ヴァージニアとデルトラクエスト   作:アヤ・ノア

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恐怖の山の怪物との対決です。
なるほど、そういう風に倒すのですか、とこの二次創作を書いている時に思いました。


第35話 蛙の怪物ゲリック

 その後、間もなく、ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミンは、

 三人のグノメ族が次々とトンネルを抜け、山の中心へと徐々に近づいていくのを追っていた。

 プリンはクリーとフィリと共に留まり、

 もし戻ってこなかったら他の者達と共に全力を尽くして逃げるように、と言われていた。

 四人は鞄と盾も置いてきてしまった。

 今、四人が持っているのは、武器と水筒、そして残った火ぶくれ弾という、

 必要最低限のものだけだった。

 四人は火ぶくれ弾を使ってゲリックを倒すつもりだった。

 眠っている怪物を攻撃するというアイデアに、誰も怯まなかった。

 怪物を目覚めさせずに、狙いを定めて十分に近づく事ができるかどうかが懸念だった。

 何しろ、ヴァージニア達は多くの怪物と命懸けで戦ってきたのだから……。

 

 グノメ族はゆっくりと静かに動き始め、やがて洞窟の巨大な入り口が見えてきた。

 洞窟の松明が、その下に積み上げられた宝物を揺らめく光で照らし、

 遠くからでも扉の向こうに虹色の煌めきが見えた。

 彼らは音を立てずに入り口まで忍び寄り、中を覗き込んだ。

 怪物は、ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミンが夢で見た時と全く同じ姿勢で、

 宝石と金の山の真ん中に蹲っていた。

 目は閉じていて、喉のゆっくりとした脈動と、

 皮膚からゆっくりと滲み出る粘液の溝だけが、巨大で醜悪だと分かった。

 ヴァージニア達は前進し、今度はグノメ族がずっと後ろをついて続いた。

 彼らは足元を注意深く見守りながら、ゆっくりと宝の山を登っていった。

 金と宝石が小石のように靴の下で揺れ動く中、彼らは静寂を保つ事だけに集中していた。

 彼らは一歩一歩、慎重に忍び寄っていった。

 まもなく彼らは十分近づくだろう。

 ゲリックは動いておらず、その背後には角が生えた女性が立っていた。

 リーフは大きく息を吸い込み、手に持っていた火ぶくれ弾をぎゅっと握りしめた。

 ヴァージニアも火ぶくれ弾を握りしめている。

 もしこれまでまっすぐ、強く、正確に投げた事があるなら、

 今こそそうしなければならない、とリーフは自分に言い聞かせた。

(もう少しですわ……)

「ゲリック様、ご用心を!」

 叫び声が静寂を破り、リーフとヴァージニアは振り返った。

 赤髭のリ・ナンが宝物をかき分け、腕を振り回しながら、リーフの横を駆け抜けていた。

「ゲリック様、警告するために来ました! 裏切者です!」

 リ・ナンが金切り声を上げると、ゲリックの目が開いた。

「今だ!」

 バルダが咆哮した。

 ヴァージニアとリーフは全力で、そして速く火ぶくれ弾を投げつけた。

 リーフにとって、人生最大の投擲だった。

 火ぶくれ弾がゲリックの喉に直撃し、

 同時にバルダの火ぶくれ弾とジャスミンの火ぶくれ弾がゲリックの胸で破裂した時、

 リーフは勝利の雄叫びを上げた。

 リーフは二つ目の火ぶくれ弾を投げつけ、

 それが前と同じ場所で破裂するのを見て叫び、ゲリックが震えて倒れるのを待った。

 ヴァージニアもまた、火ぶくれ弾を投げつける。

 しかし何も起こらなかった。

 ゲリックの目は瞬かなかった。

 物憂げに舌を伸ばし、胸を伝い光る毒を舐めた。

 大きな口は嘲笑するように大きく広げた。

「俺様の毒で俺様を攻撃するなんて、この愚かな奴は一体何者だ?」

 ゲリックはしゃがれた声で言った。

 ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミンは雷に打たれたように後ずさりし、

 恐怖に凍りついたグラ・ソンとファ・グリンの方を向いた。

「グノメ族はゲリックの粘液を自分達で集めてるのよ!

