彼の秘密も、ここで明らかに……?
リーフは人声で目を覚ました。
もうすぐ夜明けだった。
ヴァージニア、バルダ、ジャスミンは既に動き出し、武器を手に取り、
水疱の入った容器をベルトに締めていた。
ダリア、エルザ、メリン、ブルーナは泉から戻ってきていた。
リーフはじっと横たわり、夢を思い出していた。
夢が終わってから何時間も眠っていたはずなのに、全ての出来事が鮮明に記憶に残っていた。
恐ろしい重圧がリーフを圧迫しているようだった。
それは、ジャードの危険と苦痛、そしてアンナへの恐怖の重圧だった。
そして、リーフはジャードの輝く目と、あの最後の言葉を思い出した。
――私はここで、精一杯戦っている。リーフは、自分の悲しみと戦うんだ。
リーフは起き上がり、決意を固めて悲惨な状況を振り払った。
「ジャードとアンナは、こうなるかもしれないとずっと思っていたんだ」
バルダはリーフの傍らに立っていた。
彼の顔は険しく、やつれていた。
「君もジャードを見たのか?」
二人は寝袋を拾い上げ、鞄を肩に担ぎ、低い声で話しながら泉に向かって歩き始めた。
ヴァージニアとジャスミンも後をついて、耳を澄ませた。
「眠りに落ちるとすぐに夢を見たんだ。
リーフ、君も同じ事をするつもりだろうと思っていたが、
ジャードの様子を自分の目で確かめたかったんだ。
ほとんど何も分からなかったが、ジャードの姿を見た。
地下牢の壁にもたれかかって、鎖に繋がれていた。何もできなかった。
教えてあげればよかったのに……」
「父さんは僕達が成功してる事を知ってる! それが父さんに希望を与えたんだ」
「聞こえていたのか?」
「ううん、別の方法を見つけたんだ」
四人は泉に着いた。
ドライフルーツと旅人用ビスケットで朝食を急ぎ、甘い水で流し込みながら、
リーフはファローが牢獄を訪れた時の事を話した。
バルダは自分がエンドン国王だと疑われていると聞いて、冷たく笑った。
「君の母さんもきっと誇りに思うだろう。
つまり、鍛冶場の門の乞食が消えた事に気づいていないのか?」
「ううん。もし気づいていたとしても、街のどこか別の場所へ引っ越したと思っているかもね。
でも、僕の話は別だ。問題が起きた時、父さんの過去を理由に、彼らは鍛冶場へ行った。
僕がいなくなっていた事が分かった。家中を捜索して……」
「そして、あの本も見つかったか。
ずっと前にジャードに、この本を破棄するように言ったのに、ジャードはそれを断った。
あまりにも重要だと言って」
リーフは背後から小さな物音に気づき、振り返った。
ジャスミンが鞄を引っ張っていた。
口元を固く結び、目は悲しそうだった。
リーフは理由が分かったような気がした。
「昨夜は何も夢を見なかったわ」
リーフの言葉にならない問いかけに、ジャスミンは答えた。
「泉の水を飲みながら父さんの姿を思い浮かべようとしたの。
でも、父さんが連れ去られた時はまだ幼かったから、顔も思い出せないの。
今はただぼんやりとしか覚えていない。だから、チャンスを逃してしまったの」
「ごめんなさい」
ジャスミンは肩を竦め、髪を後ろになびかせた。
「もしかしたら、それが一番いいのかもしれないわ。
父さんは長年、囚われの身だった。どんな苦しみを抱えているのか、誰にも分からない。
父さんを助けてあげられないと思うと、本当に辛いわ。
母さんのように、父さんも死んだと考えた方がいい」
「ジャスミン、それはわたくしも同じですわ。わたくしも、両親を悪魔に殺されたんですもの」
ヴァージニアはジャスミンに少し共感した。
「急いだ方がいいわ。こんな無駄な話で時間を無駄にしているわ」
ジャスミンはクリーと共に歩き去った。
ヴァージニア、リーフ、バルダも急いで荷物をまとめ、後を追った。
ジャスミンの厳しい言葉の裏には、深い苦しみが隠れている。
リーフ達はジャスミンを助けたいと願ったが、何もできなかった。
ジャスミンのためにも、ジャスミンの父親のためにも、
