、家からこんなに遠くまで出かけた事もなかった。
もっと気をつけていればよかったと心から思った。
父と母が心配して待っているだろう、という思いが頭をよぎった。
「リーフよ、午後は自由だ」
昼食が終わると、父親が言った。
「君の16歳の誕生日は特別な日だ。私と私の妻は、君が喜んで友達と祝ってほしいと思っている」
リーフは大喜びした。
仕事の合間に休みをもらった事は今までなかった。
大抵、午後は勉強しなければならなかった。
リーフはずっと不公平だと感じていた。
友達の中で習い事があるのはリーフだけだった。
(どうして読み書きを学ぶんだろう? どうして数字や歴史を学び、ゲームをするんだろう?
鍛冶屋にとっては役に立つのかな?)
しかし、両親は勉強を続けるよう強く主張し、リーフは不満を言いながらも従った。
今では、リーフはそのやり方に慣れていたが、
だからといってそれが以前より好きになったわけではない。
自由な午後は、リーフが想像できる最高の誕生日プレゼントだった。
「今夜、もう一つの贈り物がある。そして、一緒に話し合わなければならない事がある」
ジャード(リーフの父親)は、アンナ(リーフの母親)と視線を交わしながら言った。
リーフは好奇心から彼らの厳粛な顔に目をやった。
「何の事?」
母親は微笑んで首を振った。
「リーフ、今夜それについてお話しましょう」
アンナはリーフを優しくドアの方へ押しやった。
「今はお休みを楽しんでちょうだい。でも、揉め事には巻き込まれないようにね。
それから、時間には気をつけてね。日没前には家に帰ってね」
リーフは喜んで約束し、家を出て、毎朝父親を手伝う熱い鍛冶場を通り抜け、
一日中門の前に座り、夜は鍛冶場で眠る、ぼろぼろの服を着た物乞いバルダの横を通り過ぎた。
彼は丘の上の城に続く道を渡り、その先の雑草だらけの野原を歩いて渡った。
そして、賑やかで混雑した街の匂いや音に身を任せる事ができる市場に着くまで、
喜びに溢れて走り続けた。
リーフはたくさんの友人を見つけ、一緒にお気に入りの場所を楽しく歩き回った。
彼らには使うお金はなかったが、とにかく楽しい事を見つけた。
市場の露店の店主をからかったり、薄汚い路地を行ったり来たり、
影の憲兵を避けたり、詰まって溢れている側溝で銀貨を探したり。
そして、城の壁からそう遠くない、荒れ果てて草が生い茂った一角で、
彼らは銀よりも素晴らしいものを見つけた。
小さな丸い赤い果実で覆われた、ねじれた古い木だ。
「リンゴだ!」
リーフはその果物が何であるか知っていた。
彼はとても幼い頃に、リンゴを食べた事があった。
当時、街にはまだ大きな果樹園がいくつかあった。
リンゴや他の果物は市場で買う事ができたが、高価だった。
しかし何年も前に、デルの果物は全て、それが実る木がどこで育っても、
影の大王の物であると宣言されていた。
この木はどういうわけか忘れ去られ、影の憲兵の姿は見えなかった。
リーフと友人達は運べるだけリンゴを摘み、街の下の排水トンネルに降りてこっそり食べた。
果物は小さくてまだらだったが、甘かった。
それはごちそうだった。
邪悪な影の大王から盗んだものだと知っていたからこそ、さらに楽しめた。
日没の1時間前、リーフの友人達は彼を置いて急いで家に帰った。
しかしリーフは、最後の1時間を無駄にしたくなかった。
リーフは排水溝の静寂と薄暗さの中に留まり、探索し、考えていた。
少しの間だけ留まるつもりだったが、分岐する小さな排水トンネルを発見した。
丘の上の城へと続いている事は確かだった。
リーフはこの新しいトンネルに沿ってできる限り這っていき、引き返した。
また別の日にさらに進んでみようと自分に誓ったが、地上に上がると、
時間があっという間に過ぎていた。
夜になっていたのだ。
リーフが慌てて止まると、二人の影の憲兵が目の前の角を曲がり、リーフの方向に歩き始めた。
彼らは話していたが、まだリーフの声を聞いた事も姿を見た事も匂いを嗅いだ事もなかった。
しかし、彼らがリーフの匂いに気づいた時、
リーフは息を止め、必死にあちこち見回して逃げ道を探した。
両側には高い壁がそびえ立ち、ぬるぬるした水が滴り、苔で滑りやすくなっていた。
助けなしでは絶対に登れないし、向きを変えて逃げる事もできない。
そうすれば確実に死ぬ事になる。
リーフはいつもデルの街をうろつき、しばしば危険に遭遇した。