 火ぶくれ弾の中にどうして入っているの? どうして……」

「少しだけ取っておくのだ」

 グラ・ソンは恐怖で唇を硬くして呟いた。

「残りは満月のたびに山の麓まで運び、道端に置いて行かなければならない。

 それも契約の一部だった。わしらは知らなかった――」

「リ・ナン! 答えろ! 奴らは誰だ?」

「侵入者はこいつらです、ゲリック様!」

 リ・ナンは早口に言うと、グラ・ソンとファ・グリンを指差した。

「そして、彼らを解放し、ゲリック様を見つけるのを手伝った裏切り者達がいます!

 この忠実なる私は、あの愚か者、ファ・グリンよりもグノメ族を動かせま……」

 ゲリックは恐ろしい目をリ・ナンに向けた。

「見ていないうちに伏せろ! ……の下に隠れろ」

「リ・ナン、本当だな? よくも命令できたな? これがお前の報いだ、虫ケラめ!」

 ゲリックが唾を吐くと、リ・ナンは崩れ落ち、叫び声を上げ、何度も転がり、

 黄金の中で蹴り、身悶えした。

 ゲリックは満足そうに舌をぴくぴく動かすと、ゆっくりと向きを変え、

 揺らめく光の中で宝の山が空虚に光っているのを見て、シューッと息を吐いた。

「俺様から隠れるのか、虫ケラめ?

 俺様の怒りに震えながら、俺様の安物の宝の下に潜り込むのか? それが当然の事だ」

 ゲリックは巨大な足を持ち上げ、雷鳴のような音を立てて踏み鳴らし、

 耳をつんざくような咆哮を上げた。

「俺様は偉大なるゲリック! 影の大王様、自らが俺様を敬う。俺様の毒だけが敵を倒す!」

 恐ろしい咆哮が洞窟中に響き渡った。

 煌めく金貨と宝石の山に隠れ、息も絶え絶えになりながら、

 ヴァージニアは恐怖に震えながら耳を澄ませていた。

 仲間達がどこか近くにいるのは分かっていたが、

 ゲリックの声が轟き続ける中、動く事ができなかった。

 

「やっぱり……あなたは、影の大王のしもべでしたわね……!」

「その通り! 影の大王様は俺様にこの山と奴隷を与えた。

 俺様が奴を裏切らない事を知っている。

 奴らは俺様を信頼し、お前らを殺し、額につけた石を守ってくれると信じる。

 他の誰かが裏切ったかもしれない。だが、俺様は違う!」

 ヴァージニアの思考は駆け巡った。

 ゲリックは彼らの到着を待ち構えていた。

 エメラルドを狙っている事を知っていた。

 頭を上げた瞬間、逃げようとも攻撃しようとも、

 一瞬たりとも動いた瞬間、ゲリックは彼らを殺す事を。

 

 今、ゲリックは静まり返っていた。

 動きの兆候を待ち、見張っていたに違いない。

 長い時間が過ぎた。

 ついにゲリックは再び口を開いた。

 しゃがれ声で、冷笑的で、低い声だった。

「お前達の居場所は分かっている。後は待つだけだ、虫ケラども、お前達が姿を現すまで。

 だが、待つのはやめた。お前達が横たわるその場で、お前達を踏み潰してやる」

 ゲリックは金や宝石を押しのけると、カチャカチャと音がした。

 そして、ゲリックは巨大な爪の生えた足で巨体を持ち上げながら、

 彼らに向かって這い寄ってきた。

「この体重の下でお前達の足を感じ、叫び声を聞くのは、俺様にとって喜びだ、虫ケラども。

 お前達の残骸を最後に引きずり出し、ハエの餌食になるのを見るのは、俺様にとって喜びだ」

 リーフとヴァージニアは武器を持ちながら、じっと横たわっていた。

 二人は、ほとんど驚きと共に、自分がとても冷静になっている事に気づいた。

 リーフは既に最後の瞬間まで待ってから飛び上がり、ゲリックの腹を突き刺そうと決めていた。

 グノメ族が何と言おうとも。

 

 ゲリックは今、すぐそこまで迫っていた。

 リーフは頭上の宝石の隙間からその影を見る事ができるほど近かった。

 デルトラのベルトがリーフの腰で燃えていた。

 ベルトはエメラルドを感じた。

 二度と輝く事のないエメラルド、ゲリックの邪悪さによって鈍くなってしまうエメラルド。

(どのタイミングで行くんですの?)