リーフの両親のためにも、ヴァージニアの友人のためにも、
そして影の大王の残酷な仕打ちを受けた何千人もの犠牲者のためにも。
だが、今は、デルトラのベルトの宝石を取り戻す事が使命だ。
それが完成すれば――エンドン国王の世継ぎが見つかり、影の大王を倒せば――
囚人達は皆、助かるだろう。
「わたくしは、影の大王の手にかかると、嫌な目に遭うって事は覚えてますわよ」
「ヴァージニア……」
「多分、ワソと同じ目に遭うと思いますけど……」
キン達は木々の向こう、草に覆われた丘の頂上で待っていた。
プリンを除いて、皆が四人に別れを告げるために集まっていた。
「小さな子が来てくれなかったの。申し訳ないわ。
普段はそんなに長く怒っているわけではないのに、今回は違うのよ」
「今回は本当にがっかりしているわ」
「可哀想な子。お察しします」
「じゃあまずは、わたくしから乗りますわ」
そう言ってヴァージニアは、ダリアの袋に乗った。
意外と心地良いな、とヴァージニアは思った。
まるで教会の中のようだった。
メリンは薄明かりの空を見上げ、バルダの方を向いた。
「私が一番大きいから、一緒に乗って」
メリンは明らかに、早く帰りたいと思っていた。
バルダは少し緊張した様子で、彼女の袋の中に入った。
リーフはその光景に思わず微笑んだ。
見守っていたキン達の多くは、不安をよそに大声で笑った。
「メリン、なんて大きな赤ちゃんでしょう。それに、なんて美しいの!」
バルダとメリンは二人とも、威厳のある沈黙を保っていた。
リーフはエルザ、ジャスミンはブルーナと一緒に乗る事になっていた。
ヴァージニア達は順番に袋の中に入りフィリはジャスミンの肩の上で興奮してお喋りしていた。
リーフは眷属の事をとても素敵だと思っていて、こんなに近くにいられる事に興奮していた。
エルザの袋は暖かく、ベルベットのように柔らかかった。
リーフは最初、自分の体重でエルザが傷つくのではないかと心配したが、
すぐに心配は杞憂だと悟った。
「幼いキンは、母親の袋から完全に離れる頃には、あなたよりずっと重くなっているわ。
楽にしてなさい」
しかし、リーフがすぐに感じたのは、安らぎとは程遠いものだった。
あんなに重い生き物がどうやって地面を離れるのか、リーフは不思議に思っていた。
それを目の当たりにするのは、恐ろしい体験だった。
方法は至って簡単だった。
ダリア、エルザ、メリン、ブルーナは一列に並び、
大きな翼を広げ、そして全速力で丘を駆け下り始めた。
容赦なく揺さぶられた四人は、息を切らしながら、ただ掴まっている事しかできなかった。
そして、四人は目の前にあるものに気づいた。
四人は崖っぷちへと真っ直ぐに走っていたのだ。
エルザが宙に舞い上がると、リーフは叫び声を上げ、目を閉じた。
大きな翼が頭上で激しく羽ばたき、リーフは何度かパニックに陥った。
その時、リーフは上空に何かが押し寄せ、冷たい空気が顔に押し寄せるのを感じた。
羽音が落ち着いた事に気づいた。
リーフは目を開けた。
眼下の大地は、小さな木々や狭く曲がりくねった小道が、
あちこちを刺繍したパッチワークの絨毯のようだった。
前方には、恐怖の山が既に近づいているように見えた。
まだ霞んではいたが、以前よりも大きく、暗く、不気味に見えた。
その背後には、影の王国との境界を示す山脈の襞があった。
それらもまた、近づいているように見えた。
「あの山に着くまでどれくらいかかるんだ?」
「日が暮れたら止まらなきゃいけないわ」
「でも、このまま天気が良ければ、明日には着くはずよ」
「そうか、明日ですのね!」
明日には、恐怖の山のグノメ族がまだ空でキンを探しているかどうか、
良くも悪くも分かるだろう。
もしそうなら、それはキン達の死を意味する。
グノメ族がダリア、エルザ、メリン、ブルーナを撃ち落とし、地面に墜落するだろう。
リーフは身震いした。
腰のベルトに手を伸ばし、そこに埋め込んだ四つの宝石を軽く撫でた。