彼は過去に何度も運良く逃げ切れた事を誇りに思っていた。
リーフは素早く、機敏で、大胆な人物だったが、分別もあった。
この街を走り切れば倒されるだろうと分かるほどの分別も持っていた。
影の憲兵はそれぞれ、パチンコと、デルの人々が「火ぶくれ弾」と呼ぶものを持ち歩いていた。
火ぶくれ弾は当たると破裂し、火傷毒を与える銀の弾で、
影の憲兵は暗闇の中でも優れた力と正確さで火ぶくれ弾を投げる事ができた。
リーフは、火ぶくれ弾の犠牲者が苦しみ悶えながら倒れるのを何度も見てきたので、
自分も同じ運命を辿りたくないと思った。
しかし、もしリーフがそこに留まれば、
影の憲兵がリーフを襲い、いずれにせよ彼は死ぬ事になるだろう。
火ぶくれ弾を浴びるか、短剣で刺されて死ぬ事になるだろう。
リーフは壁にへばりつき、影のように動かず、筋肉を動かそうともしなかった。
影の憲兵達はそろそろと、リーフに向かって歩いてきた。
(何か、気を逸らすものがあればいいのに……)
最近のデルの住民で奇跡を信じるものはほとんどいなかった。
だが、影の憲兵の後ろの角からガタガタという音が聞こえた時、リーフは驚いた。
影の憲兵はくるりと回って、音の方へ走り始めた。
自分の幸運が信じられず、リーフは振り向いて走ろうとした。
すると、彼の肩にロープが当たった。
壁の上からぶら下がっているロープだった。
(誰が投げたんだろう?)
考える時間も疑問に思う時間もなかった。
数秒のうちに、リーフは命がけで登っていた。
壁の頂上に辿り着き、反対側の大きな木に飛び込むまで、息を止めなかった。
息を切らしながら、リーフは枝の間の枝に身を寄せ、周囲を見回した。
ロープは木の幹にしっかりと結ばれていたが、壁越しに投げた者の痕跡はどこにもなかった。
影の憲兵はまだ姿を現さなかったが、リーフは近くで彼らが口論しているのが聞こえた。
彼らは、聞こえた音の元となったものを探し回っていた。
何も見つからないだろうとリーフは確信していた。
ロープを投げた人物は、彼らの気を逸らすために石を投げたに違いない。
もし自分が友人を救おうとしていたなら、彼自身もそうしただろう。
(友達?)
リーフは唇を噛みながら、素早くロープを引っ張り上げた。
彼が知る限り、友人は全員無事に家にいた。
自分が困っているなんて、誰が知っていただろう。
リーフはしばらく考え込んでから、首を横に振った。
今はそんな事は重要ではない、と自分に言い聞かせた。
重要な事は、別の事件が起きる前に家に帰る事だ。
リーフはロープをほどき、巻き上げ、肩にかけた。
このようなロープは貴重品だからだ。
リーフは静かに地面に登り、暗闇を見通そうと目を凝らした。
ゆっくりと、一番近くにある形を認識した。
それは、壊れて草の上に横たわった古いろくろだった。
リーフは身震いしながら、
自分がかつて市内最大の陶器工場だった場所の裏庭にいる事に気づいた。
彼は、その焼け落ちた外壁、ぽっかり開いた正面の窓、
そして影の大王の印が刻まれたドアの前を何千回も通り過ぎてきた。
その焼き印は、影の大王の手が陶器に刻まれた事を意味していた。
今やそこは廃墟となり、二度と使われる事も、立ち入る事さえできなくなった。
この街の一角には、そのような建物や看板が数多くあった。
ここのある集団が、影の大王に抵抗しようとしたが、その考えはとっくにバレていた。
リーフは、雑草が生い茂った、割れた壺の巨大な山を縫うように進んだ。
壺を焼いていた二つの大きなかまどを通り過ぎたが今はただの壊れたレンガの山になっていた。
彼は草の中に埋もれた何かに躓きそうになった。
それは、ずっと昔に影の憲兵が踏み潰した子供の木馬だった。
建物の前に着く頃には、リーフは恐怖ではなく怒りから震え、息が荒くなっていた。
(どうして、こんな目に遭わなきゃいけないんだろう。
どうして、自分の街で犯罪者のようにこそこそ歩き回らなきゃいけないんだろう)
「そうかもしれませ……あっ!?」
リーフが人けのない道に出た瞬間、修道服の少女、ヴァージニアと出会った。
「あ、あなたは……誰、ですの……?」
「君こそ一体誰なんだい?」
リーフとヴァージニアはお互いにきょろきょろと辺りを見渡した。
お互いに影の憲兵に追いかけられていたため、話す余裕はなかったが、
何とか影の憲兵に見つからずに済むようだ。
「……僕は鍛冶屋の息子のリーフ。君は?」