(もう少し待つんだ、ヴァージニア)

 リーフは、ヴァージニア、バルダ、ジャスミンが二人のグノメ族と共に、

 どこか後ろにいると思った。

 しかし、確信は持てなかった。

 今、リーフが抱える最大の恐怖は、自分が死へと逃れる前に、

 仲間達の悲痛な叫び声を耳にしてしまう事だった。

 それに立ち向かう事などできない。

 リーフの思考は、養殖場の近くで待つクリー、フィリ、そしてプリンへと移った。

 グノメ族がプリン達を解放し、無事に山から脱出できる事を願った。

 どうか、クリーとフィリが沈黙の森へ、そしてプリンがキンの元へ帰れる事を。

 幼い頃の仲間にそっくりなプリンが、生き返ったのだ。

 リーフは、夢見る泉の水を飲んでいるプリンを初めて見た時の事を思い出して、

 かすかに微笑んだ。

 

「リーフ! 夢の泉の水を!」

 ヴァージニアの声を聴くと、リーフはまるで雷に打たれたかのような衝撃を受けた。

 一瞬、全てが止まったように思えた。

 それからリーフは剣の柄からベルトへと手を動かした。

 リーフの頭上の金貨や宝石を、巨大な爪のある足が吹き飛ばした。

「見えてるぞ、虫ケラめ!」

 ゲリックはリーフの頭上にいた。

 巨大な頭を低く曲げ、口を開けて勝ち誇った笑みを浮かべた。

 しかしリーフは既に水筒を引っ張り出し、蓋を緩めていた。

 ゲリックが再び嘲笑する前に、リーフは夢見る泉から溢れ出る水が入った水筒を、

 ニヤニヤと笑う開いた口に、喉の奥へと投げつけた。

「夢の泉の水を飲んだ邪悪なものは、報いを受けますわ!」

 ゲリックが喉を鳴らすと、リーフは膝から立ち上がろうともがいた。

 すると、ゲリックはシューッという音を立てた。

「お前が……」

 ゲリックはむせ返った。

 それから激しく身をよじり、白目をむいた。

 動こうとしたが、足は既に太く蛇のような根で宝の山に固定されていた。

 ゲリックは悲鳴を上げた。膨れ上がった体が脈打ち、変化するたびに悲鳴を上げた。

 とげとげした巨大な首が伸び始めるたびに悲鳴を上げた。

 そして、リーフとヴァージニアが目を背けたいと思いながらも、

 できない、長く恐ろしい瞬間が何度かあった。

 バルダとジャスミンの声が傍らに聞こえたが、ただ手を握りしめるしかできなかった瞬間。

 洞窟全体が閃光を放ち、暗くなったように思えた瞬間。

 目の前の怪物のような、もがき苦しむものが、いつまでももがき続けるだろうと思った瞬間。

 それから全てが静まり返り、ゲリックがしゃがんでいた場所には、まっすぐで高い幹と、

 淡い色の葉を房状につけた三本の枝を持つ大木があった。

 木のてっぺんの枝が、宝の洞窟のそびえ立つ天井をかすめていた。

 リーフが見上げると、その先端から何かが落ちてきて、リーフの手に落ちた。

 それはエメラルドだった。

 最早鈍い色ではなく、深く輝く緑色だった。

 ファ・グリンとグラ・ソンは目を丸くして見ていた。

 しかしリーフは躊躇わなかった。

 リーフが五つ目の石を置くと、デルトラのベルトは煌めいた。

 

 その日、グノメ族の広間は歓喜に沸き返った。

 宝の洞窟は、今や中央にそびえ立つ木を畏敬の念を抱きながら見つめる、

 グノメ族で沸き立っていた。

 食料品倉庫の鍵のかかった扉を開き、皆が盛大な宴を楽しんだ。

 ゲリックを倒した物語を何度も語り継ぐにつれ、四人の頭上には感謝と称賛が浴びせられた。

 