触れると温かくなった。
誠実のトパーズ、幸福のルビー、希望のオパール、そして神秘的なラピスラズリ、神の石。
(大丈夫だ、この宝石があれば、きっと上手くいく。でも……)
その時、『デルトラのベルト』の言葉が、リーフの脳裏に浮かんだ。
それぞれの宝石には独自の魔力があるが、
七つの宝石が合わさると、それよりも遥かに強力な力となる。
アディンが最初に作り、アディンの真の世継ぎが身に着けた、
完全なデルトラのベルトだけが、敵を倒す力を持つのだ。
警告は明白だった。
リーフ達がこれまで手にしていた宝石は、旅の手助けにはなるだろうが救う事はできなかった。
(あの悪い未来は見たくないよ)
リーフはオパールに指を触れないように気を配った。
未来を垣間見たくはなかった。
恐ろしい未来なら、知りたくもなかった。
だが、どんな運命が待ち受けていようと、その時が来れば立ち向かえばいいのだ。
太陽が燃えるように赤く沈むにつれ、
キン達は夜を過ごす予定の場所を探しながら、どんどん低く旋回していった。
「あそこに水と食べ物と、上からの避難場所があるわ」
「昔、私達が山と森の間で旅の休憩を取っていた小さな森よ」
四頭が地面に降り立つ頃には、辺りはほぼ暗くなっていた。
大きな翼を激しく羽ばたかせながら、
四頭は高い木々の間を舞い降り、下の柔らかな避難場所へと降りていった。
ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミンはよろめきながら地面に降り立った。
足元に再びしっかりとした土があるとは、とても奇妙な感覚だった。
三人は辺りを見回した。
ここは実に平和な場所だった。
小川が湧き出るその縁にはシダが生い茂り、大きな木々の下にはキノコが群生していた。
その近くで滝の音が聞こえてきた。
「木々がこんなに大きくなったのね!」
メリンは興奮して叫び、毛皮についた葉や小枝を払い除けた。
「小川がすっかり見えなくなっているわ。
それにほら、ダリア、私達がよく遊んでた大きな洞窟の入り口がシダで覆われているじゃない」
「何もかもがすっかり違って見えるわね」
「上から探すのに時間がかかったのも無理はないわ。
いつも山に行くんじゃなくて、ずっと前に夢で訪れておけばよかったのに」
ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミンは疲れた様子で小川の傍に座り、
四頭のキンが探検を始めるのを見守った。
ジャスミンは頭を傾け、木々のざわめきに耳を澄ませていた。
「何て言ってるの?」
「木々は家族との再会を喜んでいるの。
樹齢数百年の木々も多く、過去の事をはっきりと覚えている。
でも、悲しみと恐怖も感じるの。ここで何か悪い事が起きたのよ。
大切な人の血が流れ、亡くなったのよ」
「いつですの?」
「ヴァージニア、こういう木々は私達のように時間を語らないのよ。
木々が思い出している悲しみは、一ヶ月前の事かもしれないし、20ヶ月前の事かもしれない。
木々にとっては、全て同じなのよ。……小さな火を灯しても大丈夫だと思うわ。
木々がきっと光を隠してくれるわ。それに、ちょっと元気が欲しいの」
四人は暖かな火に身を屈め、ドライフルーツやナッツとハチミツのケーキを食べていた。
その時、小川の向こうの薄暗い中から、エルザが彼らに声をかけた。
エルザの声は奇妙に聞こえた。
四人が驚いて飛び上がり、松明に火を灯すと、シダが生い茂る大きな洞窟の傍に、
エルザと他のキン達が立っている場所へと辿り着いた。
「私達の洞窟を探検していたの。子供の頃、ここで遊んだの。
中に何かを見つけたの。あなたにも見てもらいたいと思ったの」
四人はキン達の後を追って洞窟に入った。
松明の光が岩壁と砂地の床を揺らめき、そこに横たわる物を照らし出した。
鍋やフライパンがいくつか、マグカップが一つ、