「わたくしはヴァージニア・ファネスですわ。ヴァチカンからここに来ましたの」
「ヴァチカン? 聞いた事がない場所だ。でも今は、身を隠すのが大事だよ」
「……何だか大変そうですわね」
「当たり前さ、この国は影の大王が支配したんだからね」
「影の大王……そいつは、わたくしとワソの勝負を汚した諸悪の根源ですわ……!」
ヴァージニアは、ぐっと拳を握り締める。
ワソとヴァージニアが勝負をしようとした時、
影の大王が現れて二人をこの世界に飛ばしてしまったのだ。
その時、ヴァージニアはまた別の場所に飛ばされ、ワソの行方は分からなくなっていた。
「君が探してるそのワソって人は誰なんだい?」
「わたくしのライバルですわよ」
リーフとヴァージニアは、お互いに言いたい事を小声で話し合った後、丘の上の城を見た。
「あいつのせいで……」
リーフが物心ついた頃から、城は影の大王の本拠地だった。
それ以前は、デルトラの国王が贅沢に暮らし、
城は淡く揺らめく霧で覆われていたと友人達はリーフに話していた。
しかし、影の大王が来ると霧は完全に消え、今や城ははっきりと見えるようになった。
リーフは両親からデルトラの歴史を学んだが、
リーフが生まれる前の事についてはほとんど話さなかった。
彼らはそれについて話す事を恐れているようだった。
影の大王はどこにでもスパイを送り込んでいるので、黙っているのが一番だと言った。
しかしリーフの友人達は恐れず、リーフに多くの事を話してくれた。
友人達は、最後の王は、その前の王達と同じように、
民の事を全く気にかけなかったとリーフに告げた。
エンドン国王はデルトラの魔法のベルトを守ろうとしていた。
しかし、エンドン国王は弱く、怠惰で、不注意だったのでベルトはまんまと奪われてしまった。
王は死んだ、とリーフの友人達は言った。
リーフとヴァージニアは、再び急いで家に向かった。
王は、民に苦しみをもたらしたために死ぬに値したという。
リーフとヴァージニアは野原に着き、走り始めた。
低くしゃがみ、長い草の中に身を隠した。
残り数分で安全になるだろう。
既に遠くに家の明かりがかすかに点滅しているのが見えた。
「こんなに遅れちゃったし、ロープについて何か言われそうだ。
でも、僕の父さんと母さんは、少なくとも許してくれそうだ」
「あら、あなたの親は優しいんですのね」
リーフとヴァージニアは道を横切り、鍛冶場へと突き進んだ。
鍛冶場のジャードとアンナほど平凡で、臆病で、静かな人は他にいない。
ジャードはリーフが10歳の時、倒れた木で怪我をして以来、酷く足を引きずっていた。
しかし、その前からもジャードとアンナは互いに距離を置いていた。
彼らは、自分の目で人生を見るよりも、
鍛冶場に立ち寄った放浪者の話を聞く事に満足しているようだった。
リーフは、影の大王の到来を告げる暗闇と恐怖の時代が過ぎてから生まれた。
しかしリーフは街の多くの人々が戦って死に、また多くの人々が恐怖で逃げた事を知っていた。
ジャードとアンナは、そのどちらもしなかった。
周囲が混乱とパニックに陥る中、彼らはコテージに留まり、
命令に全て従い、敵の怒りを買うような事は何もしなかった。
そしてパニックが終わり、街が荒廃すると、彼らは鍛冶場の門を再び開き、再び仕事を始めた。
彼らはただ、荒廃した世界で生き残るために奮闘していた。
リーフ自身は理解できず、絶対にできなかった事だ。
両親が人生で望んだのは、
どんな犠牲を払ってでもトラブルに巻き込まれないようにする事だけだったと確信していた。
両親が何を言っても驚かないと確信していた。
だから、ほっとしながら鍛冶場の門を駆け抜け、
庭の隅にある避難所にゆっくりと向かう乞食のバルダを避け、コテージのドアを駆け抜けた。
言い訳は口にでき、夕食の事が頭の中をいっぱいにしていた。
しかし、1時間も経たないうちに、全てが変わる事になるとは、リーフは知らなかった。
人生最大のショックを受ける事になるとは、リーフは知らなかった。
ホラーゲームの怪物からプレイヤーキャラが逃げたり隠れたりするのは、
プレイヤーキャラがその怪物とまともにやり合えないから、だと誰かが言っていました。
けれど、デルトラの世界の怪物は、戦えるはずのリーフ達でも苦戦していましたので、
前者より後者の方が脅威だと判断し、ヴァージニアの逃走パートから始めました。