「最悪の事態を恐れた」

 ファ・グリンは群衆に向かって、十度目となる言葉を投げかけた。

「我々は負けたと思った。

 その時、デルのリーフが偉大な魔法を使い、一瞬にして全てが変わったのだ」

 そして十度目となる言葉で、群衆は畏敬の念に溜息をつき、リーフは居心地の悪さを感じた。

 ファ・グリンの話を聞くと、ファ・グリンは夢の泉の水を使うつもりで、

 時が来るまで待っていたかのようだった。

 もちろん、実際には、それは一瞬の衝動、

 全てが失われたように思えた時に頭に浮かんだ考えだった。

 しかし、ファ・グリンは何も口にしなかった。

 バルダの言葉が賢明だった事は、ファ・グリンには分かった。

「グノメ族が我々に奇跡を起こせると思っても、何の害もありません。

 彼らは好戦的で疑い深い種族です。いつか彼らの忠誠と信頼が必要になる時が来るでしょう。

 我々の忠告に耳を傾けてほしいと思う時が来るでしょう」

 実際、その時は四人が予想していたよりも早く訪れた。

 宴がまだ続いている時、どこか近くから甲高い、ゴロゴロと鳴くような声が聞こえた。

 そして、走り去る足音が聞こえた。

「キン! 空がキンでいっぱい!」

 一瞬にして、食べ物も飲み物も忘れ、弓矢を捨て、グノメ族は扉に向かって走り出した。

「駄目!」

 ヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミン、プリンは声を振り絞って叫んだ。

 その声は宴会場に響き渡った。

 そしてグノメ族は立ち止まった。

「もっとましな事を覚えたんじゃないの?」

 プリンが恐怖に震えながらリーフにしがみつくと、リーフは問い詰めた。

「この山では、キンは君達の仲間なんだ。

 ブーロンの木は、小川さえも棘で塞ぐまで増え続けるのを望むのか?

 もし僕が正しかったら、キンは子供を助けに来るだろう。

 喜んで、留まるように願うんだ! 両手を広げて迎え入れるんだ。殺すんじゃない!」

 一瞬の沈黙の後、ファ・グリンは頷いた。

「我らが友の言う通りだ」

 ファ・グリンは後悔しながら着ていたキンの皮のジャケットを撫で、脱いで足元に投げ捨てた。

「残念だ。だが、我々の織工は十分に立派な服を作る事ができる。武器を捨てろ。

 我々は出かけて、キンと友情をもって挨拶し、故郷に迎え入れよう」

 

 二日後の日の出と共に、奇妙な一団がグノメ族の小道を下って山の麓へと歩いていった。

 プリンはヴァージニア、リーフ、バルダ、ジャスミンと共に歩いた。

 その次にダリア、エルザ、メリン、ブルーナが続き、

 ファ・グリンとグラ・ソンが最後尾を歩いた。

 彼らは歩きながらほとんど言葉を発しなかった。

 これから訪れる別れを考えると、誰もが胸が重かったからだ。

 しかし、山の麓の道、小川に橋が架かっている場所に着くと、彼らは互いに顔を見合わせた。

 