かつてはシダの葉が枯れていた埃の上に置かれた古い寝袋、古着の束、
落ちた枝で作った椅子、壁に固定された切れ端の松明……。
「誰かがここに住んでいたんだ」
「最近じゃないな」
「何年も前からじゃないと思いますけどね」
バルダは毛布を拾い上げて再び埃の中に落とした。
エルザは四人を洞窟の入り口まで連れ戻し、片側に生い茂るシダをかき分けた。
平らで苔むした石が、マーカーのようにしっかりと立っていた。
「文字が刻まれているわ」
バルダが灯火を下ろすと、確かに石に丁寧に文字が刻んであった。
右上には、レジスタンスの印があった。
心やさしきジョーカー、ここに眠る
友なき旅人をかくまい、死にいたる
その無念、晴らすべし
「墓石に奇妙な名前があるなんて、おかしいですわね」
バルダとヴァージニアは呟き、リーフとジャスミンを意味ありげに一瞥した。
「それに、奇妙な文章もある」
「……まさか、ジョーカーが死んだですって!?」
リーフは呆然とその文字を見つめた。
「でも、この墓は古いんだ。石を見る限り、少なくとも10年は経っている。
だから、僕達がジョーカーと呼んでいる男は……」
「全くの別人みたいだな」
「そうよ。あいつはやっぱり信用できなかったわ。影の大王のスパイかもしれないわ!」
「馬鹿な事を言うな! 本名を使わないのは何も証明にならない。
俺達も、ジョーカーに会った時は偽名を使っていた」
リーフはゆっくりと頷いた。
「あいつは身元を隠す必要があった。だから、この場所に眠る男の名を名乗ったのだ」
「もしかしたら、裏切って殺した男かもしれないわ。ここにいたのよ。感じるの!」
ヴァージニアとバルダは答えなかった。
バルダは優しく、石の周りのシダを払い始めた。
リーフはバルダを手伝おうと屈んだ。
ジャスミンは冷たく怒りに満ちた目で脇に立ち、ヴァージニアはただ見ているだけだった。
四頭は途方に暮れて見守っていた。
ついにダリアは咳払いをし、両足を組んだ。
「私達の発見があなた達を苦しめた事は明らかよ、だからごめんなさい。
たくさんの葉を食べ、小川の水を飲んだわ。
さあ、丸くなって寝ましょう。朝早く出発しなければ」
その言葉に、ダリア、メリン、ブルーナ、そしてエルザは立ち去り、暗闇の中へと姿を消した。
しばらくして、バルダとリーフは仕事を終え、小川を渡って戻った。
ヴァージニアとジャスミンは静かに後を追った。
火の傍に着く頃には、四頭はまるで大きな岩の塊のように身を寄せ合い、
ぐっすり眠っているようだった。
リーフも毛布にくるまり、眠ろうとした。
しかし、突然、森は以前ほど温かく感じなくなった。
木々の上に悲しみのベールが垂れ込め暗闇の中で小枝が折れる音や葉がざわめく音が聞こえた。
まるで誰か、あるいは何かが四人を見守っているかのようだった。
リーフとヴァージニアは、ジョーカーと名乗る男の事を考えずにはいられなかった。
ジョーカーが影の憲兵団からリーフ達を助けたのは真実だった。
しかし、これは全て、より大きな陰謀の一部だったかもしれない。
四人の信頼を得て、冒険の秘密を聞き出すための陰謀かもしれない。
――敵は狡猾でずる賢く、その怒りと嫉妬にとっては千年も瞬きほどの時間のようだ。
(ジョーカーがいなかったのは偶然なのか? それとも、誰かに従っているからか?
でも、何も言ってないだけだ)
リーフはそう思いながら、毛布をきつく巻き付けた。
しかし、まだ疑念がリーフを苦しめ、夜はリーフを包み込み、
謎と脅威に満ちた闇がリーフを包み込んでいるようだった。
(あの泉の水を口にしましたわ。敵が近づいたら目を覚ましますし、クリーが見張ってますわ。
ジャスミンなら信じましょうか)
しかし、二人が眠りにつくまでには長い時間がかかった。
そして眠りについた時、リーフは孤独な墓と、仮面で顔を隠した暗く、苦々しい男の夢を見た。
濃い霧がリーフの周りを渦巻き、晴れたり、閉じたりしていた。
次回は影の王国の刺客、凶悪なあの怪物が登場します。