「ありがとう。毎日思い出すわ」

 エルザは呟き、同行者、一人ずつの額に、身を屈めて触れた。

「あなた達のおかげで、私達は家に帰る事ができ、プリンが再び私達と一緒にいてくれたわ」

 メリンとブルーナは、今度は仲間達に別れを告げながら微笑んだ。

「何度も言っていたように、プリンはこの数日で背が高くなり、

 力強くなったから、もう子供とは呼べないわ。

 それに、私達がここに戻れば、もっと子供が増えるし、

 プリンはもう私達の中で一番小さい子ではなくなるわ」

 メリンとブルーナが後ずさりすると、ファ・グリンが前に出た。

「グノメ族も感謝している」

 ファ・グリンはぶっきらぼうに言い、深々と頭を下げた。

 彼が手を差し出すと、

 グラ・ソンはブーロンの樹皮でできた小さな彫刻の入った箱を彼に手渡した。

 ファ・グリンはそれをリーフに渡した。

 リーフが箱を開けると、中には金の鏃が入っていた。

「あなたには大きな恩義がある。

 もしあなたが我々を必要とするなら我々は死ぬまであなたのものだ。これは我々の誓いの証だ」

「ありがとう。それで、あなたは計画に従うつもりですか……?」

「もちろんです」

 ファ・グリンは白い髭の間から歯を輝かせ、にやりと笑った。

「次の満月、そしてこれからの満月ごとに、毒瓶はいつものようにこの場所に置きます。

 ですが、液体は見た目は同じでも、中身は同じではないでしょう。

 小川の水にブーロンの樹液を混ぜれば、上手くいくでしょう。

 我々とキンが力を合わせて調合する。そう決めたのです」

「そして、ゲリックの毒の最後の備蓄も大切に保管しておく。

 そうすれば、ついに敵が我々の企みに気づき、

 襲い掛かってきた時、我々は万全の態勢を整えられる。

 その時、そしてその時になって初めて、我々の矢は再び毒を帯びるのだ」

「わたくし達の望みは、これ以上、あなた達の山が邪悪に侵されない事ですわ。

 間もなく、邪悪が別の懸念を持つ時が来るかもしれませんし」

 キン達は困惑して顔を見合わせた。

 しかし、ファ・グリンとグラ・ソンは目を輝かせながら頷いた。

 二人は、リーフの手に落ちた石の事、そしてリーフがそれをどうしたのか、

 決して口外しないと誓っていた。

 エメラルドが収まっていた、宝石が散りばめられた煌びやかなベルトについても、

 ベルトの両端に今もぼんやりと光る二つの空間についても、説明を求めなかった。

 しかし、もしかしたら尋ねる必要はなかったのかもしれない。

 もしかしたら、真実を知っていたか、あるいは推測していたのかもしれない。

 グノメ族は悠久の記憶を持つ古い種族なのだから。

 

 リーフはプリンの優しい肩への感触を感じた。

「ねえリーフ、これからどこへ行くの?」

 リーフは橋の向こう、木々の騒めきの中を流れる小川、

 そして太陽の初光が広い水面に煌めく場所を見つめた。

 遠くの川は、彼らを広大な海へと、そして次の目的地である禁断の地へと導いてくれるだろう。

「プリン、教えないよ。でも、ここからは遠いんだ」

「どうして行くの? どうしてそんなに早く行くの?」

 プリンは、苦悩しながらも、しばらく言い続けた。

 初めて会った時の、もっと子供っぽいプリンの姿に戻ったのだ。

「そうしなきゃいけないんだから。時間を無駄にするわけにはいかないんだ。

 今すぐ、できるだけ早く旅を終わらせなきゃいけない。家には待っている人がいるんだから」

 そして、プリンの目を見つめ、誰よりも辛い別れを告げようとした時、

 リーフは待ち時間が長すぎないようにと祈った。

 

 一方、ゲリックが敗れた事を知った影の大王は、ワソと遠くから連絡を取っていた。

 

―ゲリックが敗れたか。

「申し訳ございません、影の大王様」

 ワソは淡々と影の大王に謝罪する。

―何故、お前が謝る? 次の計画に進めばいいだろう。あやつらを始末するための……。

「本当ならば始末したかったのですが、予想以上に抵抗していたので撤退しました」

 ワソは影の大王の命令でリーフ達を殺そうとしたが、失敗して恐怖の山の外に逃げ帰ってきた。

 しかし、ヴァージニアが攻撃して瀕死にした事は、今のワソにとって痛くも痒くもない。

 影の大王に洗脳されたワソは、ただ影の大王に現状を報告するのみだった。

―オサ、お前はあいつに次いで優れたしもべだと私は思っている。失望させるなよ。

「はっ」

―では、次の命令だ。こやつらをトル川に放れ。放ったら、速やかに身を隠せ。

 影の大王がそう言うと、ワソの目の前に二体のぶよぶよした怪物が姿を現す。

「これは……?」

―何にでも姿を変えるオルだ。これは最も位が低いCオルだが……お前にはこれで十分だ。

「承知しました。奴らが油断しそうなものに化けるように命じます」

―良い働きを期待しているぞ、オサ……。

 ワソは二体のオルを連れて、どこかに向かうのだった。

 

「……っ!」

 ワソがトル川に向かった時、急に頭痛がして、その場に立ち止まる。

 恐怖の山でヴァージニアの攻撃を受けた衝撃が、まだ残っていたらしい。

「ヴァー……誰だった? いや……今は、影の大王様に従うのみ……」




最後のシーンは、次の章に繋げるためのオリジナルシーンです。
ヴァージニアの友人は、果たして、助かるのでしょうか……?
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